Qt TextInput.inputMethodHints徹底解説:日本語でのエラー解決と代替手法
TextInput.inputMethodHints とは?
"TextInput.inputMethodHints" は、Qt Quick の "TextInput" 要素で使用されるプロパティの一つです。このプロパティは、ソフトウェアキーボード(仮想キーボード)に対して、入力されるテキストの種類や、入力方法に関するヒントを提供するために使用されます。
つまり、開発者は "inputMethodHints" を設定することで、ユーザーがテキストを入力する際に、より適切なキーボードレイアウトや入力候補を表示させることができます。
どのようなヒントが提供できるのか?
"inputMethodHints" は、enum 型の値を受け取り、複数のヒントを組み合わせることができます。以下に代表的なヒントとその意味を示します。
- Qt.ImhPreferLowercase
小文字キーボードを優先的に表示します。 - Qt.ImhPreferUppercase
大文字キーボードを優先的に表示します。 - Qt.ImhPreferNumbers
数字キーボードを優先的に表示します。 - Qt.ImhMultiLine
複数行の入力に対応します。 - Qt.ImhSensitiveData
パスワードなどの機密データを入力する際に使用します。 - Qt.ImhNoSuggestions
サジェスト(提案)を無効にします。 - Qt.ImhNoPredictiveText
予測変換を無効にします。 - Qt.ImhEmailCharactersOnly
メールアドレスで使用される文字のみの入力。 - Qt.ImhUrlCharactersOnly
URLで使用される文字のみの入力。 - Qt.ImhLowercaseOnly
小文字のみの入力。 - Qt.ImhUppercaseOnly
大文字のみの入力。 - Qt.ImhFormattedNumbersOnly
フォーマットされた数字のみの入力。例:日付、時間。 - Qt.ImhDigitsOnly
数字のみの入力。電話番号やPINコードなどに使用します。 - Qt.ImhNone
ヒントなし。デフォルト値。
使用例
TextInput {
inputMethodHints: Qt.ImhDigitsOnly | Qt.ImhNoPredictiveText
placeholderText: "電話番号を入力してください"
}
TextInput {
inputMethodHints: Qt.ImhEmailCharactersOnly
placeholderText: "メールアドレスを入力してください"
}
TextInput {
inputMethodHints: Qt.ImhMultiLine
placeholderText: "複数行入力してください"
}
上記の例では、
- 三番目の "TextInput" は、複数行入力を可能にします。
- 二番目の "TextInput" は、メールアドレスの入力に適したキーボードを表示します。
- 最初の "TextInput" は、数字のみの入力と予測変換の無効化を設定しています。
一般的なエラーとトラブルシューティング
-
- 原因
- "inputMethodHints" の設定が間違っている。
- プラットフォーム(OS)が "inputMethodHints" を完全にサポートしていない。
- 組み合わせたヒントが競合している。
- トラブルシューティング
- "inputMethodHints" の値を再確認し、ドキュメントを参照して正しい値を設定してください。
- 異なるプラットフォームでテストし、プラットフォーム固有の問題かどうかを確認してください。
- 組み合わせたヒントを一つずつ試して、どのヒントが問題を引き起こしているか特定してください。
- シミュレーターと実機で動作が違う場合も有ります。実機で確認する事も重要です。
- 原因
-
予測変換やサジェストが意図せず有効/無効になる
- 原因
- "Qt.ImhNoPredictiveText" や "Qt.ImhNoSuggestions" の設定が誤っている。
- プラットフォームのデフォルト設定が優先される場合がある。
- トラブルシューティング
- "inputMethodHints" の設定を再確認し、意図した通りに設定されているか確認してください。
- プラットフォームのキーボード設定を確認し、予測変換やサジェストが有効/無効になっているか確認してください。
- OSのバージョンをアップデートする事によって、解決する事も有ります。
- 原因
-
機密データ(パスワードなど)の入力で、意図せず入力候補が表示される
- 原因
- "Qt.ImhSensitiveData" が設定されていない、または正しく設定されていない。
- OSの設定でパスワードの入力候補を記憶する設定が有効になっている。
- トラブルシューティング
- "inputMethodHints: Qt.ImhSensitiveData" を必ず設定してください。
- OSのパスワードの自動入力を無効化してください。
- TextInputのechoModeをTextInput.Passwordに設定してください。
- 原因
-
複数行入力で、改行が期待通りに動作しない
- 原因
- "Qt.ImhMultiLine" が設定されていない。
- "TextInput" の "height" や "wrapMode" の設定が適切でない。
- トラブルシューティング
- "inputMethodHints: Qt.ImhMultiLine" を設定してください。
- TextInputのheightを十分な大きさに設定してください。
- TextInputのwrapModeを確認してください。Text.Wrapが適切です。
- 原因
-
特定の言語でキーボードレイアウトが正しく表示されない
- 原因
- Qt がその言語のキーボードレイアウトをサポートしていない。
- プラットフォームの言語設定が正しくない。
- トラブルシューティング
- Qt のドキュメントを参照し、その言語がサポートされているか確認してください。
- プラットフォームの言語設定を確認し、正しい言語が選択されているか確認してください。
- Qtのバージョンをアップデートする事で言語対応が増える場合も有ります。
- 原因
デバッグのヒント
- シンプルなテストケースを作成し、問題の再現手順を特定してください。
- "console.log()" や "qDebug()" を使用して、"inputMethodHints" の値をログ出力し、設定が正しく反映されているか確認してください。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
TextInput {
id: phoneNumberInput
anchors.centerIn: parent
width: 200
inputMethodHints: Qt.ImhDigitsOnly | Qt.ImhNoPredictiveText
placeholderText: "電話番号を入力してください"
}
}
inputMethodHints: Qt.ImhDigitsOnly | Qt.ImhNoPredictiveText
により、数字のみのキーボードが表示され、予測変換が無効になります。- このコードは、電話番号の入力を想定した "TextInput" を作成します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
TextInput {
id: emailInput
anchors.centerIn: parent
width: 300
inputMethodHints: Qt.ImhEmailCharactersOnly
placeholderText: "メールアドレスを入力してください"
}
}
inputMethodHints: Qt.ImhEmailCharactersOnly
により、メールアドレスの入力に適したキーボード(@や.などの記号を含む)が表示されます。- このコードは、メールアドレスの入力を想定した "TextInput" を作成します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 300
Column {
anchors.centerIn: parent
spacing: 10
TextInput {
id: multiLineInput
width: 300
height: 100
inputMethodHints: Qt.ImhMultiLine
placeholderText: "複数行入力してください"
wrapMode: Text.Wrap
}
TextInput {
id: passwordInput
width: 300
echoMode: TextInput.Password
inputMethodHints: Qt.ImhSensitiveData | Qt.ImhNoPredictiveText | Qt.ImhNoSuggestions
placeholderText: "パスワードを入力してください"
}
}
}
- パスワード入力の "TextInput" は、
echoMode: TextInput.Password
で入力文字を隠し、inputMethodHints: Qt.ImhSensitiveData | Qt.ImhNoPredictiveText | Qt.ImhNoSuggestions
で機密データとして扱い、予測変換とサジェストを無効化しています。 - 複数行入力の "TextInput" は、
inputMethodHints: Qt.ImhMultiLine
とwrapMode: Text.Wrap
を使用して、複数行の入力を可能にします。 - このコードは、複数行入力とパスワード入力を示す "TextInput" を作成します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
TextInput {
id: numberPreferenceInput
anchors.centerIn: parent
width: 200
inputMethodHints: Qt.ImhPreferNumbers
placeholderText: "数字を優先的に入力"
}
}
inputMethodHints: Qt.ImhPreferNumbers
によって、数字キーボードが優先的に表示されます。- このコードは、数字キーボードを優先的に表示するように設定します。
検証と制限による入力制御
"inputMethodHints" はあくまでソフトウェアキーボードへのヒントであり、入力自体を完全に制御するものではありません。そのため、入力されたテキストを検証し、制限する処理を別途実装する必要があります。
- 入力制限 (Input Filtering)
- 入力された文字をリアルタイムでフィルタリングし、不正な文字の入力を禁止します。
- 例:数字以外の文字を削除、特定の文字を置換など。
- 入力検証 (Input Validation)
- 入力されたテキストを正規表現や条件式で検証し、不正な文字や形式を排除します。
- 例:数字のみ入力、メールアドレス形式、特定の文字数制限など。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
TextInput {
id: numberInput
anchors.centerIn: parent
width: 200
placeholderText: "数字のみ入力してください"
onTextChanged: {
if (!text.match(/^[0-9]*$/)) {
// 数字以外の文字が含まれている場合、最後の文字を削除
text = text.slice(0, text.length - 1);
}
}
}
}
- 数字以外の文字が含まれている場合は、最後の文字を削除します。
- 正規表現
^[0-9]*$
を使用して、数字のみの文字列かどうかを判定しています。 - このコードでは、
onTextChanged
シグナルを使用して、入力されたテキストが数字のみかどうかを検証しています。
カスタムキーボードの作成
より高度な入力制御が必要な場合は、カスタムキーボードを作成することも可能です。
- QML によるカスタムキーボード
- QML を使用して、独自の仮想キーボードをデザインし、実装することも可能です。
- これにより、特定のアプリケーションに特化したキーボードを作成できます。
- Qt Virtual Keyboard
- Qt Virtual Keyboard モジュールを使用すると、独自の仮想キーボードを作成できます。
- これにより、完全にカスタマイズされたキーレイアウトや入力ロジックを実装できます。
プラットフォーム固有のAPIの利用
プラットフォームによっては、より高度な入力制御を行うためのAPIが提供されている場合があります。
- iOS
- iOS の UITextField や UITextView を使用して、入力制御を行うことができます。
- Android
- Android の InputMethodManager や EditText を使用して、入力制御を行うことができます。
これらのプラットフォーム固有のAPIを利用するには、QtのNative APIの呼び出し機能を利用する必要があります。
入力マスクの使用
入力マスクを使用すると、特定の形式で入力することを強制できます。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
import QtQuick.Controls.InputMask 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
TextInput {
id: maskedInput
anchors.centerIn: parent
width: 200
inputMask: "9999-99-99" //日付の入力マスク例
placeholderText: "日付を入力してください(YYYY-MM-DD)"
}
}
- この例では、日付を "YYYY-MM-DD" の形式で入力するように制限しています。
- "9" は数字を表し、他の文字はリテラル文字として扱われます。
inputMask
プロパティに、希望する入力形式を定義する文字列を設定します。