Matplotlibのテーブル描画を極める:Cell.draw()の裏側とカスタマイズTIPS
Matplotlibでテーブル(表)を作成する際、テーブルは複数の「セル」(Cell
オブジェクト)で構成されます。matplotlib.table.Cell
クラスは、個々のセルを表すオブジェクトであり、その draw()
メソッドは、そのセル自体と、セル内に含まれるテキストなどの子要素を描画するためのものです。
基本的な概念
- Renderer
draw()
メソッドは、通常renderer
という引数を取ります。これは、実際に描画処理を行うバックエンド(画面表示やファイル出力など)を抽象化したものです。通常、ユーザーが直接draw()
を呼び出すことは稀で、Matplotlibの内部で描画サイクルの一部として自動的に呼び出されます。 - Artist
Matplotlibでは、グラフ上のあらゆる要素(線、テキスト、図形など)が「Artist」と呼ばれます。Cell
もArtist
の一種です。
役割
Cell.draw(renderer)
メソッドの主な役割は以下の通りです。
- セルの背景と境界線の描画
Cell
オブジェクトはmatplotlib.patches.Rectangle
を継承しており、その形状や色(facecolor
)と境界線(edgecolor
)に関する情報を持っています。draw()
メソッドは、これらのプロパティに基づいてセルの四角形を描画します。 - セル内のテキストの描画
各セルには、表示されるテキスト(text
プロパティ)が関連付けられています。このテキストもmatplotlib.text.Text
オブジェクトとして存在し、draw()
メソッド内でそのテキストも適切な位置とフォントプロパティで描画されます。 - 子Artistの描画
Cell
は、自身が持つ子Artist(この場合は通常テキスト)も描画します。これはMatplotlibのArtist階層の一部であり、親Artistが描画されるときに、その子Artistも再帰的に描画される仕組みになっています。
通常の使用方法
ほとんどの場合、ユーザーが直接 Cell.draw()
を呼び出すことはありません。通常、以下のような流れでテーブルが描画されます。
plt.table()
またはmatplotlib.table.Table
を使ってテーブルオブジェクトを作成します。- テーブル内の各セルは自動的に
Cell
オブジェクトとして生成されます。 plt.show()
やfig.savefig()
などの関数を呼び出すことで、Matplotlibは内部的に各Artist(Figure
、Axes
、Table
、そして個々のCell
やText
)のdraw()
メソッドを適切な順序で呼び出し、最終的な図を生成します。
- カスタム描画
Matplotlibの描画プロセスを深く理解し、非常に特殊な描画ロジックを実装したい場合(例:セルの中にミニグラフを描画するなど)、Cell
オブジェクトを取得し、そのdraw()
メソッドがどのように動作するかを考慮する必要があるかもしれません。しかし、これは高度なカスタマイズであり、通常はより高レベルなAPI(set_facecolor()
,set_text_props()
など)を使用します。
Cell.draw()
はMatplotlibのレンダリングパイプラインの一部として自動的に呼び出されるため、このメソッドが直接エラーを吐くというよりは、セルやテーブルの設定が不適切であるために意図しない表示になる、あるいは描画環境の問題が原因となることが多いです。
エラー/症状
- 警告メッセージ
UserWarning: Glyph ... missing from current font.
などが表示される。
原因
トラブルシューティング
- フォントキャッシュのクリア
フォント設定を変更しても反映されない場合、Matplotlibのフォントキャッシュが古い可能性があります。以下のコマンドでキャッシュを削除し、再度スクリプトを実行してください。- Linux/macOS:
rm -rf ~/.matplotlib/*.cache
- Windows:
%userprofile%\.matplotlib
内のキャッシュファイルを削除
- Linux/macOS:
セルの色や境界線が期待通りに表示されない
セルの背景色や境界線に関する設定が意図通りに反映されないことがあります。
エラー/症状
- 境界線が表示されない、または太すぎる。
cellColours
やcellLoc
などの引数を設定したのに、色や配置が変わらない。
原因
- 特定のバックエンド(描画エンジン)やMatplotlibのバージョンによる挙動の違い。
plt.table()
の引数や、Cell
オブジェクトのプロパティ設定が正しくない。
トラブルシューティング
- 引数の確認
plt.table()
に渡す引数名が正しいか確認してください。例えば、セルの背景色はcellColours
、テキストの色はcellText
とは別に設定します。 - 個々のCellオブジェクトへのアクセス
table.get_celld()
を使うと、各セルオブジェクトにアクセスし、より詳細な設定ができます。fig, ax = plt.subplots(figsize=(6, 2)) ax.axis('off') cell_text = [['A', '10'], ['B', '20']] table = ax.table(cellText=cell_text, loc='center') # 特定のセルの背景色を変更 table[0, 0].set_facecolor('lightblue') table[1, 1].set_facecolor('lightgreen') # 特定のセルの境界線を非表示にする table[0, 1].set_linewidth(0) # 境界線の太さを0にする # セル内のテキストの色やフォントサイズを変更 for key, cell in table.get_celld().items(): if key[0] == 0: # 最初の行のセル cell.set_text_props(color='red', fontsize=12, weight='bold') plt.show()
- edges 引数
plt.table()
のedges
引数で境界線の表示方法を制御できます('open'
,'closed'
,'horizontal'
,'vertical'
など)。table = ax.table(cellText=cell_text, loc='center', edges='closed') # 全ての境界線を表示
テーブルが描画されない、または期待した位置に表示されない
table.Cell.draw()
が呼び出されない、または表示範囲外に描画されるなどの問題。
エラー/症状
- 図を保存してもテーブルが欠ける。
- テーブルがプロットエリアの端に寄ってしまう。
- テーブル全体が表示されない。
原因
bbox
引数の誤用。Axes
の自動レイアウトがテーブルのサイズを考慮していない。- テーブルの
loc
引数が不適切。
トラブルシューティング
- loc 引数の確認
plt.table()
のloc
引数(例:'upper right'
,'center'
,'bottom'
など)が適切か確認します。デフォルトは'bottom'
です。 - bbox 引数の使用
bbox
(bounding box) 引数を使って、テーブルの描画範囲を明示的に指定できます。これは正規化された座標 (0,0) から (1,1) の範囲で指定します。fig, ax = plt.subplots() ax.axis('off') cell_text = [['データA', '100'], ['データB', '200']] table = ax.table(cellText=cell_text, loc='center', bbox=[0.1, 0.1, 0.8, 0.8]) # x, y, width, height plt.show()
- tight_layout() や autolayout
plt.tight_layout()
を呼び出すことで、プロット内の要素が重ならないように自動調整されます。これはテーブルを含む図にも有効です。fig, ax = plt.subplots() # ... テーブルの作成 ... plt.tight_layout() plt.show()
- Axes の調整
テーブルがAxes
の外側に描画される場合、Axes
のサイズや位置を調整する必要があるかもしれません。
- レンダリング速度が遅い
非常に大きなテーブルを作成する場合、描画に時間がかかることがあります。- 対策
必要に応じて、より軽量な描画方法を検討するか、テーブルのセル数を減らします。しかし、ほとんどのユースケースでは問題になりません。
- 対策
- セルのテキストが重なる
テキストが長すぎる場合や、セルが狭すぎる場合に発生します。- 対策
セルの幅を調整するか、テキストを短くする、改行を入れるなどします。table.auto_set_column_width(True)
やtable.auto_set_font_size(False)
などで自動調整を制御することもできます。
- 対策
繰り返しになりますが、table.Cell.draw()
はMatplotlibの内部で「このセルを描画してね」とレンダラーに指示するためのメソッドです。ユーザーが直接このメソッドを呼び出すことはほとんどなく、もし呼び出すとしたら、それはMatplotlibの描画処理を非常に細かく制御したい、あるいはカスタムのテーブル描画ロジックを実装したいような特殊なケースに限られます。
しかし、「table.Cell.draw()
に関連するプログラミング例」という文脈で考えられるのは、以下の2つのパターンです。
Cell
オブジェクトのプロパティを操作することで、draw()
メソッドが最終的に描画する内容に影響を与える例(これが最も一般的で実用的です)。draw()
メソッドをオーバーライドする、または低レベルな描画を理解するための概念的な例(これは非常に高度であり、通常は推奨されません)。
ここでは、より実用的で一般的な1番の例を中心に解説し、2番についても触れます。
例1: Cell
オブジェクトのプロパティを操作して描画をカスタマイズする(最も一般的)
この方法は、Cell
オブジェクトが持つプロパティ(背景色、境界線、テキストなど)を変更することで、draw()
メソッドが最終的にどのようにセルを描画するかを制御します。ユーザーは draw()
を直接呼び出す必要はありません。
import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np
# 日本語表示の設定(必要に応じて)
# import japanize_matplotlib # japanize_matplotlibをインストールしている場合
# plt.rcParams['font.family'] = 'sans-serif'
# plt.rcParams['font.sans-serif'] = ['IPAexGothic']
# plt.rcParams['axes.unicode_minus'] = False
fig, ax = plt.subplots(figsize=(8, 4))
ax.axis('off') # 軸を非表示にする(テーブル表示では一般的)
ax.set_title("テーブルのカスタマイズ例")
# サンプルデータ
data = [['商品A', 100, '良品'],
['商品B', 150, '不良'],
['商品C', 200, '良品']]
row_labels = ['R1', 'R2', 'R3']
col_labels = ['製品名', '価格', '状態']
# テーブルの作成
# cellColours: 各セルの背景色(2D配列)
# cellLoc: 各セル内のテキスト配置
# loc: テーブル全体の配置
table = ax.table(cellText=data,
rowLabels=row_labels,
colLabels=col_labels,
cellLoc='center', # セル内のテキストを中央揃え
loc='center', # テーブル全体を中央に配置
colWidths=[0.2, 0.1, 0.15]) # 各列の幅を設定
# --- ここからが Cell オブジェクトの操作例 ---
# 1. ヘッダー行(col_labels)のカスタマイズ
# get_celld() は辞書形式で (行, 列) -> Cell オブジェクト のマッピングを返す
# ヘッダーは (0, j) のキーでアクセスできる
for (row, col), cell in table.get_celld().items():
if row == 0: # ヘッダー行の場合
cell.set_facecolor('#ADD8E6') # 薄い青色に設定 (Light Blue)
cell.set_fontsize(12) # フォントサイズ
cell.set_text_props(weight='bold', color='darkblue') # テキストを太字、濃い青に
# 2. 特定のセル(データ部分)のカスタマイズ
# '不良' のセルを強調表示
for i in range(len(data)):
if data[i][2] == '不良':
# データ部分のセルは (i+1, j) でアクセス
error_cell = table[(i + 1, 2)] # '状態' 列の該当セル
error_cell.set_facecolor('#FFDDC1') # 薄いオレンジ色 (Peach)
error_cell.set_text_props(color='red', weight='bold')
# 3. 境界線のカスタマイズ
# 例えば、全てのセルの境界線を少し太くする
for (row, col), cell in table.get_celld().items():
cell.set_linewidth(1.5) # 境界線の太さ
# 4. 行ラベルのカスタマイズ(row_labels)
# get_celld() は行ラベル、列ラベル、データセルを含む全てのセルを管理
# 行ラベルは (i+1, -1) のキーでアクセスできる
for i in range(len(row_labels)):
row_label_cell = table[(i + 1, -1)] # 行ラベルのセル
row_label_cell.set_facecolor('#E0FFFF') # 水色 (Light Cyan)
row_label_cell.set_text_props(color='darkgreen', style='italic') # テキストを斜体、濃い緑に
# テーブルのサイズを調整して、テキストがセル内に収まるようにする
table.auto_set_font_size(False) # フォントサイズの自動調整を無効化
table.set_fontsize(10) # 全体のフォントサイズを設定
table.scale(1, 1.5) # x方向に1倍、y方向に1.5倍に拡大(行の高さ調整)
plt.show()
解説
- 最終的に
plt.show()
が呼び出されると、Matplotlibのレンダリングエンジンが各Cell
オブジェクトのdraw()
メソッドを内部で呼び出し、更新されたプロパティに基づいてセルが描画されます。 - これらのメソッドを呼び出すことで、
Cell
オブジェクトの内部状態(プロパティ)が変更されます。 - 各
Cell
オブジェクトに対して、set_facecolor()
(背景色)、set_fontsize()
(フォントサイズ)、set_text_props()
(テキストプロパティ)、set_linewidth()
(境界線の太さ)などのメソッドを呼び出しています。 - このコードでは、
plt.table()
でテーブルを作成した後、table.get_celld()
を使って各Cell
オブジェクトにアクセスしています。
このアプローチが、ほとんどのユーザーがテーブルをカスタマイズする際に採用すべき方法です。draw()
メソッドの内部挙動を意識することなく、高レベルなAPIを通じて描画を制御できます。
例2: Cell.draw()
メソッドをオーバーライドする(概念的・非推奨)
これは非常に高度なカスタマイズであり、Matplotlibの内部構造を深く理解している場合にのみ検討すべきです。通常、この方法は推奨されませんし、Matplotlibの将来のバージョンで互換性がなくなる可能性もあります。
目的としては、「通常の Cell
の描画ロジックに加えて、独自の描画要素を追加したい」といった場合に考えられます。
import matplotlib.pyplot as plt
from matplotlib.table import Cell
import matplotlib.patches as mpatches
class MyCustomCell(Cell):
"""
matplotlib.table.Cell を継承し、カスタム描画を追加する例
"""
def __init__(self, *args, **kwargs):
super().__init__(*args, **kwargs)
self.custom_marker = None # カスタムマーカーを格納する属性
def draw(self, renderer):
"""
Cell の draw メソッドをオーバーライド
"""
# まず、親クラスの draw メソッドを呼び出し、通常のセルとテキストを描画する
# これにより、背景色、境界線、テキストなどが描画される
super().draw(renderer)
# ここに独自の描画ロジックを追加する
# 例えば、セルの中心に小さな円を描画する
x_center, y_center = self.get_center() # セルの中心座標を取得
# カスタムマーカー(円)を作成し、セルに関連付ける
# draw メソッドが複数回呼ばれることを考慮し、一度作成したら再利用する
if self.custom_marker is None:
# 円の半径をセルの高さに基づいて調整
height = self.get_height()
radius = height * 0.2
self.custom_marker = mpatches.Circle((x_center, y_center), radius,
facecolor='red', edgecolor='black', linewidth=0.5,
transform=self.get_transform()) # 座標変換をセルに合わせる
# カスタムマーカーの位置を更新(セルの位置が変わる可能性もあるため)
self.custom_marker.set_center((x_center, y_center))
# カスタムマーカーを描画する
self.custom_marker.draw(renderer)
# 注: 通常、Artist の子として追加されていないカスタム要素は、
# 親の draw メソッドで描画されるように適切に管理する必要がある。
# ここでは直接 draw を呼び出しているが、より頑健な実装では
# Cell の Artist の子として追加することが望ましい。
# 例: self.add_artist(self.custom_marker) を __init__ で呼び出すなど。
fig, ax = plt.subplots(figsize=(6, 3))
ax.axis('off')
ax.set_title("カスタムCellの描画例")
# テーブルデータ
data = [['データ1', 'データ2'], ['データ3', 'データ4']]
# CellクラスをMyCustomCellに置き換える(これは plt.table では直接できないため、手動で作成)
# 通常は plt.table を使いますが、ここでは Cell クラスを差し替えるため、低レベルにテーブルを構築
# Table オブジェクトを作成
# ここで `cell_class=MyCustomCell` のような引数があれば良いのだが、plt.table にはない。
# そのため、後から各セルオブジェクトを MyCustomCell のインスタンスに置き換える必要がある。
# これはあくまで概念的な例であり、実用的ではない場合が多い。
# より現実的なアプローチとしては、plt.table で作成された Cell オブジェクトを
# 取得し、そのオブジェクトに対してカスタム描画を後から行う方が簡単です。
# たとえば、get_celld() で得られたセルに対して、個別にパッチを追加するなど。
# 以下は、Cell クラスの置き換えを示すための「かなり無理やりな」例です。
# 通常は推奨されません。
table = ax.table(cellText=data, loc='center', cellLoc='center', colWidths=[0.3, 0.3])
# 作成されたCellオブジェクトをカスタムクラスのインスタンスで上書き
# これは非常にハック的であり、Matplotlibの内部構造に強く依存します。
# 実際のアプリケーションでは、このようにすべきではありません。
for (row, col), cell in table.get_celld().items():
new_cell = MyCustomCell(cell.xy, cell.width, cell.height,
text=cell.get_text().get_text(),
loc=cell.get_text().get_verticalalignment(),
facecolor=cell.get_facecolor(),
edgecolor=cell.get_edgecolor(),
linewidth=cell.get_linewidth())
new_cell.set_figure(cell.get_figure())
new_cell.set_axes(cell.get_axes())
new_cell.set_transform(cell.get_transform()) # 変換をコピー
# Text Artistも手動で再設定する必要がある場合がある
# ここでは既存のテキストプロパティをコピーする
current_text = cell.get_text()
new_cell.get_text().set_color(current_text.get_color())
new_cell.get_text().set_fontsize(current_text.get_fontsize())
new_cell.get_text().set_fontweight(current_text.get_fontweight())
new_cell.get_text().set_fontstyle(current_text.get_fontstyle())
table._cells[(row, col)] = new_cell # _cells 内部辞書を直接更新
# 新しいセルが Figure の Artist ツリーに追加されるようにする
# これは非常に重要で、追加しないと描画されない
ax.add_artist(new_cell)
plt.show()
解説
- しかし、
plt.table()
がデフォルトで作成するCell
オブジェクトをMyCustomCell
のインスタンスに「差し替える」のは非常に困難で、上記コードのように内部構造に直接アクセスするようなハック的な方法になりがちです。これはMatplotlibのバージョンアップで動かなくなる可能性が高いため、実用的ではありません。 - その後に、
mpatches.Circle
を使ってセルの中心に赤い円を追加描画しています。 draw()
メソッドをオーバーライドし、まずsuper().draw(renderer)
を呼び出して親クラスの標準的な描画(背景、境界線、テキスト)を実行させます。MyCustomCell
クラスはmatplotlib.table.Cell
を継承しています。
より良い代替案
もしセルに独自の図形や要素を追加したい場合は、以下のようなアプローチの方が現実的です。
plt.table()
で通常のテーブルを作成します。table.get_celld()
で各Cell
オブジェクトを取得します。- 各
Cell
オブジェクトの境界ボックスや中心座標を利用して、そのCell
のAxes
に直接Patch
やArtist
を追加します。
import matplotlib.pyplot as plt
import matplotlib.patches as mpatches
fig, ax = plt.subplots(figsize=(6, 3))
ax.axis('off')
ax.set_title("Cellにカスタム要素を追加するより現実的な例")
data = [['データ1', 'データ2'], ['データ3', 'データ4']]
table = ax.table(cellText=data, loc='center', cellLoc='center', colWidths=[0.3, 0.3])
# 各セルにアクセスし、そのセル内にカスタムマーカーを追加
for (row, col), cell in table.get_celld().items():
if row > 0 and col >= 0: # データセルにのみ適用(ヘッダーと行ラベルを除く)
x_center, y_center = cell.get_center()
height = cell.get_height()
radius = height * 0.15 # 半径をセルの高さの15%に設定
# セルが描画されるAxesに直接Circle Artistを追加
circle = mpatches.Circle((x_center, y_center), radius,
facecolor='blue' if (row + col) % 2 == 0 else 'green',
edgecolor='black', linewidth=0.5,
transform=ax.transData) # Axesのデータ座標系を使う
ax.add_patch(circle) # Axesにパッチを追加
plt.show()
Matplotlibの table.Cell.draw()
は、セルの描画を行うための低レベルな内部メソッドであり、通常は直接プログラミングで呼び出すことはありません。しかし、「table.Cell.draw()
に関連するプログラミング」という文脈で代替となる方法は、Cell
オブジェクトのプロパティを操作して、その描画結果を間接的に制御することです。
Cell.draw()
が自動的に呼び出される中で、その描画結果をカスタマイズする主な方法は、matplotlib.table.Table
オブジェクトと、そこからアクセスできる個々の matplotlib.table.Cell
オブジェクトのプロパティを設定することです。
plt.table() 関数の引数によるカスタマイズ
plt.table()
関数は、テーブル全体に適用されるさまざまな描画設定を直接引数として受け取ります。これらは、内部的に Cell
オブジェクトの初期プロパティに変換されます。
主な引数
edges
: セルの境界線をどのように描画するか('closed' (全て), 'open' (なし), 'horizontal', 'vertical' など)。bbox
: テーブルのバウンディングボックスを直接指定(loc
を上書き)。[xmin, ymin, width, height]
の形式。loc
: テーブル全体がAxes内でどこに配置されるか('bottom', 'center', 'top', 'upper right' など)。colLoc
: 列ヘッダー内のテキストの水平方向の配置。colColours
: 列ヘッダーの背景色のリスト。colLabels
: 列ヘッダーのテキストのリスト。rowLoc
: 行ヘッダー内のテキストの水平方向の配置。rowColours
: 行ヘッダーの背景色のリスト。rowLabels
: 行ヘッダーのテキストのリスト。colWidths
: 各列の相対的な幅のリスト。cellLoc
: 各セル内のテキストの水平方向の配置('left', 'center', 'right')。cellColours
: 各セルの背景色の2Dリスト。cellText
: 各セルに表示するテキストの2Dリスト。
コード例
import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np
fig, ax = plt.subplots(figsize=(8, 4))
ax.axis('off') # 軸を非表示
data = [['Apple', 100], ['Banana', 150], ['Orange', 200]]
col_labels = ['フルーツ', '価格']
row_labels = ['A', 'B', 'C']
cell_colors = [['lightblue', 'lightgreen'],
['pink', 'lightyellow'],
['lightcoral', 'lightcyan']] # 各セルの色を直接指定
table = ax.table(cellText=data,
cellColours=cell_colors, # セルの背景色
cellLoc='center', # セル内のテキスト配置
colLabels=col_labels,
colColours=['lightgray', 'lightgray'], # 列ヘッダーの色
colLoc='center',
rowLabels=row_labels,
rowColours=['gray', 'darkgray', 'gray'], # 行ヘッダーの色
rowLoc='left',
loc='center', # テーブル全体の配置
colWidths=[0.2, 0.15], # 列の幅
edges='closed' # 全ての境界線を表示
)
ax.set_title("plt.table() 引数によるカスタマイズ")
plt.show()
Table オブジェクトと Cell オブジェクトのメソッドによる詳細なカスタマイズ
plt.table()
は matplotlib.table.Table
オブジェクトを返します。この Table
オブジェクトを通じて、個々の Cell
オブジェクトにアクセスし、より詳細なプロパティを設定できます。これは、条件に基づいて特定のセルのスタイルを変更したい場合などに非常に有効です。
主なメソッド
table.scale(x_scale, y_scale)
: テーブルのサイズをX方向、Y方向にスケーリングします。特にY方向のスケーリングは行の高さを調整するのに役立ちます。table.set_fontsize(size)
: テーブル全体のデフォルトフォントサイズを設定します。table.auto_set_font_size(bool)
: フォントサイズの自動調整を有効/無効にします。table.auto_set_column_width(col)
: 特定の列の幅を自動調整します。cell.set_text_props(**kwargs)
: セル内のテキストのプロパティを設定します。kwargs
にはcolor
,fontsize
,fontweight
,fontstyle
,horizontalalignment
(ha
),verticalalignment
(va
) など、matplotlib.text.Text
オブジェクトで利用可能な任意のテキストプロパティを指定できます。cell.get_text()
: セル内のText
オブジェクトを取得します。cell.get_text().set_color(color)
: テキストの色を設定。cell.get_text().set_fontsize(size)
: テキストのフォントサイズを設定。
cell.set_linewidth(width)
: セルの境界線の太さを設定します。cell.set_edgecolor(color)
: セルの境界線の色を設定します。cell.set_facecolor(color)
: セルの背景色を設定します。table.get_celld()
: テーブル内の全てのCell
オブジェクトを辞書形式で返します。キーは(行インデックス, 列インデックス)
のタプルです。行ヘッダーは(i, -1)
、列ヘッダーは(0, j)
でアクセスできます。
コード例
import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np
# 日本語表示の設定(必要に応じて)
# import japanize_matplotlib
# japanize_matplotlib.japanize()
fig, ax = plt.subplots(figsize=(8, 4))
ax.axis('off')
ax.set_title("個々のCellオブジェクトによる詳細なカスタマイズ")
data = [['製品A', 10, 500, 'OK'],
['製品B', 25, 300, 'NG'],
['製品C', 15, 700, 'OK'],
['製品D', 30, 250, 'NG']]
col_labels = ['製品名', '在庫数', '売上', '状態']
row_labels = [f'ID-{i+1}' for i in range(len(data))]
table = ax.table(cellText=data,
colLabels=col_labels,
rowLabels=row_labels,
loc='center',
cellLoc='center',
colWidths=[0.15, 0.1, 0.1, 0.1])
# --- 個々のセルをループしてカスタマイズ ---
for (row, col), cell in table.get_celld().items():
cell.set_edgecolor('black') # 全てのセルの境界線を黒に
# ヘッダー行のスタイル
if row == 0:
cell.set_facecolor('#ADD8E6') # 列ヘッダーを薄い青に
cell.set_text_props(fontsize=12, fontweight='bold', color='darkblue')
cell.set_linewidth(2) # ヘッダーの境界線を太く
# 行ヘッダーのスタイル
elif col == -1: # 行ラベルは col=-1 でアクセス
cell.set_facecolor('#E0FFFF') # 行ヘッダーを水色に
cell.set_text_props(fontsize=10, fontstyle='italic', color='darkgreen')
cell.set_linewidth(1)
# データセルのスタイル
else:
cell.set_facecolor('white') # デフォルトのデータセルの背景色
# 特定の条件に基づいてセルのスタイルを変更
if col == 3: # '状態' 列
if cell.get_text().get_text() == 'NG':
cell.set_facecolor('#FFDDC1') # 'NG' の背景を薄いオレンジに
cell.set_text_props(color='red', fontweight='bold')
elif cell.get_text().get_text() == 'OK':
cell.set_facecolor('#D4EDDA') # 'OK' の背景を薄い緑に
cell.set_text_props(color='green')
# '在庫数' 列の数値に基づいて色を変える
if col == 1:
try:
stock = int(cell.get_text().get_text())
if stock < 20:
cell.set_facecolor('#FFEBEE') # 赤系の薄い色
except ValueError:
pass # 数値でない場合はスキップ
# テーブル全体のフォントサイズとスケール調整
table.auto_set_font_size(False) # 自動調整を無効にしてから手動で設定
table.set_fontsize(9)
table.scale(1, 1.3) # 行の高さ調整
plt.show()
pandasの plotting.table() を利用する
PandasのDataFrameを直接テーブルとして表示したい場合、pandas.plotting.table()
を利用すると便利です。これも内部的にはMatplotlibの table
機能を使用しており、上記のカスタマイズ方法が適用できます。
コード例
import matplotlib.pyplot as plt
import pandas as pd
from pandas.plotting import table as pandas_table # 名前が衝突しないようにエイリアス
# 日本語表示の設定(必要に応じて)
# import japanize_matplotlib
# japanize_matplotlib.japanize()
fig, ax = plt.subplots(figsize=(7, 3))
ax.axis('off')
ax.set_title("pandas.plotting.table() を使った例")
df = pd.DataFrame({
'商品': ['鉛筆', '消しゴム', 'ノート'],
'単価': [50, 80, 120],
'在庫': [200, 150, 300]
})
# pandas.plotting.table を使用
# DataFrameの列名を自動的にcolLabelsとして使用してくれる
table = pandas_table(ax, df, loc='center', cellLoc='center')
# MatplotlibのTableオブジェクトとしてカスタマイズ
for (row, col), cell in table.get_celld().items():
if row == 0: # ヘッダー行
cell.set_facecolor('#B0E0E6') # 水色
cell.set_text_props(fontsize=11, fontweight='bold')
else:
cell.set_facecolor('white')
cell.set_text_props(fontsize=10)
table.auto_set_font_size(False)
table.set_fontsize(10)
table.scale(1, 1.2)
plt.show()
他のライブラリの検討(より高度なテーブルが必要な場合)
Matplotlibの table
機能は基本的な表の表示には優れていますが、Excelのような複雑な書式設定、インタラクティブ性、大規模なデータ処理などが必要な場合は、他のライブラリを検討することもできます。
dash_table
(Dash/Plotly):Webアプリケーション内でインタラクティブなテーブルを表示したい場合に非常に強力なツールです。これはMatplotlibとは異なるエコシステムです。plottable
:Matplotlibをベースに構築された、より高度なテーブルのスタイリングと機能を提供するライブラリ。条件付き書式設定、ミニバーの追加などが容易です。mpl_toolkits.mplot3d.Axes3D.text
などで直接テキストを描画:これは非常に低レベルであり、テーブルの構造を自分で計算して描画する必要があるため、ほとんどの場合推奨されません。
table.Cell.draw()
はMatplotlibの内部描画処理を担うため、ユーザーが直接コードでこのメソッドを呼び出すことは基本的にありません。その代替となるプログラミング手法とは、plt.table()
や table.get_celld()
を通じて Cell
オブジェクトの公開されたプロパティ(色、フォント、境界線など)を操作することで、draw()
メソッドが最終的に生成する視覚的な出力をカスタマイズすることです。