Qt TextInput.inputMethodHints徹底解説:日本語でのエラー解決と代替手法

2025-04-26

TextInput.inputMethodHints とは?

"TextInput.inputMethodHints" は、Qt Quick の "TextInput" 要素で使用されるプロパティの一つです。このプロパティは、ソフトウェアキーボード(仮想キーボード)に対して、入力されるテキストの種類や、入力方法に関するヒントを提供するために使用されます。

つまり、開発者は "inputMethodHints" を設定することで、ユーザーがテキストを入力する際に、より適切なキーボードレイアウトや入力候補を表示させることができます。

どのようなヒントが提供できるのか?

"inputMethodHints" は、enum 型の値を受け取り、複数のヒントを組み合わせることができます。以下に代表的なヒントとその意味を示します。

  • Qt.ImhPreferLowercase
    小文字キーボードを優先的に表示します。
  • Qt.ImhPreferUppercase
    大文字キーボードを優先的に表示します。
  • Qt.ImhPreferNumbers
    数字キーボードを優先的に表示します。
  • Qt.ImhMultiLine
    複数行の入力に対応します。
  • Qt.ImhSensitiveData
    パスワードなどの機密データを入力する際に使用します。
  • Qt.ImhNoSuggestions
    サジェスト(提案)を無効にします。
  • Qt.ImhNoPredictiveText
    予測変換を無効にします。
  • Qt.ImhEmailCharactersOnly
    メールアドレスで使用される文字のみの入力。
  • Qt.ImhUrlCharactersOnly
    URLで使用される文字のみの入力。
  • Qt.ImhLowercaseOnly
    小文字のみの入力。
  • Qt.ImhUppercaseOnly
    大文字のみの入力。
  • Qt.ImhFormattedNumbersOnly
    フォーマットされた数字のみの入力。例:日付、時間。
  • Qt.ImhDigitsOnly
    数字のみの入力。電話番号やPINコードなどに使用します。
  • Qt.ImhNone
    ヒントなし。デフォルト値。

使用例

TextInput {
    inputMethodHints: Qt.ImhDigitsOnly | Qt.ImhNoPredictiveText
    placeholderText: "電話番号を入力してください"
}

TextInput {
    inputMethodHints: Qt.ImhEmailCharactersOnly
    placeholderText: "メールアドレスを入力してください"
}

TextInput {
    inputMethodHints: Qt.ImhMultiLine
    placeholderText: "複数行入力してください"
}

上記の例では、

  • 三番目の "TextInput" は、複数行入力を可能にします。
  • 二番目の "TextInput" は、メールアドレスの入力に適したキーボードを表示します。
  • 最初の "TextInput" は、数字のみの入力と予測変換の無効化を設定しています。


一般的なエラーとトラブルシューティング

    • 原因
      • "inputMethodHints" の設定が間違っている。
      • プラットフォーム(OS)が "inputMethodHints" を完全にサポートしていない。
      • 組み合わせたヒントが競合している。
    • トラブルシューティング
      • "inputMethodHints" の値を再確認し、ドキュメントを参照して正しい値を設定してください。
      • 異なるプラットフォームでテストし、プラットフォーム固有の問題かどうかを確認してください。
      • 組み合わせたヒントを一つずつ試して、どのヒントが問題を引き起こしているか特定してください。
      • シミュレーターと実機で動作が違う場合も有ります。実機で確認する事も重要です。
  1. 予測変換やサジェストが意図せず有効/無効になる

    • 原因
      • "Qt.ImhNoPredictiveText" や "Qt.ImhNoSuggestions" の設定が誤っている。
      • プラットフォームのデフォルト設定が優先される場合がある。
    • トラブルシューティング
      • "inputMethodHints" の設定を再確認し、意図した通りに設定されているか確認してください。
      • プラットフォームのキーボード設定を確認し、予測変換やサジェストが有効/無効になっているか確認してください。
      • OSのバージョンをアップデートする事によって、解決する事も有ります。
  2. 機密データ(パスワードなど)の入力で、意図せず入力候補が表示される

    • 原因
      • "Qt.ImhSensitiveData" が設定されていない、または正しく設定されていない。
      • OSの設定でパスワードの入力候補を記憶する設定が有効になっている。
    • トラブルシューティング
      • "inputMethodHints: Qt.ImhSensitiveData" を必ず設定してください。
      • OSのパスワードの自動入力を無効化してください。
      • TextInputのechoModeをTextInput.Passwordに設定してください。
  3. 複数行入力で、改行が期待通りに動作しない

    • 原因
      • "Qt.ImhMultiLine" が設定されていない。
      • "TextInput" の "height" や "wrapMode" の設定が適切でない。
    • トラブルシューティング
      • "inputMethodHints: Qt.ImhMultiLine" を設定してください。
      • TextInputのheightを十分な大きさに設定してください。
      • TextInputのwrapModeを確認してください。Text.Wrapが適切です。
  4. 特定の言語でキーボードレイアウトが正しく表示されない

    • 原因
      • Qt がその言語のキーボードレイアウトをサポートしていない。
      • プラットフォームの言語設定が正しくない。
    • トラブルシューティング
      • Qt のドキュメントを参照し、その言語がサポートされているか確認してください。
      • プラットフォームの言語設定を確認し、正しい言語が選択されているか確認してください。
      • Qtのバージョンをアップデートする事で言語対応が増える場合も有ります。

デバッグのヒント

  • シンプルなテストケースを作成し、問題の再現手順を特定してください。
  • "console.log()" や "qDebug()" を使用して、"inputMethodHints" の値をログ出力し、設定が正しく反映されているか確認してください。


import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15

ApplicationWindow {
    visible: true
    width: 400
    height: 200

    TextInput {
        id: phoneNumberInput
        anchors.centerIn: parent
        width: 200
        inputMethodHints: Qt.ImhDigitsOnly | Qt.ImhNoPredictiveText
        placeholderText: "電話番号を入力してください"
    }
}
  • inputMethodHints: Qt.ImhDigitsOnly | Qt.ImhNoPredictiveText により、数字のみのキーボードが表示され、予測変換が無効になります。
  • このコードは、電話番号の入力を想定した "TextInput" を作成します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15

ApplicationWindow {
    visible: true
    width: 400
    height: 200

    TextInput {
        id: emailInput
        anchors.centerIn: parent
        width: 300
        inputMethodHints: Qt.ImhEmailCharactersOnly
        placeholderText: "メールアドレスを入力してください"
    }
}
  • inputMethodHints: Qt.ImhEmailCharactersOnly により、メールアドレスの入力に適したキーボード(@や.などの記号を含む)が表示されます。
  • このコードは、メールアドレスの入力を想定した "TextInput" を作成します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15

ApplicationWindow {
    visible: true
    width: 400
    height: 300

    Column {
        anchors.centerIn: parent
        spacing: 10

        TextInput {
            id: multiLineInput
            width: 300
            height: 100
            inputMethodHints: Qt.ImhMultiLine
            placeholderText: "複数行入力してください"
            wrapMode: Text.Wrap
        }

        TextInput {
            id: passwordInput
            width: 300
            echoMode: TextInput.Password
            inputMethodHints: Qt.ImhSensitiveData | Qt.ImhNoPredictiveText | Qt.ImhNoSuggestions
            placeholderText: "パスワードを入力してください"
        }
    }
}
  • パスワード入力の "TextInput" は、echoMode: TextInput.Password で入力文字を隠し、inputMethodHints: Qt.ImhSensitiveData | Qt.ImhNoPredictiveText | Qt.ImhNoSuggestions で機密データとして扱い、予測変換とサジェストを無効化しています。
  • 複数行入力の "TextInput" は、inputMethodHints: Qt.ImhMultiLinewrapMode: Text.Wrap を使用して、複数行の入力を可能にします。
  • このコードは、複数行入力とパスワード入力を示す "TextInput" を作成します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15

ApplicationWindow {
    visible: true
    width: 400
    height: 200

    TextInput {
        id: numberPreferenceInput
        anchors.centerIn: parent
        width: 200
        inputMethodHints: Qt.ImhPreferNumbers
        placeholderText: "数字を優先的に入力"
    }
}
  • inputMethodHints: Qt.ImhPreferNumbers によって、数字キーボードが優先的に表示されます。
  • このコードは、数字キーボードを優先的に表示するように設定します。


検証と制限による入力制御

"inputMethodHints" はあくまでソフトウェアキーボードへのヒントであり、入力自体を完全に制御するものではありません。そのため、入力されたテキストを検証し、制限する処理を別途実装する必要があります。

  • 入力制限 (Input Filtering)
    • 入力された文字をリアルタイムでフィルタリングし、不正な文字の入力を禁止します。
    • 例:数字以外の文字を削除、特定の文字を置換など。
  • 入力検証 (Input Validation)
    • 入力されたテキストを正規表現や条件式で検証し、不正な文字や形式を排除します。
    • 例:数字のみ入力、メールアドレス形式、特定の文字数制限など。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15

ApplicationWindow {
    visible: true
    width: 400
    height: 200

    TextInput {
        id: numberInput
        anchors.centerIn: parent
        width: 200
        placeholderText: "数字のみ入力してください"

        onTextChanged: {
            if (!text.match(/^[0-9]*$/)) {
                // 数字以外の文字が含まれている場合、最後の文字を削除
                text = text.slice(0, text.length - 1);
            }
        }
    }
}
  • 数字以外の文字が含まれている場合は、最後の文字を削除します。
  • 正規表現 ^[0-9]*$ を使用して、数字のみの文字列かどうかを判定しています。
  • このコードでは、onTextChanged シグナルを使用して、入力されたテキストが数字のみかどうかを検証しています。

カスタムキーボードの作成

より高度な入力制御が必要な場合は、カスタムキーボードを作成することも可能です。

  • QML によるカスタムキーボード
    • QML を使用して、独自の仮想キーボードをデザインし、実装することも可能です。
    • これにより、特定のアプリケーションに特化したキーボードを作成できます。
  • Qt Virtual Keyboard
    • Qt Virtual Keyboard モジュールを使用すると、独自の仮想キーボードを作成できます。
    • これにより、完全にカスタマイズされたキーレイアウトや入力ロジックを実装できます。

プラットフォーム固有のAPIの利用

プラットフォームによっては、より高度な入力制御を行うためのAPIが提供されている場合があります。

  • iOS
    • iOS の UITextField や UITextView を使用して、入力制御を行うことができます。
  • Android
    • Android の InputMethodManager や EditText を使用して、入力制御を行うことができます。

これらのプラットフォーム固有のAPIを利用するには、QtのNative APIの呼び出し機能を利用する必要があります。

入力マスクの使用

入力マスクを使用すると、特定の形式で入力することを強制できます。

import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
import QtQuick.Controls.InputMask 2.15

ApplicationWindow {
    visible: true
    width: 400
    height: 200

    TextInput {
        id: maskedInput
        anchors.centerIn: parent
        width: 200
        inputMask: "9999-99-99" //日付の入力マスク例
        placeholderText: "日付を入力してください(YYYY-MM-DD)"
    }
}
  • この例では、日付を "YYYY-MM-DD" の形式で入力するように制限しています。
  • "9" は数字を表し、他の文字はリテラル文字として扱われます。
  • inputMaskプロパティに、希望する入力形式を定義する文字列を設定します。