Qt TextInput readOnly エラーとトラブルシューティング

2025-04-26

Qt プログラミングにおける TextInput.readOnly プロパティは、TextInput 要素がユーザーによる編集を受け付けないようにするためのものです。このプロパティを true に設定すると、テキスト入力フィールドの内容は表示されるものの、ユーザーはキーボードや他の方法でテキストを変更することができなくなります。

主な機能と目的

  • ユーザーインターフェースの制御
    ユーザーが特定のフィールドを誤って編集することを防ぎたい場合に有効です。
  • 情報の表示
    重要な情報をユーザーに表示するが、その情報を変更させたくない場合に役立ちます。例えば、表示専用のラベルや、ユーザーが参照するだけの情報を示す場合などです。
  • 表示専用
    readOnlytrue の場合、TextInput は表示専用のテキストフィールドとして機能します。ユーザーはテキストをコピーすることはできますが、入力や変更はできません。

設定方法

TextInput 要素の readOnly プロパティは、QML コード内で以下のように設定できます。

import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15

Window {
    width: 300
    height: 100
    title: "TextInput ReadOnly Example"

    TextInput {
        id: readOnlyInput
        text: "このテキストは編集できません"
        readOnly: true
        anchors.left: parent.left
        anchors.top: parent.top
        width: parent.width
        color: "black"
        font.pointSize: 12
        padding: 10
    }

    TextInput {
        id: editableInput
        text: "このテキストは編集できます"
        readOnly: false // または省略時 (デフォルトは false)
        anchors.left: parent.left
        anchors.top: readOnlyInput.bottom
        width: parent.width
        color: "blue"
        font.pointSize: 12
        padding: 10
    }
}

上記の例では、readOnlyInputreadOnly: true と設定されているため、ユーザーはテキストを変更できません。一方、editableInputreadOnlyfalse (または設定がない) であるため、ユーザーはテキストを編集できます。

使用例

  • 読み取り専用のフォームフィールド
    ユーザーが参照するだけの情報を持つフォームフィールド。
  • 計算結果の表示
    計算された結果をユーザーに表示するが、直接編集させたくない場合。
  • 静的な情報の表示
    ユーザーに表示するだけのタイトルや説明文など。
  • ユーザーインターフェースのデザインによっては、readOnly の状態が視覚的に明確に示されるように、背景色やカーソルの形状などを変更することも有効です。
  • readOnly プロパティが true の場合でも、テキストはプログラムによって(例えば、text プロパティを直接変更するなどして)変更することができます。


Qt プログラミングにおいて TextInput.readOnly プロパティを使用する際に遭遇する可能性のある一般的なエラーと、それらのトラブルシューティングについて説明します。

一般的なエラー

    • エラー
      ユーザーが TextInput フィールドを編集しようとするが、何も反応がない、またはカーソルが表示されない。
    • 原因
      readOnly プロパティが意図せず true に設定されている可能性があります。
    • トラブルシューティング
      • QML コード内で該当する TextInput 要素の readOnly プロパティの値を確認します。
      • プロパティバインディングを使用している場合は、そのバインディングが正しく設定されているか確認します。
      • スクリプトやロジックによって readOnly プロパティが動的に変更されている場合は、その部分のコードを確認します。
  1. テキストが期待通りに表示されない

    • エラー
      readOnly に設定された TextInput のテキストが、初期値や期待される値と異なっている。
    • 原因
      • text プロパティが正しく設定されていない。
      • 他のロジックやバインディングによって text プロパティが意図せず変更されている。
      • readOnly の設定とは直接関係ありませんが、混同される可能性があります。
    • トラブルシューティング
      • TextInput 要素の text プロパティが正しく初期化されているか確認します。
      • text プロパティにバインディングが設定されている場合は、そのバインディングのロジックを確認します。
      • Component.onCompleted ブロックなど、コンポーネントの初期化時に text が正しく設定されているか確認します。
  2. ユーザーが編集可能だと誤解する

    • エラー
      readOnly に設定された TextInput が、視覚的に編集可能であるとユーザーが誤解し、クリックや入力操作を試みる。
    • 原因
      • TextInput の外観が、編集可能なフィールドと区別されていない。
      • ユーザーインターフェースのデザインが、readOnly の状態を明確に示していない。
    • トラブルシューティング
      • TextInputbackgroundcolorborder などのプロパティを変更して、読み取り専用であることを視覚的に明確にします。例えば、背景色を薄くする、ボーダーを点線にするなど。
      • カーソル形状(cursorShape プロパティ)を変更して、読み取り専用であることを示すことも有効です(ただし、readOnlytrue の場合、カーソルは通常表示されません)。
      • ユーザーに readOnly のフィールドであることを示すためのラベルや説明を追加することも検討します。
  3. readOnly の状態が期待通りに切り替わらない

    • エラー
      プログラムのロジックによって readOnly プロパティが動的に変更されるはずなのに、その変更が反映されない。
    • 原因
      • readOnly プロパティが正しくバインディングされていない。
      • 変更をトリガーするロジックに問題がある。
      • Qt.binding を使用している場合、依存するデータが正しく更新されていない。
    • トラブルシューティング
      • readOnly プロパティのバインディング式を確認し、依存する変数が正しく更新されているか確認します。
      • console.log() などを使用して、readOnly プロパティの値が期待通りに変化しているかデバッグします。
      • 変更をトリガーするロジックが意図したタイミングで実行されているか確認します。

トラブルシューティングの一般的な手順

  1. コードの確認
    問題が発生している TextInput 要素の QML コードを注意深く確認し、readOnly プロパティがどのように設定されているか、そしてその値が意図した通りになっているかを確認します。

  2. プロパティバインディングの確認
    readOnly プロパティや text プロパティが他のプロパティや変数にバインドされている場合は、そのバインディングのロジックを確認します。

  3. コンソール出力の利用
    console.log() を使用して、特定の時点での readOnly プロパティの値や、関連する変数の値をデバッグ出力し、状態の変化を追跡します。

  4. シンプルなテストケースの作成
    問題を切り分けるために、問題が発生している TextInput 要素だけを含むシンプルなテストケースを作成し、そこで挙動を確認します。

  5. Qt Creator のデバッガーの利用
    Qt Creator のデバッガーを使用して、プログラムの実行をステップ実行し、readOnly プロパティの値や関連する変数の値を監視します。

  6. ドキュメントの確認
    Qt の公式ドキュメントを参照し、TextInput クラスや readOnly プロパティに関する詳細な情報や注意点を確認します。



例 1: 基本的な読み取り専用テキストフィールド

import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15

Window {
    width: 300
    height: 100
    title: "読み取り専用 TextInput の例"

    TextInput {
        id: readOnlyField
        text: "このテキストは変更できません"
        readOnly: true
        anchors.centerIn: parent
        font.pointSize: 14
        color: "gray"
        padding: 10
        background: Rectangle {
            color: "lightgray"
            radius: 5
        }
    }
}

解説

  • この TextInput は表示専用であり、ユーザーはテキストを編集できません。
  • font.pointSizecolorpaddingbackground などのプロパティを設定して、見た目を調整しています。
  • anchors.centerIn: parent でウィンドウの中央に配置しています。
  • text プロパティには表示するテキストを設定しています。
  • この例では、readOnly プロパティを true に設定した TextInput を作成しています。

例 2: 状態によって読み取り専用を切り替える

import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15
import QtQuick.Controls 2.15

Window {
    width: 300
    height: 150
    title: "状態による読み取り専用の切り替え"

    property bool isReadOnlyEnabled: true

    Column {
        anchors.centerIn: parent
        spacing: 10

        TextInput {
            id: editableField
            text: "編集可能なテキスト"
            readOnly: isReadOnlyEnabled
            width: 200
            padding: 10
            border.width: 1
            border.color: "lightgray"
        }

        CheckBox {
            text: "読み取り専用にする"
            checked: isReadOnlyEnabled
            onClicked: {
                isReadOnlyEnabled = !isReadOnlyEnabled
            }
        }

        Text {
            text: isReadOnlyEnabled ? "読み取り専用モード" : "編集可能モード"
            color: isReadOnlyEnabled ? "gray" : "green"
            font.italic: true
        }
    }
}

解説

  • 状態を示すテキストも表示しています。
  • チェックボックスがチェックされている場合 (isReadOnlyEnabledtrue)、TextInput は読み取り専用になります。チェックが外れている場合 (isReadOnlyEnabledfalse)、編集可能になります。
  • CheckBox を使用して、isReadOnlyEnabled の値を切り替えることで、TextInput の読み取り専用状態を動的に変更しています。
  • isReadOnlyEnabled というブール型のプロパティを定義し、TextInputreadOnly プロパティにバインドしています。

例 3: 計算結果を読み取り専用で表示する

import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15

Window {
    width: 300
    height: 100
    title: "計算結果の表示 (読み取り専用)"

    property real value1: 10
    property real value2: 5
    property real result: value1 * value2

    Column {
        anchors.centerIn: parent
        spacing: 10

        Text {
            text: "値1: " + value1
        }

        Text {
            text: "値2: " + value2
        }

        TextInput {
            text: "結果: " + result
            readOnly: true
            width: 200
            padding: 10
            color: "blue"
            font.bold: true
            background: Rectangle {
                color: "lightblue"
                radius: 3
            }
        }
    }
}

解説

  • 計算結果は result プロパティの値が変更されるたびに自動的に更新されます。
  • 計算結果を TextInput で表示していますが、readOnly: true に設定されているため、ユーザーは結果を直接編集できません。
  • value1value2 という数値のプロパティを定義し、result プロパティでその積を計算しています。

例 4: ユーザー入力と読み取り専用の組み合わせ

import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15
import QtQuick.Controls 2.15

Window {
    width: 300
    height: 200
    title: "ユーザー入力と読み取り専用の組み合わせ"

    property string userInput: ""
    property string displayText: "入力されたテキスト: " + userInput

    Column {
        anchors.centerIn: parent
        spacing: 10

        TextInput {
            placeholderText: "何か入力してください"
            width: 200
            onTextChanged: {
                userInput = text
            }
        }

        TextInput {
            text: displayText
            readOnly: true
            width: 200
            padding: 10
            color: "darkgreen"
            background: Rectangle {
                color: "lightgreen"
                radius: 3
            }
        }
    }
}
  • この2番目の TextInputreadOnly: true に設定されているため、ユーザーは表示されたテキストを直接編集することはできません。ユーザーが最初のフィールドに入力するたびに、2番目のフィールドの表示が更新されます。
  • 2番目の TextInput は、displayText プロパティの値("入力されたテキスト: " + userInput)を表示します。
  • 最初の TextInput はユーザーがテキストを入力するためのものです。onTextChanged シグナルハンドラー内で、入力されたテキストを userInput プロパティに保存しています。


TextInput.readOnly プロパティを使用する以外にも、ユーザーインターフェース上でテキスト入力を制限し、実質的に読み取り専用の状態を実現するためのいくつかの代替的なプログラミング手法があります。状況によっては、これらの方法がより適している場合があります。

Text 要素の使用

  • 使用例
  • 利点
    • 簡潔でコード量が少ない。
    • 処理が軽量でパフォーマンスが良い。
    • 意図が明確で、読み取り専用であることが明白。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15

Window {
    width: 300
    height: 50
    title: "Text 要素による表示"

    Text {
        text: "このテキストは編集できません"
        anchors.centerIn: parent
        font.pointSize: 14
        color: "darkblue"
    }
}

Item 要素と Text 要素の組み合わせ

  • 使用例
  • 利点
    • デザインの自由度が高い。
    • 特定のインタラクション(コピーなど)を容易に実装できる。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15

Window {
    width: 300
    height: 60
    title: "Item と Text の組み合わせ"

    Item {
        width: 200
        height: 40
        anchors.centerIn: parent
        border.width: 1
        border.color: "lightgray"
        radius: 5

        Text {
            text: "重要な情報です"
            anchors.fill: parent
            padding: 10
            color: "black"
            font.pointSize: 12
        }

        MouseArea {
            anchors.fill: parent
            onClicked: {
                // クリック時の処理 (例: メッセージを表示)
                console.log("情報がクリックされました")
            }
        }
    }
}

編集可能だが、編集を無効にするロジック

  • 使用例 (enabled プロパティの使用)
  • 欠点
    • ユーザーが編集可能であると誤解する可能性があるため、視覚的なフィードバックが必要になる。
    • ロジックが複雑になる可能性がある。
  • 利点
    • 既存の TextInput のスタイルや機能を利用できる場合がある。
  • 方法
    • focus プロパティを false に設定する。
    • enabled プロパティを false に設定する。
    • onEditingFinished シグナルなどで、編集内容を強制的に元に戻す。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15

Window {
    width: 300
    height: 80
    title: "enabled プロパティによる無効化"

    TextInput {
        id: editableField
        text: "編集可能"
        width: 200
        anchors.left: parent.left
        anchors.top: parent.top
        padding: 10
        border.width: 1
        border.color: "lightgray"
    }

    TextInput {
        id: disabledField
        text: "無効 (編集不可)"
        width: 200
        anchors.left: parent.left
        anchors.top: editableField.bottom
        padding: 10
        border.width: 1
        border.color: "lightgray"
        enabled: false
    }
}

ユーザーインターフェースのデザインによる暗示

  • 注意点
    • 単独では完全な保護にはならないため、他の方法と組み合わせる必要がある場合があります。
  • 利点
    • ユーザーに直感的に読み取り専用であることを理解させることができる。
  • ユーザーインターフェースのデザインで読み取り専用であることを示す
    他の方法と組み合わせて、ユーザーの理解を助けるための補助的な手段として使用します。
  • 既存の TextInput のスタイルを活かしたいが、一時的に編集を禁止したい場合
    enabledfocus プロパティの制御を検討します。ただし、ユーザーへの明確な視覚的フィードバックが必要です。
  • 読み取り専用で、ある程度のデザインやインタラクションが必要な場合
    ItemText の組み合わせを検討します。
  • 単純な静的テキストの表示
    Text 要素を使用するのが最も適切です。