Qt GUIプログラミング:QRegion::begin() で矩形を効率的に反復処理


QRegion::begin() は、Qt GUI ライブラリで定義されている QRegion クラスのメンバ関数であり、その領域を構成する矩形を反復するためのイテレータの開始位置を取得します。 QRegion クラスは、グラフィック描画におけるクリップ領域を定義するために使用されます。

機能

QRegion::begin() 関数は、const QRect* 型のイテレータを返します。このイテレータを使用して、QRegion オブジェクトを構成するすべての矩形を反復処理することができます。 各矩形は、QRect オブジェクトとしてイテレータによって返されます。

QRegion region;
region += QRect(10, 20, 50, 30);
region += QRect(70, 80, 100, 50);

for (const QRect& rect : region) {
  // 各矩形を処理する
  qDebug() << rect;
}

このコードは、2 つの矩形を含む QRegion オブジェクトを作成し、その矩形をすべて反復処理してコンソールに出力します。

rects() 関数との違い

QRegion::begin() 関数は、QRegion オブジェクトを構成する矩形を反復処理するためのより効率的な方法を提供します。 以前の Qt バージョンでは、QRegion::rects() 関数がこの目的で使用されていました。 しかし、QRegion::rects() 関数は、内部データ構造のコピーを作成する必要があり、メモリ使用量とパフォーマンスに影響を与える可能性がありました。

QRegion::begin() 関数は、この問題を解決するために導入されました。 イテレータを使用することで、内部データ構造を直接反復処理することができ、メモリ使用量とパフォーマンスを向上させることができます。

注意事項

QRegion::begin() 関数は、読み取り専用のイテレータを返します。 つまり、イテレータを使用して QRegion オブジェクトを構成する矩形を変更することはできません。 矩形を変更する必要がある場合は、QRegion::setRects() 関数を使用する必要があります。

QRegion クラスには、矩形を操作するためのさまざまなメンバ関数が用意されています。 詳細については、Qt ドキュメント を参照してください。



例 1: 矩形を描画

この例では、QRegion オブジェクトを使用して複数の矩形を定義し、それらをウィジェットに描画します。

#include <QApplication>
#include <QWidget>
#include <QPainter>
#include <QRegion>

class MyWidget : public QWidget {
public:
    MyWidget(QWidget* parent = nullptr) : QWidget(parent) {
        setFixedSize(200, 100);
    }

protected:
    void paintEvent(QPaintEvent* event) override {
        QPainter painter(this);

        QRegion region;
        region += QRect(10, 20, 50, 30);
        region += QRect(70, 80, 100, 50);

        painter.setClipRegion(region);
        painter.fillRect(rect(), Qt::red);
    }
};

int main(int argc, char* argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    MyWidget widget;
    widget.show();

    return app.exec();
}

このコードは、次の出力を生成します。

例 2: 複雑な形状を描画

この例では、QRegion オブジェクトを使用して楕円と矩形を組み合わせた複雑な形状を定義し、それをウィジェットに描画します。

#include <QApplication>
#include <QWidget>
#include <QPainter>
#include <QRegion>

class MyWidget : public QWidget {
public:
    MyWidget(QWidget* parent = nullptr) : QWidget(parent) {
        setFixedSize(200, 100);
    }

protected:
    void paintEvent(QPaintEvent* event) override {
        QPainter painter(this);

        QRegion region1;
        region1 += QRect(20, 20, 60, 60);
        region1 += QEllipse(80, 40, 80, 40);

        QRegion region2 = QRect(50, 50, 100, 50);

        QRegion region = region1.intersected(region2);

        painter.setClipRegion(region);
        painter.fillRect(rect(), Qt::blue);
    }
};

int main(int argc, char* argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    MyWidget widget;
    widget.show();

    return app.exec();
}

説明

これらの例では、QRegion::begin() 関数は、QRegion オブジェクトを構成する矩形を反復処理するために使用されています。 イテレータを使用して、各矩形を描画するために使用される QPainter オブジェクトに渡されます。

QRegion::begin() 関数は、メモリ使用量とパフォーマンスを向上させるために使用できる効率的な方法です。



標準の for ループ

標準の for ループを使用して、QRegion オブジェクトの矩形インデックスを反復処理することができます。 次のコードは、QRegion::begin() と同等の機能を提供します。

for (int i = 0; i < region.rectCount(); ++i) {
  QRect rect = region.rect(i);
  // 各矩形を処理する
}

この方法は、QRegion::begin() よりもシンプルでわかりやすいコードになりますが、メモリ使用量とパフォーマンスが劣る可能性があります。

QVector::const_iterator

QRegion クラスは、QVector<QRect> を内部データ構造として使用しています。 したがって、QVector::const_iterator を使用して、QRegion オブジェクトの矩形を反復処理することができます。 次のコードは、QRegion::begin() と同等の機能を提供します。

QVector<QRect> rects = region.rects();
for (const QRect& rect : rects) {
  // 各矩形を処理する
}

この方法は、QRegion::begin() よりも柔軟性が高く、矩形をソートしたりフィルタリングしたりすることができます。 しかし、メモリ使用量とパフォーマンスが劣る可能性があります。

カスタムイテレータ

独自のイテレータクラスを作成して、QRegion オブジェクトの矩形を反復処理することができます。 この方法は、高度な制御が必要な場合に役立ちます。 しかし、複雑でコード量が多くなる可能性があります。

最適な方法の選択

使用する方法は、要件によって異なります。 以下の点を考慮する必要があります。

  • 制御
    カスタムイテレータは、高度な制御が必要な場合に役立ちます。
  • 柔軟性
    QVector::const_iterator は、矩形をソートしたりフィルタリングしたりするなど、より多くの柔軟性を提供します。
  • 簡潔性
    標準の for ループは、最もシンプルでわかりやすいコードです。
  • パフォーマンス
    QRegion::begin() は、メモリ使用量とパフォーマンスが最も優れています。