Qt Quickで入力内容を動的に処理する:TextInput.textEdited()の活用事例

2024-07-30

TextInput.textEdited() とは?

Qt Quick の TextInput は、ユーザーが入力できるテキストボックスのようなものです。textEdited() シグナルは、この TextInput に入力されたテキストが 変更された 際に発出されます。つまり、ユーザーがキーボードで文字をタイプしたり、ペーストしたり、削除したりするたびに、このシグナルが送られてくるということです。

なぜ textEdited() が重要なのか?

  • 入力履歴の保存
    入力された内容を保存することで、履歴を参照したり、自動補完機能を実現したりすることができます。
  • 入力内容の検証
    入力された内容が正しい形式であるか、特定の条件を満たしているかをチェックできます。例えば、メールアドレスの形式が正しいか、パスワードが一定の長さ以上であるかなどを確認できます。
  • リアルタイムな入力処理
    ユーザーが入力するたびに、その場で処理を行うことができます。例えば、入力された文字を大文字に変換したり、入力可能な文字を制限したりといった処理が考えられます。

textEdited() の使い方

import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: myTextInput

    onTextChanged: {
        console.log("テキストが変更されました:", text)
    }
}

この例では、myTextInput という ID の TextInput が作成され、onTextChanged シグナルに接続されています。onTextChanged シグナルが発出されると、console.log 関数によって、変更された後のテキストがコンソールに出力されます。

  • 入力された文字数を表示
    Text {
        text: "入力文字数:" + myTextInput.text.length
    }
    
  • 入力可能な文字を数字だけに制限
    validator: RegExpValidator { regExp: /^[0-9]*$/ }
    
  • 入力内容を大文字に変換
    onTextChanged: {
        text = text.toUpperCase()
    }
    

TextInput.textEdited() シグナルは、Qt Quick で動的なユーザーインターフェースを作成する上で非常に便利な機能です。このシグナルを活用することで、ユーザーの入力に対してリアルタイムに反応し、様々な処理を行うことができます。

  • validator プロパティを使用することで、入力可能な文字を制限したり、入力形式を検証したりすることができます。
  • TextInput には、textChanged() というシグナルも存在しますが、textEdited() との違いは、textChanged() がカーソルが移動しただけでも発出される点です。


よくあるエラーとその解決策

Qt QuickのTextInput.textEdited()を使用する際に、以下のようなエラーやトラブルに遭遇することがあります。

シグナルが接続されない

  • 解決策
    • シグナルとスロットの記述を正確に行う。
    • オブジェクトが作成された後にシグナルを接続する。
    • onTextChangedではなくtextEdited()を使用しているか確認する。
    TextInput {
        id: myTextInput
        onTextChanged: { // 正しくはtextEdited()
            // ...
        }
    }
    
  • 原因
    • シグナルとスロットの記述ミス
    • オブジェクトのライフサイクルの問題

テキストが更新されない

  • 解決策
    • データバインディングの式が正しいか確認する。
    • スロット内の処理で、意図せずテキストをリセットしている箇所がないか確認する。
    Text {
        text: myTextInput.text // データバインディングでテキストを表示
    }
    
  • 原因
    • データバインディングの問題
    • スロット内の処理に誤りがある

特定の文字が入力できない

  • 解決策
    • validatorプロパティで設定している正規表現を確認する。
    • プラットフォームの入力設定を確認する。
    TextInput {
        validator: RegExpValidator { regExp: /^[a-zA-Z0-9_]*$/ } // 英数字とアンダースコアのみ許可
    }
    
  • 原因
    • 入力検証が厳しすぎる
    • プラットフォーム固有の入力制限

入力中にアプリケーションがクラッシュする

  • 解決策
    • デバッガーを使用して、例外が発生している箇所を特定する。
    • メモリ使用量を監視し、メモリリークがないか確認する。
  • 原因
    • スロット内の処理で例外が発生している
    • メモリリークが発生している
  • シンプルな例から始める
    複雑なコードを書く前に、簡単な例で動作を確認することで、問題を絞り込むことができます。
  • Qtのドキュメントを参照する
    TextInputクラスのドキュメントには、詳細な説明や例が記載されています。
  • Qt Creatorのデバッガーを活用する
    ブレークポイントを設定し、変数の値を確認することで、問題の原因を特定できます。
  • 入力方式
    IME(入力方式エディタ)との連携や、異なるキーボードレイアウトでの入力など、考慮すべき点は多岐にわたります。
  • プラットフォーム固有の挙動
    Qt Quickはマルチプラットフォームのフレームワークですが、プラットフォームによってTextInputの挙動が異なる場合があります。


入力された文字を大文字に変換

import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: myTextInput

    onTextChanged: {
        text = text.toUpperCase()
    }
}

入力可能な文字を数字だけに制限

import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: myTextInput
    validator: RegExpValidator { regExp: /^[0-9]*$/ }
}

入力された文字数をリアルタイムで表示

import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: myTextInput
}

Text {
    text: "入力文字数:" + myTextInput.text.length
}

入力内容を保存し、ボタンクリックで表示

import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: myTextInput
}

Button {
    text: "表示"
    onClicked: {
        console.log("入力されたテキスト:", myTextInput.text)
    }
}

入力中に特定の文字列が含まれるかチェック

import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: myTextInput

    onTextChanged: {
        if (text.indexOf("特定の文字列") !== -1) {
            console.log("特定の文字列が含まれています")
        }
    }
}

入力履歴を配列に保存

import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: myTextInput
}

ListModel {
    id: inputHistoryModel
}

Component.onCompleted: {
    myTextInput.onTextChanged: {
        inputHistoryModel.append(text)
    }
}

ListView {
    model: inputHistoryModel
    delegate: Text {
        text: modelData
    }
}

入力内容に基づいて他の要素の状態を変更

import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: myTextInput
}

Rectangle {
    color: myTextInput.text.length > 5 ? "green" : "red"
}

カスタムバリデーションの実装

import QtQuick 2.0

TextInput {
    id: myTextInput
    validator: CustomValidator {
        onValidate: function(text, pos) {
            // カスタムのバリデーションロジックを実装
            if (text.length < 3) {
                return Validation.Invalid;
            }
            return Validation.Acceptable;
        }
    }
}

注意点

  • Component.onCompleted
    コンポーネントが完全に初期化された後に実行されるブロックです。
  • ListModel
    入力履歴を保存するために使用できます。
  • onTextChanged
    テキストが変更されるたびに呼び出されます。
  • validator
    入力内容を制限したり、検証したりするために使用します。
  • フォーマット変換
    入力された数値を貨幣形式に変換する
  • 入力制限
    特定の文字列しか入力できないようにする
  • 入力補正
    入力ミスを自動で修正する
  • オートコンプリート
    入力中に候補を表示する

など、様々な機能を実現することができます。

  • 「入力中にリアルタイムでスペルチェックを行いたいのですが、どのようにすれば良いでしょうか?」
  • 「入力履歴をファイルに保存したいのですが、どのようにすれば良いでしょうか?」
  • 「パスワード入力で、文字種を制限したいのですが、どのようにすれば良いでしょうか?」


Qt Quick の TextInput.textEdited() シグナルは、テキスト入力の変更を検知する上で非常に便利な機能ですが、状況によっては、他の方法も検討する価値があります。

代替方法とその特徴

FocusInEvent と FocusOutEvent:

  • 使用例
    TextInput {
        id: myTextInput
    
        onFocusChanged: {
            if (hasFocus) {
                // フォーカス獲得時の処理
            } else {
                // フォーカス喪失時の処理
            }
        }
    }
    
  • 特徴
    • フォーカスが獲得された時、または失われた時に処理を実行します。
    • テキスト内容の変化だけでなく、入力フィールドへのフォーカスの移動自体を検知したい場合に有効です。

Timer:

  • 使用例
    TextInput {
        id: myTextInput
    }
    
    Timer {
        interval: 500 // 500ミリ秒ごとに実行
        running: true
        onTriggered: {
            // 定期的にテキスト内容をチェック
            console.log("現在のテキスト:", myTextInput.text)
        }
    }
    
  • 特徴
    • 定期的にテキスト内容をチェックし、変更があれば処理を実行します。
    • リアルタイム性は若干落ちますが、複雑な処理をバックグラウンドで行いたい場合に有効です。

カスタムプロパティ:

  • 使用例
    property string myCustomText: ""
    
    TextInput {
        id: myTextInput
        text: myCustomText
    
        onTextChanged: {
            myCustomText = text
        }
    }
    
  • 特徴
    • TextInput にカスタムプロパティを追加し、そのプロパティの変更を監視します。
    • より柔軟な制御が可能ですが、実装が複雑になる可能性があります。

どの方法を選ぶべきか?

  • 処理のタイミング
    フォーカスが変わった時や、定期的に処理を行いたい場合は、それぞれに対応するイベントやタイマーを使用します。
  • 柔軟性
    カスタムプロパティは、最も柔軟な方法ですが、実装が複雑になる可能性があります。
  • リアルタイム性
    textEdited() が最もリアルタイム性が高いです。
  • 処理の複雑さ
    カスタムプロパティは複雑な処理を実装したい場合に有効ですが、オーバーヘッドも大きくなります。
  • 処理のタイミング
    フォーカス関連の処理であれば FocusInEvent や FocusOutEvent が適しています。
  • 処理の頻度
    高頻度の処理であれば textEdited()、低頻度であれば Timer が適しています。

TextInput.textEdited() は、テキスト入力の変更を検知する最も一般的な方法ですが、状況によっては、他の方法も検討する価値があります。それぞれの方法の特徴を理解し、適切な方法を選択することで、より効率的で柔軟なアプリケーションを開発することができます。

  • コードの複雑さ
    どれくらいの複雑さを許容できるか?
  • 性能
    どの程度の性能が必要か?
  • 実行タイミング
    いつ実行したいのか?
  • 処理の内容
    何をしたいのか?