RegExpValidatorを使ったQt QuickのTextInputの入力制御

2024-07-30

TextInput.validator とは?

Qt Quick の TextInput は、ユーザーがテキストを入力できる領域を作成するための要素です。この TextInput に対して、validator プロパティを使うことで、入力可能な文字の種類や形式を制限することができます。いわば、テキスト入力の「番人」のような役割を果たすのです。

validator の主な役割

  • 入力値の範囲制限
    数値入力の場合、最小値や最大値を設定できます。
  • 入力形式の制限
    電話番号、メールアドレス、日付など、特定の形式で入力されるように強制できます。
  • 入力可能な文字の制限
    数字だけ、アルファベットだけ、特定の文字列しか入力できないように制限できます。

validator の種類と使い方

Qt Quick では、さまざまな種類の validator が提供されています。

  • DoubleValidator
    実数のみを入力できるように制限します。
  • IntValidator
    整数のみを入力できるように制限します。
  • RegExpValidator
    正規表現を使って、より柔軟な入力規則を定義できます。

例:

import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: myTextInput
    validator: IntValidator { bottom: 100; top: 200 }
}

この例では、myTextInput に入力できるのは100から200までの整数に制限されます。

validator の活用例

  • 日付入力
    • RegExpValidator を使って、日付の形式(例:YYYY-MM-DD)をチェックします。
  • パスワード入力
    • RegExpValidator を使って、大文字、小文字、数字、特殊文字の組み合わせを要求するなど、複雑なパスワードポリシーを適用します。
  • メールアドレス入力
    • RegExpValidator を使って、一般的なメールアドレスの形式(例:@を含む、ドットを含む)をチェックします。
  • 電話番号入力
    • RegExpValidator を使って、国番号、市外局番、加入者番号といった形式で入力できるようにします。
  • アプリケーションのロジックを簡素化
    入力チェックのロジックを validator に任せることで、アプリケーションのメインロジックをすっきりさせることができます。
  • データの整合性を保つ
    入力されたデータが常に正しい形式であることを保証できます。
  • ユーザー入力ミスを減らす
    不適切な入力に対して即座にエラーを表示することで、ユーザーが正しい値を入力するのを支援します。

TextInput.validator は、Qt Quick でテキスト入力の品質を向上させるための強力なツールです。適切な validator を使用することで、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、アプリケーションの信頼性を高めることができます。



よくあるエラーとその原因

validatorプロパティが認識されない

  • 解決策
    • プロパティ名、オブジェクト名、import文を正確に記述する
    • validatorオブジェクトが正しく生成されているか確認する
    • validatorの種類(RegExpValidator、IntValidatorなど)を適切に選択する
  • 原因
    • validatorプロパティのスペルミス
    • validatorオブジェクトの生成ミス
    • import文が不足している

正規表現エラー

  • 解決策
    • 正規表現の文法を正しく理解する
    • 正規表現テストツールを使ってパターンを検証する
    • Qtのドキュメントを参照して、正規表現の機能を詳しく学ぶ
  • 原因
    • 正規表現の構文エラー
    • 正規表現が意図したパターンと一致しない

入力範囲エラー

  • 解決策
    • validatorの範囲設定を正しい値に変更する
    • 入力値が範囲内であることを確認する
  • 原因
    • validatorの設定範囲が不正
    • 入力値が範囲外

カスタムvalidatorのエラー

  • 解決策
    • カスタムvalidatorのロジックをデバッグする
    • シグナルとスロットの接続を確認する
  • 原因
    • カスタムvalidatorのロジックに誤りがある
    • シグナルとスロットの接続が正しくない

トラブルシューティングのヒント

  • Qtのドキュメントを参照する
    • TextInput、validator、正規表現に関するドキュメントを詳しく読む
  • コンソール出力
    • print文を使って、変数の値やエラーメッセージを出力し、問題箇所を特定する
  • Qt Creatorのデバッガを利用する
    • ブレークポイントを設定して、コードの実行をステップ実行し、変数の値を確認する
import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: myTextInput
    validator: RegExpValidator {
        regExp: /^[0-9]{3}-[0-9]{4}$/
    }
}

この例では、3桁の数字とハイフン、そして4桁の数字という形式の入力しか許可されません。もし、この形式の入力しか受け付けない場合、以下のエラーが発生する可能性があります。

  • 入力範囲エラー
    入力値が正規表現のパターンと一致しない場合
  • 正規表現エラー
    正規表現の構文が間違っている場合


さまざまなvalidatorの活用例

整数入力の制限

import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: intInput
    validator: IntValidator {
        bottom: 0; top: 100  // 0から100までの整数
    }
}

実数入力の制限

import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: doubleInput
    validator: DoubleValidator {
        bottom: 0.0; top: 10.0; decimals: 2  // 0.0から10.0まで、小数点以下2桁
    }
}

正規表現による複雑な入力制限

import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: emailInput
    validator: RegExpValidator {
        regExp: /^[^\s@]+@[^\s@]+\.[^\s@]+$/  // メールアドレス形式
    }
}
import QtQuick 2.0

QtObject {
    id: customValidator

    function validate(input) {
        // 独自の検証ロジックを実装
        return input.length >= 8 && input.length <= 16;  // 文字数が8文字以上16文字以下
    }
}

TextInput {
    id: passwordInput
    validator: customValidator
}

validatorのイベントハンドリング

import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: myTextInput
    validator: IntValidator {}

    onAccepted: {
        console.log("入力値が有効です:", text)
    }

    onRejected: {
        console.log("入力値が無効です")
    }
}
  • onRejected
    入力値がvalidatorの条件を満たさない場合に実行される
  • onAccepted
    入力値がvalidatorの条件を満たした場合に実行される

validatorの動的な変更

import QtQuick 2.0

Component {
    id: myValidatorComponent
    // validatorの定義
}

TextInput {
    id: myTextInput
    validator: myValidatorComponent

    // ボタンクリックでvalidatorを変更
    Button {
        onClicked: {
            myTextInput.validator = Qt.createComponent("AnotherValidator.qml").createObject(myTextInput)
        }
    }
}
// C++側
class MyValidator : public QValidator
{
    QValidator::State validate(QString & input, int & pos) const override
    {
        // C++で独自の検証ロジックを実装
        ...
    }
};

// QML側
import QtQuick 2.0
import MyCppModule 1.0

TextInput {
    id: myTextInput
    validator: MyValidator{}
}
  • 国際化
    異なる言語や地域での入力形式に対応するために、validatorの設定を調整する必要があります。
  • ユーザーエクスペリエンス
    validatorによって入力制限が厳しすぎると、ユーザーが不便に感じる場合があります。適切なバランスが重要です。
  • パフォーマンス
    複雑な正規表現やカスタムvalidatorは、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。
  • validatorに関するエラーのトラブルシューティング
  • validatorのパフォーマンス最適化
  • validatorと他のQML要素との連携方法
  • 特定の入力形式に対応したvalidatorの作成方法
  • 「validatorで入力中にリアルタイムでエラーメッセージを表示したいのですが、どうすれば良いでしょうか?」
  • 「パスワードの強度を評価するカスタムvalidatorを作成したいのですが、どのようなロジックを実装すれば良いでしょうか?」
  • 「電話番号の入力形式を国ごとに変更したいのですが、どのようにvalidatorを設定すれば良いでしょうか?」


Qt QuickのTextInputにおいて、入力値の検証にTextInput.validatorがよく用いられますが、これ以外にもいくつかの代替方法があります。それぞれの方法には特徴や適する場面があるため、状況に応じて最適な方法を選択することが重要です。

inputMaskプロパティの活用

  • 注意点
    • 柔軟な正規表現による検証には不向き。
    • カスタムなバリデーションロジックの実装は難しい。

  • TextInput {
        id: phoneInput
        inputMask: "###-####"  // 電話番号形式
    }
    
  • 特徴
    • 簡易的な入力フォーマットの指定に適している。
    • 数字、アルファベット、特殊文字などの位置を固定的に指定できる。

onTextChangedシグナルの利用

  • 注意点
    • 検証ロジックを自分で実装する必要があるため、実装が複雑になる可能性がある。
    • パフォーマンスに影響を与える可能性がある。

  • TextInput {
        id: myTextInput
        onTextChanged: {
            if (text.length < 8) {
                // 文字数が8文字未満の場合の処理
            } else {
                // 文字数が8文字以上の場合の処理
            }
        }
    }
    
  • 特徴
    • テキスト入力中にリアルタイムで検証を行うことができる。
    • カスタムな検証ロジックを自由に実装できる。

カスタムQML要素の作成

  • 注意点
    • 開発コストが上がる可能性がある。

  • import QtQuick 2.0
    
    CustomTextInput {
        id: myTextInput
        // カスタム検証ロジック
    }
    
  • 特徴
    • 複雑な検証ロジックをカプセル化できる。
    • 再利用性の高いカスタムコンポーネントを作成できる。

C++側のカスタムバリデータ

  • 注意点
    • C++の知識が必要。

  • class MyValidator : public QValidator
    {
        // ...
    };
    
    import QtQuick 2.0
    import MyCppModule 1.0
    
    TextInput {
        id: myTextInput
        validator: MyValidator{}
    }
    
  • 特徴
    • 高度な検証ロジックを実装できる。
    • QMLとC++の連携が可能。
  • 再利用性
    カスタムQML要素、C++カスタムバリデータ
  • パフォーマンス
    inputMask、onTextChanged (カスタムロジックの複雑さによる)
  • 柔軟な検証ロジック
    onTextChanged、カスタムQML要素、C++カスタムバリデータ
  • 単純な入力フォーマット
    inputMask

選択のポイント

  • パフォーマンス
    パフォーマンスがクリティカルな場合は、シンプルな方法を選択
  • 再利用性
    複数の場所で同じ検証ロジックを使う場合はカスタムQML要素やC++カスタムバリデータ
  • リアルタイム性
    入力中にリアルタイムに検証したい場合はonTextChanged
  • 検証の複雑さ
    簡易的な検証であればinputMask、複雑な検証であればカスタムロジック

TextInput.validator以外にも、さまざまな方法で入力値の検証を行うことができます。それぞれの方法には特徴やメリット・デメリットがあるため、開発の状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。

  • カスタムvalidatorの作成方法
  • パフォーマンスを考慮したvalidatorの選択
  • 特定の入力形式に対応したvalidatorの代替方法