Qt Flickableスクロール検知:movementEnded()の活用法とトラブルシューティング

2025-05-26

Qtにおける Flickable.movementEnded() は、QMLの Flickable アイテムが提供するシグナルの一つです。

簡単に言うと、これは「フリックやドラッグによるスクロール動作が終了したときに発生するイベント」です。

より詳しく説明すると、以下のようになります。

  • 何に使うのか? movementEnded() シグナルは、スクロール動作の終了を検知して、何らかの処理を実行したい場合に非常に便利です。例えば、以下のような用途が考えられます。

    • スナップ機能
      スクロールが停止したときに、コンテンツを特定の位置(例:ページやアイテムの先頭)に自動的にスナップさせるアニメーションを開始する。
    • データの読み込み/更新
      スクロールが停止したときに、表示領域外にある新しいデータを読み込んだり、コンテンツを更新したりする。
    • UIの調整
      スクロールが停止したときに、スクロール位置に応じてUI要素の表示/非表示を切り替えたり、サイズを変更したりする。
    • ログ出力/分析
      スクロール動作の終了を記録して、ユーザーの行動を分析する。
  • movementEnded() シグナルが発生するタイミング

    • ユーザーがコンテンツをドラッグ(マウスや指で押したまま移動)し、そのドラッグを離したとき。
    • ユーザーがコンテンツをフリック(素早くスライドさせて離す)し、そのフリックによる慣性スクロールが完全に停止したとき。
    • つまり、コンテンツの移動が物理的に停止した、またはユーザーの操作によって移動が中断された、といった「移動の終わり」を意味します。
  • Flickableとは? Flickable は、その中に配置されたコンテンツをドラッグしたり、フリックしたりしてスクロールさせる機能を提供するQMLアイテムです。スマートフォンやタブレットのUIでよく見かける、指で画面をスライドさせてコンテンツを移動させる動作を簡単に実装できます。

例 (QML)

import QtQuick 2.0

Flickable {
    width: 300
    height: 200
    contentWidth: image.width
    contentHeight: image.height

    Image {
        id: image
        source: "big_image.png" // 実際の画像パスに置き換えてください
    }

    // movementEnded シグナルを捕捉する
    onMovementEnded: {
        console.log("Flickableの移動が終了しました。現在のコンテンツ位置: contentX=" + contentX + ", contentY=" + contentY);
        // ここにスクロール終了時に行いたい処理を記述
        // 例: スナップアニメーションを開始
        // numberAnimation.start();
    }

    // スナップ機能の例(Flickableのコンテンツが特定のピクセルで停止するようにする)
    // NumberAnimation {
    //     id: numberAnimation
    //     target: flickable
    //     property: "contentY"
    //     to: Math.round(flickable.contentY / 100) * 100 // 100ピクセル単位でスナップ
    //     duration: 200
    //     easing.type: Easing.OutCubic
    // }
}


Flickable.movementEnded() の一般的なエラーとトラブルシューティング

シグナルが期待通りに発生しない

考えられる原因

  • アニメーションとの競合
    FlickablecontentXcontentY を直接アニメーションで変更している場合、そのアニメーションが終了したとしても movementEnded は発生しません。movementEnded はあくまでユーザーのフリック/ドラッグによるスクロール動作の終了を意味します。
  • 非常に短いフリックやドラッグ
    ユーザーの操作が非常に短く、慣性スクロールがほとんど発生しない場合、movementEnded が発生する前に movementStarted が再び発生したり、そもそも移動として認識されなかったりすることがあります。
  • 他の要素によるイベントブロック
    Flickable の上層に、マウス/タッチイベントを処理してしまう別の要素(例: MouseAreaRectangle など)が配置されており、Flickable にイベントが到達していない可能性があります。
  • コンテンツのサイズがFlickableより小さい
    FlickablecontentWidth または contentHeight が、Flickable 自体の width または height と同じかそれより小さい場合、スクロール可能な領域が存在しないため、movementEnded が発生する機会がありません。
  • interactive プロパティの誤設定
    Flickableinteractive プロパティが false に設定されていると、ユーザー操作が無効になり、movementEnded シグナルも発生しません。

トラブルシューティング

  • アニメーションの終了検知
    アニメーションの終了を検知したい場合は、Animation アイテムの onStopped シグナルを使用してください。
  • デバッグ出力の活用
    onMovementStartedonMovementEnded の両方に console.log() を仕込み、いつシグナルが発生しているかを確認します。これにより、シグナルが発生しない根本原因を特定しやすくなります。
    Flickable {
        // ...
        onMovementStarted: {
            console.log("Movement Started!");
        }
        onMovementEnded: {
            console.log("Movement Ended!");
        }
    }
    
  • イベントの透過性 (MouseArea の propagateComposedEvents など)
    もし Flickable の上に MouseArea などがある場合、その MouseArea がイベントを消費していないか確認してください。必要であれば、MouseAreapropagateComposedEvents: true を設定して、イベントをFlickableに透過させることを検討してください。
  • コンテンツサイズの確認
    Flickable {
        width: 300
        height: 200
        contentWidth: myContent.width // Flickableのwidth/heightよりも大きくすること
        contentHeight: myContent.height
    
        Rectangle {
            id: myContent
            width: 500 // 例えば
            height: 400 // 例えば
            // ...
        }
    }
    
    contentWidthcontentHeight が適切に設定されているか、また、内部のコンテンツ(myContent)のサイズがFlickableのサイズより大きいかを確認してください。
  • interactive プロパティの確認
    Flickable {
        interactive: true // これがtrueになっていることを確認
        // ...
    }
    

onMovementEnded 内のロジックが期待通りに動作しない

考えられる原因

  • 処理が重すぎる
    onMovementEnded 内で非常に重い処理を実行しているため、UIがフリーズしたり、次のユーザー操作への反応が遅れたりする。
  • 状態の不整合
    movementEnded が発生した時点での contentXcontentY の値が、その後の処理で参照されるまでに変化してしまっている。
  • 非同期処理との競合
    onMovementEnded 内で非同期処理(例えば、ネットワークリクエストやタイマー)を開始し、その結果が返ってくる前にFlickableの状態が変化してしまう、あるいはユーザーが再度操作を開始してしまう。

トラブルシューティング

  • プロファイリング
    Qt Creator のプロファイラー(QML Profiler)を使用して、onMovementEnded 内の処理が実際にどれくらいの時間を要しているかを測定し、パフォーマンスのボトルネックを特定します。
  • 状態管理の徹底
    シグナルとスロット、プロパティバインディング、および状態マシンを適切に利用して、アプリケーションの状態を明確にし、不整合を防ぎます。特に、ユーザー操作と内部ロジックによるFlickableの状態変更が混在する場合に重要です。
  • Timer を利用した遅延処理
    重い処理やUIの更新をTimerで少し遅らせて実行することで、UIの応答性を保つことができます。
    Flickable {
        // ...
        onMovementEnded: {
            var finalX = contentX;
            var finalY = contentY;
    
            // 少し遅らせて処理を実行
            Qt.callLater(function() {
                console.log("遅延処理: 最終コンテンツ位置: x=" + finalX + ", y=" + finalY);
                // ここで重い処理やUI更新
            });
        }
    }
    
  • 現在の状態のキャプチャ
    onMovementEnded シグナル内で、必要な contentXcontentY などのFlickableの状態をすぐに変数に格納し、後続の処理でその変数を使用するようにします。

スナップ機能の実装がうまくいかない

考えられる原因

  • アニメーションのrunning状態の監視不足
    複数のアニメーションが同時に実行されたり、アニメーション中に別の操作が開始されたりするケースを考慮していない。
  • スナップ位置の計算ミス
    スナップさせたい正確なピクセル位置を計算できていない。
  • contentX / contentY の更新タイミング
    スナップアニメーション中にユーザーが再度操作すると、アニメーションが中断され、意図しない位置にコンテンツが停止してしまう。

トラブルシューティング

  • アニメーションの種類
    NumberAnimationSpringAnimation など、目的のスナップ動作に適したアニメーションを使用します。SpringAnimation は自然なバネの動きを再現できるため、ユーザー体験が良い場合があります。
    Flickable {
        // ...
        onMovementEnded: {
            // スナップ位置を計算
            var targetX = Math.round(contentX / 100) * 100;
            var targetY = Math.round(contentY / 100) * 100;
    
            // アニメーションを停止してから開始
            if (snapAnimationX.running) snapAnimationX.stop();
            if (snapAnimationY.running) snapAnimationY.stop();
    
            snapAnimationX.to = targetX;
            snapAnimationY.to = targetY;
    
            snapAnimationX.start();
            snapAnimationY.start();
        }
    
        NumberAnimation {
            id: snapAnimationX
            target: parent // Flickable自身をターゲットにする
            property: "contentX"
            duration: 200
            easing.type: Easing.OutCubic
        }
        NumberAnimation {
            id: snapAnimationY
            target: parent
            property: "contentY"
            duration: 200
            easing.type: Easing.OutCubic
        }
    }
    
  • 正確なスナップ位置の計算
    Math.round(), Math.floor(), Math.ceil() などを使用して、ターゲットとなるスナップ位置を正確に計算します。グリッド状にスナップさせたい場合は、contentX / gridSize のように割って四捨五入し、gridSize を掛けて戻すのが一般的です。
  • スナップアニメーションの管理
    • スナップアニメーション中にFlickableinteractiveプロパティを一時的にfalseに設定することで、ユーザー操作による中断を防ぐことができます。(ただし、UXに影響する可能性があるので注意)
    • スナップアニメーションを開始する前に、進行中の他のアニメーションを停止させる。
    • スナップアニメーションが終了したら、その後の処理を実行する (onStopped シグナルを使用)。

これらの一般的なエラーとトラブルシューティングのヒントが、Flickable.movementEnded() を使用する際の助けになれば幸いです。問題解決の際には、console.log() によるデバッグ出力とQt CreatorのQML Profilerを積極的に活用することをお勧めします。 QtのFlickable.movementEnded()シグナルは非常に便利ですが、使用方法や環境によっては予期せぬ挙動やエラーに遭遇することがあります。ここでは、よくある問題とそのトラブルシューティング方法を説明します。

Flickable.movementEnded() に関するよくあるエラーとトラブルシューティング

シグナルが全く発火しない、または発火が遅れる

よくある原因

  • 他の MouseArea や Flickable との競合
    Flickableの内部や外部に、別のMouseAreaFlickableが重なっている場合、イベントの伝播が妨げられ、期待通りにFlickableが動作しないことがあります。特に、MouseAreapropagateComposedEventsacceptedButtonsの設定が影響することがあります。
    • トラブルシューティング
      シグナルを捕捉したいFlickableが、他の入力イベントを受け取るアイテムに覆われていないか確認してください。必要に応じて、MouseAreaanchors.fill: parentzプロパティを調整したり、イベントの伝播を適切に制御したりします。
  • interactive プロパティが false に設定されている
    Flickableinteractiveプロパティがfalseになっていると、ユーザーの操作を受け付けなくなり、スクロールも発生しません。デフォルトはtrueです。
    • トラブルシューティング
      interactive: trueであることを確認してください。
  • コンテンツがスクロールできない状態
    コンテンツがFlickableのサイズに収まってしまっている場合、当然スクロールは発生しません。
    • トラブルシューティング
      Flickablewidth/heightと、contentWidth/contentHeightの関係を再確認してください。デバッグ用にRectangleなどを置いて、Flickableとコンテンツの境界を確認するのも有効です。
  • contentWidth / contentHeight の設定ミス
    Flickable は、コンテンツがFlickable自体のサイズよりも大きい場合にのみスクロール可能になります。contentWidthまたはcontentHeightが正しく設定されていない(例:コンテンツのサイズよりも小さい、またはFlickableと同じサイズになっている)と、スクロールが発生せず、movementEnded()も発火しません。
    • トラブルシューティング
      contentWidthcontentHeightが、Flickable内に配置されたアイテムの実際のサイズ(またはそれ以上)に設定されていることを確認してください。特に、contentItem.childrenRect.widthcontentItem.childrenRect.heightを使用して、動的にコンテンツのサイズをバインドすると良いでしょう。
      Flickable {
          id: myFlickable
          width: 300
          height: 200
      
          // コンテンツの実際のサイズにバインド
          contentWidth: contentItem.childrenRect.width
          contentHeight: contentItem.childrenRect.height
      
          // ... コンテンツアイテム ...
      }
      

movementEnded() が意図しないタイミングで発火する

よくある原因

  • プログラムからの contentX/contentY 変更でも発火
    FlickablecontentXcontentYプロパティをQMLやJavaScriptから直接変更した場合も、movementEnded()が発火することがあります。これは、内部的には「移動が完了した」と判断されるためです。
    • トラブルシューティング
      プログラムからの移動でmovementEnded()の処理を避けたい場合は、フラグを立てて処理をスキップするなどの対策が必要です。
      property bool programmaticMove: false
      
      onMovementEnded: {
          if (programmaticMove) {
              programmaticMove = false; // フラグをリセット
              return; // 処理をスキップ
          }
          console.log("ユーザー操作による移動が終了しました。");
      }
      
      function scrollToTop() {
          programmaticMove = true;
          myFlickable.contentY = 0; // プログラムからの移動
      }
      
  • 短いドラッグやフリックでも発火
    movementEnded()は、フリックが完全に停止したときだけでなく、短いドラッグ操作を離しただけでも発火します。これは仕様通りの動作ですが、フリックによる慣性スクロールが終了した時だけ処理を行いたい場合には、意図しない挙動と感じるかもしれません。
    • トラブルシューティング
      • Flickable.flickEnded()シグナルを使用することを検討してください。これは、フリックによる慣性スクロールが終了したときにのみ発火します。
      • onMovementEnded内で、Flickable.flickingプロパティ(フリック中か否か)やFlickable.draggingプロパティ(ドラッグ中か否か)の状態をチェックして、処理を分岐させます。
        onMovementEnded: {
            if (!flicking && !dragging) { // フリックもドラッグも終了した状態
                console.log("完全に停止しました。");
            }
        }
        

movementEnded() 内の処理が重い、またはパフォーマンス問題

よくある原因

  • 複雑な計算やUI更新
    onMovementEndedハンドラ内で、大量のデータ処理や複雑なUI要素の生成/破棄を行うと、アプリケーションの応答性が低下したり、UIがカクついたりすることがあります。
    • トラブルシューティング
      • 処理の軽量化
        可能な限り、onMovementEnded内で実行する処理を軽量化してください。
      • 非同期処理
        時間のかかる処理は、WorkerScriptやJavaScriptのsetTimeoutなどを利用して、UIスレッドとは別のスレッドや後続のイベントループで実行するようにします。
      • 遅延実行
        setTimeout(..., 0) などで、処理をわずかに遅延させることで、UIの更新と競合するのを避けることができます。
      • 必要な時だけ実行
        本当に処理が必要な場合のみ実行するように、条件分岐を追加します。例えば、特定のスクロール位置に達したときだけ処理を行うなど。

ListView や GridView の内部で Flickable.movementEnded() を使用する場合の注意点

  • ListViewGridViewcontentHeightcontentWidthの計算が、デリゲートの動的な高さ/幅によって正しく行われない場合、スクロールが正しく機能しないことがあります。
    • トラブルシューティング
      • ListViewGridView自体のonMovementEndedシグナルを使用することを検討してください。多くの場合、デリゲート内のFlickableではなく、親のビューのシグナルで十分です。
      • デリゲートの高さや幅が動的に変わる場合、ListViewimplicitHeightimplicitWidth、またはcontentHeightプロパティを適切にバインドしているか確認してください。
  • ListViewGridView自体が内部的にFlickableの機能を持っているため、これらのビューのアイテム(デリゲート)内にさらにFlickableを配置すると、イベントの競合や予期せぬスクロール挙動が発生することがあります。
  • シンプルな例で切り分けを行う
    問題が複雑な場合は、最小限のQMLコードでFlickablemovementEnded()シグナルのみを実装し、問題が再現するかどうかを確認します。これにより、問題の原因がFlickable自体にあるのか、それとも他のコンポーネントとの相互作用によるものなのかを特定しやすくなります。
  • QML Debuggerを使用する
    Qt CreatorにはQML Debuggerが搭載されており、QMLコードの実行をステップ実行したり、プロパティの値をリアルタイムで確認したりできます。これにより、Flickableの状態やプロパティの変化を詳細に追跡できます。
  • console.log() を活用する
    movementEnded()シグナルハンドラの先頭でconsole.log("movementEnded fired!")と出力し、シグナルがいつ、どのくらい発火しているかをモニターします。 また、contentXcontentYの値も出力して、スクロール位置が期待通りに変化しているか確認します。


単純なログ出力(動きが止まったことを確認する)

最も基本的な例として、Flickableの動きが停止したときにコンソールにメッセージを出力するコードです。これはデバッグや動作確認の際に非常に役立ちます。

// main.qml
import QtQuick 2.0
import QtQuick.Window 2.0

Window {
    width: 600
    height: 400
    visible: true
    title: "Flickable Movement Ended Example"

    Flickable {
        id: myFlickable
        anchors.fill: parent
        // コンテンツがFlickableより大きい場合にスクロール可能になる
        contentWidth: myContent.width
        contentHeight: myContent.height
        clip: true // コンテンツをFlickableの範囲内にクリップする

        Rectangle {
            id: myContent
            width: 1000 // Flickableの幅より大きい
            height: 1000 // Flickableの高さより大きい
            color: "lightsteelblue"
            Text {
                text: "たくさんコンテンツがあります\nスクロールしてみてください!"
                font.pointSize: 20
                anchors.centerIn: parent
                wrapMode: Text.WordWrap
                width: parent.width - 50 // 適度に幅を調整
            }
        }

        // movementEnded シグナルハンドラ
        onMovementEnded: {
            console.log("Flickableの動きが終了しました!");
            console.log("現在のcontentX: " + contentX + ", contentY: " + contentY);
        }
    }
}

説明

  • ユーザーがフリックやドラッグを止めて、コンテンツの動きが完全に停止すると、このメッセージがコンソールに表示されます。
  • onMovementEndedハンドラ内で、console.logを使ってメッセージと現在のcontentX, contentYの値を出力しています。
  • Flickableの中に大きなRectanglemyContent)を配置し、スクロールできるようにしています。

スクロール終了時にコンテンツを特定の位置にスナップさせる

movementEnded()の一般的な使用例として、スクロールが終了した際にコンテンツをグリッドやページに「スナップ」させる機能があります。これにより、ユーザーはより整頓されたビューを得ることができます。

// main.qml
import QtQuick 2.0
import QtQuick.Window 2.0

Window {
    width: 400
    height: 400
    visible: true
    title: "Flickable Snap Example"

    Flickable {
        id: snapFlickable
        anchors.fill: parent
        contentWidth: 1200 // 3つのページ(400x3)
        contentHeight: parent.height
        flickableDirection: Flickable.HorizontalFlick // 水平方向のみフリック可能
        clip: true

        // ページを表現するRectangles
        Row {
            id: pages
            spacing: 0 // ページ間にスペースなし

            Rectangle {
                width: snapFlickable.width
                height: snapFlickable.height
                color: "lightblue"
                Text { text: "ページ 1"; anchors.centerIn: parent; font.pointSize: 30 }
            }
            Rectangle {
                width: snapFlickable.width
                height: snapFlickable.height
                color: "lightgreen"
                Text { text: "ページ 2"; anchors.centerIn: parent; font.pointSize: 30 }
            }
            Rectangle {
                width: snapFlickable.width
                height: snapFlickable.height
                color: "lightcoral"
                Text { text: "ページ 3"; anchors.centerIn: parent; font.pointSize: 30 }
            }
        }

        // movementEnded シグナルハンドラ
        onMovementEnded: {
            // スナップするX座標を計算
            // 現在のcontentXに最も近いページの先頭に合わせる
            var pageWidth = snapFlickable.width;
            var targetX = Math.round(contentX / pageWidth) * pageWidth;

            // アニメーションでスナップ
            snapAnimation.to = targetX;
            snapAnimation.start();
        }

        // スナップ用アニメーション
        NumberAnimation {
            id: snapAnimation
            target: snapFlickable
            property: "contentX"
            duration: 200 // アニメーション時間
            easing.type: Easing.OutCubic // スムーズなアニメーション
        }
    }
}

説明

  • NumberAnimationを使用して、snapFlickable.contentXを計算されたtargetXまでスムーズにアニメーションさせます。これにより、フリックが止まった後に、コンテンツが自動的に最も近いページにぴたりと収まります。
  • onMovementEndedでは、現在のcontentXがどのページに最も近いかをMath.roundを使って計算し、そのページの先頭のcontentXtargetXとして設定します。
  • Flickable内に、Flickableの幅と同じサイズの3つのRectangleを横に並べて「ページ」のように見せています。

スクロール終了時に特定の条件を満たした場合にのみ処理を実行する

movementEnded()はフリックだけでなく、短いドラッグを離しただけでも発火します。フリックによる慣性スクロールが完全に終了した時のみ処理を行いたい場合は、flickingプロパティなどを組み合わせて使用します。

// main.qml
import QtQuick 2.0
import QtQuick.Window 2.0

Window {
    width: 600
    height: 400
    visible: true
    title: "Flickable Conditional Movement Ended"

    Flickable {
        id: conditionalFlickable
        anchors.fill: parent
        contentWidth: 800
        contentHeight: 800
        clip: true

        Rectangle {
            width: parent.contentWidth
            height: parent.contentHeight
            color: "cornsilk"
            Text {
                text: "スクロールしてみてください。\nフリックが終わった時だけメッセージが出ます。"
                font.pointSize: 20
                anchors.centerIn: parent
                wrapMode: Text.WordWrap
                width: parent.width - 50
            }
        }

        // movementEnded シグナルハンドラ
        onMovementEnded: {
            // flicking と dragging プロパティを確認
            // flicking: 現在フリックによる慣性スクロール中か
            // dragging: 現在ドラッグ操作中か
            if (!flicking && !dragging) {
                console.log("Flickableの動きが完全に停止しました(フリック・ドラッグ終了)。");
            } else {
                console.log("まだ動きが残っているか、単なるドラッグ終了です。");
            }
        }
    }
}

説明

  • この条件により、ユーザーが指を離した後、フリックによる慣性スクロールも完全に終了し、Flickableが静止した状態になった場合にのみ、特定の処理を実行できます。
  • flickingFlickableが慣性スクロール中であるかを示し、draggingはユーザーがドラッグ操作中であるかを示します。
  • onMovementEndedハンドラ内で、!flicking && !draggingという条件を追加しています。

リストビューやグリッドビューで、ユーザーが最下部までスクロールした際に新しいデータをロードする「無限スクロール」のような機能と組み合わせて使用できます。

// main.qml
import QtQuick 2.0
import QtQuick.Window 2.0
import QtQuick.Controls 2.15 // ListViewを使うために必要

Window {
    width: 300
    height: 400
    visible: true
    title: "Flickable Load More Example"

    ListView {
        id: myListView
        anchors.fill: parent
        model: 10 // 初期データ数
        clip: true // 重要:ListViewもFlickableの機能を持つ

        delegate: Rectangle {
            width: parent.width
            height: 50
            color: index % 2 === 0 ? "lightgray" : "white"
            border.color: "darkgray"
            border.width: 1

            Text {
                text: "アイテム " + (index + 1)
                anchors.centerIn: parent
            }
        }

        // ListViewは内部的にFlickableの機能を持っているため、
        // ListViewのonMovementEndedシグナルを直接利用できます。
        onMovementEnded: {
            // 最下部に到達したかチェック
            // atYEndプロパティは、FlickableのcontentYがスクロール可能な最大値に達したときにtrueになる
            if (atYEnd) {
                // さらにデータがあるか確認し、あれば追加ロードする
                if (model < 30) { // 例: 最大30アイテムまでロード
                    console.log("最下部に到達しました。新しいデータをロードします...");
                    // 実際にはAPIコールやデータ処理などを行う
                    model += 5; // 例として、5つのアイテムを追加
                    console.log("データが追加されました。現在のアイテム数: " + model);
                } else {
                    console.log("すべてのデータをロードしました。");
                }
            }
        }
    }
}
  • このように、movementEnded()はユーザーが特定のスクロール状態に到達したことを検知するトリガーとして非常に強力です。
  • atYEndtrueになった際に、新しいデータをロードする処理をシミュレートしています(この例ではmodelの数を増やしています)。
  • atYEndプロパティは、Flickableが垂直方向にスクロール可能な範囲の終端に達している場合にtrueになります。
  • ListViewは内部的にFlickableの機能を持っているため、ListViewonMovementEndedを直接使えます。


Flickable.flickEnded() シグナル

説明
Flickable.flickEnded() は、movementEnded()よりも限定的なシグナルです。これは、ユーザーがコンテンツをフリックした後に発生する慣性スクロール(アニメーションによる自動スクロール)が完全に終了したときにのみ発火します。movementEnded()が短いドラッグの終了でも発火するのに対し、flickEnded()は純粋なフリックの終わりに焦点を当てています。

使用するケース

  • 短いドラッグ操作の終了では処理を実行したくない場合(例:スナップ機能の開始、データのロードなど)。
  • ユーザーがフリック操作でコンテンツをスクロールさせ、その動きが完全に止まったときに何らかの処理を行いたい場合。

コード例

import QtQuick 2.0
import QtQuick.Window 2.0

Window {
    width: 400
    height: 300
    visible: true
    title: "Flickable Flick Ended Example"

    Flickable {
        id: myFlickable
        anchors.fill: parent
        contentWidth: 800
        contentHeight: 600
        clip: true

        Rectangle {
            width: parent.contentWidth
            height: parent.contentHeight
            color: "beige"
            Text {
                text: "フリックが終わった時だけメッセージが出ます。\nドラッグを離しても出ません。"
                anchors.centerIn: parent
                font.pointSize: 20
                wrapMode: Text.WordWrap
                width: parent.width - 50
            }
        }

        onMovementEnded: {
            console.log("movementEnded: スクロールが終了しました (フリック・ドラッグ両方)");
        }
        onFlickEnded: {
            console.log("flickEnded: フリックによる慣性スクロールが終了しました!");
        }
    }
}

比較

  • flickEnded(): フリックの慣性スクロールが停止した瞬間のみ。
  • movementEnded(): ドラッグを離した瞬間、またはフリックの慣性スクロールが停止した瞬間。

contentX/contentY プロパティの変更を監視 (onContentXChanged, onContentYChanged)

説明
FlickablecontentXおよびcontentYプロパティは、コンテンツのスクロール位置を示します。これらのプロパティが変更されたときにトリガーされるシグナルハンドラ(onContentXChangedonContentYChanged)を利用して、スクロールの進行状況を監視できます。

使用するケース

  • スクロールの「終了」を、contentXcontentY変化が停止したことで判断したい場合(ただし、これだけでは慣性スクロールの終わりを正確に検知するのは難しい)。
  • 特定のスクロール位置に到達したときに、UIを動的に更新したい場合(例:スクロールバーの表示/非表示、ヘッダーの縮小など)。
  • スクロールが始まった瞬間スクロール中に何か処理を行いたい場合。

コード例

import QtQuick 2.0
import QtQuick.Window 2.0

Window {
    width: 400
    height: 300
    visible: true
    title: "ContentX/Y Changed Example"

    Flickable {
        id: myFlickable
        anchors.fill: parent
        contentWidth: 800
        contentHeight: 600
        clip: true

        Rectangle {
            width: parent.contentWidth
            height: parent.contentHeight
            color: "lavender"
            Text {
                text: "スクロールするとメッセージが出ます。\ncontentX/Yが変化するたびに発火します。"
                anchors.centerIn: parent
                font.pointSize: 20
                wrapMode: Text.WordWrap
                width: parent.width - 50
            }
        }

        // contentXが変化したときに発火
        onContentXChanged: {
            console.log("contentXが変化しました: " + contentX);
        }

        // contentYが変化したときに発火
        onContentYChanged: {
            console.log("contentYが変化しました: " + contentY);
        }

        // movementEnded との比較
        onMovementEnded: {
            console.log("movementEnded: スクロールが終了しました。");
        }
    }
}

注意点
onContentXChangedonContentYChangedは、スクロール中は非常に頻繁に発火します。この中で重い処理を行うと、アプリケーションのパフォーマンスが低下する可能性があります。

flicking および dragging プロパティの監視 (onFlickingChanged, onDraggingChanged)

説明
Flickableは、スクロールの状態を示す便利なブール型プロパティを提供しています。

  • dragging: trueの場合、ユーザーがコンテンツをドラッグ中です。
  • flicking: trueの場合、コンテンツが慣性スクロール中です。

これらのプロパティの変更を監視することで、スクロールの開始と終了をより詳細に制御できます。特にflickingfalseになった瞬間は、flickEnded()と同様に慣性スクロールの終了を意味します。

使用するケース

  • スクロールが完全に停止したとき(flickingdraggingfalseになったとき)に、movementEnded()では捕らえられない微妙な挙動を制御したい場合。
  • スクロールが開始された瞬間(flickingtrueになったとき、またはdraggingtrueになったとき)にUI要素を表示したり、他の処理を中断したりしたい場合。

コード例

import QtQuick 2.0
import QtQuick.Window 2.0

Window {
    width: 400
    height: 300
    visible: true
    title: "Flicking/Dragging Changed Example"

    Flickable {
        id: myFlickable
        anchors.fill: parent
        contentWidth: 800
        contentHeight: 600
        clip: true

        Rectangle {
            width: parent.contentWidth
            height: parent.contentHeight
            color: "palegoldenrod"
            Text {
                text: "スクロール状態の変化に注目してください。\n完全に止まるとメッセージが出ます。"
                anchors.centerIn: parent
                font.pointSize: 20
                wrapMode: Text.WordWrap
                width: parent.width - 50
            }
        }

        // flicking プロパティが変化したときに発火
        onFlickingChanged: {
            if (flicking) {
                console.log("フリックによる慣性スクロールが開始されました。");
            } else {
                // flicking が false になった = 慣性スクロールが停止した
                console.log("フリックによる慣性スクロールが終了しました。");
                // dragging も false なら完全に静止
                if (!dragging) {
                    console.log("Flickableが完全に静止しました!");
                }
            }
        }

        // dragging プロパティが変化したときに発火
        onDraggingChanged: {
            if (dragging) {
                console.log("ドラッグが開始されました。");
            } else {
                // dragging が false になった = ドラッグ操作が終了した
                console.log("ドラッグが終了しました。");
                // flicking も false なら完全に静止
                if (!flicking) {
                    console.log("Flickableが完全に静止しました!");
                }
            }
        }
    }
}

比較
onFlickingChangedonDraggingChangedを組み合わせることで、movementEnded()flickEnded()よりも粒度の細かいスクロール状態の遷移を検知し、制御することが可能になります。特に、ユーザーが指を離した直後の状態と、その後の慣性スクロールの終了状態を区別したい場合に有効です。

どの代替方法を選ぶべきかは、あなたのアプリケーションの具体的な要件に依存します。

  • スクロールの「開始」や「途中」の状態も監視したい、またはより詳細な状態遷移を制御したいなら
    • onContentXChanged / onContentYChanged (頻繁に発火するので注意)
    • onFlickingChanged / onDraggingChanged (スクロールの状態変化を正確に把握できる)
  • 「フリックによる慣性スクロールの終わり」に限定したいなら
    • Flickable.flickEnded() を使います。
  • 最もシンプルに「スクロールの終わり」を検知したいなら
    • Flickable.movementEnded() が最も手軽で一般的です。短いドラッグも含む全てのスクロール停止を検知します。