Flickable.maximumFlickVelocity

2025-05-26

簡単に言うと、ユーザーがどれだけ強くフリックしても、このプロパティで設定された速度以上にコンテンツがスクロールしないように制限をかけるためのものです。

以下に詳細を説明します。

  • Flickable {
        width: 400
        height: 300
    
        contentWidth: myImage.width
        contentHeight: myImage.height
    
        // フリックの最大速度を2000ピクセル/秒に制限
        maximumFlickVelocity: 2000
    
        Image {
            id: myImage
            source: "large_image.png"
        }
    }
    

    この例では、Flickable内の画像が、ユーザーのフリック操作によって最大で毎秒2000ピクセルまでしかスクロールしないように設定されています。

  • 単位 速度は、ピクセル/秒の単位で表現されます。

  • 設定のメリット

    • 操作感の調整
      アプリケーションのUI/UXに合わせて、フリックの感度を調整できます。例えば、細かくコンテンツを操作させたい場合は速度を抑え、ざっくりと全体をスクロールさせたい場合は速度を上げるといった調整が可能です。
    • 制御された動き
      予期せぬ高速なスクロールを防ぎ、ユーザーに安定した操作体験を提供できます。
    • デバイスパフォーマンス
      特に性能の低いデバイスでは、過度に高速なフリックによる描画負荷を軽減する効果も期待できます。
  • maximumFlickVelocityの役割 このプロパティは、フリック操作によってコンテンツがスクロールを開始する際の初期速度の上限を決定します。例えば、maximumFlickVelocityを小さい値に設定すると、ユーザーがどんなに速くフリックしても、ゆっくりとしかコンテンツが動かないようになります。逆に、大きな値に設定すると、より速いスクロールが可能になります。

  • フリック操作 ユーザーが画面を指で素早く動かして離すと、コンテンツが慣性によってしばらくの間スクロールし続けます。これがフリック操作です。

  • Flickableとは? Flickableは、QMLでスクロール可能な領域を作成するための要素です。リストや画像など、表示領域よりも大きなコンテンツを、ユーザーがドラッグしたりフリックしたりして閲覧できるようにします。



maximumFlickVelocityが期待通りに機能しない

考えられる原因とトラブルシューティング

  • interactiveプロパティがfalseに設定されている

    • Flickable.interactivefalseに設定されていると、ユーザーの入力(フリックやドラッグ)が無視されます。
    • トラブルシューティング
      interactive: trueまたはデフォルト設定のままになっていることを確認してください。
  • 誤ったプロパティの設定場所

    • maximumFlickVelocityFlickable要素のプロパティです。もし、Flickableの内部のアイテムなどに誤って設定していても効果はありません。
    • トラブルシューティング
      maximumFlickVelocityが正しくFlickable { ... }ブロック内に記述されていることを確認してください。
  • Qtバージョンの問題(特に新しいバージョン)

    • ごく稀に、特定のQtバージョン(特に新しいマイナーバージョンアップなど)で、Flickableのフリック挙動やプロパティの動作にバグや変更が導入されることがあります。Qt 6.9でmaximumFlickVelocityflickDecelerationが機能しないという報告がフォーラムで上がっています。
    • トラブルシューティング
      • Qtの公式フォーラムやバグトラッカーで、使用しているQtバージョンと関連する既知のバグがないか検索してみてください。
      • 可能であれば、異なるQtバージョン(以前の安定版など)で試してみて、問題がバージョン固有のものかを確認してください。
      • Qtのドキュメントで、使用しているバージョンのFlickableの挙動に関する変更点がないか確認してください。
  • コンテンツのサイズがFlickableのサイズ以下

    • Flickableは、コンテンツがFlickable自身のサイズよりも大きい場合にのみスクロールします。contentWidthcontentHeightがFlickableのwidthheightと同じか小さい場合、フリック自体が発生しないため、maximumFlickVelocityの設定も意味がありません。
    • トラブルシューティング
      contentWidthcontentHeightが、Flickableの表示領域よりも十分に大きいことを確認してください。
    • flickDeceleration: フリックの減衰速度を制御するプロパティです。maximumFlickVelocityが高くても、flickDecelerationが非常に高い場合、フリックがすぐに停止してしまい、最大速度に到達する前に減速してしまうことがあります。
    • トラブルシューティング
      flickDecelerationの値も調整して、maximumFlickVelocityと組み合わせたときに期待する動作になるか確認してください。

フリックの速度が速すぎる/遅すぎる

考えられる原因とトラブルシューティング

  • システムの感度設定

    • 特定のOSやデバイスでは、システム全体のタッチ感度設定がQMLのフリック挙動に影響を与える可能性があります。これは開発者が直接QMLで制御できる範囲外ですが、ユーザーがシステム設定で変更できる場合があります。
  • flickDecelerationとの兼ね合い

    • flickDecelerationが低いとフリックが長く続き、高くするとすぐに止まります。maximumFlickVelocityと組み合わせて調整することで、フリックの「粘り気」をコントロールできます。
    • トラブルシューティング
      flickDecelerationも調整して、スクロールの開始速度だけでなく、停止までの挙動も合わせて調整します。
  • maximumFlickVelocityの値が適切でない

    • 当然ながら、設定した値が意図した速度と合っていないことが原因です。
    • トラブルシューティング
      アプリケーションのユーザー体験に合わせて、maximumFlickVelocityの値を試行錯誤して調整してください。一般的には、数百から数千ピクセル/秒の範囲で調整することが多いです。

フリックがまったく機能しない

考えられる原因とトラブルシューティング

  • MouseAreaなどの他の入力要素との競合

    • Flickableの内部にMouseAreaTapHandlerなど、独自の入力処理を持つ要素がある場合、それらがFlickableのフリックイベントを「消費」してしまうことがあります。
    • トラブルシューティング
      • 内部の入力要素のpropagateComposedEventsプロパティをtrueに設定して、イベントをFlickableに伝播させるように試してみてください。
      • または、入力要素のpreventStealingプロパティを検討します(ただし、これはより複雑なイベント処理が必要になる場合があります)。
  • flickableDirectionが適切でない

    • flickableDirectionはフリックを許可する方向(水平、垂直、両方、なし)を制御します。
    • トラブルシューティング
      flickableDirectionFlickable.HorizontalAndVertical(デフォルト)または必要な方向に設定されていることを確認してください。例えば、垂直スクロールだけを期待しているのにFlickable.Horizontalになっていると、垂直フリックは機能しません。
  • clip: trueが設定されていない

    • Flickableはデフォルトでclip: falseです。これは、コンテンツがFlickableの境界からはみ出して表示されることを意味します。フリック自体は動作しますが、見た目上スクロールしているように見えない場合があります。
    • トラブルシューティング
      Flickable { clip: true; ... }を設定して、Flickableの境界外のコンテンツがクリップされるようにしてください。これにより、スクロールしていることが視覚的に分かりやすくなります。
  • コンテンツがスクロール可能ではない

    • 前述の通り、contentWidthcontentHeightがFlickableのサイズよりも小さい場合、フリックは発生しません。
    • トラブルシューティング
      コンテンツのサイズがFlickableの表示領域よりも大きいことを確認してください。

フリックの慣性が不自然

考えられる原因とトラブルシューティング

  • flickDecelerationとmaximumFlickVelocityのバランス
    • フリックの慣性、つまりフリックが停止するまでの「滑らかさ」は、主にflickDecelerationによって制御されますが、maximumFlickVelocityも間接的に影響します。速度が速すぎると急停止するように感じたり、遅すぎるといつまでも止まらないように感じたりします。
    • トラブルシューティング
      両方のプロパティを調整し、実際のデバイスでテストして、最も自然でユーザーフレンドリーな慣性挙動を見つけてください。
  • Qt CreatorのQMLインスペクターを使用

    • Qt CreatorのQMLインスペクター(Live PreviewやQML Debugger)を使用して、Flickableのプロパティが実行時にどのように変化しているかを確認できます。
  • 最小限の再現コードでテスト

    • 問題が発生した場合、複雑なUIからFlickableだけのシンプルなQMLファイルを作成し、問題が再現するかどうかをテストします。これにより、他の要素との干渉が原因であるかを切り分けることができます。
  • console.log()によるデバッグ

    • FlickableonFlickStartedonFlickEndedシグナルを使って、フリックイベントが正しく発生しているか、horizontalVelocityverticalVelocityの値がどうなっているかなどをコンソールに出力して確認します。
    • 例:
      Flickable {
          // ...
          onFlickStarted: {
              console.log("Flick started!");
              console.log("Current max velocity:", maximumFlickVelocity);
          }
          onFlickEnded: {
              console.log("Flick ended!");
              console.log("Final velocity:", horizontalVelocity, verticalVelocity);
          }
      }
      


基本的なフリックの例

この例では、大きな画像をFlickable内に配置し、ユーザーがフリックして画像を閲覧できるようにします。maximumFlickVelocityを設定しない場合(またはデフォルト値を使用する場合)と、異なる値を設定した場合の挙動の違いを比較できます。

import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15

Window {
    width: 640
    height: 480
    visible: true
    title: "Flickable Maximum Velocity Example"

    Rectangle {
        width: parent.width
        height: parent.height
        color: "lightgray"

        Flickable {
            id: myFlickable
            width: parent.width - 40 // 親の幅より少し小さく
            height: parent.height - 40 // 親の高さより少し小さく
            anchors.centerIn: parent
            clip: true // 境界外のコンテンツをクリップ

            // コンテンツの幅と高さを指定
            contentWidth: largeImage.width
            contentHeight: largeImage.height

            // フリックの最大速度を2000ピクセル/秒に設定
            // この値を変更して、フリックの速さを試してください
            maximumFlickVelocity: 2000 // デフォルトはプラットフォーム依存

            // フリックの減衰速度 (フリックが停止する速さ)
            // この値もフリックの感触に大きく影響します
            flickDeceleration: 1500 // デフォルトはプラットフォーム依存

            // フリックの開始と終了をログに出力
            onFlickStarted: console.log("フリック開始!現在の最大速度:", maximumFlickVelocity)
            onFlickEnded: console.log("フリック終了!")

            Image {
                id: largeImage
                // 実際には、大きな画像ファイルを指定します
                // 例: source: "qrc:/images/very_large_image.jpg"
                // この例では便宜上、大きな色のついたRectangleを使用します
                source: "" // 画像ソースは空にして、Rectangleで代用
                width: 1500 // 非常に大きな幅
                height: 1200 // 非常に大きな高さ

                Rectangle {
                    anchors.fill: parent
                    color: "teal"
                    Text {
                        anchors.centerIn: parent
                        text: "大きなコンテンツ"
                        font.pixelSize: 80
                        color: "white"
                    }
                }
            }
        }

        // コントロールパネル
        Column {
            anchors.bottom: parent.bottom
            anchors.left: parent.left
            anchors.right: parent.right
            height: 80
            spacing: 5
            padding: 10
            color: "darkgray"

            Row {
                spacing: 10
                Text { text: "最大フリック速度:" }
                Slider {
                    id: velocitySlider
                    width: 200
                    from: 100
                    to: 5000
                    value: myFlickable.maximumFlickVelocity
                    onValueChanged: myFlickable.maximumFlickVelocity = value
                }
                Text { text: velocitySlider.value.toFixed(0) + " px/s" }
            }

            Row {
                spacing: 10
                Text { text: "減衰速度:" }
                Slider {
                    id: decelerationSlider
                    width: 200
                    from: 100
                    to: 3000
                    value: myFlickable.flickDeceleration
                    onValueChanged: myFlickable.flickDeceleration = value
                }
                Text { text: decelerationSlider.value.toFixed(0) + " px/s²" }
            }
        }
    }
}

解説

  • 下部にあるスライダーを動かすことで、実行時にmaximumFlickVelocityflickDecelerationの値を変更し、フリックの挙動の変化をリアルタイムで確認できます。
  • flickDecelerationは、フリックが停止するまでの減衰速度を制御します。maximumFlickVelocityflickDecelerationのバランスが、フリックの「感触」を決定します。
  • maximumFlickVelocity: 2000 は、ユーザーがどれだけ強くフリックしても、フリックの初期速度が毎秒2000ピクセルを超えないように制限します。
  • clip: trueを設定することで、Flickableの境界外のコンテンツが見えないようにしています。
  • Flickable内に、Flickable自身のサイズよりもはるかに大きいImage(またはRectangle)を配置しています。これにより、スクロール可能なコンテンツが作成されます。

ListViewでのmaximumFlickVelocityの利用

Flickableは、ListViewGridViewといったQt QuickのView系アイテムの基盤となっています。そのため、ListViewなどでもmaximumFlickVelocityプロパティを直接設定できます。

import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15
import QtQuick.Controls 2.15 // Sliderを使用するために必要

Window {
    width: 360
    height: 480
    visible: true
    title: "ListView Flick Velocity"

    Rectangle {
        width: parent.width
        height: parent.height
        color: "lightgray"

        ListView {
            id: myListView
            width: parent.width - 20
            height: parent.height - 100
            anchors.centerIn: parent
            anchors.topMargin: 10
            clip: true // 境界外のアイテムをクリップ

            // モデルデータの定義
            model: 50 // 50個のアイテム

            // デリゲート (各リストアイテムの表示)
            delegate: Rectangle {
                width: parent.width
                height: 50
                color: Qt.lighter(Qt.rgba(Math.random(), Math.random(), Math.random(), 1), 1.2)
                border.color: "gray"
                border.width: 1
                Text {
                    text: "アイテム " + (index + 1)
                    anchors.centerIn: parent
                    font.pixelSize: 20
                }
            }

            // maximumFlickVelocityを設定
            // デフォルトより低い値に設定して、ゆっくりしたフリックを試す
            maximumFlickVelocity: 800 // 毎秒800ピクセルに制限

            // flickDecelerationも調整してフリックの感触を調整
            flickDeceleration: 1000
        }

        // コントロールパネル
        Column {
            anchors.bottom: parent.bottom
            anchors.left: parent.left
            anchors.right: parent.right
            height: 80
            spacing: 5
            padding: 10
            color: "darkgray"

            Row {
                spacing: 10
                Text { text: "最大フリック速度:" }
                Slider {
                    id: velocitySlider
                    width: 200
                    from: 100
                    to: 2000
                    value: myListView.maximumFlickVelocity
                    onValueChanged: myListView.maximumFlickVelocity = value
                }
                Text { text: velocitySlider.value.toFixed(0) + " px/s" }
            }
        }
    }
}

解説

  • スライダーを使って、この値を変更することで、リストのスクロール速度がどのように変化するかを体験できます。
  • ここでは、maximumFlickVelocity800に設定しており、より穏やかなフリック挙動になります。
  • ListViewを使用していますが、maximumFlickVelocityの使い方はFlickableと全く同じです。

maximumFlickVelocity自体は定数ですが、他のプロパティと組み合わせて、フリックの速度によって動的にUIの挙動を変えることも可能です。

import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15

Window {
    width: 640
    height: 480
    visible: true
    title: "Dynamic Flick Behavior"

    Flickable {
        id: myFlickable
        anchors.fill: parent
        clip: true

        contentWidth: myContent.width
        contentHeight: myContent.height

        // フリックの最大速度を低めに設定
        maximumFlickVelocity: 1000

        // フリックの減衰速度を調整
        flickDeceleration: 800

        // フリック中に表示されるインジケータ
        Rectangle {
            id: indicator
            width: 50
            height: 50
            radius: 25
            color: myFlickable.flicking ? "red" : "green" // フリック中は赤、停止中は緑
            anchors.right: parent.right
            anchors.top: parent.top
            x: -indicator.width - 10
            y: 10
            z: 100 // 最前面に表示
            opacity: 0.8
            visible: true

            Text {
                anchors.centerIn: parent
                text: myFlickable.flicking ? "速" : "止"
                color: "white"
                font.pixelSize: 20
                font.bold: true
            }

            // フリックが速いほど大きくなる
            scale: 1 + (Math.abs(myFlickable.horizontalVelocity) + Math.abs(myFlickable.verticalVelocity)) / myFlickable.maximumFlickVelocity
            Behavior on scale { NumberAnimation { duration: 100 } }
        }

        Column {
            id: myContent
            width: 800 // コンテンツをFlickableより大きくする
            height: 1200
            spacing: 10

            Repeater {
                model: 20
                Rectangle {
                    width: 780
                    height: 100
                    color: "lightblue"
                    border.color: "blue"
                    border.width: 2

                    Text {
                        anchors.centerIn: parent
                        text: "アイテム " + (index + 1)
                        font.pixelSize: 24
                    }
                }
            }
        }
    }
}
  • indicator.scaleは、現在のフリック速度(myFlickable.horizontalVelocitymyFlickable.verticalVelocityの絶対値の合計)をmaximumFlickVelocityで割った値に基づいて動的に変化します。これにより、フリックが速いほどインジケータが大きくなり、視覚的にフリックの勢いを表現します。
  • indicator.colormyFlickable.flickingプロパティ(フリック中かどうかを示すブール値)によって赤/緑に変わります。
  • この例では、フリック中に画面右上に表示されるインジケータの色や大きさを動的に変化させています。


flickDecelerationによる慣性の調整

maximumFlickVelocityがフリックの初期速度の上限を設定するのに対し、flickDecelerationはフリックが停止するまでの減衰速度を制御します。この2つのプロパティは密接に関連しており、組み合わせることでフリックの「感触」を大きく変えることができます。

  • 高いflickDeceleration: フリックがすぐに停止し、より「粘りのある」、または「重い」感触になります。
  • 低いflickDeceleration: フリックが長く続き、より滑らかな、または「滑りやすい」感触になります。


Flickable {
    id: myFlickable
    // ... その他のプロパティ

    maximumFlickVelocity: 2000 // 最大速度
    flickDeceleration: 500   // ゆっくり減速 (滑らかな感触)
}

Flickable {
    id: anotherFlickable
    // ... その他のプロパティ

    maximumFlickVelocity: 2000 // 最大速度
    flickDeceleration: 3000  // 速く減速 (止まりやすい感触)
}

boundsBehaviorとovershootプロパティによる境界挙動のカスタマイズ

Flickableの境界での挙動も、フリックの全体的な感覚に影響を与えます。maximumFlickVelocity自体とは直接関係ありませんが、ユーザーがフリックを終える際のフィードバックに貢献します。

  • Flickable.DragAndOvershootBounds (デフォルト): コンテンツはドラッグでもフリックでも境界を超えてオーバーシュートできます。
  • Flickable.OvershootBounds: コンテンツはフリックによって境界を超えてオーバーシュートできますが、ドラッグではできません。
  • Flickable.DragOverBounds: コンテンツは境界を超えてドラッグできますが、フリックによってオーバーシュートすることはありません。
  • Flickable.StopAtBounds: コンテンツが境界を超えてドラッグされたり、フリックによってオーバーシュートしたりするのを完全に防ぎます。

boundsBehaviorOvershootBoundsまたはDragAndOvershootBoundsに設定した場合、horizontalOvershootおよびverticalOvershootプロパティを使って、境界を超えてフリックされた際の実際のオーバーシュート量を参照し、カスタムの視覚効果(例: 境界に達したことを示すバウンスアニメーションや色の変化)を実装できます。


Flickable {
    id: myFlickable
    // ...

    boundsBehavior: Flickable.OvershootBounds // オーバーシュートを許可

    Rectangle {
        // コンテンツ
        // ...
    }

    // 境界のオーバーシュート量に基づいて、境界に達したことを示す視覚フィードバック
    Rectangle {
        anchors.left: parent.left
        anchors.right: parent.right
        height: 5
        color: myFlickable.verticalOvershoot > 0 ? "red" : "transparent"
        y: myFlickable.contentY < 0 ? 0 : myFlickable.height - height
        opacity: Math.min(1, Math.abs(myFlickable.verticalOvershoot) / 50) // オーバーシュート量に応じて透明度を調整
    }
}

interactiveプロパティによるフリックの有効/無効切り替え

Flickable.interactiveプロパティは、ユーザーがFlickableを操作できるかどうかを制御します。falseに設定すると、ドラッグやフリック操作が無効になります。特定の条件下でフリックを一時的に無効にしたい場合に便利です。


Flickable {
    id: myFlickable
    // ...

    interactive: true // デフォルトはtrue。必要に応じてfalseに設定

    MouseArea {
        anchors.fill: parent
        onClicked: {
            // 例: クリックでフリックを切り替える
            myFlickable.interactive = !myFlickable.interactive;
            console.log("Flickable interactive:", myFlickable.interactive);
        }
    }
}

flick() メソッドによるプログラムからのフリック操作

Flickableflick(xVelocity, yVelocity)メソッドを使用すると、ユーザー入力なしでプログラム的にフリック操作を開始できます。これにより、特定のイベント(例: ボタンクリック、タイマーイベント)に応じてコンテンツをスクロールさせることができます。


Flickable {
    id: myFlickable
    // ... その他のプロパティ

    Button {
        text: "上へ速くフリック"
        onClicked: myFlickable.flick(0, -1500) // Y軸負の方向へ高速フリック
    }

    Button {
        text: "右へゆっくりフリック"
        onClicked: myFlickable.flick(500, 0) // X軸正の方向へ低速フリック
    }
}

このメソッドを使用する際に、maximumFlickVelocityが設定されていると、その値が上限として適用されます。

contentX/contentYとhorizontalVelocity/verticalVelocityによる詳細な制御

FlickablecontentXcontentYプロパティは、コンテンツの現在の位置を示します。また、horizontalVelocityverticalVelocityプロパティは、現在のスクロール速度(フリック中も含む)を提供します。これらのプロパティを監視したり、バインドしたりすることで、フリックの挙動に基づいてより複雑なカスタムアニメーションやロジックを実装できます。


Flickable {
    id: myFlickable
    // ...

    // コンテンツの現在のX座標をテキストで表示
    Text {
        anchors.top: parent.top
        anchors.left: parent.left
        text: "Content X: " + myFlickable.contentX.toFixed(0)
    }

    // 現在の垂直方向の速度をテキストで表示
    Text {
        anchors.top: parent.top
        anchors.left: parent.left
        anchors.leftMargin: 150
        text: "Vertical Vel: " + myFlickable.verticalVelocity.toFixed(0)
    }

    // 速度に応じて背景色を変化させる(例)
    Rectangle {
        anchors.fill: parent
        color: {
            var speed = Math.sqrt(myFlickable.horizontalVelocity * myFlickable.horizontalVelocity +
                                 myFlickable.verticalVelocity * myFlickable.verticalVelocity);
            if (speed > myFlickable.maximumFlickVelocity * 0.8) {
                return "red"; // 最大速度に近い場合は赤
            } else if (speed > 100) {
                return "orange"; // ある程度の速度がある場合はオレンジ
            } else {
                return "lightgray"; // 停止または低速の場合はグレー
            }
        }
        z: -1 // 最背面に表示
    }
}

非常に特殊なフリックの挙動が必要な場合や、Flickableの標準的なフリック物理エンジンでは実現できないようなカスタム効果を実装したい場合は、Flickableの代わりに(またはFlickableを継承したカスタムアイテム内で)、MouseAreaMultiPointTouchAreaなどの低レベルな入力ハンドラーと、PropertyAnimationNumberAnimationを組み合わせて、独自の慣性スクロールロジックを実装することも可能です。

これは非常に複雑になるため、通常は推奨されませんが、以下のような場合に検討されます。

  • 独自の物理エンジンとの連携
  • 複雑なスナップポイントやページングロジック
  • 特定の曲線に沿ったスクロール

基本的な考え方

  1. MouseAreaなどでドラッグイベントを検出。
  2. ドラッグの速度を計算。
  3. 指が離されたとき(onReleased)、計算した速度に基づいてcontentXcontentYに対してNumberAnimationを適用し、慣性スクロールをシミュレートする。
  4. 減衰効果は、アニメーションのeasingプロパティや、時間経過とともに速度を減らすカスタムロジックで実装する。

例 (概念的、完全な実装ではない)

Item {
    id: customScrollArea
    width: 400
    height: 300
    clip: true

    property real contentX: 0
    property real contentY: 0
    property real contentWidth: myContent.width
    property real contentHeight: myContent.height

    // コンテンツアイテム
    Item {
        id: myContent
        x: customScrollArea.contentX
        y: customScrollArea.contentY
        width: 800
        height: 600
        // ... 実際のコンテンツ
    }

    MouseArea {
        anchors.fill: parent
        property real startX: 0
        property real startY: 0
        property real lastX: 0
        property real lastY: 0
        property real velocityX: 0
        property real velocityY: 0
        property var timer: Qt.createTimer(parent)

        onPressed: {
            startX = mouse.x;
            startY = mouse.y;
            lastX = mouse.x;
            lastY = mouse.y;
            velocityX = 0;
            velocityY = 0;
            if (xAnimation.running) xAnimation.stop();
            if (yAnimation.running) yAnimation.stop();
            timer.interval = 16; // 約60fps
            timer.repeat = true;
            timer.triggered.connect(updateVelocity);
            timer.start();
        }

        onPositionChanged: {
            var dx = mouse.x - lastX;
            var dy = mouse.y - lastY;
            customScrollArea.contentX += dx;
            customScrollArea.contentY += dy;
            lastX = mouse.x;
            lastY = mouse.y;
            // 速度の計算 (簡易的な例)
            velocityX = dx * (1000 / timer.interval); // pixels/second
            velocityY = dy * (1000 / timer.interval); // pixels/second
        }

        onReleased: {
            timer.stop();
            timer.triggered.disconnect(updateVelocity);
            startFlickAnimation();
        }

        function updateVelocity() {
            // ここでリアルタイムの速度を更新することも可能
            // 現在のcontentX/Yと前回のcontentX/Yから速度を計算する
        }

        function startFlickAnimation() {
            // ここで計算された velocityX, velocityY を使ってアニメーションを開始
            // 減衰ロジックを実装
            xAnimation.from = customScrollArea.contentX;
            xAnimation.to = customScrollArea.contentX + velocityX * 0.5; // 例: 速度に応じて移動量を計算
            xAnimation.start();

            yAnimation.from = customScrollArea.contentY;
            yAnimation.to = customScrollArea.contentY + velocityY * 0.5;
            yAnimation.start();
        }

        NumberAnimation {
            id: xAnimation
            target: customScrollArea
            property: "contentX"
            duration: 500
            easing.type: Easing.OutCubic // 減速アニメーション
        }
        NumberAnimation {
            id: yAnimation
            target: customScrollArea
            property: "contentY"
            duration: 500
            easing.type: Easing.OutCubic
        }
    }
}

この最後の方法は非常に複雑であり、標準のFlickableが提供する豊富な機能(境界挙動、慣性スクロールのチューニングなど)をすべて自分で再実装する必要があるため、特別な要件がない限り推奨されません。