Qt GUI プログラミング：複数の矩形を組み合わせて複雑な形状を定義する QRegion::setRects()

QRegion::setRects() は、Qt GUIにおける2D形状を定義するクラス QRegion のメソッドの一つです。このメソッドは、複数の矩形 (QRect) を指定することで、その矩形たちの集合体からなる領域を QRegion オブジェクトに設定します。

役割

QRegion は、複雑な形状を表現するために用いられます。例えば、ボタンやウィジェットの形状、画像の一部を切り抜いたマスクなど、様々な形状を定義することができます。QRegion::setRects() は、このような複雑な形状を複数の矩形から構成する際に、便利なツールとなります。

使い方

QRegion::setRects() の基本的な使い方は以下の通りです。

QRegion region;

// 矩形を配列で定義
QRect rects[] = {
  QRect(10, 20, 50, 30),
  QRect(70, 80, 100, 50),
  QRect(150, 120, 60, 40)
};

// 配列と要素数を指定して `QRegion` に設定
region.setRects(rects, sizeof(rects) / sizeof(rects[0]));

上記のコードでは、3つの矩形を定義し、それらを QRegion オブジェクト region に設定しています。

注意点

QRegion::setRects() を使用する際には、以下の点に注意する必要があります。

同じ高さを持つ矩形は、同じ上端座標を持つようにする必要があります。この条件が満たされない場合は、QRegion オブジェクトが正しく作成されない可能性があります。
設定する矩形は、互いに重なり合ってはいけません。重なり合っている場合は、予期せぬ結果になる可能性があります。

応用例

QRegion::setRects() は、様々な場面で活用することができます。以下に、いくつか例を挙げます。

複雑な形状間の判定を行う
カスタムな形状の描画を行う
画像の一部を切り抜いたマスクを作成する
ボタンやウィジェットの形状を定義する

例1：ボタンの形状を定義する

この例では、丸みを帯びたボタンの形状を定義します。

#include <QApplication>
#include <QPushButton>
#include <QPainter>
#include <QRegion>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  // ボタンを作成
  QPushButton button("ボタン");

  // 矩形を配列で定義
  QRect rects[] = {
    QRect(5, 5, 80, 30),
    QRect(5, 35, 35, 10),
    QRect(70, 35, 35, 10),
  };

  // 矩形を `QRegion` に設定
  QRegion region;
  region.setRects(rects, sizeof(rects) / sizeof(rects[0]));

  // ボタンのマスクを設定
  button.setMask(region);

  // ボタンを表示
  button.show();

  return app.exec();
}

このコードを実行すると、以下の画像のような丸みを帯びたボタンが表示されます。

例2：画像の一部を切り抜いたマスクを作成する

この例では、画像の一部を切り抜いたマスクを作成します。

#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QPainter>
#include <QImage>
#include <QRegion>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  // 画像を読み込む
  QImage image("image.png");

  // 矩形を配列で定義
  QRect rects[] = {
    QRect(50, 50, 100, 100),
  };

  // 矩形を `QRegion` に設定
  QRegion region;
  region.setRects(rects, sizeof(rects) / sizeof(rects[0]));

  // 画像の一部を切り抜いたマスクを作成
  QImage mask = image.copy(region);

  // マスクをラベルに表示
  QLabel label;
  label.setPixmap(QPixmap::fromImage(mask));
  label.show();

  return app.exec();
}

このコードを実行すると、以下の画像のように、画像の一部を切り抜いたマスクが表示されます。

例3：カスタムな形状の描画を行う

この例では、星形の形状を描画します。

#include <QApplication>
#include <QPainter>
#include <QRegion>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  // ペインターを作成
  QPainter painter;
  painter.begin(new QPixmap(200, 200));

  // 矩形を配列で定義
  QRect rects[] = {
    QRect(50, 25, 50, 50),
    QRect(25, 75, 100, 100),
    QRect(75, 25, 50, 50),
  };

  // 矩形を `QRegion` に設定
  QRegion region;
  region.setRects(rects, sizeof(rects) / sizeof(rects[0]));

  // `QRegion` を使用して星形を描画
  painter.setPen(Qt::red);
  painter.setBrush(Qt::yellow);
  painter.fillPath(region.path(), Qt::FillRule::OddEvenFill);

  // 描画を終了
  painter.end();

  // 描画結果をラベルに表示
  QLabel label;
  label.setPixmap(*painter.pixmap());
  label.show();

  return app.exec();
}

このコードを実行すると、以下の画像のように、星形の形状が描画されます。

単一の矩形から作成する

QRegion region(QRect(10, 20, 50, 30));

利点

処理速度が速い
シンプルで分かりやすい

欠点

複雑な形状を定義できない

パスから作成する

QPainterPath path;
path.addEllipse(QRect(10, 20, 50, 30));
QRegion region(path);

利点

円形、楕円形、多角形など、様々な形状を定義できる

欠点

QRegion::setRects() よりも処理速度が遅い

画像から作成する

QImage image("image.png");
QRegion region(image);

利点

画像の一部を切り抜いたマスクを作成できる

欠点

画像の解像度に依存するため、拡大縮小に弱い
処理速度が遅い

論理演算を使用して複数の QRegion を合成する

QRegion region1(QRect(10, 20, 50, 30));
QRegion region2(QRect(60, 70, 80, 60));

QRegion result = region1 | region2; // 和集合
result = region1 & region2; // 積集合
result = region1 - region2; // 差集合
result = region1 ^ region2; // 排他的和集合

利点

複数の QRegion を組み合わせて複雑な形状を定義できる

欠点

処理速度が遅い

カスタムコードで作成する

上記の方法で実現できない複雑な形状を定義したい場合は、カスタムコードで QRegion を作成することもできます。

利点

自由度の高い形状を定義できる

欠点

処理速度が遅い
コードが複雑になる

上記のように、QRegion を作成する方法は様々です。状況に合わせて最適な方法を選択してください。

どの方法を選択するかは、状況や目的に応じて判断する必要があります。
上記以外にも、QRegion を作成する方法はいくつかあります。