CMake入門:add_compile_options()の使い方と注意点
add_compile_options()とは?
CMakeにおけるadd_compile_options()
コマンドは、コンパイル時のオプションを指定するためのものです。このコマンドによって、ソースコードのコンパイル時に渡される引数を柔軟に制御することができます。
具体的にどのようなことができるのか?
- 特定の言語への限定
- C言語、C++言語など、特定の言語に対してのみオプションを指定することも可能です。
- プリプロセッサ定義の追加
- マクロ定義など、プリプロセッサに渡す情報を追加できます。
- コンパイラフラグの追加
- 警告レベルの変更、最適化レベルの指定、デバッグ情報の生成など、コンパイルの挙動を細かく調整できます。
なぜadd_compile_options()を使うのか?
- クロスプラットフォーム開発
- プラットフォームごとに異なるコンパイラやオプションに対応できます。
- ビルド構成に応じた柔軟な設定
- デバッグビルド、リリースビルドなど、ビルド構成に応じて異なるオプションを指定できます。
- プロジェクト全体での統一的な設定
- プロジェクト内の複数のターゲットに対して、共通のコンパイルオプションを簡単に設定できます。
add_compile_options()の使い方
add_compile_options(-Wall -Wextra -g)
上記の例では、全てのソースファイルに対して、以下のオプションが追加されます。
-g
: デバッグ情報を生成-Wextra
: 追加の警告を表示-Wall
: すべての警告を表示
- CMAKE_CXX_FLAGSなど
CMAKE_CXX_FLAGS
などの変数もコンパイルオプションを設定できますが、add_compile_options()
はより柔軟な設定が可能です。add_compile_options()
は、CMAKE_CXX_FLAGS
などの変数を上書きするのではなく、追加でオプションを指定します。
# デバッグビルドの設定
if(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "Debug")
add_compile_options(-g -O0)
else()
add_compile_options(-O3)
endif()
# C++17の利用
add_compile_options(-std=c++17)
add_compile_options()
は、CMakeでプロジェクトを管理する上で非常に便利なコマンドです。このコマンドを効果的に活用することで、コンパイルプロセスを細かく制御し、高品質なソフトウェアを開発することができます。
より詳細な情報については、CMakeの公式ドキュメントをご参照ください。
- コンパイラ固有のオプション
コンパイラによってサポートされるオプションは異なります。使用するコンパイラのマニュアルを参照してください。 - ターゲットごとの設定
target_compile_options()
コマンドを使うと、特定のターゲットに対してのみコンパイルオプションを指定できます。
キーワード
CMake, add_compile_options, コンパイルオプション, CMakeコマンド, C++, C, ビルド設定
CMakeのadd_compile_options()
コマンドを使用する際に、様々なエラーやトラブルに遭遇することがあります。ここでは、よくある問題とその解決策について詳しく解説していきます。
コンパイルオプションが反映されない
- 解決策
add_compile_options()
コマンドは、ターゲットを定義するadd_executable()
やadd_library()
などのコマンドよりも前に配置する。- ターゲット固有のオプションが必要な場合は、
target_compile_options()
コマンドを使用する。 - CMakeのビルドディレクトリを削除し、再度ビルドする。
- 原因
add_compile_options()
コマンドが、ターゲットの定義よりも前に配置されていない。- ターゲット固有のオプションが、グローバルなオプションを上書きしている。
- CMakeのキャッシュが古い。
予期せぬエラーが発生する
- 解決策
- コンパイルオプションのスペルミスや構文エラーがないか確認する。
- 使用しているコンパイラのドキュメントを参照し、サポートされているオプションを確認する。
- 環境変数
CXXFLAGS
やCFLAGS
が意図しない値に設定されていないか確認する。
- 原因
- コンパイルオプションの記述ミス
- コンパイラとの非互換性
- 環境変数の設定ミス
特定のプラットフォームでコンパイルエラーが発生する
- 解決策
- プラットフォームごとに異なるコンパイルオプションを指定する。
find_package()
コマンドを使用して、必要なライブラリやヘッダーファイルを探し、そのパスをコンパイルオプションに渡す。
- 原因
- プラットフォーム固有のコンパイラフラグが必要
- ライブラリやヘッダーファイルのパスが正しくない
CMakeのキャッシュに古い情報が残っている
- 解決策
- ビルドディレクトリを削除し、再度ビルドする。
cmake --build . --clean
コマンドを実行して、ビルドキャッシュをクリアする。
- 原因
- CMakeのキャッシュが、変更された設定を反映していない。
- CMakeのドキュメントを参照する
add_compile_options()
コマンドに関する詳細な説明や例が記載されています。 - エラーメッセージをよく読む
エラーメッセージには、問題の原因に関する情報が詳細に記載されていることが多いです。
# デバッグビルドの設定
if(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "Debug")
add_compile_options(-g -O0)
else()
add_compile_options(-O3)
endif()
# C++17の利用 (ターゲット固有)
target_compile_options(my_target PRIVATE -std=c++17)
- ログを確認する
CMakeの出力ログには、詳細な情報が記録されているため、問題の原因を特定する手がかりとなる。 - 一つずつ確認する
問題が発生した場合は、一つのオプションずつコメントアウトして、問題の原因を特定する。 - シンプルに始める
最初は、基本的なコンパイルオプションから始め、徐々に複雑な設定にしていく。
CMAKE_CXX_FLAGS
との違いは何ですか?CMAKE_CXX_FLAGS
は、CMakeの変数であり、add_compile_options()
はコマンドです。add_compile_options()
は、CMAKE_CXX_FLAGS
に追加でオプションを指定できます。
add_compile_options()
とtarget_compile_options()
の違いは何ですか?add_compile_options()
は、現在のディレクトリ以降のすべてのターゲットに適用されます。target_compile_options()
は、特定のターゲットにのみ適用されます。
基本的な使い方
# 全てのソースファイルに-Wallと-Wextraオプションを追加
add_compile_options(-Wall -Wextra)
# デバッグビルドでは-gオプションを追加
if(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "Debug")
add_compile_options(-g)
endif()
# C++17の利用
add_compile_options(-std=c++17)
ターゲットごとの設定
# my_targetというターゲットにのみ-O3オプションを追加
target_compile_options(my_target PRIVATE -O3)
プラットフォームごとの設定
if(APPLE)
add_compile_options(-stdlib=libc++)
elseif(UNIX)
add_compile_options(-fPIC)
endif()
ライブラリディレクトリの追加
find_package(Boost REQUIRED COMPONENTS system)
include_directories(${Boost_INCLUDE_DIRS})
target_link_libraries(my_target ${Boost_LIBRARIES})
プリプロセッサ定義の追加
add_compile_options(-DDEBUG)
C++11以降の機能を利用する場合
# C++11以降の機能を利用する場合
set(CMAKE_CXX_STANDARD 11)
コンパイルフラグを環境変数から取得
# 環境変数CXXFLAGSからフラグを取得
if(DEFINED ENV{CXXFLAGS})
add_compile_options($ENV{CXXFLAGS})
endif()
カスタムコマンドでコンパイルオプションを設定
add_custom_command(
OUTPUT ${CMAKE_CURRENT_BINARY_DIR}/my_executable
COMMAND ${CMAKE_CXX_COMPILER}
${CMAKE_CXX_FLAGS}
-o ${CMAKE_CURRENT_BINARY_DIR}/my_executable
${CMAKE_CURRENT_SOURCE_DIR}/main.cpp
)
- プラットフォーム依存
プラットフォームによって有効なオプションが異なるため、注意が必要です。 - CMAKE_CXX_FLAGSとの関係
CMAKE_CXX_FLAGS
変数に設定された値もコンパイルオプションとして扱われます。 - target_compile_options()はターゲット固有の設定
特定のターゲットに対してのみ設定したい場合に利用します。 - add_compile_options()はグローバルな設定
一度設定すると、以降のすべてのターゲットに影響します。
# C++17を利用し、デバッグビルドで特定のライブラリをリンクする
cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(my_project)
set(CMAKE_CXX_STANDARD 17)
if(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "Debug")
add_compile_options(-g -O0)
else()
add_compile_options(-O3)
endif()
find_package(OpenCV REQUIRED)
include_directories(${OpenCV_INCLUDE_DIRS})
add_executable(my_executable main.cpp)
target_link_libraries(my_executable ${OpenCV_LIBS})
- CMakeのドキュメント
詳細な情報は、CMakeの公式ドキュメントを参照してください。 - CMakeのバージョン
CMakeのバージョンによっては、サポートされるオプションが異なる場合があります。 - コンパイラ固有のオプション
各コンパイラには独自のオプションがあります。
add_compile_options()
は、CMakeでコンパイルオプションを設定する一般的な方法ですが、状況によってはより適切な代替方法が存在します。
target_compile_options()
- 例
target_compile_options(my_target PRIVATE -Wall -Wextra)
- メリット
より細粒な制御が可能、グローバルな設定との衝突を防ぐ - 目的
特定のターゲットにのみコンパイルオプションを指定したい場合
set_target_properties()
- 例
set_target_properties(my_target PROPERTIES COMPILE_FLAGS "-Wall -Wextra" OUTPUT_NAME "my_app" )
- メリット
コンパイルオプション以外にも、リンクオプション、出力ディレクトリなど、様々なプロパティを設定できる - 目的
ターゲットのプロパティを幅広く設定したい場合
CMAKE_CXX_FLAGSなどの変数
- 例
set(CMAKE_CXX_FLAGS "${CMAKE_CXX_FLAGS} -Wall -Wextra")
- メリット
CMakeLists.txtの他の部分で再利用しやすい - 目的
グローバルなコンパイルオプションを設定したい場合
カスタムコマンド
- 例
add_custom_command( OUTPUT ${CMAKE_CURRENT_BINARY_DIR}/my_executable COMMAND ${CMAKE_CXX_COMPILER} -Wall -Wextra -o ${CMAKE_CURRENT_BINARY_DIR}/my_executable ${CMAKE_CURRENT_SOURCE_DIR}/main.cpp )
- メリット
柔軟なビルドプロセスを構築できる - 目的
より複雑なコンパイル処理を行いたい場合
Toolchainファイル
- 例
# Toolchainファイルの内容 set(CMAKE_C_COMPILER arm-linux-gnueabihf-gcc) set(CMAKE_CXX_COMPILER arm-linux-gnueabihf-g++) # ...
- メリット
プラットフォームごとの設定をモジュール化できる - 目的
クロスコンパイルやプラットフォーム固有の設定を行いたい場合
- 再利用性
グローバルな設定をしたい場合は、変数やToolchainファイルが適している。 - 柔軟性
より柔軟な設定が必要な場合は、カスタムコマンドが適している。 - ターゲットの粒度
特定のターゲットにのみ適用したい場合はtarget_compile_options()
やset_target_properties()
が適している。
選択のポイント
- プロジェクトの規模
小規模なプロジェクトではシンプルな方法で十分だが、大規模なプロジェクトではより複雑な設定が必要になる場合がある。 - 保守性
将来的に設定を変更する際に、変更箇所を最小限に抑えられるようにする。 - 可読性
CMakeLists.txtの可読性を高めるために、適切な方法を選ぶ。
add_compile_options()
は便利なコマンドですが、状況に応じて適切な代替方法を選択することで、より柔軟で保守性の高いCMakeLists.txtを作成することができます。
- チームの慣習
チーム内で共通のコーディング規約や設定方法がある場合は、それに従うことが重要です。 - プロジェクトの構造
プロジェクトの構造によって、最適な設定方法が異なります。 - CMakeのバージョン
CMakeのバージョンによって、利用可能なコマンドや機能が異なる場合があります。
具体的な状況に合わせて、最適な方法を選択してください。
キーワード
CMake, add_compile_options, 代替方法, target_compile_options, set_target_properties, カスタムコマンド, Toolchainファイル, コンパイルオプション
- 上記の例は、一般的な使い方を示したものです。実際のプロジェクトでは、より複雑な設定が必要になる場合があります。