Qt GUIプログラミング：ワンランク上のクリップ領域制御を実現するQRegion::RegionType

QRegion::RegionType は、Qt GUI における クリップ領域 の形状を定義する列挙型です。クリップ領域は、描画処理でどの部分が描画されるかを決定する領域です。QRegion::RegionType を使用することで、矩形や楕円など、様々な形状のクリップ領域を作成できます。

利用方法

QRegion::RegionType を利用するには、以下のいずれかの方法で QRegion オブジェクトを作成する必要があります。

QRegion(const QRegion &region): 指定された QRegion オブジェクトのコピーを作成します。
QRegion(const QBitmap &bitmap): 指定されたビットマップを使用してクリップ領域を作成します。
QRegion(const QPolygon &polygon, Qt::FillRule rule): 指定された多角形と塗りつぶしの規則を使用してクリップ領域を作成します。
QRegion(const QRect &rect, QRegion::RegionType type): 指定された矩形と形状タイプを使用してクリップ領域を作成します。
QRegion(int x, int y, int width, int height, QRegion::RegionType type): 指定された座標とサイズ、および形状タイプを使用してクリップ領域を作成します。

形状タイプ

QRegion::RegionType には、以下の 2 つの形状タイプが定義されています。

Ellipse: 楕円形のクリップ領域を作成します。
Rectangle: 矩形形のクリップ領域を作成します。

例

以下のコードは、矩形形のクリップ領域を作成し、ウィジェットに設定する例です。

QRegion region(10, 20, 50, 30, QRegion::Rectangle);
widget->setMask(region);

QRegion オブジェクトには、以下の操作を実行するためのメソッドが用意されています。

isNull() : クリップ領域が無効かどうかを判定します。
isEmpty() : クリップ領域が空かどうかを判定します。
contains(const QRect &rect): 指定された矩形がクリップ領域内に完全に含まれているかどうかを判定します。
contains(const QPoint &point): 指定された点がクリップ領域内にあるかどうかを判定します。
xor(const QRegion &region): 指定されたクリップ領域との排他的論理和を実行します.
subtract(const QRegion &region): 指定されたクリップ領域を引きます。
intersect(const QRegion &region): 指定されたクリップ領域と論理積を実行します。
unite(const QRegion &region): 指定されたクリップ領域と論理和を実行します。

QRegion::RegionType は、Qt GUI におけるクリップ領域の形状を定義する列挙型です。矩形や楕円など、様々な形状のクリップ領域を作成できます。QRegion オブジェクトには、クリップ領域を操作するための様々なメソッドが用意されています。

QRegion のパフォーマンスは、クリップ領域の複雑さに依存します。
QRegion は、複雑な形状のクリップ領域を作成する場合にも役立ちます。
QRegion::RegionType は、Qt C++ API でのみ使用できます。Qt QML では使用できません。

サンプル 1: 矩形と楕円のクリップ領域を作成する

#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QPainter>
#include <QRegion>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  // 矩形クリップ領域を作成
  QRegion rectRegion(10, 20, 50, 30, QRegion::Rectangle);
  QLabel rectLabel("矩形クリップ領域");
  rectLabel.setMask(rectRegion);
  rectLabel.show();

  // 楕円クリップ領域を作成
  QRegion ellipseRegion(50, 70, 80, 50, QRegion::Ellipse);
  QLabel ellipseLabel("楕円クリップ領域");
  ellipseLabel.setMask(ellipseRegion);
  ellipseLabel.show();

  return app.exec();
}

このコードを実行すると、2 つのウィジェットが表示されます。左側のウィジェットは矩形、右側のウィジェットは楕円の形状で描画されます。

サンプル 2: 複数のクリップ領域を操作する

#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QPainter>
#include <QRegion>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  // 矩形クリップ領域を作成
  QRegion rectRegion(10, 20, 50, 30, QRegion::Rectangle);

  // 楕円クリップ領域を作成
  QRegion ellipseRegion(50, 70, 80, 50, QRegion::Ellipse);

  // 2 つのクリップ領域を論理和で結合
  QRegion combinedRegion = rectRegion.unite(ellipseRegion);

  // 三角形のクリップ領域を作成
  QPolygon trianglePolygon;
  trianglePolygon << QPoint(20, 50) << QPoint(80, 50) << QPoint(50, 100);
  QRegion triangleRegion(trianglePolygon, Qt::OddEvenFill);

  // 結合されたクリップ領域から三角形の領域を引く
  QRegion finalRegion = combinedRegion.subtract(triangleRegion);

  QLabel label("複雑な形状のクリップ領域");
  label.setMask(finalRegion);
  label.show();

  return app.exec();
}

このコードを実行すると、1 つのウィジェットが表示されます。ウィジェットは、矩形、楕円、三角形の形状が組み合わさった複雑な形状で描画されます。

#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QPainter>
#include <QRegion>
#include <QImage>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  // 画像を読み込む
  QImage image("image.png");

  // 矩形クリップ領域を作成
  QRegion rectRegion(20, 30, 100, 80, QRegion::Rectangle);

  // クリップされた画像を作成
  QImage clippedImage = image.copy(rectRegion);

  // クリップされた画像を表示
  QLabel label;
  label.setPixmap(QPixmap::fromImage(clippedImage));
  label.show();

  return app.exec();
}

このコードを実行すると、画像の一部が切り抜かれてウィジェットに表示されます。

代替方法

- 長所:
  - ベジェ曲線などの複雑な形状を表現できる。
  - 抗aliasedな描画が可能。
- 短所:
  - QRegion よりも処理速度が遅い場合がある。
  - メモリ使用量が多くなる場合がある。
QPixmap
- 長所:
  - 画像の一部を切り抜いたり、マスクしたりすることができる。
  - 高速な描画が可能。
- 短所:
  - ベクターデータではなく、拡大縮小時に画質が劣化する場合がある。
  - 複雑な形状を表現するには不向き。
ビットマスク
- 長所:
  - 非常に高速な描画が可能。
  - メモリ使用量が少なく済む。
- 短所:
  - 非常に単純な形状しか表現できない。
  - アンチエイリアス処理ができない。

選択の指針

アンチエイリアス処理:
- アンチエイリアス処理が必要な場合は QPainterPath または QRegion を選択します。
画像処理:
- 画像の一部を切り抜いたり、マスクしたりする必要がある場合は QPixmap を選択します。
描画速度:
- 高速な描画が必要な場合は QPixmap または ビットマスク を選択します。
描画する形状の複雑さ:
- 複雑な形状の場合は QPainterPath、単純な形状の場合は QRegion または QPixmap を選択します。

コードの読みやすさ:
- 状況によっては、コードの読みやすさを考慮して QRegion 以外の方法を選択することもあります。
使用する Qt フレームワーク:
- Qt QML では QRegion は使用できません。代わりに Path や Image を使用します。