Qt TextInputバリデーション完全ガイド:textEdited()とValidatorの使い分け
TextInput.textEdited()とは?
TextInput
はQt Quickでテキスト入力を行うための要素です。textEdited()
シグナルは、ユーザーがTextInput
内のテキストを編集した際に発行されるシグナルです。具体的には、以下のような場合に発行されます。
- テキストをカットまたはコピーして削除したとき
- ペースト操作でテキストを挿入したとき
- キーボードで文字を入力、削除、または置換したとき
このシグナルは、テキストが変更されるたびに発行されますが、プログラム側からtext
プロパティを直接変更した場合には発行されません。ユーザーによる編集操作のみを検知します。
どのように使うのか?
textEdited()
シグナルは、ユーザーの編集操作に応じて何らかの処理を行いたい場合に便利です。例えば、以下のような用途が考えられます。
- 文字数カウント
- 入力されたテキストの履歴管理
- 入力されたテキストに応じたリアルタイム検索
- 入力されたテキストのバリデーション(検証)
コード例(QML)
以下に、TextInput
でテキストが編集された際にコンソールにメッセージを出力する簡単な例を示します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
title: "TextInput Example"
TextInput {
id: input
anchors.centerIn: parent
width: 200
placeholderText: "テキストを入力してください"
onTextEdited: {
console.log("テキストが編集されました: " + input.text);
}
}
}
この例では、TextInput
のonTextEdited
ハンドラを使用して、textEdited()
シグナルに接続しています。ユーザーがテキストを編集すると、コンソールに「テキストが編集されました: [編集後のテキスト]」というメッセージが表示されます。
重要なポイント
input.text
で現在のテキストを取得できます。onTextEdited
ハンドラを使用して、シグナルに接続し、必要な処理を記述します。- プログラム側から
text
プロパティを直接変更した場合には発行されません。 textEdited()
シグナルは、ユーザーによる編集操作のみを検知します。
TextInput.textEdited()
シグナルは、Qt Quickでユーザーのテキスト編集操作を検知するための重要なシグナルです。このシグナルを利用することで、ユーザーの入力に応じた様々な処理を実装することができます。
よくあるエラーとトラブルシューティング
-
- 原因
- プログラム側で
text
プロパティを直接変更している。textEdited()
はユーザーの編集操作のみで発行されます。 TextInput
がフォーカスを持っていない。- シグナルハンドラの接続が正しく行われていない。
- プログラム側で
- トラブルシューティング
- ユーザーの編集操作でシグナルが発行されるか確認する。
TextInput
にフォーカスがあるか確認する。onTextEdited
ハンドラが正しく記述されているか確認する。- デバッグツールなどで、シグナルが発行されるか確認する。
- 原因
-
textEdited()
シグナルが過剰に発行される- 原因
- リアルタイム処理を行う場合に、処理負荷が高く、パフォーマンスが低下している。
- 入力された文字ごとに処理を行うため、処理が重い。
- トラブルシューティング
- 処理を最適化する。
- タイマーを使用して、一定時間経過後に処理を実行するようにする。
- 処理を必要な時にのみ行うように、条件分岐を適切に利用する。
- 原因
-
textEdited()
シグナルハンドラ内でエラーが発生する- 原因
- ハンドラ内のコードにバグがある。
- ハンドラ内で例外が発生している。
- トラブルシューティング
- ハンドラ内のコードをデバッグする。
- 例外処理を追加する。
- コンソールに表示されるエラーメッセージを確認する。
- 原因
-
入力されたテキストのバリデーションが正しく行われない
- 原因
- バリデーションのロジックが間違っている。
- バリデーションのタイミングが間違っている。
- トラブルシューティング
- バリデーションのロジックを見直す。
textEdited()
シグナルハンドラ内でバリデーションを行うか、onTextChanged()
シグナルハンドラで行うか、または別のシグナルや関数で行うか、バリデーションのタイミングを検討する。
- 原因
-
入力されたテキストの処理が遅延する
- 原因
textEdited()
シグナルハンドラ内の処理が重い。- 他の処理との競合が発生している。
- トラブルシューティング
- 処理を最適化する。
- 非同期処理を使用する。
- スレッド処理を検討する。
- 原因
デバッグのヒント
- Qtのログ出力を有効にして、エラーメッセージや警告メッセージを確認する。
- Qt Creatorのデバッガを使用して、コードをステップ実行し、変数の値を確認する。
console.log()
を使用して、シグナルが発行されたタイミングやテキストの内容を確認する。
例1:リアルタイム文字数カウント
この例では、TextInput
に入力された文字数をリアルタイムで表示します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
title: "TextInput 文字数カウント"
Column {
anchors.centerIn: parent
TextInput {
id: input
width: 300
placeholderText: "テキストを入力してください"
onTextEdited: {
countText.text = "文字数: " + input.text.length;
}
}
Text {
id: countText
text: "文字数: 0"
}
}
}
説明
- 取得した文字数を
Text
要素のtext
プロパティに設定し、表示を更新します。 TextInput
のonTextEdited
ハンドラ内で、input.text.length
を使用して入力されたテキストの長さを取得します。
例2:リアルタイム検索(簡易版)
この例では、TextInput
に入力されたテキストに基づいて、簡易的な検索結果を表示します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 300
title: "TextInput リアルタイム検索"
Column {
anchors.centerIn: parent
TextInput {
id: searchInput
width: 300
placeholderText: "検索キーワードを入力してください"
onTextEdited: {
updateSearchResults();
}
}
ListView {
id: searchResults
width: 300
height: 200
model: searchModel
}
}
ListModel {
id: searchModel
}
function updateSearchResults() {
searchModel.clear();
const keyword = searchInput.text.toLowerCase();
const data = ["apple", "banana", "cherry", "date", "elderberry"]; // 検索対象データ
for (let i = 0; i < data.length; i++) {
if (data[i].toLowerCase().includes(keyword)) {
searchModel.append({ name: data[i] });
}
}
}
}
説明
- 検索対象データは、
data
配列に格納されています。 toLowerCase()
とincludes()
を用いて大文字小文字を区別せず、キーワードが含まれるデータを検索しています。ListView
がListModel
のデータを表示します。updateSearchResults()
関数では、TextInput
に入力されたキーワードに基づいて、ListModel
を更新します。TextInput
のonTextEdited
ハンドラ内で、updateSearchResults()
関数を呼び出します。
例3:入力値のバリデーション
この例では、TextInput
に入力された値が数値であるかどうかを検証し、結果を表示します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
title: "TextInput バリデーション"
Column {
anchors.centerIn: parent
TextInput {
id: numberInput
width: 200
placeholderText: "数値を入力してください"
onTextEdited: {
validateNumber();
}
}
Text {
id: validationResult
text: ""
}
}
function validateNumber() {
if (isNaN(numberInput.text)) {
validationResult.text = "数値ではありません";
} else {
validationResult.text = "数値です";
}
}
}
- 検証結果を
Text
要素のtext
プロパティに設定し、表示を更新します。 validateNumber()
関数では、isNaN()
関数を使用して入力された値が数値であるかどうかを検証します。TextInput
のonTextEdited
ハンドラ内で、validateNumber()
関数を呼び出します。
onTextChanged() シグナル
- 例えば、プログラム側で初期値を設定したり、外部データからテキストを更新したりする場合にも、変更を検知できます。
textEdited()
よりも広範なテキスト変更を検知したい場合に適しています。textChanged()
シグナルは、TextInput
のtext
プロパティが変更されるたびに発行されます。ユーザーによる編集だけでなく、プログラム側でtext
プロパティを直接変更した場合にも発行されます。
TextInput {
id: input
onTextChanged: {
console.log("テキストが変更されました: " + input.text);
}
}
onEditingFinished() シグナル
- 例えば、入力されたテキストのバリデーションや、データベースへの保存など、編集完了後に実行する必要がある処理に適しています。
editingFinished()
シグナルは、ユーザーがテキスト編集を完了したときに発行されます。具体的には、Enterキーを押したり、フォーカスがTextInput
から離れたりした場合に発行されます。
TextInput {
id: input
onEditingFinished: {
console.log("編集が完了しました: " + input.text);
// バリデーションや保存処理など
}
}
Keys.onPressed ハンドラ
editingFinished()
と同様に、編集完了後の処理に使用できますが、特定のキー操作に限定されます。- 例えば、Enterキーが押されたときに特定の処理を行いたい場合に利用できます。
Keys.onPressed
ハンドラを使用して、特定のキーが押されたことを検知できます。
TextInput {
id: input
Keys.onPressed: {
if (event.key === Qt.Key_Return) {
console.log("Enterキーが押されました: " + input.text);
// 処理
event.accepted = true; // イベント処理済みを通知
}
}
}
タイマーを用いた遅延処理
- タイマーがリセットされるように実装することで、ユーザーが連続して入力している間は処理を遅延させ、入力が落ち着いた時点で処理を実行できます。
- リアルタイム検索など、頻繁なテキスト変更に対して処理負荷を軽減したい場合に有効です。
textEdited()
やtextChanged()
シグナルとタイマーを組み合わせて、一定時間経過後に処理を実行できます。
TextInput {
id: input
property Timer delayTimer: Timer {
interval: 500 // 500ミリ秒遅延
onTriggered: {
console.log("遅延処理: " + input.text);
}
running: false
repeat: false
}
onTextEdited: {
delayTimer.restart();
}
}
Validatorの使用
- 入力値の形式を制限したい場合に便利です。
- 入力中にリアルタイムで検証を行い、無効な入力は拒否できます。
IntValidator
、DoubleValidator
、RegExpValidator
などが用意されており、特定の形式の入力のみを許可できます。TextInput
にはvalidator
プロパティがあり、入力値を検証するためのバリデーターを設定できます。
TextInput {
id: input
validator: IntValidator {
bottom: 0
top: 100
}
}
- 入力値の形式を制限したい場合は、バリデーターを使用します。
- 頻繁なテキスト変更に対する処理負荷を軽減したい場合は、タイマーを用いた遅延処理を検討します。
- 編集完了後に処理を行いたい場合は、
editingFinished()
またはKeys.onPressed
を使用します。 - プログラム側からの変更も検知したい場合は、
textChanged()
を使用します。 - ユーザーの編集操作のみを検知したい場合は、
textEdited()
を使用します。