CMake入門: target_sources()コマンドでスムーズにビルド

2024-07-31

target_sources()とは?

CMakeのtarget_sources()コマンドは、あるターゲット(実行ファイルやライブラリなど)に属するソースファイルを指定するためのコマンドです。より具体的には、指定したターゲットをビルドする際に、どのソースファイルがコンパイルの対象となるのかをCMakeに伝える役割を果たします。

なぜtarget_sources()が必要なのか?

CMakeは、プロジェクトのビルドシステムを生成するツールです。このビルドシステムが、どのソースファイルをコンパイルし、どのような順序でリンクすれば目的のターゲットが生成されるのかを把握するために、target_sources()によってソースファイルの情報を与える必要があります。

target_sources()の使い方

target_sources(my_executable PRIVATE
  src/main.cpp
  src/utils.cpp
)
  • src/main.cpp、src/utils.cpp
    このターゲットに含まれるソースファイルのパスを指定します。
  • PRIVATE
    他のターゲットからこのターゲットを参照する際のアクセスレベルを指定します。PRIVATEは、このターゲットのみに属するソースファイルであることを意味します。
  • my_executable
    ターゲットの名前です。この例では、my_executableという名前の実行ファイルを作成します。

target_sources()の引数

  • ソースファイル
    1つ以上のソースファイルを指定できます。
  • アクセスレベル
    PRIVATEPUBLICINTERFACEのいずれかを指定します。
  • ターゲット名
    必ず指定する必要があります。

アクセスレベルについて

  • INTERFACE
    このターゲットが依存する他のターゲットに提供するヘッダーファイルなどを指定します。
  • PUBLIC
    このターゲットのソースファイルであり、他のターゲットからも参照できます。
  • PRIVATE
    このターゲットのみに属するソースファイルです。他のターゲットから直接参照することはできません。
# 実行ファイルのターゲットを作成
add_executable(my_executable
  src/main.cpp
  src/utils.cpp
)

# 静的ライブラリのターゲットを作成
add_library(my_library STATIC
  src/lib1.cpp
  src/lib2.cpp
)

# 実行ファイルがライブラリに依存するように設定
target_link_libraries(my_executable PRIVATE my_library)

この例では、my_executableという実行ファイルとmy_libraryという静的ライブラリを作成しています。my_executablemy_libraryに依存しており、target_link_librariesコマンドでその関係を指定しています。

target_sources()コマンドは、CMakeでターゲットを作成する際に、そのターゲットに属するソースファイルを指定するための重要なコマンドです。このコマンドを適切に使うことで、CMakeはプロジェクトのビルドに必要な情報を正確に把握し、効率的なビルドを行えるようになります。

target_sources()以外にも、CMakeにはtarget_include_directoriestarget_link_librariesなど、ターゲットの設定に関する様々なコマンドがあります。これらのコマンドを組み合わせることで、複雑なプロジェクトのビルドシステムを構築することができます。



よくあるエラーと解決策

target_sources()コマンドを使用する際に、以下のようなエラーに遭遇することがあります。

ソースファイルが見つからないエラー

  • 解決策
    • ファイルパスを正しく指定する。
    • set(CMAKE_CURRENT_SOURCE_DIR ${CMAKE_CURRENT_SOURCE_DIR}/src)のように、ソースファイルのあるディレクトリをCMakeの変数に設定し、相対パスで指定する。
    • include_directories()コマンドでソースファイルのあるディレクトリを検索パスに追加する。
  • 原因
    • 指定したファイルパスが間違っている。
    • ソースファイルがCMakeLists.txtファイルのあるディレクトリからの相対パスで指定されていない。
    • CMakeがソースファイルのあるディレクトリを検索パスに追加していない。

ターゲットが見つからないエラー

  • 解決策
    • ターゲット名を正しく指定する。
    • ターゲットを定義するコマンド(add_executableadd_libraryなど)でターゲットを事前に定義する。
  • 原因
    • ターゲット名が間違っている。
    • ターゲットがまだ定義されていない。

アクセスレベルのエラー

  • 解決策
    • アクセスレベルをPUBLICに変更する。
    • 依存関係を正しく設定する。
  • 原因
    • アクセスレベルが適切でない。
    • 他のターゲットから参照できないように設定されている。

重複したソースファイルのエラー

  • 解決策
    • 重複するソースファイルの指定を削除する。
    • ヘッダーファイルのみをINTERFACE属性で指定し、実装部分を別のターゲットで管理する。
  • 原因
    • 同じソースファイルを複数のターゲットで指定している。
  • CMakeのログを確認する
    CMakeのログには、エラーの詳細な情報が記載されていることがあります。ログを確認することで、エラーの原因を特定しやすくなります。
# 正しくない例
target_sources(my_exe PRIVATE
  src/main.cpp  # ファイル名が間違っている
  src/utils.c   # 拡張子が間違っている
)

# 正しい例
target_sources(my_exe PRIVATE
  ${CMAKE_CURRENT_SOURCE_DIR}/src/main.cpp
  ${CMAKE_CURRENT_SOURCE_DIR}/src/utils.cpp
)


基本的な使い方

# 実行ファイルのターゲットを作成
add_executable(my_executable
  src/main.cpp
  src/utils.cpp
)
  • src/main.cpp, src/utils.cpp
    ターゲットに含まれるソースファイル
  • my_executable
    ターゲットの名前
  • add_executable
    実行ファイルのターゲットを作成するコマンド

複数のディレクトリにあるソースファイルを指定

# 複数のディレクトリにあるソースファイルを指定
add_executable(my_executable
  src/main.cpp
  include/header.h
  external/third_party.cpp
)

ライブラリとの連携

# 静的ライブラリのターゲットを作成
add_library(my_library STATIC
  src/lib1.cpp
  src/lib2.cpp
)

# 実行ファイルがライブラリに依存するように設定
target_link_libraries(my_executable PRIVATE my_library)

アクセスレベルの指定

# ヘッダーファイルのみをINTERFACE属性で指定
target_sources(my_library INTERFACE
  include/my_library.h
)

グローバルな変数を利用した指定

# グローバルな変数にソースファイルを格納
set(MY_SOURCES
  src/main.cpp
  src/utils.cpp
)

# 変数を利用してターゲットにソースファイルを指定
add_executable(my_executable ${MY_SOURCES})

条件分岐によるソースファイルの選択

if(BUILD_TESTING)
  target_sources(my_executable PRIVATE
    src/test_main.cpp
  )
else()
  target_sources(my_executable PRIVATE
    src/main.cpp
  )
endif()

より複雑な例:複数のターゲットとサブディレクトリ

# サブディレクトリのソースファイルを指定
add_subdirectory(src)

# 実行ファイルのターゲットを作成
add_executable(my_executable
  src/main.cpp
)

# ライブラリのターゲットを作成
add_library(my_library
  src/lib.cpp
)

# 実行ファイルがライブラリに依存するように設定
target_link_libraries(my_executable PRIVATE my_library)
  • サブディレクトリ
    add_subdirectoryコマンドを利用することで、サブディレクトリにあるCMakeLists.txtファイルを再帰的に処理できます。
  • 条件分岐
    条件分岐を利用することで、ビルド構成によって異なるソースファイルを含めることができます。
  • グローバル変数
    グローバル変数を利用することで、複数の場所で同じソースファイルのリストを再利用できますが、変数のスコープや名前の衝突に注意が必要です。
  • 相対パス
    ソースファイルのパスは、CMakeLists.txtファイルのあるディレクトリからの相対パスで指定するのが一般的です。
  • target_compile_definitions
    コンパイル時の定義を追加します。
  • target_link_libraries
    他のライブラリとのリンクを設定します。
  • target_include_directories
    ヘッダーファイルの検索パスを指定します。

これらのコマンドを組み合わせることで、より複雑なビルドシステムを構築できます。

より詳細な情報は、CMakeの公式ドキュメントをご参照ください。

  • プロジェクトのディレクトリ構造は?
  • CMakeLists.txtの該当部分は?
  • どのようなエラーが発生しているか?


CMakeのtarget_sources()コマンドは、ターゲットに属するソースファイルを直接指定する最も一般的な方法ですが、プロジェクトの構造や要件によっては、他の方法も検討できます。

サブディレクトリへの分割とadd_subdirectory

  • 注意点
    • target_sources()を直接使用しなくても、サブディレクトリ内のCMakeLists.txtでadd_executableadd_libraryを定義することで、自動的にソースファイルが収集される。
  • 方法
    add_subdirectory(src)
    add_executable(my_executable
      src/main.cpp
    )
    
  • メリット
    • プロジェクトをモジュール化し、管理しやすくできる。
    • 各サブディレクトリに個別のCMakeLists.txtを配置することで、柔軟な構成が可能。

グローバル変数による管理

  • 注意点
    • 変数のスコープや名前の衝突に注意が必要。
  • 方法
    set(MY_SOURCES
      src/main.cpp
      src/utils.cpp
    )
    add_executable(my_executable ${MY_SOURCES})
    
  • メリット
    • 複数のターゲットで同じソースファイルリストを共有できる。

生成ファイルによる管理

  • 注意点
    • 生成処理のオーバーヘッドが発生する可能性がある。
  • 方法
    • CMakeのスクリプト内でソースファイルのリストを生成し、ファイルを生成する。
    • 生成されたファイルの内容をtarget_sources()で指定する。
  • メリット
    • 複雑な依存関係や条件分岐を表現できる。

外部ツールを利用した生成

  • 注意点
    • 外部ツールとの連携が必要になる。
  • 方法
    • Pythonスクリプトやシェルスクリプトでソースファイルのリストを生成し、CMakeからそのリストを読み込む。
  • メリット
    • 複雑なロジックを外部のツールに任せることができる。
    • CMake以外のツールでソースファイルのリストを生成する。

生成されたソースファイル

  • 注意点
    • 生成されたコードの品質管理が必要。
  • 方法
    • CMakeでソースコードを生成し、その生成されたソースファイルをターゲットに含める。
  • メリット
    • メタプログラミングやコード生成に利用できる。
  • チームの開発スタイル
    チームで開発する場合は、統一されたスタイルでCMakeLists.txtを作成することが重要。
  • ソースファイルの依存関係
    複雑な依存関係がある場合は、生成ファイルや外部ツールを利用することで、より柔軟な管理が可能。
  • プロジェクトの規模と複雑さ
    小規模なプロジェクトであれば、target_sources()を直接使用するのがシンプルでわかりやすい。大規模なプロジェクトでは、サブディレクトリに分割したり、外部ツールを利用したりする方が管理しやすい。

target_sources()以外にも、様々な方法でターゲットにソースファイルを指定できます。どの方法を選択するかは、プロジェクトの規模、複雑さ、チームの開発スタイルによって異なります。それぞれのメリットとデメリットを比較検討し、最適な方法を選択しましょう。

重要なポイント

  • 再利用性
    CMakeLists.txtのコードを再利用することで、開発効率を向上させることができます。
  • 保守性
    プロジェクトが変更されるたびに、CMakeLists.txtも修正する必要があります。保守性を高めるために、重複するコードを避け、モジュール化を心がけましょう。
  • 可読性
    CMakeLists.txtは、プロジェクトのビルド設定を記述する重要なファイルです。可読性を高めるために、適切なインデントやコメントを使用しましょう。

ご自身のプロジェクトに合った最適な方法を見つけるために、様々な方法を試してみて、比較検討することをおすすめします。

  • どのような問題が発生していますか?
  • CMakeLists.txtはどのような構造になっていますか?
  • どのようなプロジェクトを開発していますか?