Qt Quick TextInput テキスト選択方法：select() の使い方と注意点
2025-04-26
具体的には、TextInput.select() を呼び出すと、以下のいずれかの動作が行われます。
- 引数を指定して呼び出した場合
指定された範囲のテキストが選択状態になります。引数は、選択を開始する開始位置 (start) と、選択する文字数 (length) の2つの整数値です。 - 引数なしで呼び出した場合
テキスト入力フィールド内のすべてのテキストが選択状態になります。
基本的な使い方
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
Rectangle {
width: 300
height: 100
TextInput {
id: inputField
anchors.fill: parent
text: "これは選択されるテキストです。"
}
Button {
text: "全選択"
anchors.bottom: parent.bottom
onClicked: {
inputField.select() // 全テキストを選択
}
}
Button {
text: "部分選択 (3文字目から5文字)"
anchors.bottom: parent.bottom
anchors.left: parent.horizontalCenter
onClicked: {
inputField.select(2, 5) // インデックス2から5文字（「は選択さ」）を選択
}
}
}
-
タイミング
TextInput要素がフォーカスを持っているかどうかに関わらず、select()メソッドを呼び出すことができます。ただし、ユーザーが選択範囲を視覚的に確認できるのは、通常TextInputがアクティブな状態（フォーカスを持っている）の場合です。 -
目的
- ユーザーにテキスト全体または特定の部分を簡単にコピーしたり、編集したりする機会を提供するため。
- プログラムのロジックに基づいて、特定のテキスト範囲を強調表示するため。
-
戻り値
このメソッドは値を返しません (void)。 -
引数
start(int, オプション): 選択を開始するテキスト内のインデックス（0から始まる）。省略した場合、または無効な値が指定された場合は、0とみなされます。length(int, オプション): 選択する文字数。省略した場合、または無効な値が指定された場合は、開始位置からテキストの最後までが選択されます。
- 選択範囲は、
TextInput要素のselectionStartプロパティとselectionLengthプロパティを通じて取得したり、プログラムから設定したりすることもできます。select()メソッドは、これらのプロパティを内部的に更新します。 - 選択されたテキストは、通常、オペレーティングシステムやQtのスタイル設定に基づいてハイライト表示されます。
引数の範囲エラー
- トラブルシューティング
startが 0 以上であり、テキストの長さを超えないことを確認してください。lengthが 0 以上であり、start + lengthがテキストの長さを超えないことを確認してください。- テキストの内容が動的に変化する場合は、
select()を呼び出す前にテキストの長さを取得し、引数が有効な範囲内であることを確認するロジックを追加してください。
- 原因
引数の値がテキストの範囲外にある。 - エラー内容
startやlengthに無効な値（負の数、テキスト長を超える値など）を指定した場合、意図しない選択範囲になったり、場合によってはプログラムがクラッシュしたりする可能性があります。
例
TextInput {
id: inputField
text: "abcde"
}
Button {
text: "不正な選択"
onClicked: {
// エラーの可能性: 開始位置がテキスト長を超える
// inputField.select(10, 2);
// エラーの可能性: 長さが負の数
// inputField.select(1, -1);
// 回避策: 事前に範囲をチェック
let startIndex = 3;
let selectLength = 5;
if (startIndex >= 0 && startIndex < inputField.text.length &&
selectLength >= 0 && startIndex + selectLength <= inputField.text.length) {
inputField.select(startIndex, selectLength);
} else {
console.log("選択範囲が無効です。");
}
}
}
期待通りの選択が行われない
- トラブルシューティング
select()を呼び出す前に、TextInput要素にフォーカスを与える必要があるかどうか検討してください（inputField.forceActiveFocus()など）。select()の呼び出し後に、選択範囲をクリアするような他の処理が行われていないか確認してください。selectionStartおよびselectionLengthプロパティを監視し、select()呼び出し後の値が期待通りになっているか確認することで、内部的な選択状態を確認できます。
- 原因
TextInput要素がフォーカスを持っていない場合、選択状態が視覚的に強調表示されないことがあります。ただし、内部的には選択範囲は設定されています。- 他の操作や状態変更によって、
select()の呼び出し後に選択範囲がリセットされている可能性があります。
- エラー内容
select()を呼び出しても、意図したテキスト範囲が選択されない。
例
TextInput {
id: inputField
text: "サンプルテキスト"
onSelectionChanged: {
console.log("選択開始:", selectionStart, "選択長:", selectionLength);
}
}
Button {
text: "選択"
onClicked: {
inputField.select(2, 4);
}
}
選択後にキャレットの位置が意図しない場所にある
- トラブルシューティング
- 選択後にキャレットの位置を特定の場所に移動させたい場合は、
cursorPositionプロパティを明示的に設定する必要があります。
- 選択後にキャレットの位置を特定の場所に移動させたい場合は、
- 原因
select()メソッド自体は主に選択範囲を設定するものであり、キャレットの位置を明示的に制御するものではありません。 - エラー内容
テキストを選択した後、キャレット（カーソル）の位置が期待した場所（通常は選択範囲の末尾）にない。
例
TextInput {
id: inputField
text: "テキスト"
}
Button {
text: "選択して末尾にキャレット移動"
onClicked: {
inputField.select(0, inputField.text.length);
inputField.cursorPosition = inputField.text.length;
}
}
イベントハンドリングとの競合
- トラブルシューティング
- イベントハンドラー内のロジックを見直し、
select()の呼び出しがどのような影響を与えるか理解してください。 - 必要であれば、一時的にイベントハンドラーを無効化したり、フラグを使用して特定の処理をスキップしたりするなどの対策を検討してください。
- イベントハンドラー内のロジックを見直し、
- 原因
選択範囲の変更が、他のプロパティの変更やシグナルの発行をトリガーし、その結果として意図しない動作が発生する。 - エラー内容
select()の呼び出しが、他のイベントハンドラー（例えばonTextChangedなど）と予期せぬ相互作用を引き起こす。
- Qt のドキュメント参照
Qt の公式ドキュメントでTextInputおよび関連するプロパティやメソッドの説明を再度確認してください。 - 最小限のコードで再現
問題が発生する状況を再現できる最小限のコードを作成し、問題を特定しやすくしてください。 - ステップ実行
Qt Creator のデバッガーを使用して、コードをステップ実行し、select()の呼び出し前後の変数の状態やプログラムの流れを詳細に追跡してください。 - ログ出力
console.log()を使用して、selectionStart、selectionLength、テキストの内容などの関連するプロパティの値をログに出力し、状態の変化を確認してください。
例1: ボタンクリックで全テキストを選択する
これは最も基本的な使い方です。ボタンがクリックされたときに、TextInput 内のすべてのテキストを選択状態にします。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
Rectangle {
width: 300
height: 100
TextInput {
id: inputField
anchors.fill: parent
text: "これは選択されるテキストです。"
}
Button {
text: "全選択"
anchors.bottom: parent.bottom
onClicked: {
inputField.select() // 引数なしで呼び出し、全テキストを選択
}
}
}
説明
- 引数なしで
select()を呼び出すと、inputFieldのtextプロパティに格納されているすべての文字列が選択状態になります。 Button要素がクリックされると、そのonClickedシグナルハンドラ内のinputField.select()が実行されます。TextInput要素 (inputField) に初期テキストが設定されています。
例2: ボタンクリックで特定範囲のテキストを選択する
この例では、select() に開始位置と長さを指定して、テキストの一部を選択します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
Rectangle {
width: 300
height: 100
TextInput {
id: inputField
anchors.fill: parent
text: "0123456789"
}
Button {
text: "3文字目から5文字選択"
anchors.bottom: parent.bottom
onClicked: {
inputField.select(2, 5) // インデックス2から5文字（"23456"）を選択
}
}
}
説明
select(2, 5)は、インデックスが 2 の文字（'2'）から始まり、そこから 5 文字分のテキストを選択することを意味します。TextInputのテキストは "0123456789" です。
例3: テキストが変更されたときに特定の単語を選択する
この例では、TextInput のテキストが変更されたときに、特定の単語（ここでは最初の単語）を選択します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
Rectangle {
width: 300
height: 100
TextInput {
id: inputField
anchors.fill: parent
text: "最初の 単語 を選択します"
onTextChanged: {
let firstSpace = text.indexOf(" ");
if (firstSpace > 0) {
select(0, firstSpace); // 最初のスペースまでのテキストを選択
} else {
select(0, text.length); // スペースがない場合は全テキストを選択
}
}
}
}
説明
- スペースが見つからない場合（単語が一つしかない場合など）、
select(0, text.length)で全テキストを選択します。 - スペースが見つかった場合、
select(0, firstSpace)で最初の単語（スペースまでのテキスト）を選択します。 text.indexOf(" ")で最初のスペースの位置を見つけます。TextInputのonTextChangedシグナルハンドラは、テキストが変更されるたびに実行されます。
例4: 別の要素からの指示でテキストを選択する
この例では、別のコントロール（スライダー）の値に基づいて、TextInput の選択範囲を動的に変更します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
Rectangle {
width: 300
height: 150
TextInput {
id: inputField
anchors.top: parent.top
anchors.left: parent.left
anchors.right: parent.right
text: "このテキストは動的に選択されます"
}
Slider {
id: startSlider
anchors.top: inputField.bottom
anchors.left: parent.left
anchors.right: parent.right
minimumValue: 0
maximumValue: inputField.text.length
value: 0
onValueChanged: {
let end = endSlider.value;
if (value > end) {
endSlider.value = value;
}
inputField.select(value, end - value);
}
}
Slider {
id: endSlider
anchors.top: startSlider.bottom
anchors.left: parent.left
anchors.right: parent.right
minimumValue: 0
maximumValue: inputField.text.length
value: 5
onValueChanged: {
let start = startSlider.value;
if (value < start) {
startSlider.value = value;
}
inputField.select(start, value - start);
}
}
}
説明
- スライダーの範囲がテキスト長に合わせて設定されているため、有効な範囲内で選択を操作できます。
- 各スライダーの値が変更されると、
onValueChangedハンドラ内でinputField.select()が呼び出され、現在のスライダーの値に基づいて選択範囲が更新されます。 - 2つの
Slider要素 (startSliderとendSlider) を使用して、TextInputの選択開始位置と終了位置を制御します。
例5: 特定のパターンに一致するテキストを選択する (より複雑な例)
この例は、正規表現を使用して TextInput 内の特定のパターンに一致する最初の箇所を選択するものです。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
import Qt.labs.qml 1.0 // RegExp を使用するため
Rectangle {
width: 300
height: 150
TextInput {
id: inputField
anchors.top: parent.top
anchors.left: parent.left
anchors.right: parent.right
text: "apple banana orange apple grape"
}
TextField {
id: patternField
anchors.top: inputField.bottom
anchors.left: parent.left
anchors.right: parent.right
placeholderText: "検索パターン"
}
Button {
text: "パターンで選択"
anchors.bottom: parent.bottom
onClicked: {
try {
let regex = new RegExp(patternField.text);
let match = inputField.text.match(regex);
if (match) {
let startIndex = inputField.text.indexOf(match[0]);
inputField.select(startIndex, match[0].length);
} else {
console.log("パターンに一致するテキストが見つかりませんでした。");
}
} catch (e) {
console.error("無効な正規表現:", e);
}
}
}
}
- 無効な正規表現が入力された場合は、エラーメッセージがコンソールに出力されます。
- 一致する部分が見つかった場合、その開始位置 (
indexOf) と長さを取得し、inputField.select()で選択します。 - ボタンがクリックされると、入力されたパターンで
RegExpオブジェクトを作成し、inputField.text.match(regex)で最初に一致する部分を検索します。 TextField(patternField) に検索する正規表現パターンを入力します。
selectionStart および selectionLength プロパティの直接操作
TextInput 要素は、現在選択されているテキストの開始位置を示す selectionStart プロパティと、選択されている文字数を示す selectionLength プロパティを持っています。これらのプロパティを直接設定することで、テキストの選択範囲をプログラムから制御できます。
TextInput {
id: inputField
text: "選択範囲を操作します"
}
Button {
text: "先頭3文字を選択"
onClicked: {
inputField.selectionStart = 0;
inputField.selectionLength = 3;
}
}
Button {
text: "末尾4文字を選択"
anchors.left: parent.horizontalCenter
onClicked: {
inputField.selectionStart = inputField.text.length - 4;
inputField.selectionLength = 4;
}
}
Button {
text: "選択を解除"
anchors.right: parent.right
onClicked: {
inputField.selectionLength = 0; // 選択長を0にすることで選択を解除
}
}
説明
- 選択を解除したい場合は、
selectionLengthを 0 に設定します。 selectionLengthに選択する文字数を設定します。selectionStartに選択を開始するインデックス（0から始まる）を設定します。
利点
- 既存の選択範囲に基づいて、相対的な変更を行う場合に便利です。
cursorPosition プロパティと組み合わせた選択
cursorPosition プロパティは、テキスト入力カーソルの現在位置を示します。これを利用して、現在のカーソル位置から特定の範囲を選択することができます。
TextInput {
id: inputField
text: "カーソル位置から選択"
cursorPosition: 5 // 初期カーソル位置を設定
}
Button {
text: "カーソルから3文字選択"
onClicked: {
let start = inputField.cursorPosition;
inputField.selectionStart = start;
inputField.selectionLength = 3;
}
}
Button {
text: "カーソル位置まで全選択"
anchors.left: parent.horizontalCenter
onClicked: {
inputField.selectionStart = 0;
inputField.selectionLength = inputField.cursorPosition;
}
}
説明
- ボタンクリック時に、現在の
cursorPositionを選択開始位置として利用し、selectionLengthを設定することで選択を行います。 cursorPositionを設定することで、初期カーソルの位置を制御できます。
利点
- テキスト編集中に、特定の操作でカーソル位置に関連した選択を行いたい場合に便利です。
- ユーザーの現在のカーソル位置を基準とした選択操作が可能です。
マウス操作による選択
ユーザーは通常、マウスをドラッグすることで TextInput 内のテキストを選択できます。プログラムからこのマウス操作を直接制御することは一般的ではありませんが、MouseArea などの要素と組み合わせて、より高度な選択インタラクションを実装することは可能です。
例えば、特定の領域をクリックしたときに、関連するテキスト範囲をプログラム的に選択するといったシナリオが考えられます。
Rectangle {
width: 300
height: 50
TextInput {
id: inputField
anchors.fill: parent
text: "部分的に選択可能なテキスト"
readOnly: true // 編集不可にする（例として）
}
MouseArea {
anchors.fill: inputField
onClicked: (mouse) => {
let clickX = mouse.x;
let charWidth = inputField.width / inputField.text.length; // 簡易的な文字幅の推定
let clickedIndex = Math.floor(clickX / charWidth);
// クリックされた位置に基づいて選択範囲を設定するロジック
if (clickedIndex >= 0 && clickedIndex < inputField.text.length) {
inputField.selectionStart = clickedIndex;
inputField.selectionLength = 1; // 例として1文字選択
}
}
}
}
説明
- クリックされた X 座標から、簡易的にクリックされた文字のインデックスを推定し、
selectionStartとselectionLengthを設定して選択を行います。 MouseAreaをTextInputの上に重ね、クリックイベントを捕捉します。TextInputをreadOnlyに設定し、編集を禁止しています（あくまで例として）。
利点
- 特定の視覚的な要素と連動した選択制御が可能です。
- カスタムな選択インタラクションを実装できます。
注意点
- マウス操作をプログラムから完全にエミュレートすることは複雑であり、通常は推奨されません。上記は、クリック位置に基づいてプログラム的に選択範囲を設定する例です。
フォーカスと選択の組み合わせ
TextInput がフォーカスを得た際に、自動的に全テキストを選択したり、特定の範囲を選択したりすることができます。
TextInput {
id: inputField
text: "フォーカス時に選択"
focus: true // 初期フォーカスを設定 (または他の方法でフォーカスを与える)
onActiveFocusChanged: (hasFocus) => {
if (hasFocus) {
inputField.select(); // フォーカスを得たときに全選択
// または
// inputField.selectionStart = 0;
// inputField.selectionLength = 5; // 特定範囲を選択
} else {
inputField.selectionLength = 0; // フォーカスが失われたときに選択を解除 (任意)
}
}
}
説明
- フォーカスを得た (
hasFocusがtrue) 時に、select()を呼び出して全テキストを選択したり、selectionStartとselectionLengthを設定して特定範囲を選択したりできます。 onActiveFocusChangedシグナルハンドラは、要素がフォーカスを得たり失ったりするたびに実行されます。focus: trueを設定すると、初期状態でこのTextInputがフォーカスを持ちます。
- ユーザーに操作を促す視覚的なフィードバックを提供できます。
- 特定の状況（例えば、入力フィールドがアクティブになったとき）に自動的にテキストを選択できます。