Qt TextInputカーソルデザイン自由自在:サンプルコードで学ぶcursorDelegate
TextInput.cursorDelegateの役割
- テキスト選択のカスタマイズ
テキストの選択範囲の表示方法や動作をカスタマイズできます。 - カーソルの動作のカスタマイズ
カーソルの移動、選択、点滅などの動作を制御できます。 - カーソルの表示のカスタマイズ
カーソルの色、形状、サイズなどを変更できます。
cursorDelegateに設定できるオブジェクト
cursorDelegate
には、TextInput.AbstractCursorDelegate
クラスを継承したオブジェクトを設定します。このクラスには、カーソルに関する様々な仮想関数が定義されており、これらの関数をオーバーライドすることで、カーソルの動作や表示をカスタマイズできます。
具体的な例
例えば、カーソルの色を変更したい場合、AbstractCursorDelegate
を継承したカスタムクラスを作成し、cursorColor
関数をオーバーライドします。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
Rectangle {
width: 400
height: 200
TextInput {
id: input
width: 300
height: 50
anchors.centerIn: parent
cursorDelegate: MyCursorDelegate {}
}
Component {
id: myCursorDelegate
Item {
function cursorColor(item) {
return "red"
}
}
}
Component {
id: MyCursorDelegate
AbstractCursorDelegate {
function cursorColor(item) {
return "red"
}
}
}
}
この例では、MyCursorDelegate
というカスタムのカーソルデリゲートを作成し、cursorColor
関数をオーバーライドして、カーソルの色を赤に設定しています。
- 高度な制御
複雑なカーソルの動作を実装できます。 - 再利用性
カスタムのカーソルデリゲートを複数のTextInput
要素で再利用できます。 - 柔軟なカスタマイズ
カーソルの動作や表示を細かく制御できます。
よくあるエラーとトラブルシューティング
-
- エラー
カーソルが期待通りに動作しない、または表示されない。 - 原因
AbstractCursorDelegate
の仮想関数(cursorRect
,cursorColor
,cursorPositionChanged
など)をオーバーライドする際に、引数の型や戻り値の型を間違えている、または必要な処理を実装していない。 - トラブルシューティング
AbstractCursorDelegate
のドキュメントをよく確認し、各仮想関数の引数と戻り値の型を正しく理解する。- オーバーライドした関数の実装が正しいか、デバッグツールを使用して確認する。
- 簡単な例から始め、徐々に複雑なカスタマイズを行う。
- エラー
-
cursorDelegateに設定するオブジェクトがAbstractCursorDelegateを継承していない
- エラー
TypeError: Cannot assign ... to QQuickTextInputCursorDelegate*
のようなエラーが発生する。 - 原因
cursorDelegate
に設定するオブジェクトがAbstractCursorDelegate
を継承していないため、型が一致しない。 - トラブルシューティング
cursorDelegate
に設定するオブジェクトがAbstractCursorDelegate
を継承しているか確認する。Component
を使用してAbstractCursorDelegate
を継承したオブジェクトを定義する。- QMLの型チェック機能を使用して、型のエラーを検出する。
- エラー
-
カーソルの位置や範囲の計算が間違っている
- エラー
カーソルが予期しない位置に表示される、またはテキスト選択の範囲が正しくない。 - 原因
cursorRect
やselectionRect
などの関数で、カーソルの位置や範囲を計算する際に、テキストのレイアウトやフォントサイズなどを考慮していない。 - トラブルシューティング
TextInput
のcontentWidth
,contentHeight
,font
などのプロパティを使用して、テキストのレイアウト情報を取得する。TextInput
のpositionAt
やpositionToRectangle
などの関数を使用して、テキストの位置を計算する。- デバッグツールを使用して、カーソルの位置や範囲の計算結果を確認する。
- エラー
-
パフォーマンスの問題
- エラー
TextInput
の動作が遅くなる、または画面の描画が遅延する。 - 原因
cursorDelegate
で複雑な処理を行っている、または頻繁にカーソルの位置や範囲を計算している。 - トラブルシューティング
cursorDelegate
の処理を最適化する。- 不必要な計算を避ける。
QQuickPaintedItem
を使用して、カスタムのカーソルを描画する。- プロファイリングツールを使用して、パフォーマンスの問題を特定する。
- エラー
-
プラットフォーム依存の問題
- エラー
特定のプラットフォームでのみカーソルが正しく動作しない。 - 原因
プラットフォームによって、カーソルの動作や表示が異なるため、cursorDelegate
の実装がプラットフォームに依存している。 - トラブルシューティング
- プラットフォーム固有のコードを使用して、カーソルの動作を調整する。
Qt.platform.os
を使用して、プラットフォームを判定する。- 複数のプラットフォームでテストを行い、問題を特定する。
- エラー
デバッグのヒント
- Qt Creatorのデバッガを使用して、コードの実行をステップ実行し、変数の値を監視する。
QQuickPaintedItem
を使用して、カーソルの描画を可視化する。console.log()
やconsole.debug()
を使用して、カーソルの位置や範囲の計算結果をログに出力する。
例1: カーソルの色を変更する
この例では、カーソルの色を赤に変更します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
Rectangle {
width: 400
height: 200
TextInput {
id: input
width: 300
height: 50
anchors.centerIn: parent
cursorDelegate: MyCursorDelegate {}
}
Component {
id: MyCursorDelegate
AbstractCursorDelegate {
function cursorColor(item) {
return "red"
}
}
}
}
説明
TextInput
のcursorDelegate
プロパティにMyCursorDelegate
を設定します。cursorColor
関数をオーバーライドし、戻り値として"red"
(赤)を返します。MyCursorDelegate
というAbstractCursorDelegate
を継承したコンポーネントを作成します。
例2: カーソルの幅を変更する
この例では、カーソルの幅を太くします。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
Rectangle {
width: 400
height: 200
TextInput {
id: input
width: 300
height: 50
anchors.centerIn: parent
cursorDelegate: MyCursorDelegate {}
}
Component {
id: MyCursorDelegate
AbstractCursorDelegate {
function cursorRect(item) {
let rect = item.cursorRectangle;
rect.width = 5; // カーソルの幅を5ピクセルに設定
return rect;
}
}
}
}
説明
- 変更した矩形を返します。
item.cursorRectangle
から元のカーソル矩形を取得し、width
プロパティを変更します。cursorRect
関数をオーバーライドします。
例3: カーソルの点滅速度を変更する
この例では、カーソルの点滅速度を遅くします。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
Rectangle {
width: 400
height: 200
TextInput {
id: input
width: 300
height: 50
anchors.centerIn: parent
cursorDelegate: MyCursorDelegate {}
}
Component {
id: MyCursorDelegate
AbstractCursorDelegate {
function cursorBlinkTime(item) {
return 1000; // 点滅間隔を1000ミリ秒(1秒)に設定
}
}
}
}
説明
- 戻り値として点滅間隔をミリ秒単位で返します。
cursorBlinkTime
関数をオーバーライドします。
例4: カーソルをカスタムの図形にする
この例では、カーソルを縦線ではなく、四角形にします。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
Rectangle {
width: 400
height: 200
TextInput {
id: input
width: 300
height: 50
anchors.centerIn: parent
cursorDelegate: MyCursorDelegate {}
}
Component {
id: MyCursorDelegate
AbstractCursorDelegate {
function cursorRect(item) {
let rect = item.cursorRectangle;
return Qt.rect(rect.x, rect.y, 8, rect.height);
}
}
}
}
Qt.rect()
関数を利用して、幅が8ピクセルで縦の高さは元のカーソルと同じ高さの四角形を返します。cursorRect
関数をオーバーライドします。
TextInputのプロパティを直接変更する
最も簡単な代替方法は、TextInput
のプロパティを直接変更することです。
- selectionColor (選択範囲の色)
テキスト選択範囲の色を変更できます。 - font (フォント)
フォントのサイズやスタイルを変更すると、カーソルの高さに影響します。 - color (カーソルの色)
TextInput
のcolor
プロパティは、テキストの色だけでなく、デフォルトのカーソルの色にも影響します。ただし、カーソルだけの色を完全に独立して制御することはできません。
TextInput {
color: "red" // テキストとデフォルトカーソルの色を変更
font.pointSize: 14 // フォントサイズを変更
selectionColor: "lightblue" // 選択範囲の色を変更
}
QQuickPaintedItemを使用する
より複雑なカスタムカーソルが必要な場合、QQuickPaintedItem
を使用して独自のカーソルを描画できます。
QQuickPaintedItem
のpaint()
関数で、カスタムカーソルを描画します。TextInput
のcursorPosition
プロパティを使用して、カーソルの位置を計算します。TextInput
のfocus
プロパティを監視し、フォーカスがある場合にのみカーソルを描画します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
Rectangle {
width: 400
height: 200
TextInput {
id: input
width: 300
height: 50
anchors.centerIn: parent
}
QQuickPaintedItem {
width: 2
height: input.height
x: input.x + input.positionAt(input.cursorPosition).x
y: input.y
visible: input.focus
function updateCursorPosition() {
x = input.x + input.positionAt(input.cursorPosition).x;
}
Connections {
target: input
onCursorPositionChanged: updateCursorPosition()
}
Component.onCompleted: updateCursorPosition()
paint: {
let ctx = painter;
ctx.fillStyle = "blue";
ctx.fillRect(0, 0, width, height);
}
}
}
説明
TextInput
のcursorPositionChanged
シグナルを監視し、カーソルの位置が変更されたときにupdateCursorPosition()
関数を呼び出してカーソルの位置を更新します。paint
関数で、青い矩形を描画します。input.positionAt(input.cursorPosition).x
でカーソルのx座標を計算し、x
プロパティに設定します。QQuickPaintedItem
でカーソルを描画します。
カスタムのテキスト入力コンポーネントを作成する
完全にカスタマイズされたテキスト入力が必要な場合は、TextInput
を継承したカスタムのテキスト入力コンポーネントを作成できます。
QQuickPaintedItem
や他のQt Quick要素を使用して、カスタムカーソルやテキスト表示を実装します。TextInput
の機能を拡張し、独自のカーソル描画や動作を実装します。
cursorDelegateの代替手法の利点と欠点
- カスタムコンポーネント
- 利点: 完全にカスタマイズ可能。
- 欠点: 開発に時間がかかる。
- QQuickPaintedItem
- 利点: 柔軟なカスタマイズが可能。
- 欠点: 複雑な実装が必要。
- プロパティの直接変更
- 利点: 簡単で手軽。
- 欠点: 細かいカスタマイズが難しい。
- 完全にカスタマイズされたテキスト入力コンポーネントが必要な場合は、カスタムコンポーネントを作成する必要があります。
- より複雑なカスタムカーソルが必要な場合は、
QQuickPaintedItem
を使用するのが良いでしょう。 - 簡単な色の変更やフォントの調整であれば、
TextInput
のプロパティを直接変更するのが最も簡単です。