scikit-learn SGDClassifier set_params() の使い方とプログラミング例

2025-05-27

SGDClassifier クラスの set_params() メソッドは、その名の通り、インスタンスのパラメータを設定または変更するために使われます。これは、SGDClassifier オブジェクトを作成した後や、ハイパーパラメータチューニングの過程で、学習アルゴリズムの動作を制御するさまざまな設定値を調整したい場合に非常に便利です。

具体的には、set_params() メソッドはキーワード引数を受け取ります。これらのキーワードは、SGDClassifier クラスのコンストラクタで指定できるパラメータの名前と対応しています。値を指定することで、対応するパラメータが新しい値に更新されます。

例えば、学習率 (alpha) や正則化の種類 (penalty) など、SGDClassifier の動作に影響を与えるパラメータを後から変更できます。

基本的な使い方

from sklearn.linear_model import SGDClassifier

# SGDClassifier のインスタンスを作成
sgd_clf = SGDClassifier(random_state=42)

# 初期パラメータの確認(例)
print(sgd_clf.get_params())

# set_params() を使ってパラメータを変更
sgd_clf.set_params(alpha=0.001, penalty='l1')

# 変更後のパラメータの確認
print(sgd_clf.get_params())

この例では、最初に SGDClassifier のインスタンスを作成し、初期パラメータを表示しています。その後、set_params() メソッドを使って学習率 (alpha) を 0.001 に、正則化の種類 (penalty) を 'l1' に変更しています。最後に、変更後のパラメータを表示することで、設定が反映されていることを確認できます。

set_params() の主な利点

  • コードの可読性
    複数のパラメータを一度に変更できるため、コードが簡潔になります。
  • ハイパーパラメータチューニングとの連携
    グリッドサーチ (GridSearchCV) やランダムサーチ (RandomizedSearchCV) などのハイパーパラメータ探索ツールと組み合わせて使用することで、効率的に最適なパラメータを見つけることができます。これらのツールは、試行するパラメータの組み合わせを set_params() を使ってモデルに設定し、評価を行います。
  • 柔軟性
    オブジェクト作成後にパラメータを動的に変更できるため、実験や調整が容易になります。
  • パラメータの値を変更しても、すでに学習済みのモデルには影響しません。変更後に再度 fit() メソッドを呼び出して学習を行う必要があります。
  • set_params() に存在しないパラメータ名を指定すると、エラーが発生します。


存在しないパラメータ名の指定 (ValueError)

  • トラブルシューティング
    • scikit-learn の公式ドキュメントで、SGDClassifier のコンストラクタが受け付けるパラメータ名を再確認してください。
    • パラメータ名のスペルが正しいか注意深く確認してください。
    • 使用している scikit-learn のバージョンを確認し、必要であればアップデートしてください。
    • IDE の補完機能などを活用して、正しいパラメータ名を入力するように心がけてください。
  • 原因
    • パラメータ名のスペルミス。
    • 古いバージョンの scikit-learn を使用しており、指定したパラメータ名が存在しない。
    • 誤ったクラスのドキュメントを参照している。
  • エラー内容
    set_params() に、SGDClassifier クラスに存在しないパラメータ名をキーワード引数として渡すと、ValueError が発生します。エラーメッセージは、無効なパラメータ名が指定されたことを示します。


from sklearn.linear_model import SGDClassifier

sgd_clf = SGDClassifier(random_state=42)

try:
    sgd_clf.set_params(learning_rate='constant', eta0=0.1, max_iteration=1000) # 'max_iteration' は存在しない (正しくは 'max_iter')
except ValueError as e:
    print(f"エラーが発生しました: {e}")

try:
    sgd_clf.set_params(alfa=0.0001) # スペルミス (正しくは 'alpha')
except ValueError as e:
    print(f"エラーが発生しました: {e}")

無効なパラメータ値の指定 (ValueError)

  • トラブルシューティング
    • scikit-learn の公式ドキュメントで、各パラメータの型、許容される値の範囲、デフォルト値などを確認してください。
    • 指定しようとしている値が、そのパラメータの要件を満たしているか確認してください。
    • 型変換が必要な場合は、明示的に型を変換してから set_params() に渡してください。
  • 原因
    • パラメータのドキュメントをよく読まずに、不適切な型の値を指定した。
    • パラメータが取りうる値の範囲を理解していない。
  • エラー内容
    set_params() に、パラメータが許容しない型の値や範囲外の値を渡すと、ValueError が発生します。エラーメッセージは、どのパラメータにどのような問題があるかを示唆します。


from sklearn.linear_model import SGDClassifier

sgd_clf = SGDClassifier(random_state=42)

try:
    sgd_clf.set_params(alpha='very_small') # 数値であるべき
except ValueError as e:
    print(f"エラーが発生しました: {e}")

try:
    sgd_clf.set_params(l1_ratio=-0.5) # [0, 1] の範囲であるべき
except ValueError as e:
    print(f"エラーが発生しました: {e}")

パラメータ間の依存関係によるエラー (稀)

  • トラブルシューティング
    • エラーメッセージを注意深く読み、どのパラメータ間に矛盾が生じているか特定してください。
    • 関連するパラメータのドキュメントを調べ、パラメータ間の依存関係や制約について理解してください。
    • 矛盾しないパラメータの組み合わせになるように値を設定してください。
  • 原因
    一部のパラメータは互いに依存しており、特定の組み合わせでのみ有効です。
  • エラー内容
    まれに、あるパラメータの値を変更すると、別のパラメータとの組み合わせで矛盾が生じ、エラーが発生することがあります。

set_params() 呼び出しのタイミングの問題

  • トラブルシューティング
    • パラメータを変更したい場合は、必ず fit() メソッドを呼び出す前に set_params() を実行してください。
    • ハイパーパラメータチューニングのループ内などで set_params() を使用する場合は、各試行の前に正しくパラメータが設定されているか確認してください。
  • 問題点
    set_params() は、fit() メソッドを呼び出す前に実行する必要があります。fit() メソッドを呼び出してモデルを学習させた後に set_params() を呼び出しても、学習済みのモデルのパラメータは変更されません。変更を反映させるためには、再度 fit() メソッドを呼び出す必要があります。
  • トラブルシューティング
    • 各パラメータがモデルの学習にどのような影響を与えるかを理解するために、scikit-learn のドキュメントや関連する機械学習の知識を学習してください。
    • ハイパーパラメータチューニングの手法(グリッドサーチ、ランダムサーチなど)を用いて、最適なパラメータの組み合わせを探してください。
    • 個々のパラメータの影響を評価するために、一つずつパラメータを変更して実験してみてください。
  • 原因
    • 設定したパラメータの値が、データセットやタスクに対して最適ではない。
    • 複数のパラメータを同時に変更した場合、それぞれの影響を正しく理解できていない。
  • 問題点
    エラーは発生しないものの、set_params() を呼び出した後にモデルの性能が期待通りにならない場合があります。


例1: 基本的なパラメータ設定

この例では、SGDClassifier のインスタンスを作成した後、set_params() を使っていくつかのパラメータの値を変更します。

from sklearn.linear_model import SGDClassifier
from sklearn.datasets import make_classification
from sklearn.model_selection import train_test_split
from sklearn.metrics import accuracy_score

# データの生成
X, y = make_classification(n_samples=1000, n_features=20, random_state=42)
X_train, X_test, y_train, y_test = train_test_split(X, y, test_size=0.2, random_state=42)

# SGDClassifier のインスタンスを作成 (初期パラメータで)
sgd_clf = SGDClassifier(random_state=42)

# 初期パラメータで学習と評価
sgd_clf.fit(X_train, y_train)
y_pred_initial = sgd_clf.predict(X_test)
accuracy_initial = accuracy_score(y_test, y_pred_initial)
print(f"初期パラメータでの精度: {accuracy_initial:.4f}")

# set_params() を使ってパラメータを変更
sgd_clf.set_params(loss='log_loss', penalty='l1', alpha=0.001, max_iter=1000)

# 変更後のパラメータで再度学習と評価
sgd_clf.fit(X_train, y_train)
y_pred_tuned = sgd_clf.predict(X_test)
accuracy_tuned = accuracy_score(y_test, y_pred_tuned)
print(f"調整後のパラメータでの精度: {accuracy_tuned:.4f}")

# 変更されたパラメータの確認
print(f"現在のパラメータ: {sgd_clf.get_params()}")

このコードでは、まず初期設定で SGDClassifier を学習させ、精度を評価しています。その後、set_params() を使って損失関数 (loss)、正則化の種類 (penalty)、学習率のスケール (alpha)、最大イテレーション数 (max_iter) を変更し、再度学習と評価を行っています。最後に、get_params() を使って現在のパラメータを確認しています。

例2: ハイパーパラメータチューニングでの利用 (GridSearchCV)

set_params() は、ハイパーパラメータチューニングの際に非常に役立ちます。以下の例では、GridSearchCV と組み合わせて、最適なパラメータの組み合わせを見つける方法を示します。

from sklearn.linear_model import SGDClassifier
from sklearn.model_selection import GridSearchCV
from sklearn.datasets import make_classification
from sklearn.model_selection import train_test_split
from sklearn.metrics import accuracy_score

# データの生成
X, y = make_classification(n_samples=1000, n_features=20, random_state=42)
X_train, X_test, y_train, y_test = train_test_split(X, y, test_size=0.2, random_state=42)

# SGDClassifier のインスタンスを作成
sgd_clf = SGDClassifier(random_state=42)

# 探索するパラメータの範囲を定義
param_grid = {
    'loss': ['hinge', 'log_loss', 'modified_huber'],
    'penalty': ['l1', 'l2', 'elasticnet'],
    'alpha': [0.0001, 0.001, 0.01],
    'max_iter': [500, 1000, 1500]
}

# GridSearchCV の設定
grid_search = GridSearchCV(sgd_clf, param_grid, cv=3, scoring='accuracy', n_jobs=-1)

# グリッドサーチを実行
grid_search.fit(X_train, y_train)

# 最適なパラメータと精度を表示
print(f"最適なパラメータ: {grid_search.best_params_}")
print(f"最高の精度: {grid_search.best_score_:.4f}")

# 最適なモデルを取得し、テストデータで評価
best_sgd_clf = grid_search.best_estimator_
y_pred_best = best_sgd_clf.predict(X_test)
accuracy_best = accuracy_score(y_test, y_pred_best)
print(f"テストデータでの最高の精度: {accuracy_best:.4f}")

この例では、GridSearchCVSGDClassifier のインスタンスと、探索したいパラメータの範囲 (param_grid) を渡しています。GridSearchCV は、param_grid に定義されたすべてのパラメータの組み合わせに対してモデルを学習・評価し、最適なパラメータを見つけます。内部的には、各パラメータの組み合わせに対して set_params() が呼び出され、モデルのパラメータが設定されます。

例3: パイプライン内での利用

set_params() は、scikit-learn のパイプライン (Pipeline) の中で、個々のステップのパラメータを調整する際にも使用できます。

from sklearn.linear_model import SGDClassifier
from sklearn.preprocessing import StandardScaler
from sklearn.pipeline import Pipeline
from sklearn.datasets import make_classification
from sklearn.model_selection import train_test_split
from sklearn.metrics import accuracy_score

# データの生成
X, y = make_classification(n_samples=1000, n_features=20, random_state=42)
X_train, X_test, y_train, y_test = train_test_split(X, y, test_size=0.2, random_state=42)

# パイプラインの構築
pipeline = Pipeline([
    ('scaler', StandardScaler()),
    ('sgd', SGDClassifier(random_state=42))
])

# 初期パラメータで学習と評価
pipeline.fit(X_train, y_train)
y_pred_initial = pipeline.predict(X_test)
accuracy_initial = accuracy_score(y_test, y_pred_initial)
print(f"初期パラメータでのパイプラインの精度: {accuracy_initial:.4f}")

# パイプライン内の SGDClassifier のパラメータを変更
pipeline.set_params(sgd__loss='log_loss', sgd__penalty='l2', sgd__alpha=0.00001)

# 変更後のパラメータで再度学習と評価
pipeline.fit(X_train, y_train)
y_pred_tuned = pipeline.predict(X_test)
accuracy_tuned = accuracy_score(y_test, y_pred_tuned)
print(f"調整後のパラメータでのパイプラインの精度: {accuracy_tuned:.4f}")

# パイプライン内のパラメータの確認
print(f"現在のパイプラインのパラメータ: {pipeline.get_params()}")

パイプライン内で set_params() を使用する場合、変更したいステップの名前とパラメータ名を __ (ダブルアンダースコア) で繋いで指定します。上記の例では、sgd__losssgd__penaltysgd__alpha のように指定することで、パイプライン内の SGDClassifier ステップのパラメータを変更しています。



インスタンス作成時のパラメータ指定

最も一般的で基本的な方法は、SGDClassifier のインスタンスを作成する際に、コンストラクタにキーワード引数としてパラメータの値を直接指定する方法です。

from sklearn.linear_model import SGDClassifier

# インスタンス作成時にパラメータを指定
sgd_clf = SGDClassifier(loss='log_loss', penalty='l2', alpha=0.0001, max_iter=1000, random_state=42)

# 作成されたインスタンスのパラメータを確認
print(sgd_clf.get_params())

この方法の利点は、モデルの初期設定を一度に行えるため、コードが簡潔になり、可読性が高まることです。特に、実験の初期段階や、特定のパラメータ設定で固定してモデルを使用する場合に適しています。

属性への直接アクセス (非推奨)

SGDClassifier オブジェクトの属性に直接アクセスしてパラメータを変更することも技術的には可能ですが、一般的には推奨されません。これは、scikit-learn の内部構造に依存するため、将来のバージョンで属性名や内部実装が変更される可能性があり、コードの互換性が保てなくなるリスクがあるためです。

from sklearn.linear_model import SGDClassifier

sgd_clf = SGDClassifier(random_state=42)

# 非推奨の方法: 属性に直接アクセスして変更 (注意!)
# sgd_clf.loss = 'perceptron'
# sgd_clf.alpha = 0.01

# 変更後のパラメータを確認
print(sgd_clf.get_params())

上記のように属性に直接代入してパラメータを変更できますが、公式ドキュメントでも set_params() の使用が推奨されています。

パイプライン内でのパラメータ設定 (Pipeline.set_params)

SGDClassifierPipeline の一部として使用している場合、パイプライン全体の set_params() メソッドを通じて、SGDClassifier のパラメータを変更できます。この際、ステップ名とパラメータ名を __ (ダブルアンダースコア) で繋いで指定します。

from sklearn.linear_model import SGDClassifier
from sklearn.preprocessing import StandardScaler
from sklearn.pipeline import Pipeline

# パイプラインの構築
pipeline = Pipeline([
    ('scaler', StandardScaler()),
    ('sgd', SGDClassifier(random_state=42))
])

# パイプライン全体の set_params() を使って SGDClassifier のパラメータを変更
pipeline.set_params(sgd__loss='hinge', sgd__alpha=0.001)

# 変更後のパイプラインのパラメータを確認
print(pipeline.get_params())

この方法は、データ前処理とモデル学習を組み合わせたワークフローにおいて、特定のステップのパラメータを調整するのに便利です。

ハイパーパラメータチューニングオブジェクトの利用 (例: GridSearchCV, RandomizedSearchCV)

GridSearchCVRandomizedSearchCV などのハイパーパラメータチューニングオブジェクトを使用する場合、探索するパラメータの範囲を定義する際に、間接的に SGDClassifier のパラメータが設定されます。これらのオブジェクトは、指定されたパラメータの組み合わせを試し、最適なものを見つけます。内部的には、各試行において set_params() が使用されます。

from sklearn.linear_model import SGDClassifier
from sklearn.model_selection import GridSearchCV

# SGDClassifier のインスタンスを作成
sgd_clf = SGDClassifier(random_state=42)

# 探索するパラメータの範囲を定義
param_grid = {
    'loss': ['hinge', 'log_loss'],
    'alpha': [0.0001, 0.001]
}

# GridSearchCV の設定
grid_search = GridSearchCV(sgd_clf, param_grid, cv=2)

# (以降、grid_search.fit() などで学習と評価が行われる)

この方法では、明示的に set_params() を呼び出す必要はありませんが、探索範囲の定義を通じて、SGDClassifier の様々なパラメータの組み合わせが評価されます。

SGDClassifier のパラメータを設定する主な方法は以下の通りです。

  1. インスタンス作成時の指定
    最も一般的で推奨される基本的な方法。
  2. 属性への直接アクセス (非推奨)
    内部構造に依存するため、避けるべき。
  3. パイプライン内での指定 (Pipeline.set_params)
    パイプラインの一部である場合に便利。
  4. ハイパーパラメータチューニングオブジェクトの利用
    パラメータ探索時に間接的に設定される。