Qt GUI プラグインシステムの核心:QGenericPlugin::create() のしくみとトラブルシューティング
QGenericPlugin::create() は、Qt GUI におけるプラグインシステムの重要な機能を提供する関数です。この関数は、プラグインの動的インスタンス化と初期化を可能にし、アプリケーションの拡張性を高めます。
機能
QGenericPlugin::create() は、以下の機能を提供します。
- エラー処理
プラグインの生成または初期化に失敗した場合、適切なエラーメッセージを返します。 - プラグイン初期化
生成されたプラグインインスタンスを初期化し、アプリケーションで使用できるようにします。 - プラグインインスタンスの生成
指定されたキーと仕様に基づいて、プラグインのインスタンスを生成します。
使用方法
QGenericPlugin::create() 関数は、以下の構文で使用されます。
QObject* QGenericPlugin::create(const QString& key, const QString& specification);
specification
: プラグインの構成情報を含む文字列です。key
: 生成するプラグインのタイプを識別するキー文字列です。
例
以下の例は、MyPlugin
という名前のプラグインを生成し、specification
文字列を使用して初期化する方法を示しています。
QObject* plugin = myPluginFactory.create("MyPlugin", "myPluginConfig=value1;myPluginConfig2=value2");
プラグインの生成と初期化
QGenericPlugin::create() 関数は、以下の手順でプラグインの生成と初期化を実行します。
- 指定されたキーに基づいて、適切なプラグインクラスをロードします。
- ロードされたプラグインクラスのインスタンスを生成します。
- 生成されたインスタンスの
create()
メソッドを呼び出し、プラグインを初期化します。 - 初期化に成功した場合、生成されたインスタンスを返します。
- 初期化に失敗した場合、
nullptr
を返します。
エラー処理
QGenericPlugin::create() 関数は、以下の状況でエラーを返します。
- プラグインの初期化に失敗した場合。
- プラグインインスタンスの生成に失敗した場合。
- 指定されたキーに対応するプラグインクラスが見つからない場合。
- QGenericPlugin::create() 関数は、生成されたプラグインインスタンスの所有権をアプリケーションに渡します。アプリケーションは、プラグインインスタンスを解放する責任があります。
- QGenericPlugin::create() 関数は、スレッドセーフではありません。複数のスレッドから同時に呼び出す場合は、適切な同期メカニズムを使用する必要があります。
#include <QGenericPlugin>
class MyPluginFactory : public QGenericPluginFactory
{
public:
QGenericPlugin* create(const QString& key, const QString& specification) override
{
if (key == "MyPlugin") {
MyPlugin* plugin = new MyPlugin();
plugin->init(specification);
return plugin;
}
return nullptr;
}
};
Q_PLUGIN_FACTORY(MyPluginFactory, MyPluginFactory)
このコードでは、MyPluginFactory
という名前のプラグインファクトリークラスが定義されています。このクラスは、create()
メソッドを実装しており、MyPlugin
プラグインの生成と初期化を担当します。
create()
メソッドは、指定されたキーと仕様に基づいてプラグインインスタンスを生成します。キーが "MyPlugin" である場合、MyPlugin
クラスの新しいインスタンスが生成され、init()
メソッドを使用して初期化されます。初期化に成功すると、生成されたインスタンスが返されます。
プラグインの解放
以下のコードは、生成されたプラグインインスタンスを解放する方法を示しています。
QObject* plugin = myPluginFactory.create("MyPlugin", "myPluginConfig=value1;myPluginConfig2=value2");
// プラグインを使用する
delete plugin;
プラグインインスタンスを使用し終えたら、delete
演算子を使用して解放する必要があります。
プラグインエラー処理
以下のコードは、プラグインの生成または初期化に失敗した場合にエラーを処理する方法を示しています。
QObject* plugin = myPluginFactory.create("MyPlugin", "myPluginConfig=value1;myPluginConfig2=value2");
if (!plugin) {
// エラー処理
qDebug() << "プラグインの生成または初期化に失敗しました: " << errorString;
} else {
// プラグインを使用する
}
create()
メソッドは、プラグインの生成または初期化に失敗した場合に nullptr
を返します。nullptr
をチェックすることで、エラーを検出することができます。
- QGenericPlugin::create() 関数は、生成されたプラグインインスタンスの所有権をアプリケーションに渡します。アプリケーションは、プラグインインスタンスを解放する責任があります。
- QGenericPlugin::create() 関数は、スレッドセーフではありません。複数のスレッドから同時に呼び出す場合は、適切な同期メカニズムを使用する必要があります。
- 上記のコードはあくまで例であり、実際の状況に合わせて変更する必要があります。
QPluginLoader クラス
QPluginLoader クラスは、プラグインの動的ロードとインスタンス化を可能にするもう 1 つの方法です。このクラスは、QGenericPlugin::create() と同様に、プラグインのタイプを識別するキーと、プラグインの構成情報を含む文字列を受け取ります。
QPluginLoader loader(pluginPath);
QObject* plugin = loader.instance();
QPluginLoader クラスは、QGenericPlugin::create() と比較して以下の利点があります。
- プラグインのアンロードが可能である。
- プラグインのメタデータ情報にアクセスできる。
- プラグインのファイルパスを直接指定できる。
プラグインを静的にロードする
プラグインが単純な場合、またはプラグインシステムの複雑さを避けたい場合は、プラグインを静的にロードすることができます。これを行うには、プラグインのヘッダーファイルをインクルードし、プラグインのクラスを直接インスタンス化します。
#include "MyPlugin.h"
MyPlugin* plugin = new MyPlugin();
プラグインを静的にロードする場合、プラグインのファイルパスをハードコーディングする必要があります。これは、プラグインの場所が変更される可能性がある場合に問題になる可能性があります。
カスタムプラグインファクトリーを作成する
QGenericPluginFactory クラスを継承して、カスタムプラグインファクトリーを作成することができます。これにより、プラグインの生成と初期化のプロセスをより細かく制御することができます。
プラグインを Qt Resources として使用する
プラグインを Qt Resources として使用することもできます。これにより、プラグインをアプリケーションに埋め込むことができ、プラグインのファイルパスをハードコーディングする必要がなくなります。
選択の指針
どの方法を選択するかは、具体的なニーズによって異なります。
- プラグインをアプリケーションに埋め込む必要がある場合は、プラグインを Qt Resources として使用する必要があります。
- プラグインの生成と初期化のプロセスをより細かく制御する必要がある場合は、カスタムプラグインファクトリーを作成する必要があります。
- プラグインのファイルパスを直接指定する必要がある場合は、QPluginLoader クラスまたはプラグインを静的にロードする必要があります。
- プラグインシステムの複雑さを避けたい場合は、QPluginLoader クラスを使用するのが良いでしょう。
- QGenericPlugin::create() 関数は、Qt GUI 4 以前でのみ使用できます。
- 上記の方法はすべて、Qt GUI 5 以降で使用できます。