【網羅】Qt GUIでアイコンを操るテクニック集:QIconEngine::clone()をはじめとする様々な方法


QIconEngine::clone()メソッドは、Qt GUIにおけるアイコンエンジンオブジェクトの複製を作成するためのものです。アイコンエンジンは、QIconクラスで使用されるアイコンの描画を担当する重要な役割を果たします。このメソッドを呼び出すことで、既存のアイコンエンジンのすべての情報を複製した新しいアイコンエンジンオブジェクトを取得することができます。

メソッドの役割

QIconEngine::clone()メソッドは、主に以下の2つの目的で使用されます。

  1. アイコンの再利用: 同じアイコンを複数の場所で表示したい場合、QIconEngine::clone()メソッドを使用してアイコンエンジンの複製を作成することで、パフォーマンスを向上させることができます。これは、元のアイコンエンジンを複製する方が、毎回新しいアイコンエンジンを作成するよりも効率的であるためです。
  2. アイコンの変更: 既存のアイコンエンジンをベースに、独自のアイコンを描画するカスタムアイコンエンジンを作成したい場合、QIconEngine::clone()メソッドを使用して元のアイコンエンジンを複製し、その複製を基にカスタマイズすることができます。

メソッドの使用方法

QIconEngine::clone()メソッドは、以下のコードのように使用することができます。

QIconEngine* cloneIconEngine = originalIconEngine->clone();

このコードは、originalIconEngineという名前の既存のアイコンエンジンオブジェクトを複製し、その複製をcloneIconEngineという新しい変数に格納します。

メソッドの注意点

QIconEngine::clone()メソッドを使用する際には、以下の点に注意する必要があります。

  • 複製されたアイコンエンジンを使用しなくなった場合は、適切に削除する必要があります。
  • 複製されたアイコンエンジンは、元のアイコンエンジンと同じ状態を保持しますが、その後の変更は元のアイコンエンジンには反映されません。
  • 複製されたアイコンエンジンは、元のアイコンエンジンとは別のオブジェクトであるため、個別に管理する必要があります。

以下のコード例は、QIconEngine::clone()メソッドを使用して、既存のアイコンエンジンを複製し、その複製を使用してカスタムアイコンを描画する方法を示しています。

QIconEngine* originalIconEngine = new QFileIconEngine(":/images/application.png");
QIconEngine* cloneIconEngine = originalIconEngine->clone();

QPainter painter(cloneIconEngine);
painter.setPen(Qt::red);
painter.drawRect(QRect(0, 0, 32, 32));

QIcon applicationIcon(cloneIconEngine);
QApplication::setWindowIcon(applicationIcon);

このコード例では、まずQFileIconEngineクラスを使用して、"/images/application.png"という画像ファイルに基づいて元のアイコンエンジンを作成します。次に、QIconEngine::clone()メソッドを使用して元のアイコンエンジンの複製を作成します。

その後、QPainterクラスを使用して複製されたアイコンエンジンにカスタムアイコンを描画します。描画内容は、赤い四角形になります。

最後に、QIconクラスを使用して複製されたアイコンエンジンからアイコンを作成し、アプリケーションのウィンドウアイコンとして設定します。



アイコンの再利用

QIconEngine* iconEngine = new QFileIconEngine(":/images/application.png");

QLabel label1;
label1.setIcon(QIcon(iconEngine->clone()));

QLabel label2;
label2.setIcon(QIcon(iconEngine->clone()));

その後、作成した複製をそれぞれlabel1label2というラベルに設定します。

アイコンの変更

QIconEngine* originalIconEngine = new QFileIconEngine(":/images/application.png");
QIconEngine* cloneIconEngine = originalIconEngine->clone();

QPainter painter(cloneIconEngine);
painter.setPen(Qt::red);
painter.drawRect(QRect(0, 0, 32, 32));

QIcon applicationIcon(cloneIconEngine);
QApplication::setWindowIcon(applicationIcon);

以下のコード例は、QIconEngine::clone()メソッドを使用して、既存のアイコンエンジンを複製し、その複製を基にカスタムアイコンエンジンを作成する方法を示しています。

class MyCustomIconEngine : public QIconEngine
{
public:
    MyCustomIconEngine(const QIconEngine* originalIconEngine)
        : QIconEngine(originalIconEngine)
    {}

protected:
    void paint(QPainter* painter, const QRect& rect) override
    {
        // カスタムアイコンを描画するコード
        painter->setPen(Qt::red);
        painter->drawRect(rect);
    }
};

int main()
{
    QIconEngine* originalIconEngine = new QFileIconEngine(":/images/application.png");
    QIconEngine* customIconEngine = new MyCustomIconEngine(originalIconEngine);

    QIcon applicationIcon(customIconEngine);
    QApplication::setWindowIcon(applicationIcon);

    return 0;
}

このコード例では、まずMyCustomIconEngineという名前のカスタムアイコンエンジンクラスを定義します。このクラスは、QIconEngineクラスを継承し、paint()メソッドをオーバーライドしてカスタムアイコンを描画します。



共有ポインタを使用する

QIconEngineクラスは、共有ポインタで管理することができます。共有ポインタを使用することで、複数のオブジェクト間でアイコンエンジンを共有することができます。これは、複数のラベルやウィジェットに同じアイコンを表示したい場合などに有効です。

std::shared_ptr<QIconEngine> iconEngine(new QFileIconEngine(":/images/application.png"));

QLabel label1;
label1.setIcon(QIcon(iconEngine));

QLabel label2;
label2.setIcon(QIcon(iconEngine));

このコード例では、std::shared_ptrを使用してアイコンエンジンを共有しています。label1label2は、同じアイコンエンジンを参照するため、同じアイコンが表示されます。

QPixmapを使用する

QIconクラスは、QPixmapクラスを使用して作成することができます。QPixmapクラスは、画像データを表すクラスです。QPixmapを使用することで、アイコンエンジンを介さずにアイコンを作成することができます。

QPixmap pixmap(":/images/application.png");
QIcon applicationIcon(pixmap);
QApplication::setWindowIcon(applicationIcon);

このコード例では、QPixmapクラスを使用して画像データを読み込み、そこからアイコンを作成しています。

QIcon::fromTheme()を使用する

特定のテーマに関連するアイコンを取得したい場合は、QIcon::fromTheme()メソッドを使用することができます。このメソッドは、テーマに関連するアイコンを検索し、そのアイコンをQIconオブジェクトとして返します。

QIcon applicationIcon = QIcon::fromTheme("application");
QApplication::setWindowIcon(applicationIcon);

このコード例では、"application"というテーマに関連するアイコンを取得し、そのアイコンをアプリケーションのウィンドウアイコンとして設定しています。

QIconEngine::clone()メソッドは、アイコンエンジンの複製を作成するための便利なツールですが、状況によっては代替方法がより適切な場合があります。上記で紹介した3つの代替方法は、それぞれ異なる利点と欠点があります。最適な方法は、具体的な状況によって異なります。

  • QIcon::fromTheme()を使用する方法は、特定のテーマに関連するアイコンを取得するのに適しています。
  • QPixmapを使用する方法は、アイコンエンジンを介さずにアイコンを作成するのに適しています。
  • 共有ポインタを使用する方法は、メモリ効率が高く、複数のオブジェクト間でアイコンを共有するのに適しています。