初心者でも安心!CMakeのfind_path()で迷子にならないためのヒント
find_path() コマンドとは?
CMake の find_path()
コマンドは、指定したファイルやディレクトリまでのパスを検索する際に用いられるコマンドです。CMakeLists.txt ファイル内で、外部ライブラリやヘッダーファイルなどの位置を特定するために頻繁に利用されます。
find_path() の基本的な使い方
find_path(VAR <path-suffix>
NAMES <names>
PATHS <paths>
NO_DEFAULT_PATH)
- NO_DEFAULT_PATH
CMake のデフォルトの検索パスを使用しない場合に指定 - PATHS
検索を開始するディレクトリのリスト (複数指定可) - NAMES
検索対象ファイルの名前 (複数指定可) - <path-suffix>
検索対象ファイルのパス末尾 - VAR
検索結果を格納する変数名
各引数の意味
- NO_DEFAULT_PATH
CMake のデフォルトの検索パスを使用せずに、指定したPATHS
のディレクトリのみを検索する場合に指定します。 - PATHS
検索を開始するディレクトリのリストを指定します。複数のディレクトリを指定する場合は、セミコロンで区切ります。この引数を省略した場合、CMake のデフォルトの検索パスが使用されます。 - NAMES
検索対象となるファイルの名前を複数指定できます。カンマで区切って複数の名前を指定することも可能です。 - <path-suffix>
検索対象ファイルのパス末尾の部分を指定します。例えば、include/my_header.h
というファイルを検索する場合、<path-suffix>
にはinclude/my_header.h
を指定します。 - VAR
検索結果であるパスが格納される変数の名前を指定します。この変数は、後の CMakeLists.txt 内で、例えばインクルードディレクトリの指定などに使用されます。
# MyLibrary というライブラリのヘッダーファイルのパスを検索
find_path(MY_LIBRARY_INCLUDE_DIR
NAMES MyLibrary/include/my_header.h
PATHS /usr/local/include
/opt/local/include)
# 検索結果を利用してインクルードディレクトリを設定
include_directories(${MY_LIBRARY_INCLUDE_DIR})
上記の例では、MyLibrary
というライブラリのヘッダーファイル my_header.h
を /usr/local/include
ディレクトリと /opt/local/include
ディレクトリから検索し、そのパスを MY_LIBRARY_INCLUDE_DIR
変数に格納しています。その後、include_directories()
コマンドを使って、この変数をインクルードディレクトリとして設定しています。
find_path()
コマンドは、CMake で外部ライブラリやヘッダーファイルなどの位置を自動的に検出するために非常に便利なコマンドです。このコマンドを使うことで、プロジェクトの可搬性を高め、ビルドシステムの複雑さを軽減することができます。
- CMake の公式ドキュメントには、
find_path()
コマンドに関するより詳細な情報が記載されています。 find_path()
コマンドは、find_library()
コマンドと組み合わせて使用することで、ライブラリのパスとリンクフラグを同時に取得することができます。
NO_DEFAULT_PATH
オプションの具体的な使用例find_path()
とfind_library()
の違い- 特定のライブラリを検索する場合の
find_path()
の使い方
CMake の find_path()
コマンドは非常に便利ですが、時にはエラーが発生したり、意図した結果が得られないことがあります。ここでは、よく見かけるエラーとその解決方法について解説します。
よくあるエラーとその原因
CMake のバグ
- 原因
- CMake 自体のバグが原因で、意図した動作をしない場合がある。
- 解決策
- CMake のバージョンを最新にアップデートする。
- CMake のコミュニティフォーラムなどで、同様のエラーが発生しているか確認する。
- CMake のソースコードを直接修正する(上級者向け)。
- 原因
複数のファイルが見つかるエラー
- 原因
- 指定した名前のファイルが複数存在する。
- 解決策
NAMES
オプションでより具体的なファイル名を指定する。PATHS
オプションで検索範囲を絞り込む。
- 原因
- 原因
- 指定したパスにファイルが存在しない。
- ファイル名が間違っている。
- 検索パスが間違っている。
- CMake の環境変数が正しく設定されていない。
- 解決策
- ファイルのパスや名前を再度確認する。
- 検索パスに誤りがないか確認する。
- CMake の環境変数を正しく設定する。
message()
コマンドを使って、検索パスやファイル名をコンソールに出力し、確認する。
- 原因
トラブルシューティングのヒント
- CMake のドキュメントを参照する
find_path()
コマンドのドキュメントを詳細に読み、正しい使い方を確認する。
- シンプルな例で試す
- 複雑な CMakeLists.txt をシンプルな例に分割して、問題の原因を特定する。
- 詳細なメッセージを見る
- CMake の出力ログを詳細に確認することで、エラーの原因を特定できることがあります。
-DCMAKE_VERBOSE=1
オプションを付けて CMake を実行すると、より詳細なログが出力されます。
find_path(MY_LIBRARY_INCLUDE_DIR
NAMES MyLibrary/include/my_header.h
PATHS /usr/local/include
/opt/local/include)
# エラーが発生した場合の処理
if(NOT MY_LIBRARY_INCLUDE_DIR)
message(FATAL_ERROR "Could not find MyLibrary headers")
endif()
上記の例では、find_path()
でファイルが見つからなかった場合に、message(FATAL_ERROR)
コマンドを使ってエラーメッセージを出力し、CMake の実行を中止しています。
find_path()
コマンドのエラーは、多くの場合、ファイルのパスや名前、検索パスなどに誤りがあることが原因です。詳細なログを確認し、シンプルな例で試すなど、段階的に問題の原因を特定していくことが重要です。
find_package()
とfind_path()
の違いは何ですか?- 特定のライブラリが見つからない場合、どうすればよいですか?
シンプルな例:ヘッダーファイルの検索
find_path(MY_HEADER_DIR
NAMES my_header.h
PATHS /usr/local/include
/opt/local/include)
include_directories(${MY_HEADER_DIR})
- 解説
my_header.h
というヘッダーファイルを/usr/local/include
と/opt/local/include
ディレクトリから検索します。- 見つかったディレクトリのパスを
MY_HEADER_DIR
変数に格納します。 include_directories()
で、この変数をインクルードディレクトリとして指定します。
ライブラリのインクルードディレクトリの検索
find_path(Boost_INCLUDE_DIR
NAMES boost/algorithm/string.hpp
HINTS ${Boost_ROOT})
include_directories(${Boost_INCLUDE_DIR})
- 解説
- Boost ライブラリの
boost/algorithm/string.hpp
ヘッダーファイルを検索します。 HINTS
オプションで、Boost ライブラリのルートディレクトリを指定することで、検索範囲を絞り込みます。- 一般的に、Boost ライブラリは
find_package(Boost)
を使用して検索しますが、この例ではfind_path()
を使用する方法を示しています。
- Boost ライブラリの
複数のファイルの検索
find_path(MY_PROJECT_SRC
NAMES src/main.cpp
src/utils.cpp
PATHS .
src)
- 解説
src/main.cpp
とsrc/utils.cpp
という複数のファイルを、カレントディレクトリとsrc
ディレクトリから検索します。- 見つかったディレクトリのパスを
MY_PROJECT_SRC
変数に格納します。
カスタム検索モジュールの利用
find_package(MyCustomLib REQUIRED)
include_directories(${MyCustomLib_INCLUDE_DIRS})
- 解説
MyCustomLib
というカスタム検索モジュールを利用して、ライブラリのインクルードディレクトリを検索します。- カスタム検索モジュールは、
FindMyCustomLib.cmake
などの名前で作成し、CMAKE_MODULE_PATH
に設定する必要があります。
find_path(MY_HEADER_DIR
NAMES my_header.h
PATHS /usr/local/include
/opt/local/include)
if(NOT MY_HEADER_DIR)
message(FATAL_ERROR "Could not find MyLibrary headers")
endif()
- 解説
find_path()
でファイルが見つからなかった場合に、message(FATAL_ERROR)
でエラーメッセージを出力し、CMake の実行を中止します。
- カスタム検索モジュール
- 複雑な検索ロジックが必要な場合は、カスタム検索モジュールを作成することができます。
- キャッシュ
find_path()
の結果は、CMake キャッシュに保存されます。そのため、一度検索が成功すると、次回からはキャッシュから結果が取得されます。
- 環境変数
ENV
オプションを使用して、環境変数を検索パスに含めることができます。
- 相対パスと絶対パス
PATHS
オプションで指定するパスは、相対パスでも絶対パスでも可能です。
- カスタム検索モジュールの作成方法
find_path()
とfind_library()
の違い- 特定のライブラリを検索したいが、どうすれば良いか
手動でパスを指定する
- 例
- デメリット
- パスが変更になった場合、CMakeLists.txt を修正する必要があります。
- 可搬性が低い場合があります。
- メリット
- パスが常に固定されている場合に有効です。
- CMake の実行時間が短縮される可能性があります。
include_directories(/usr/local/include/my_library)
環境変数を利用する
- 例
- デメリット
- 環境変数が正しく設定されていないと、エラーが発生します。
- メリット
- ビルド環境によってパスが異なる場合に有効です。
- シェルスクリプトなどで環境変数を設定することで、柔軟な対応ができます。
include_directories($ENV{MY_LIBRARY_INCLUDE_DIR})
外部ツールを利用する
- 例
find
コマンドやgrep
コマンドを呼び出して、ファイルのパスを検索する。- Python スクリプトを作成して、より高度な検索を行う。
- デメリット
- 外部ツールとの連携が必要となり、設定が複雑になる場合があります。
- メリット
- 複雑な検索ロジックが必要な場合に有効です。
- CMake の機能だけでは実現できないような検索を行うことができます。
カスタム検索モジュールを作成する
- 例
FindMyCustomLib.cmake
などの名前で、カスタム検索モジュールを作成します。
- デメリット
- カスタムモジュールの作成には、CMake の知識が必要です。
- メリット
- プロジェクトに特化した検索ロジックを実装できます。
- 再利用性が高く、複数のプロジェクトで利用できます。
外部ビルドシステムを利用する
- デメリット
- 新しいビルドシステムの学習コストがかかります。
- 既存の CMakeLists.txt を書き換える必要があります。
- メリット
- CMake 以外のビルドシステム (e.g., Meson, SCons) に切り替えることで、より柔軟なビルド環境を実現できます。
- CMake 以外の機能を利用したい場合
外部ビルドシステム - 複雑な検索ロジックが必要な場合
外部ツールまたはカスタム検索モジュール - ビルド環境によってパスが異なる場合
環境変数を利用 - パスが固定されている場合
手動でパスを指定
選ぶ際のポイント
- メンテナンス性
将来的に修正しやすいように、メンテナンス性を考慮する - 可搬性
異なる環境でも動作するように、可搬性を考慮する - シンプルさ
できるだけシンプルな方法を選ぶ
find_path()
は便利なコマンドですが、状況によっては他の方法も検討する価値があります。各方法の長所と短所を理解し、プロジェクトの要件に合わせて最適な方法を選択してください。
find_package()
とfind_path()
の使い分け- カスタム検索モジュールの作成方法の具体例
- プロジェクトの規模や複雑さによって、どの方法が適しているか