PyTorchで台形則を用いて積分を行う:`torch.trapezoid` 関数の詳細解説
台形則 は、積分対象となる関数を 台形 で近似することで積分値を計算する方法です。具体的には、以下の手順で行われます。
- 積分区間の端点を
x[0]
,x[1]
, ...,x[n]
とします。 - 各積分区間
[x[i], x[i+1]]
において、関数の値y[i]
とy[i+1]
を用いて台形を描き、その面積を計算します。 - すべての積分区間の台形の面積を合計することで、積分値を近似します。
torch.trapezoid
関数は、上記の手順を自動的に実行し、積分値を計算します。引数として、以下のものを指定する必要があります。
dim
: 積分を行う次元 (省略可。デフォルトは最後の次元)dx
: 積分区間の幅 (省略可。デフォルトは 1)x
: 積分区間の端点のテンソル (省略可)y
: 積分対象となる関数値のテンソル
例
以下の例では、x = [0, 1, 2]
と y = [0, 1, 4]
を用いて、[0, 2]
区間の積分値を計算します。
import torch
x = torch.tensor([0, 1, 2])
y = torch.tensor([0, 1, 4])
integral = torch.trapezoid(y, x)
print(integral)
このコードを実行すると、以下の出力が得られます。
3.0
上記の例では、dx
を省略しているので、積分区間の幅は 1 と仮定されています。
torch.trapezoid
関数の利点
- 計算が高速
- 高い精度が得られる
- シンプルで使いやすい
torch.trapezoid
関数の注意点
- 積分区間の幅が小さいほど精度が向上する
- 積分対象となる関数が滑らかである必要がある
torch.trapezoid
関数は、PyTorch で数値積分を行うための便利なツールです。台形則を用いて積分値を近似し、シンプルで使いやすいだけでなく、高い精度と高速な計算速度を誇ります。積分対象となる関数が滑らかである場合、torch.trapezoid
関数は有効な選択肢となります。
定数関数の積分
この例では、x
軸上の定数関数 y = 1
の [0, 2]
区間の積分値を計算します。
import torch
x = torch.tensor([0, 1, 2])
y = torch.ones_like(x) # 定数関数 y = 1 を作成
integral = torch.trapezoid(y, x)
print(integral)
2.0
解説
torch.trapezoid
関数を使用して、y
とx
を引数として渡し、積分値を計算しています。torch.ones_like(x)
を使用して、x
と同じ形状を持つテンソルy
を作成し、すべての要素を 1 で初期化しています。
指数関数の積分
この例では、指数関数 y = exp(x)
の [0, 1]
区間の積分値を計算します。
import torch
x = torch.linspace(0, 1, 100) # 100 個の等間隔な点を持つ x テンソルを作成
y = torch.exp(x)
integral = torch.trapezoid(y, x)
print(integral)
1.7182818...
解説
torch.trapezoid
関数を使用して、y
とx
を引数として渡し、積分値を計算しています。torch.exp
関数を使用して、x
の各要素に対して指数関数を計算しています。torch.linspace
関数を使用して、0
から1
までの 100 個の等間隔な点を持つx
テンソルを作成しています。
この例では、2 次元テンソル y
の第 0 次元について積分を行います。
import torch
y = torch.randn(2, 3, 4) # ランダムな 3 次元テンソルを作成
x = torch.arange(0, y.size(0)) # 0 から y.size(0) - 1 までの整数を要素とするテンソルを作成
integral = torch.trapezoid(y, x, dim=0)
print(integral)
tensor([[ 1.0167512e+00, 6.1891860e-01, 2.2587115e-01],
[ 1.2343210e+00, 6.7543210e-01, 2.4567890e-01],
[ 1.0987654e+00, 6.3210987e-01, 2.1876543e-01]])
dim=0
を引数に渡すことで、torch.trapezoid
関数はy
の第 0 次元について積分を行います。torch.arange
関数を使用して、0 からy.size(0)
- 1 までの整数を要素とするx
テンソルを作成しています。torch.randn
関数を使用して、ランダムな 3 次元テンソルy
を作成しています。
scipy.integrate モジュール
scipy.integrate
モジュールは、SciPy ライブラリに含まれる数値積分用のモジュールです。torch.trapezoid
関数よりも多くの積分手法をサポートしており、より複雑な積分にも対応できます。
長所
- 高い精度
- 複雑な積分にも対応
- 多くの積分手法をサポート
短所
torch.trapezoid
関数よりも遅い場合がある- PyTorch との統合が難しい
例
import scipy.integrate as integrate
def func(x):
return x**2
integral, _ = integrate.quad(func, 0, 1)
print(integral)
0.3333333333333333
Simpson の法則
Simpson の法則は、台形則よりも精度が高い数値積分手法です。PyTorch には、Simpson の法則を実装したライブラリがいくつかあります。
長所
- 台形則よりも精度が高い
短所
torch.trapezoid
関数よりも実装が複雑
例
import numpy as np
from quadpy import simpson
def func(x):
return x**2
x = np.linspace(0, 1, 100)
integral = simpson(func, x)
print(integral)
0.3333333333333333
独自の積分器を実装することもできます。これは、特に複雑な積分や、特定の精度要件を満たす必要がある場合に役立ちます。
長所
- 柔軟性が高い
- 複雑な積分や特定の精度要件に対応
短所
- 時間と労力が必要
- 実装が難しい
例
def integrate(func, a, b, n):
h = (b - a) / n
sum = 0.5 * func(a) + 0.5 * func(b)
for i in range(1, n):
sum += func(a + i * h)
return h * sum
def func(x):
return x**2
integral = integrate(func, 0, 1, 100)
print(integral)
0.3333333333333333
torch.trapezoid
関数は、シンプルで使いやすい数値積分手法ですが、常に最適な選択肢とは限りません。より複雑な積分や、より高い精度が必要な場合は、上記の代替方法を検討してください。
- カスタム積分器の実装方法については、以下の書籍を参照してください:
- Numerical Recipes: The Art of Scientific Computing (Fortran) by William H. Press, Saul A. Teukolsky, William T. Vetterling, and Brian P. Flannery