Qt GUIにおける形状の移動、回転、拡大縮小：QPainter::worldTransform() の詳解

QPainter::worldTransform()は、Qt GUIにおける描画操作において重要な役割を果たす関数です。この関数は、現在のペインターのワールド変換行列を取得します。ワールド変換行列は、描画されるすべての形状の位置とサイズを最終的に決定する重要な要素です。

ワールド変換行列とは

ワールド変換行列は、3x3行列で表される数学的な変換です。この行列は、描画されるすべての形状に対して以下の操作を実行します。

• 拡大縮小
  変換行列の(0,0)、(1,1)、(0,2)、(1,2)要素を使用して、形状を拡大または縮小します。
• 回転
  変換行列の(0,0)、(0,1)、(1,0)、(1,1)要素を使用して、形状を回転します。
• 移動
  変換行列の(1,3)と(2,3)要素を使用して、形状をX軸とY軸方向に移動します。

QPainter::worldTransform()の使用方法

QPainter::worldTransform()関数は、現在のペインターのワールド変換行列を取得するために使用されます。この関数は、QTransformオブジェクトを返します。このオブジェクトを使用して、ワールド変換行列の各要素にアクセスしたり、新しいワールド変換行列を設定したりすることができます。

QTransform transform = painter.worldTransform();

ワールド変換行列の操作

取得したワールド変換行列に対して、以下の操作を実行することができます。

• 複合変換
  translate()、rotate()、scale()などの関数を使用して、ワールド変換行列に新しい変換を複合することができます。
• 新しいワールド変換行列の設定
  setTransform()関数を使用して、新しいワールド変換行列を設定することができます。この関数は、QTransformオブジェクトを渡します。
• 各要素へのアクセス
  QTransformオブジェクトのdx()、dy()、tx()、ty()、m11()、m12()、m21()、m22()などの関数を使用して、ワールド変換行列の各要素にアクセスすることができます。

例

以下の例では、ペインターを使用して矩形を描画し、その後、ワールド変換行列を使用して矩形を回転させます。

QPainter painter(this);

// 矩形を描画
painter.drawRect(10, 20, 50, 30);

// ワールド変換行列を取得
QTransform transform = painter.worldTransform();

// 45度回転
transform.rotate(45);

// ワールド変換行列を設定
painter.setTransform(transform);

// 回転後の矩形を描画
painter.drawRect(70, 20, 50, 30);

この例では、最初の矩形は回転なしで描画されます。その後、ワールド変換行列が45度回転するように設定され、2番目の矩形は回転された状態で描画されます。

---

#include <QApplication>
#include <QPainter>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  QWidget widget;
  QPainter painter(&widget);

  // 矩形を描画
  painter.drawRect(10, 20, 50, 30);

  // ワールド変換行列を取得
  QTransform transform = painter.worldTransform();

  // 45度回転
  transform.rotate(45);

  // ワールド変換行列を設定
  painter.setTransform(transform);

  // 回転後の矩形を描画
  painter.drawRect(70, 20, 50, 30);

  widget.show();
  return app.exec();
}

例 2: 矩形を拡大縮小する

#include <QApplication>
#include <QPainter>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  QWidget widget;
  QPainter painter(&widget);

  // 矩形を描画
  painter.drawRect(10, 20, 50, 30);

  // ワールド変換行列を取得
  QTransform transform = painter.worldTransform();

  // 2倍に拡大縮小
  transform.scale(2, 2);

  // ワールド変換行列を設定
  painter.setTransform(transform);

  // 拡大縮小後の矩形を描画
  painter.drawRect(70, 20, 50, 30);

  widget.show();
  return app.exec();
}

#include <QApplication>
#include <QPainter>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  QWidget widget;
  QPainter painter(&widget);

  // 矩形を描画
  painter.drawRect(10, 20, 50, 30);

  // ワールド変換行列を取得
  QTransform transform = painter.worldTransform();

  // 100ピクセル右に移動
  transform.translate(100, 0);

  // 45度回転
  transform.rotate(45);

  // ワールド変換行列を設定
  painter.setTransform(transform);

  // 移動して回転した矩形を描画
  painter.drawRect(130, 20, 50, 30);

  widget.show();
  return app.exec();
}

---

QPainter::worldTransform()関数は、Qt GUIにおける描画操作において、形状の位置、サイズ、回転を制御するために重要な役割を果たします。しかし、状況によっては、この関数の代替方法を使用することがより適切な場合があります。

代替方法

QPainter::worldTransform()関数の代替方法として、以下の方法が挙げられます。

• カスタム変換行列
  独自の変換行列を作成し、QPainter::setTransform()関数を使用して、現在のペインターの変換行列に設定することができます。この方法は、より複雑な変換操作を実行する場合に便利です。
• QPainter::translate()関数、rotate()関数、scale()関数
  これらの関数は、それぞれ、現在のペインターの変換行列に対して、移動、回転、拡大縮小の操作を実行します。これらの関数は、より単純な変換操作を実行する場合に便利です。
• QPainter::setMatrix()関数
  この関数は、QMatrixオブジェクトを使用して、現在のペインターの変換行列を設定します。QMatrixオブジェクトは、ワールド変換行列と同様に、形状の位置、サイズ、回転を制御するために使用することができます。

各方法の比較

方法	利点	欠点
QPainter::worldTransform()	シンプルで使いやすい	複雑な変換操作には不向き
QPainter::setMatrix()	柔軟性が高い	複雑で分かりにくい
QPainter::translate()関数、rotate()関数、scale()関数	シンプルで使いやすい	複雑な変換操作には不向き
カスタム変換行列	柔軟性が高い	複雑で分かりにくい

例

以下の例では、QPainter::worldTransform()関数とQPainter::setMatrix()関数の両方を使用して、矩形を回転させます。

例 1: QPainter::worldTransform()関数

#include <QApplication>
#include <QPainter>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  QWidget widget;
  QPainter painter(&widget);

  // 矩形を描画
  painter.drawRect(10, 20, 50, 30);

  // ワールド変換行列を取得
  QTransform transform = painter.worldTransform();

  // 45度回転
  transform.rotate(45);

  // ワールド変換行列を設定
  painter.setTransform(transform);

  // 回転後の矩形を描画
  painter.drawRect(70, 20, 50, 30);

  widget.show();
  return app.exec();
}

例 2: QPainter::setMatrix()関数

#include <QApplication>
#include <QPainter>
#include <QMatrix>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  QWidget widget;
  QPainter painter(&widget);

  // 矩形を描画
  painter.drawRect(10, 20, 50, 30);

  // 回転行列を作成
  QMatrix matrix;
  matrix.rotate(45);

  // ペインターの変換行列を設定
  painter.setMatrix(matrix);

  // 回転後の矩形を描画
  painter.drawRect(70, 20, 50, 30);

  widget.show();
  return app.exec();
}

これらの例は、QPainter::worldTransform()関数とQPainter::setMatrix()関数の両方を使用して、形状を回転させる方法を示しています。状況に応じて、適切な方法を選択してください。