決定論的アルゴリズムで再現性を高める!PyTorchのtorch.use_deterministic_algorithmsの使い方
決定論的アルゴリズムとは?
決定論的アルゴリズムは、同じ入力に対して常に同じ出力を生成するアルゴリズムです。これは、ランダムな要素や非決定的な操作を含まないことを意味します。
一方、非決定論的アルゴリズムは、同じ入力に対して異なる出力を生成する可能性があります。これは、ランダムな要素や非決定的な操作を含むためです。
torch.use_deterministic_algorithms
の利点
torch.use_deterministic_algorithms
を使用すると、以下の利点があります。
- 潜在的なバグの検出: 非決定的な操作は、潜在的なバグを隠してしまう可能性があります。
torch.use_deterministic_algorithms
を使用すると、これらのバグを検出しやすくなります。 - デバッグ: モデルの動作をデバッグしやすくなります。これは、非決定的な動作によって結果がランダムに変化することがないためです。
- 再現性: モデルのトレーニングと推論の結果が、ハードウェアやソフトウェア構成にかかわらず一貫したものになります。
torch.use_deterministic_algorithms
を使用するには、以下のコードを実行します。
torch.use_deterministic_algorithms(True)
このコードを実行すると、PyTorch は可能な限り決定論的なアルゴリズムを使用して計算を実行するように設定されます。
torch.use_deterministic_algorithms
を使用すると、パフォーマンスが低下する可能性があります。これは、決定論的なアルゴリズムは非決定的なアルゴリズムよりも計算量が多いためです。
また、torch.use_deterministic_algorithms
は、すべての操作を決定論的にするわけではありません。一部の操作は、本質的に非決定的なためです。
torch.use_deterministic_algorithms
は、PyTorch の計算をより再現性のあるものにするために使用できる便利な関数です。ただし、パフォーマンスが低下する可能性があることと、すべての操作を決定論的にするわけではないことに注意する必要があります。
例 1:モデルのトレーニング
この例では、torch.use_deterministic_algorithms
を使用してモデルをトレーニングします。
import torch
torch.use_deterministic_algorithms(True)
# モデルを定義する
model = ...
# データローダーを定義する
dataloader = ...
# 最適化アルゴリズムを定義する
optimizer = ...
# トレーニングループ
for epoch in range(num_epochs):
for i, (data, target) in enumerate(dataloader):
# データをモデルに入力する
output = model(data)
# 損失を計算する
loss = criterion(output, target)
# 勾配を計算する
optimizer.zero_grad()
loss.backward()
# パラメータを更新する
optimizer.step()
# 進捗状況を表示する
if i % 100 == 0:
print(f'Epoch {epoch + 1}/{num_epochs}, Step {i}/{len(dataloader)}: Loss: {loss.item():.4f}')
この例では、torch.use_deterministic_algorithms
を使用してモデルの推論を行います。
import torch
torch.use_deterministic_algorithms(True)
# モデルを定義する
model = ...
# データをロードする
data = ...
# モデルに入力する
output = model(data)
# 予測を計算する
prediction = output.argmax(dim=1)
# 予測結果を表示する
print(prediction)
個別に決定論的アルゴリズムを設定する
torch.use_deterministic_algorithms
は、PyTorch のすべての操作を決定論的にするわけではありません。一部の操作は、個別に設定する必要があります。
以下の操作は、torch.backends.cudnn.deterministic
フラグを使用して決定論的にすることができます。
- CUDA RNN と LSTM:
torch.nn.RNN
,torch.nn.LSTM
- CUDA バッチ標準化:
torch.nn.BatchNorm1d
,torch.nn.BatchNorm2d
,torch.nn.BatchNorm3d
- CUDA 畳み込み:
torch.nn.Conv1d
,torch.nn.Conv2d
,torch.nn.Conv3d
これらの操作を決定論的にするには、以下のコードを実行します。
torch.backends.cudnn.deterministic = True
手動でシードを設定する
PyTorch のランダム数ジェネレータは、シードを使用して初期化することができます。シードを固定すると、モデルのトレーニングと推論の結果が再現性のあるものになります。
シードを設定するには、以下のコードを実行します。
import torch
torch.manual_seed(seed)
torch.jit.script
または torch.jit.trace
を使用してモデルをトレースすると、モデルの計算グラフを固定することができます。これにより、モデルの推論が常に同じ結果を生成するようになります。
モデルをトレースするには、以下のコードを実行します。
import torch
import torch.jit
# モデルをトレースする
traced_model = torch.jit.trace(model, input)
# 推論を実行する
output = traced_model(input)
torch.use_deterministic_algorithms
は、PyTorch の計算をより再現性のあるものにするための簡単で便利な方法ですが、パフォーマンスが低下する可能性があります。
上記の代替方法は、torch.use_deterministic_algorithms
の欠点を克服するのに役立ちますが、それぞれ独自のトレードオフがあります。