Flickable.movementStarted()

QtのFlickable QMLタイプにおける movementStarted() は、ビューが移動を開始したときに発行されるシグナルです。

もう少し詳しく説明すると、Flickable は、コンテンツをドラッグしたりフリックしたりしてスクロールさせるためのQML要素です。このFlickableが提供するmovementStarted()シグナルは、以下のいずれかの理由でビュー内のコンテンツが動き始めたときに通知されます。

• プログラムによるフリックなど、生成された移動
  
  • flick() メソッドを呼び出してプログラム的にフリックを開始した場合。
• ユーザーの操作による移動
  
  • ユーザーがマウスでドラッグを開始した場合。
  • タッチスクリーンデバイスで指をスワイプしてドラッグを開始した場合。

このシグナルに対応するハンドラは onMovementStarted です。このハンドラを使用することで、コンテンツが移動を開始したときに特定の処理を実行できます。例えば、移動開始時にUI要素の表示を切り替えたり、ログを出力したりするなどの用途が考えられます。

• movementEnded(): ビューの移動が停止したときに発行されるシグナルです。

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movementStarted() が期待通りに発火しない

考えられる原因

• 初期表示位置の問題
  
  • contentX や contentY をプログラムで設定した場合、初期表示位置が固定されてしまい、ユーザーがフリックしても移動が認識されないことがあります。
• コンテンツのサイズが動的に変化している
  
  • Flickable の contentItem 内の要素のサイズが動的に変化する場合、contentWidth や contentHeight のバインディングが正しく更新されていないと、スクロール可能な領域が正しく計算されないことがあります。
• イベントが他の要素に消費されている
  
  • Flickable の内部に MouseArea や他のインタラクティブな要素があり、それらがマウス/タッチイベントを消費している場合、Flickable 自体はイベントを受け取れず、移動が開始されません。特に MouseArea の propagateComposedEvents や accepted プロパティの設定に注意が必要です。
• Flickableが移動していない
  
  • Flickable の contentWidth または contentHeight が、Flickable 自体の width または height よりも小さい（または同じ）場合、スクロール可能な領域がないため、移動が発生しません。
  • interactive プロパティが false に設定されている場合、ユーザー操作によるフリックが無効になります。

トラブルシューティング

• デバッグ出力の活用
  
  • Flickable の contentX, contentY, width, height, contentWidth, contentHeight, moving, dragging, flicking などのプロパティを console.log() で出力し、期待通りの値になっているか確認します。
  • onMovementStarted だけでなく、onMovementEnded や onFlickStarted, onFlickEnded などのシグナルもログに出力し、動作の流れを追跡します。
• イベントの消費の確認
  
  • Flickable 内の MouseArea などの要素が、Flickable のフリック動作を妨げていないか確認してください。必要であれば、MouseArea の accepted プロパティを調整したり、preventStealing: true を試したりします。（ただし、preventStealing はFlickableの動きを完全に止める可能性があるので注意が必要です）
  • Flickable の内部にインタラクティブな要素があり、その要素内でクリックイベントなどを処理したい場合は、MouseArea の onPressed や onReleased ハンドラ内で mouse.accepted = false としてイベントを親に伝播させるなど、イベント伝播の仕組みを理解して適切に制御する必要があります。
• interactive プロパティの確認
  
  • interactive: true に設定されていることを確認してください。
• contentWidth / contentHeight の確認
  
  • Flickable の contentWidth と contentHeight が、Flickable 自体の width と height よりも十分に大きいことを確認してください。
  • contentItem.childrenRect.width や contentItem.childrenRect.height を contentWidth や contentHeight にバインドするのが一般的な方法です。

  Flickable {
      width: 300
      height: 200
      contentWidth: contentItem.childrenRect.width // コンテンツの実際の幅にバインド
      contentHeight: contentItem.childrenRect.height // コンテンツの実際の高さにバインド
  
      // コンテンツ
      Column {
          // ... たくさんのアイテム ...
          Repeater {
              model: 20
              Text { text: "Item " + index; width: parent.width; height: 30 }
          }
      }
  
      onMovementStarted: {
          console.log("Movement started!");
      }
  }
  

movementStarted() の処理が重い

考えられる原因

• onMovementStarted ハンドラ内で、CPU負荷の高い処理（大量の計算、複雑なUIの更新、ネットワークリクエストなど）を実行している場合、フリック開始時の応答性が悪くなる可能性があります。

トラブルシューティング

movementStarted() と他のシグナルとの混同

考えられる原因

• Flickable には movementStarted() 以外にも、flickStarted()、dragging (プロパティ) など、動きに関連するシグナルやプロパティが複数あります。これらの違いを理解していないと、意図しないタイミングで処理が実行されたり、必要なタイミングで実行されなかったりする可能性があります。

シグナルの違い

• moving: dragging または flicking のどちらかが true の場合に true になるプロパティです。つまり、ビューが何らかの形で動いている間は true です。
• flicking: ビューがフリック（慣性）によって動いている間は true になるプロパティです。
• dragging: ユーザーがビューをドラッグしている間は true になるプロパティです。
• flickStarted(): ユーザーがフリック操作（指を離して慣性で動く状態）を開始した瞬間に発行されます。ドラッグしていても指を離すまでは発行されません。
• movementStarted(): ビューが動き出した瞬間に発行されます。（ドラッグでもフリックでも）

トラブルシューティング

• それぞれのシグナル/プロパティのドキュメントをよく読み、意図した動作に最も合致するものを使用してください。
• 目的の明確化
  
  • 「ユーザーが触って動き始めたら」という場合は movementStarted() が適切です。
  • 「指を離して慣性で動き始めたら」という場合は flickStarted() が適切です。
  • 「ドラッグ中だけ何かをする」という場合は dragging プロパティを監視します。
  • 「フリック中だけ何かをする」という場合は flicking プロパティを監視します。

movementStarted() 自体のエラーではありませんが、Flickable でよくある問題として、初期表示位置のずれがあります。

考えられる原因

• Flickable の clip: true が設定されていない場合、コンテンツが Flickable の境界からはみ出して表示されることがあります。
• contentX や contentY の設定が意図しない値になっている。

• clip: true を Flickable に設定し、コンテンツが Flickable の領域外に描画されないようにします。
• contentX や contentY を明示的に 0 に設定するか、バインドを正しく設定してください。

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例1: movementStarted() の基本とログ出力

最も基本的な例として、Flickable が動き始めたときにコンソールにメッセージを出力する例です。

// main.qml
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15

Window {
    width: 400
    height: 300
    visible: true
    title: "Flickable Movement Started Example"

    Flickable {
        id: myFlickable
        anchors.fill: parent
        clip: true // はみ出たコンテンツをクリップ

        // コンテンツの幅と高さを、内部のコンテンツのサイズに合わせる
        contentWidth: contentColumn.width
        contentHeight: contentColumn.height

        // Flickableが動き始めたときにログを出力
        onMovementStarted: {
            console.log("Flickable: 動き始めました！");
        }

        // Flickableが動き終わったときにログを出力
        onMovementEnded: {
            console.log("Flickable: 動きが終わりました！");
        }

        // Flickableがドラッグされている間、プロパティを監視
        onDraggingChanged: {
            if (myFlickable.dragging) {
                console.log("Flickable: ドラッグ中...");
            }
        }

        // Flickableがフリック（慣性）している間、プロパティを監視
        onFlickingChanged: {
            if (myFlickable.flicking) {
                console.log("Flickable: フリック中...");
            }
        }

        // Flickableのコンテンツ
        Column {
            id: contentColumn
            width: myFlickable.width // 幅はFlickableに合わせる
            spacing: 5
            Repeater {
                model: 50 // 50個のテキストアイテムを作成し、スクロール可能にする
                Text {
                    text: "アイテム " + (index + 1)
                    font.pixelSize: 20
                    color: "black"
                    width: parent.width - 20 // 左右に余白
                    height: 30
                    horizontalAlignment: Text.AlignHCenter
                    verticalAlignment: Text.AlignVCenter
                    // 偶数行と奇数行で背景色を変える
                    Rectangle {
                        anchors.fill: parent
                        color: index % 2 === 0 ? "lightgray" : "white"
                        z: -1 // テキストの後ろに描画
                    }
                }
            }
        }
    }
}

解説

• onDraggingChanged / onFlickingChanged: これらはプロパティ変更シグナルで、draggingプロパティやflickingプロパティの値が変わるたびに発火します。これらを使うことで、ドラッグ中やフリック中の状態をリアルタイムで監視できます。
• onMovementEnded: Flickableの移動が完全に停止したときに一度だけ発火します。
• onMovementStarted: ユーザーがFlickableをドラッグし始めたとき、またはプログラム的にフリックが開始されたときに一度だけ発火します。

このコードを実行し、マウスでFlickableをドラッグしたり、指でフリックしたりすると、コンソールにメッセージが表示されることを確認できます。

例2: movementStarted() を使ってUIの表示/非表示を切り替える

フリック開始時に一時的にUI要素を非表示にし、動きが止まったら再表示する例です。これは、フリック中に不要なUI要素が邪魔になるのを避けるのに役立ちます。

// main.qml
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15
import QtQuick.Controls 2.15 // ボタンのために追加

Window {
    width: 400
    height: 300
    visible: true
    title: "Flickable UI Visibility Example"

    Flickable {
        id: myFlickable
        anchors.fill: parent
        clip: true

        contentWidth: contentColumn.width
        contentHeight: contentColumn.height

        // 動きが始まったらツールバーを非表示にする
        onMovementStarted: {
            toolbar.visible = false;
        }

        // 動きが終わったらツールバーを再表示する
        onMovementEnded: {
            toolbar.visible = true;
        }

        Column {
            id: contentColumn
            width: myFlickable.width
            spacing: 5
            Repeater {
                model: 50
                Text {
                    text: "コンテンツアイテム " + (index + 1)
                    font.pixelSize: 20
                    color: "black"
                    width: parent.width - 20
                    height: 30
                    horizontalAlignment: Text.AlignHCenter
                    verticalAlignment: Text.AlignVCenter
                    Rectangle {
                        anchors.fill: parent
                        color: index % 2 === 0 ? "lightcyan" : "aliceblue"
                        z: -1
                    }
                }
            }
        }
    }

    // Flickableの上部に表示されるツールバー
    Rectangle {
        id: toolbar
        width: parent.width
        height: 50
        color: "lightgreen"
        anchors.top: parent.top
        anchors.left: parent.left
        anchors.right: parent.right

        // ツールバーの表示/非表示を滑らかにするアニメーション
        Behavior on visible {
            FadeAnimation { duration: 200 }
        }

        Text {
            text: "ツールバー"
            anchors.centerIn: parent
            font.pixelSize: 24
            color: "darkgreen"
        }

        Button {
            text: "設定"
            anchors.right: parent.right
            anchors.verticalCenter: parent.verticalCenter
            rightMargin: 10
            onClicked: {
                console.log("設定ボタンがクリックされました！");
            }
        }
    }
}

解説

• Behavior on visible を使って、ツールバーの表示/非表示にフェードアニメーションを追加し、より自然なUI体験を提供しています。
• onMovementEndedハンドラ内でtoolbar.visible = true;を設定し、移動終了時にツールバーを再表示します。
• onMovementStartedハンドラ内でtoolbar.visible = false;を設定し、移動開始時にツールバーを非表示にします。
• toolbarというRectangle要素がFlickableの上部に固定して配置されています。

非常に大量のコンテンツを扱う場合、Flickable が移動している間は、画面外のコンテンツのレンダリングを一時的に停止し、移動が停止したら再開することでパフォーマンスを向上させることができます。これは一般的にListViewなどのデリゲートパターンで自動的に行われますが、Flickableでより低レベルの制御を行う場合の仮想的な概念として示します。

// main.qml
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15

Window {
    width: 400
    height: 300
    visible: true
    title: "Flickable Performance Optimization Example"

    Flickable {
        id: myFlickable
        anchors.fill: parent
        clip: true

        contentWidth: contentColumn.width
        contentHeight: contentColumn.height

        property bool isMoving: false // 移動中フラグ

        onMovementStarted: {
            isMoving = true;
            console.log("Flickable: 動き始めました。重いレンダリングを一時停止...");
            // ここで、例えば画面外の複雑なコンポーネントの可視性をfalseにするなどの処理
            // myHeavyComponent.visible = false;
        }

        onMovementEnded: {
            isMoving = false;
            console.log("Flickable: 動きが終わりました。重いレンダリングを再開...");
            // ここで、例えば画面外の複雑なコンポーネントの可視性をtrueに戻すなどの処理
            // myHeavyComponent.visible = true;
        }

        Column {
            id: contentColumn
            width: myFlickable.width
            spacing: 10

            Repeater {
                model: 50
                delegate: Item {
                    width: parent.width
                    height: 100 // 各アイテムを大きくしてフリック感を強調

                    Rectangle {
                        anchors.fill: parent
                        color: "lightblue"
                        border.color: "darkblue"
                        border.width: 1

                        Text {
                            text: "アイテム " + (index + 1)
                            font.pixelSize: 25
                            anchors.centerIn: parent
                            color: "black"
                        }

                        // 仮の重いレンダリング要素 (Flickableの移動中は一時的に非表示にする)
                        Rectangle {
                            width: 20
                            height: 20
                            color: "red"
                            radius: 10
                            anchors.right: parent.right
                            anchors.top: parent.top
                            rightMargin: 5
                            topMargin: 5

                            // Flickableが動いている間は非表示にする例
                            // 実際には、より複雑なコンポーネントのvisibleプロパティを制御する
                            visible: !myFlickable.isMoving
                            Text {
                                text: "!"
                                anchors.centerIn: parent
                                color: "white"
                                font.bold: true
                            }
                        }
                    }
                }
            }
        }
    }
}

• 実際のアプリケーションでは、ここに複雑なグラフィック、動画プレビュー、ウェブビューなどの要素が配置され、フリック中はそれらのレンダリングをスキップしたり、低品質モードに切り替えたりするなどの最適化を行うことができます。
• 各アイテム内の小さな赤い四角は、ここでは「重いレンダリング要素」を模倣しています。この赤い四角のvisibleプロパティを!myFlickable.isMovingにバインドすることで、Flickableが動いている間は非表示になります。
• Flickable に isMoving というカスタムプロパティを追加し、onMovementStarted で true に、onMovementEnded で false に設定しています。

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主な代替方法としては、以下のものが挙げられます。

moving プロパティの監視 (onMovingChanged シグナル)

Flickable には、ビューが現在移動中であるかどうかを示すブール値のプロパティ moving があります。このプロパティは、ユーザーがドラッグしている場合 (dragging が true の場合) と、フリック（慣性スクロール）している場合 (flicking が true の場合) の両方で true になります。

movementStarted() は移動が「開始された瞬間」に一度だけ発火するのに対し、moving プロパティの変更を監視する onMovingChanged シグナルは、moving が false から true に変わったときに発火します。これは、movementStarted() と同じタイミングで処理を開始するのに使えます。

利点

• onMovingChanged は、moving プロパティが変化したときに発火するため、moving プロパティの現在の状態と組み合わせて、より柔軟なロジックを構築できます。
• movementStarted() と同様に、移動の開始を捉えることができます。

欠点

• movementStarted() と機能的にはほぼ同じですが、表現の意図が若干異なります。

コード例

Flickable {
    id: myFlickable
    // ... その他のプロパティ ...

    onMovingChanged: {
        if (myFlickable.moving) {
            console.log("Flickable: moving プロパティが true になりました (移動開始)");
        } else {
            console.log("Flickable: moving プロパティが false になりました (移動終了)");
        }
    }
}

dragging プロパティの監視 (onDraggingChanged シグナル)

ユーザーがコンテンツを直接ドラッグしている状態を特に区別したい場合は、dragging プロパティを監視します。このプロパティは、ユーザーがマウスボタンを押している間や指をタッチスクリーンに触れている間に true になります。

利点

• ユーザーの直接的な操作による移動開始のみを検出できます。フリックによる慣性移動とは区別したい場合に有用です。

欠点

• フリックによる慣性移動の開始は検出できません。

コード例

Flickable {
    id: myFlickable
    // ... その他のプロパティ ...

    onDraggingChanged: {
        if (myFlickable.dragging) {
            console.log("Flickable: dragging プロパティが true になりました (ドラッグ開始)");
        } else {
            console.log("Flickable: dragging プロパティが false になりました (ドラッグ終了)");
        }
    }
}

contentX または contentY プロパティの監視 (onContentXChanged, onContentYChanged シグナル)

Flickable のコンテンツの現在のスクロール位置は、contentX (水平方向) と contentY (垂直方向) プロパティによって表されます。これらのプロパティは、コンテンツが移動するたびに変化するため、その変更を監視することで移動を検出できます。

利点

• スクロール位置に応じてUI要素を動的に変化させるなど、よりきめ細やかな制御が可能です。
• 移動の開始だけでなく、移動中の各フレームで処理を実行したい場合に非常に強力です。

欠点

• 移動中のすべてのフレームで発火するため、処理が重いとパフォーマンスに影響を与える可能性があります。
• movementStarted() のように「移動が開始された瞬間に一度だけ」というイベントではないため、開始を検出するためには前回の値と比較するなどのロジックが必要です。

コード例

Flickable {
    id: myFlickable
    // ... その他のプロパティ ...

    property real previousContentX: 0
    property real previousContentY: 0

    onContentXChanged: {
        if (myFlickable.contentX !== previousContentX) {
            console.log("Flickable: 水平方向のコンテンツが移動しました。現在のX:", myFlickable.contentX);
            if (previousContentX === myFlickable.contentX && myFlickable.moving === false) {
                 // contentXが実際に変化し、かつFlickableが以前は動いていなかった場合、
                 // 移動開始とみなすことができます。
                 console.log("Flickable: 水平方向の移動が開始されました！");
            }
            previousContentX = myFlickable.contentX;
        }
    }

    onContentYChanged: {
        if (myFlickable.contentY !== previousContentY) {
            console.log("Flickable: 垂直方向のコンテンツが移動しました。現在のY:", myFlickable.contentY);
            if (previousContentY === myFlickable.contentY && myFlickable.moving === false) {
                 console.log("Flickable: 垂直方向の移動が開始されました！");
            }
            previousContentY = myFlickable.contentY;
        }
    }
}

注意
contentX / contentY の変更は非常に頻繁に発生するため、これらのハンドラ内で重い処理を実行するとパフォーマンスに悪影響を与えます。

Flickable.flick(xVelocity, yVelocity) メソッドを使って、プログラム的にフリックを開始できます。この場合、ユーザー操作ではなくプログラムからの移動なので、movementStarted() も発火しますが、特定の目的のためにプログラム的なフリックをトリガーしている場合は、flick() を呼び出す前後で独自のフラグを立てることも可能です。

また、flickStarted() シグナルもありますが、これはユーザーがフリック（指を離して慣性で動く状態）を開始したときに発火します。movementStarted() よりも具体的な「フリック」の開始を検出したい場合に有用です。

コード例

// main.qml
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15
import QtQuick.Controls 2.15

Window {
    width: 400
    height: 300
    visible: true
    title: "Flickable Programmatic Flick Example"

    Flickable {
        id: myFlickable
        anchors.fill: parent
        clip: true

        contentWidth: contentColumn.width
        contentHeight: contentColumn.height

        onMovementStarted: {
            console.log("Flickable: Movement started!");
        }
        onFlickStarted: {
            console.log("Flickable: Flick started!");
        }

        Column {
            id: contentColumn
            width: myFlickable.width
            spacing: 5
            Repeater {
                model: 50
                Text {
                    text: "アイテム " + (index + 1)
                    font.pixelSize: 20
                    width: parent.width - 20
                    height: 30
                    Rectangle { anchors.fill: parent; color: index % 2 === 0 ? "lightgray" : "white"; z: -1 }
                }
            }
        }
    }

    // プログラム的にフリックを開始するボタン
    Button {
        text: "フリック！"
        anchors.bottom: parent.bottom
        anchors.horizontalCenter: parent.horizontalCenter
        width: 100
        height: 40
        onClicked: {
            // 下方向にフリックを開始
            myFlickable.flick(0, 500); // xVelocity = 0, yVelocity = 500 (pixels/sec)
        }
    }
}

解説

• これにより、ユーザーの操作と同じようにフリック動作をシミュレートしたり、特定のイベントに応じて自動的にスクロールさせたりすることができます。
• flick() メソッドを呼び出すと、onMovementStarted と onFlickStarted の両方が発火します（フリックが開始された場合）。

Flickable.movementStarted() は、ビューが動き始めたというシンプルなイベントを捉えるのに最適ですが、要件に応じて以下のように代替方法を検討できます。

• プログラムによるフリックの制御
  flick() メソッドと onFlickStarted
• 移動中の各フレームでの詳細な制御
  onContentXChanged, onContentYChanged
• ユーザーの直接ドラッグ操作の開始/終了
  onDraggingChanged
• 移動開始/終了の状態遷移
  onMovingChanged