テストとカバレッジ分析のベストプラクティス:CMake「ctest_coverage()」コマンドで開発効率を向上
ctest_coverage()
コマンドは、CMakeプロジェクトにおけるコードカバレッジ分析を可能にする強力なツールです。 テスト実行時にコードカバレッジデータを収集し、XML形式で保存します。 このデータは、コードカバレッジレポートの生成や、テスト対象コードの網羅度を評価するために使用できます。
構文
ctest_coverage(
[OPTIONS]
<directory>
[<variable>]
)
引数
<variable>
: オプションで、カバレッジ結果を格納する変数を指定できます。 指定しない場合は、COVERAGE_RESULT
変数が使用されます。<directory>
: カバレッジデータを収集するディレクトリを指定します。 これは、テスト実行時のカレントワーキングディレクトリである場合もあります。
オプション
OPTIONS <options>
: カバレッジ収集ツールに渡されるオプションを指定します。 使用するカバレッジ収集ツールによって、利用可能なオプションが異なります。LABELS <labels>
: カバレッジレポートに含めるソースファイルのラベルを指定します。 複数のラベルをカンマ区切りで指定できます。
使用方法
ctest_coverage()
コマンドをCMakeLists.txtファイルに追加します。ctest
コマンドを使用してテストを実行します。- 生成されたXMLファイルを解析して、コードカバレッジレポートを作成します。
例
ctest_coverage(
LABELS main test
my_build_directory
my_coverage_result
)
ctest()
この例では、my_build_directory
ディレクトリにあるテストに対してカバレッジデータを収集し、結果をmy_coverage_result
変数に格納します。 また、main
とtest
ラベルを持つソースファイルのみをレポートに含めます。
- CMakeには、コードカバレッジレポートを生成するための組み込みツールも用意されています。
- コードカバレッジ収集には、GCCなどのコンパイラに付属するツールや、LLVMなどの代替ツールを使用できます。
ctest_coverage()
コマンドは、CMake 3.0以降で使用できます。
CMakeLists.txt
cmake_minimum_required(VERSION 3.0)
project(myproject)
add_executable(myprogram main.cpp)
# GCCを利用したカバレッジ収集
ctest_coverage(
LABELS main test
my_build_directory
my_coverage_result
OPTIONS
"-fprofile-arcs"
"-ftest-coverage"
)
# LLVMを利用したカバレッジ収集
ctest_coverage(
LABELS llvm
my_build_directory
my_coverage_result_llvm
OPTIONS
"-fprofile-arcs"
"-ftest-coverage"
"-DCMAKE_C_COMPILER=clang"
"-DCMAKE_CXX_COMPILER=clang++"
)
# テストの実行
ctest()
# コードカバレッジレポートの生成
generate_coverage_report(
my_coverage_result
my_coverage_report.xml
)
generate_coverage_report(
my_coverage_result_llvm
my_coverage_report_llvm.xml
)
main.cpp
#include <iostream>
int main() {
std::cout << "Hello, world!" << std::endl;
// テスト対象のコード
int x = 10;
int y = 20;
int z = x + y;
std::cout << "z = " << z << std::endl;
return 0;
}
説明
この例では、以下の操作を行います。
cmake_minimum_required()
コマンドを使用して、必要なCMakeのバージョンを指定します。project()
コマンドを使用して、プロジェクトの名前を指定します。add_executable()
コマンドを使用して、実行ファイルを作成します。ctest_coverage()
コマンドを2回使用して、GCCとLLVMを使用してカバレッジデータを収集します。ctest()
コマンドを使用して、テストを実行します。generate_coverage_report()
コマンドを使用して、コードカバレッジレポートを生成します。
この例は、基本的な使用方法を示すものです。 実際のプロジェクトでは、ニーズに合わせてオプションや引数を調整する必要があります。
- 詳細については、CMakeドキュメントおよびコードカバレッジツールのドキュメントを参照してください。
- コードカバレッジレポートを生成するには、
lcov
などのツールが必要です。 - この例では、テストケースは含まれていません。 テストケースを作成するには、
add_test()
コマンドを使用します。
手動でカバレッジツールを実行する
- 欠点:
- 複雑: CMakeLists.txtファイルに手動でコマンドを追加する必要があります。
- 煩雑: 複数のテストケースがある場合は、多くのコマンドを実行する必要が生じます。
- 利点:
- 柔軟性が高い: 任意のカバレッジツールを使用できます。
- 詳細な制御が可能: ツールのオプションを細かく設定できます。
CTestフレームワーク以外のテストフレームワークを使用する
- 欠点:
- CMakeとの互換性が低い場合がある: CTestフレームワーク固有の機能を利用できなくなる場合があります。
- 学習コストがかかる: 新しいテストフレームワークを習得する必要があります。
- 利点:
- 特定のニーズに合わせた機能を提供するテストフレームワークが存在する場合があります。
- カバレッジ分析以外にも、テスト管理やレポート機能などの機能を提供するものもあります。
サードパーティのツールを使用する
- 欠点:
- 無料ではないものが多い: ライセンスの購入が必要になる場合があります。
- すべての機能が利用できない場合がある: 無料版では機能が制限されている場合があります。
- 利点:
- 統合開発環境 (IDE) など、他のツールと連携できるものがあります。
- 使いやすいグラフィカルユーザインタフェースを提供するものがあります。
代替手段を選択する際の考慮事項
- スキル: 新しいツールを習得する時間とリソースはありますか?
- 予算: ツールのライセンス費用は支払えますか?
- 使用しているツール: 既にどのようなツールを使用していますか?
- プロジェクトのニーズ: どのようなカバレッジ分析が必要ですか?
最適な代替手段
上記の点を考慮すると、最適な代替手段はプロジェクトによって異なります。
- 使いやすいツールが必要な場合は、サードパーティのツールを検討するのも良いでしょう。
- より複雑な分析が必要な場合は、手動でカバレッジツールを実行するか、CTestフレームワーク以外のテストフレームワークを使用する方が良いでしょう。
- シンプルなプロジェクトで基本的なカバレッジ分析のみが必要な場合は、
ctest_coverage()
コマンドで十分かもしれません。