AttributeError解決!SGDClassifier.predict_log_probaのエラーと対処法

2025-05-26

scikit-learnlinear_model.SGDClassifier における predict_log_proba() メソッドは、入力されたデータポイントがそれぞれのクラスに属する対数確率を予測するために使用されます。

SGDClassifier は、確率的勾配降下法(Stochastic Gradient Descent)を用いて線形モデルを学習する分類器です。通常、この分類器はサポートベクトルマシン(SVM)のようにクラス分類の境界を学習しますが、loss パラメータを 'log_loss'(ロジスティック回帰に相当)または 'modified_huber' に設定することで、クラスに属する確率を推定できるようになります。

predict_log_proba() の機能

  • 対数確率である理由
    確率を直接返す predict_proba() もありますが、predict_log_proba() は対数確率を返します。これは、非常に小さい確率(0に近い値)を扱う際に、浮動小数点数のアンダーフローを防ぐため、また、対数尤度などの計算で数値的に安定しているためです。対数確率 log(P(y∣x)) は、掛け算を足し算に変換できるため、複数の確率を組み合わせる際に便利です。
  • 形式
    (n_samples, n_classes) の形状の NumPy 配列を返します。ここで n_samples は予測したいデータポイントの数、n_classes はクラスの数です。
  • 出力
    各データポイントに対して、それぞれのクラスに属する対数確率の配列を返します。

使用例

import numpy as np
from sklearn.linear_model import SGDClassifier
from sklearn.datasets import make_classification
from sklearn.preprocessing import StandardScaler

# ダミーデータの生成
X, y = make_classification(n_samples=100, n_features=4, n_informative=2,
                           n_redundant=0, n_classes=2, random_state=42)

# データのスケーリング (SGDClassifierはスケーリングに敏感なため推奨)
scaler = StandardScaler()
X_scaled = scaler.fit_transform(X)

# SGDClassifierのインスタンス化と学習
# 確率予測を行うためには、loss='log_loss' または 'modified_huber' が必要
clf = SGDClassifier(loss='log_loss', max_iter=1000, tol=1e-3, random_state=42)
clf.fit(X_scaled, y)

# 新しいデータポイントでの対数確率予測
new_data = np.array([[0.5, -0.2, 1.0, -0.5], [-1.0, 0.8, 0.3, 0.1]])
new_data_scaled = scaler.transform(new_data)

log_probabilities = clf.predict_log_proba(new_data_scaled)

print("予測された対数確率:")
print(log_probabilities)

# 対数確率から元の確率に戻す場合 (expを使用)
probabilities = np.exp(log_probabilities)
print("\n元の確率 (expで変換):")
print(probabilities)
print("\n確率の合計 (各行が1になるはず):")
print(np.sum(probabilities, axis=1))
  • 多クラス分類
    SGDClassifier は、多クラス分類問題に対して "One-vs-All" (OvA) または "One-vs-Rest" (OvR) という戦略を用いて処理します。これは、各クラスに対して他のすべてのクラスと区別する二項分類器を学習し、それぞれの予測結果を組み合わせて最終的な多クラスの確率を導出します。
  • 特徴量のスケーリング
    SGDClassifier は確率的勾配降下法を用いるため、入力特徴量のスケールに敏感です。通常、StandardScaler などを用いてデータをスケーリングすることを強く推奨します。これにより、モデルの収束が速くなり、性能も向上します。
  • loss パラメータ
    SGDClassifierpredict_log_proba() を使用するには、インスタンス化の際に loss パラメータを 'log_loss' (ロジスティック回帰) または 'modified_huber' に設定する必要があります。これ以外の loss (例: 'hinge' (標準のSVM)) を使用した場合、predict_log_proba() は利用できません(AttributeError が発生します)。


AttributeError: 'SGDClassifier' object has no attribute 'predict_log_proba'

これは最もよくあるエラーです。

原因
SGDClassifier は、デフォルトでは確率を予測する能力を持っていません。確率を予測するためには、学習アルゴリズム(loss パラメータ)を確率出力が可能なものに設定する必要があります。

loss パラメータのデフォルト
SGDClassifier のデフォルトの loss'hinge' であり、これは標準的なサポートベクトルマシン (SVM) の損失関数です。'hinge' 損失はクラスの境界を学習しますが、クラスに属する確率を直接提供しません。

トラブルシューティング
SGDClassifier をインスタンス化する際に、loss パラメータを以下のように設定してください。

  • loss='modified_huber': これはヒンジ損失とロジスティック損失のハイブリッドであり、外れ値に対してロバスト性があり、確率的な出力も可能です。
  • loss='log_loss': これはロジスティック回帰の損失関数に相当し、各クラスへの所属確率を推定できます。これが最も一般的な選択肢です。

例 (修正前 - エラー発生)

from sklearn.linear_model import SGDClassifier
from sklearn.datasets import make_classification

X, y = make_classification(n_samples=100, n_features=4, random_state=42)
clf = SGDClassifier(random_state=42) # デフォルトのloss='hinge'
clf.fit(X, y)
# log_proba = clf.predict_log_proba(X[:1]) # ここでAttributeErrorが発生

例 (修正後 - 正常動作)

from sklearn.linear_model import SGDClassifier
from sklearn.datasets import make_classification

X, y = make_classification(n_samples=100, n_features=4, random_state=42)
clf = SGDClassifier(loss='log_loss', random_state=42) # lossをlog_lossに設定
clf.fit(X, y)
log_proba = clf.predict_log_proba(X[:1])
print(log_proba)

確率が極端な値になる(0や1に近い)

原因
SGDClassifier は線形モデルであり、ロジスティック回帰のように確率を推定しますが、場合によっては非常に高い確信度で予測を行うことがあります。これは以下の要因によって発生します。

  • 正規化(正則化)不足
    正則化が適切でないと、モデルがデータに過度に適合し、確率が極端になることがあります。
  • 過学習
    モデルが訓練データに過学習している場合、訓練データに対する予測確率は極端に高くなることがあります。
  • データが線形分離可能である場合
    データセットが完全に線形分離可能な場合、モデルは非常に明確な決定境界を学習し、予測確率が0または1に非常に近くなることがあります。

トラブルシューティング

  • 交差検証
    交差検証を使用して、モデルが訓練データに過学習していないかを確認します。
  • データの確認
    データセットが線形分離可能かどうか、または異常値が含まれていないかを確認します。
  • 正則化の調整
    SGDClassifier には alpha パラメータがあり、L1またはL2正則化の強さを制御します。alpha の値を増やすことで、モデルの複雑さを制限し、極端な確率の出力を緩和できる可能性があります。
    # alphaの値を増やして正則化を強化
    clf = SGDClassifier(loss='log_loss', alpha=0.01, random_state=42)
    

予測された対数確率が負の無限大になる (-inf)

原因
これは、あるクラスに属する確率が厳密に0と予測された場合に発生します。log(0) は −∞ です。これは通常、モデルがそのクラスに属する可能性が全くないと「確信」していることを意味します。

トラブルシューティング

  • データの確認
    特定のクラスのデータが非常に少ない場合や、分離が非常に明確な場合に起こりやすいです。
  • class_weight の調整
    クラスの不均衡がある場合、class_weight='balanced' を設定することで、マイノリティクラスの予測能力が改善され、ゼロ確率の発生を抑制できることがあります。
    clf = SGDClassifier(loss='log_loss', class_weight='balanced', random_state=42)
    
  • 正則化の調整
    上記と同様に、alpha パラメータを調整して正則化を強化し、モデルが過度に確信を持つことを防ぎます。

予測された確率の合計が1にならない(predict_probaの場合も含む)

原因
SGDClassifier は "One-vs-All" (OvA) または "One-vs-Rest" (OvR) 戦略で多クラス分類を扱います。これは、各クラスに対して、それ以外のすべてのクラスと区別する二項分類器を学習します。

loss='log_loss' の場合
loss='log_loss' の場合、各二項分類器は独立して確率を推定します。これらの確率を結合して最終的な多クラス確率を得るには、ソフトマックス関数を適用する必要があります。しかし、SGDClassifierpredict_proba (および predict_log_proba) は、内部的に各二項分類器のロジスティック関数の出力に基づいているため、そのままではソフトマックスのように合計が1になる保証はありません。

ただし、predict_log_proba (または predict_proba) の結果は、各行の要素の合計が1になるように正規化されています(正確には、predict_proba は正規化された確率を返します。predict_log_proba はその対数を返します)。もし合計が1にならないと感じる場合、それは内部的な実装の誤解か、数値的な誤差が原因である可能性があります。

トラブルシューティング

  • scikit-learnのバージョン
    非常に古いバージョンのscikit-learnを使用している場合、動作が異なる可能性があります。最新バージョンにアップデートすることを検討してください。
  • 数値誤差
    浮動小数点数の計算では、ごくわずかな誤差が生じることがあります。np.sum(probabilities, axis=1) で合計を確認する際に、np.isclose() などの関数を使って許容範囲の誤差を考慮してください。
    probabilities = np.exp(log_probabilities)
    print(np.isclose(np.sum(probabilities, axis=1), 1.0))
    

原因
SGDClassifier は確率的勾配降下法を使用するため、学習プロセスにランダム性があり、また特徴量のスケールに敏感です。

  • データセットのサイズ
    非常に小さいデータセットでは、SGDの学習が不安定になることがあります。
  • ハイパーパラメータのチューニング
    alpha (正則化の強さ)、max_iter (エポック数)、tol (収束の許容誤差) などのハイパーパラメータを調整することで、モデルの性能を改善できる可能性があります。GridSearchCVRandomizedSearchCV を使用して最適なハイパーパラメータを見つけます。
  • random_state の設定
    結果の再現性を確保するために、SGDClassifier やデータ生成関数に random_state を設定してください。
  • 特徴量のスケーリング
    最も重要です。SGDは勾配の大きさに依存するため、特徴量のスケールが大きく異なると、最適化がうまくいかないことがあります。StandardScalerMinMaxScaler を使用して、訓練データの各特徴量を標準化または正規化してください。
    from sklearn.preprocessing import StandardScaler
    scaler = StandardScaler()
    X_scaled = scaler.fit_transform(X)
    clf.fit(X_scaled, y)
    


目的

準備:共通のインポートとデータ生成

まず、共通して使用するライブラリをインポートし、ダミーデータを生成します。

import numpy as np
from sklearn.linear_model import SGDClassifier
from sklearn.datasets import make_classification
from sklearn.model_selection import train_test_split
from sklearn.preprocessing import StandardScaler
from sklearn.metrics import log_loss, accuracy_score

# 再現性のためのシード設定
np.random.seed(42)

# ダミーデータの生成 (2クラス分類)
# n_samples: サンプル数
# n_features: 特徴量数
# n_informative: 有益な特徴量数
# n_redundant: 他の特徴量から導出される特徴量数
# n_classes: クラス数
X, y = make_classification(n_samples=1000, n_features=10, n_informative=5,
                           n_redundant=0, n_classes=2, random_state=42)

# 訓練データとテストデータに分割
X_train, X_test, y_train, y_test = train_test_split(X, y, test_size=0.2, random_state=42)

# 特徴量のスケーリング (SGDClassifierはスケールに敏感なため必須級)
scaler = StandardScaler()
X_train_scaled = scaler.fit_transform(X_train)
X_test_scaled = scaler.transform(X_test)

print("データ生成とスケーリング完了。")
print(f"訓練データの形状: {X_train_scaled.shape}")
print(f"テストデータの形状: {X_test_scaled.shape}")

解説

  • log_loss, accuracy_score: モデルの評価指標。
  • StandardScaler: SGDClassifier は特徴量のスケールに敏感なため、標準化が非常に重要です。平均を0、標準偏差を1に変換します。
  • train_test_split: データセットを訓練用とテスト用に分割し、モデルの汎化性能を評価するため。
  • make_classification: 分類問題用の人工データセットを簡単に生成する。
  • SGDClassifier: 今回の主役。
  • numpy: 数値計算のため。

例1: 基本的な predict_log_proba() の使用

最も基本的な使い方で、対数確率を出力します。

# SGDClassifier のインスタンス化と学習
# 確率予測を行うためには、loss='log_loss' (ロジスティック回帰) または 'modified_huber' が必要
clf = SGDClassifier(loss='log_loss',  # 確率予測を可能にする損失関数
                    max_iter=1000,   # 最大イテレーション回数
                    tol=1e-3,        # 収束許容誤差
                    random_state=42) # 再現性のためのシード

clf.fit(X_train_scaled, y_train)

print("\n--- 例1: 基本的な predict_log_proba() の使用 ---")

# テストデータの一部で対数確率を予測
# 最初の5つのサンプルを予測してみる
sample_indices = range(5)
X_sample = X_test_scaled[sample_indices]

log_probabilities = clf.predict_log_proba(X_sample)

print(f"予測対象のサンプル数: {len(X_sample)}")
print("予測された対数確率 (各行が1つのサンプル、各列がクラス):")
print(log_probabilities)
print(f"形状: {log_probabilities.shape}")

# クラスの順序を確認 (通常は0, 1, ..., n_classes-1)
print(f"モデルが学習したクラスの順序: {clf.classes_}")

# 対数確率を通常の確率に戻す (np.exp() を使用)
probabilities = np.exp(log_probabilities)
print("\n通常の確率 (expで変換):")
print(probabilities)
print("各行の確率の合計 (約1になるはず):")
print(np.sum(probabilities, axis=1))

# テストデータ全体の対数損失を評価
y_pred_proba = clf.predict_proba(X_test_scaled) # predict_proba() で通常の確率を取得
test_log_loss = log_loss(y_test, y_pred_proba)
print(f"\nテストデータでの対数損失 (log_loss): {test_log_loss:.4f}")

# 予測結果の確認 (クラスの予測)
y_pred = clf.predict(X_test_scaled)
test_accuracy = accuracy_score(y_test, y_pred)
print(f"テストデータでの精度 (Accuracy): {test_accuracy:.4f}")

解説

  • log_loss()accuracy_score(): モデルの性能を評価するために使われます。log_loss は確率予測の良さを示す指標です。
  • np.sum(probabilities, axis=1): 各サンプルの確率の合計は、数値的な誤差を除けば1になるはずです。
  • np.exp(log_probabilities): 対数確率を通常の確率に戻すには、指数関数 np.exp() を適用します。
  • clf.predict_log_proba(X_sample): スケーリングされたテストデータの最初の5つのサンプルに対する対数確率を予測します。
    • 出力は (n_samples, n_classes) のNumPy配列です。この場合、(5, 2) の形状になります。
    • 最初の列はクラス0の対数確率、2番目の列はクラス1の対数確率です。
  • clf.fit(X_train_scaled, y_train): モデルを訓練データで学習させます。
  • SGDClassifier(loss='log_loss', ...): ここが重要です。loss='log_loss' を指定することで、ロジスティック回帰と同様に確率を推定できるようになります。

例2: 確率が非常に小さい場合の predict_log_proba() の利点

非常に小さい確率(例えば 10−100 のような値)を通常の浮動小数点数で直接扱うと、アンダーフロー(0.0 として扱われる)が発生する可能性があります。対数確率を使うことで、この問題を回避できます。

print("\n--- 例2: 確率が非常に小さい場合の predict_log_proba() の利点 ---")

# 極端な確率を予測するようなデータを作成
# 例えば、クラス0とクラス1が完全に分離されるようなデータ
X_extreme = np.array([[-5.0, -5.0, -5.0, -5.0, -5.0, -5.0, -5.0, -5.0, -5.0, -5.0],
                      [ 5.0,  5.0,  5.0,  5.0,  5.0,  5.0,  5.0,  5.0,  5.0,  5.0]])
X_extreme_scaled = scaler.transform(X_extreme) # 学習したスケーラーで変換

log_proba_extreme = clf.predict_log_proba(X_extreme_scaled)
print("極端な入力に対する対数確率:")
print(log_proba_extreme)

# 通常の確率に戻す
proba_extreme = np.exp(log_proba_extreme)
print("極端な入力に対する通常の確率:")
print(proba_extreme)

# 非常に小さい値の例
print(f"最初のサンプルのクラス1の確率: {proba_extreme[0, 1]:.20f}") # 小数点以下20桁まで表示
print(f"2番目のサンプルのクラス0の確率: {proba_extreme[1, 0]:.20f}")

解説

  • predict_log_proba() が返す対数確率は、例えば -20-100 のような値になり、これらの値を np.exp() で変換すると、e^-20e^-100 といった非常に小さいがゼロではない値になります。これにより、アンダーフローを防ぎ、正確な計算を維持できます。
  • この例では、proba_extreme[0, 1]proba_extreme[1, 0] の値が非常に小さくなることが期待されます。
  • X_extreme: クラス0またはクラス1に非常に強く属するとモデルが予測するであろう、極端な特徴量を持つデータポイントを作成しました。

SGDClassifier は内部で「One-vs-Rest (OvR)」戦略を使って多クラス分類を扱います。

print("\n--- 例3: 多クラス分類での predict_log_proba() ---")

# 3クラス分類のダミーデータを生成
X_multi, y_multi = make_classification(n_samples=1000, n_features=10, n_informative=5,
                                       n_redundant=0, n_classes=3, random_state=42)

X_train_multi, X_test_multi, y_train_multi, y_test_multi = train_test_split(X_multi, y_multi, test_size=0.2, random_state=42)

scaler_multi = StandardScaler()
X_train_scaled_multi = scaler_multi.fit_transform(X_train_multi)
X_test_scaled_multi = scaler_multi.transform(X_test_multi)

# 多クラス分類用のSGDClassifierを学習
clf_multi = SGDClassifier(loss='log_loss', max_iter=1000, tol=1e-3, random_state=42)
clf_multi.fit(X_train_scaled_multi, y_train_multi)

# 多クラス分類の予測
log_probabilities_multi = clf_multi.predict_log_proba(X_test_scaled_multi[:5])

print(f"予測対象のサンプル数 (多クラス): {len(X_test_scaled_multi[:5])}")
print("予測された対数確率 (各行が1つのサンプル、各列がクラス):")
print(log_probabilities_multi)
print(f"形状: {log_probabilities_multi.shape}") # (サンプル数, クラス数)

print(f"モデルが学習したクラスの順序: {clf_multi.classes_}")

# 通常の確率に戻す
probabilities_multi = np.exp(log_probabilities_multi)
print("\n通常の確率 (expで変換):")
print(probabilities_multi)
print("各行の確率の合計 (約1になるはず):")
print(np.sum(probabilities_multi, axis=1))
  • clf_multi.classes_ で、モデルが認識しているクラスの順序を確認できます。通常は [0, 1, 2] のようになります。
  • predict_log_proba() の出力形状が (サンプル数, 3) になります。各列はそれぞれのクラス(0, 1, 2)の対数確率を示します。
  • n_classes=3 を指定して3クラス分類のデータセットを作成します。


predict_log_proba() の主な目的は、モデルが予測するクラス帰属の確信度を対数スケールで取得することです。対数スケールは、特に確率が非常に小さい場合に、浮動小数点数のアンダーフローを防ぎ、数値計算の安定性を高めるのに役立ちます。

この機能の代替手段は、主に以下の2つのカテゴリに分けられます。

  1. 直接確率を取得し、手動で対数を取る: predict_proba() を使用し、その結果に np.log() を適用します。
  2. SGDClassifier 以外のモデルを使用する: SGDClassifier とは異なるアルゴリズムで、直接的に確率や対数確率を出力できるモデルを使用します。

代替手段1: predict_proba() を使用して手動で対数を取る

これは最も直接的な代替手段であり、SGDClassifier が確率出力に対応している場合(loss='log_loss' または loss='modified_huber')に利用できます。

メソッド: clf.predict_proba(X)np.log()

  1. clf.predict_proba(X): モデルが予測する通常の確率(0から1の範囲)を返します。出力の形状は (n_samples, n_classes) です。
  2. np.log(probabilities): predict_proba() から得られた確率にNumPyの対数関数を適用し、対数確率に変換します。

コード例

import numpy as np
from sklearn.linear_model import SGDClassifier
from sklearn.datasets import make_classification
from sklearn.preprocessing import StandardScaler

# データの準備 (前回の例と同じ)
X, y = make_classification(n_samples=100, n_features=4, n_classes=2, random_state=42)
scaler = StandardScaler()
X_scaled = scaler.fit_transform(X)

# SGDClassifierを学習 (loss='log_loss'が必要)
clf = SGDClassifier(loss='log_loss', max_iter=1000, tol=1e-3, random_state=42)
clf.fit(X_scaled, y)

# --- 代替手段1: predict_proba() + np.log() ---
print("--- 代替手段1: predict_proba() + np.log() ---")

# 1. predict_proba() で通常の確率を取得
probabilities = clf.predict_proba(X_scaled[:5])
print("predict_proba() による通常の確率:")
print(probabilities)

# 2. np.log() で対数確率に変換
log_probabilities_manual = np.log(probabilities)
print("\nnp.log() で変換した対数確率:")
print(log_probabilities_manual)

# 参考: predict_log_proba() の結果と比較
log_probabilities_direct = clf.predict_log_proba(X_scaled[:5])
print("\npredict_log_proba() による直接の対数確率:")
print(log_probabilities_direct)

# 結果がほぼ一致することを確認
print("\n両者の差 (非常に小さいはず):")
print(np.abs(log_probabilities_manual - log_probabilities_direct).max())

利点と欠点

利点

  • 理解しやすい: まず確率を見てから対数を取るため、処理の流れが直感的です。
  • 直接的: predict_log_proba() と同じ結果を、別のアプローチで得ることができます。

欠点

  • 数値的安定性: 非常に小さい確率値(0に近い値)が予測された場合、np.log(0)-inf になりますが、np.log() を適用する前に浮動小数点数のアンダーフローによって 0.0 となってしまうリスクがあります。predict_log_proba() はこの問題に対処するために、より数値的に安定した方法で対数確率を計算します。そのため、厳密には predict_log_proba() の方が推奨されます

SGDClassifier が特定のユースケースに適さない場合や、他の線形モデル、あるいはより複雑なモデルで確率予測を行いたい場合があります。

A. LogisticRegression (ロジスティック回帰)

SGDClassifierloss='log_loss' を設定すると、実質的にロジスティック回帰として機能します。しかし、LogisticRegression クラスはより安定した最適化アルゴリズム(デフォルトはL-BFGSなど)を使用し、確率予測に特化しています。

特徴

  • 大規模データセットにはSGDClassifierの方が適している場合があります (逐次学習のため)。
  • SGDClassifier よりも収束が速く、安定していることが多いです。
  • デフォルトで確率予測 (predict_proba()) と対数確率予測 (predict_log_proba()) に対応しています。
from sklearn.linear_model import LogisticRegression

# --- 代替手段2A: LogisticRegression の使用 ---
print("\n--- 代替手段2A: LogisticRegression の使用 ---")

# LogisticRegression モデルを学習
# C は正則化の逆数 (Cが小さいほど正則化が強い)
lr_clf = LogisticRegression(solver='liblinear', random_state=42)
lr_clf.fit(X_scaled, y)

# predict_log_proba() を直接使用可能
log_probabilities_lr = lr_clf.predict_log_proba(X_scaled[:5])
print("LogisticRegression による対数確率:")
print(log_probabilities_lr)

# predict_proba() も利用可能
probabilities_lr = lr_clf.predict_proba(X_scaled[:5])
print("\nLogisticRegression による通常の確率:")
print(probabilities_lr)

B. CalibratedClassifierCV (キャリブレーション)

SGDClassifierloss='hinge' (通常のSVM) の場合など、直接確率を出力できないモデルや、出力する確率が信頼できないモデルに対して、確率のキャリブレーション(較正)を行うことができます。これにより、モデルの出力するスコアを、より真の確率に近い値に変換します。

特徴

  • 内部で交差検証(cross-validation)を使用してキャリブレーションを行います。
  • predict_log_proba() を含む確率出力メソッドを提供します。
  • 任意の分類器(SGDClassifier も含む)の確率出力を改善するために使用できます。
from sklearn.calibration import CalibratedClassifierCV

# --- 代替手段2B: CalibratedClassifierCV の使用 ---
print("\n--- 代替手段2B: CalibratedClassifierCV の使用 ---")

# 元のSGDClassifier (ここではloss='hinge'で確率を直接出力できないものと仮定)
# もしSGDClassifierでloss='log_loss'を使うなら、calibrationは不要か、調整用
base_sgd_clf = SGDClassifier(loss='hinge', max_iter=1000, tol=1e-3, random_state=42)

# CalibratedClassifierCV で SGDClassifier をキャリブレーション
# method='isotonic' または 'sigmoid'
# cv: 交差検証の分割数
calibrated_clf = CalibratedClassifierCV(base_sgd_clf, method='isotonic', cv=5)
calibrated_clf.fit(X_scaled, y)

# キャリブレーション後のモデルで対数確率を予測
log_probabilities_calibrated = calibrated_clf.predict_log_proba(X_scaled[:5])
print("CalibratedClassifierCV を介した対数確率:")
print(log_probabilities_calibrated)

# 通常の確率も利用可能
probabilities_calibrated = calibrated_clf.predict_proba(X_scaled[:5])
print("\nCalibratedClassifierCV を介した通常の確率:")
print(probabilities_calibrated)

scikit-learn には他にも確率出力をサポートする多くの分類器があります。

  • SVC (Support Vector Classifier) with probability=True: SVC は通常は確率を出力しませんが、インスタンス化時に probability=True を設定することで、クロスバリデーションによる確率推定が可能になります。ただし、計算コストが増大します。
    •   from sklearn.svm import SVC
        svc_clf = SVC(probability=True, random_state=42)
        svc_clf.fit(X_scaled, y)
        log_proba_svc = svc_clf.predict_log_proba(X_scaled[:5])
      
  • GradientBoostingClassifier: アンサンブル学習モデル。predict_proba()predict_log_proba() を提供します。
  • RandomForestClassifier: アンサンブル学習モデル。predict_proba()predict_log_proba() を提供します。

どの代替手段を選ぶべきかは、目的と状況によって異なります。

  • より高性能な確率予測: 非線形な関係性を捉えたい場合や、より複雑なデータセットでは、RandomForestClassifierGradientBoostingClassifier のようなアンサンブルモデルがより正確な確率予測を提供できる可能性があります。
  • 確率を直接出力しないモデルの確率化: SVM (loss='hinge') のように確率を直接出力しないモデルを使用したいが、確率も必要な場合は、CalibratedClassifierCV が非常に有効です。
  • より安定した線形モデル: SGDClassifier の学習の不安定性が懸念される場合や、大規模データセットでない場合は、LogisticRegression の方が良い選択肢となることが多いです。
  • 最も直接的な代替: SGDClassifierloss='log_loss' を使用し、predict_proba() の結果に np.log() を適用する方法。しかし、数値的安定性の観点から元の predict_log_proba() が最善です。