Octave hgloadとは?グラフ保存と読み込みの基本を解説
"hgload" とは何か?
"hgload" は、Octave のグラフィカルユーザーインターフェース (GUI) である "Octave Graphics Toolkit" (別名: "HGUi") で作成・保存されたグラフやプロットなどの図形オブジェクト(Figureオブジェクト)を、後から Octave のワークスペースに読み込むための関数です。
簡単に言えば、「保存しておいたグラフの情報をもう一度 Octave で使えるようにする」 ためのコマンドです。
どのように使うのか?
"hgload" 関数の基本的な使い方は以下の通りです。
hgload("ファイル名.hg");
"ファイル名.hg"
の部分には、以前にhgsave
関数を使って保存した図形オブジェクトのファイル名を指定します。拡張子は通常.hg
です。
具体例
例えば、以下のような手順でグラフを作成し、保存したとします。
-
Octave で簡単なプロットを作成します。
x = 0:0.1:2*pi; y = sin(x); plot(x, y); title("サイン波"); xlabel("角度"); ylabel("振幅");
-
作成したグラフを "sin_wave.hg" という名前で保存します。
hgsave("sin_wave.hg");
-
Octave を一旦閉じたり、別の作業をしたりした後で、先ほど保存したグラフをもう一度表示したい場合、以下のように "hgload" を使います。
hgload("sin_wave.hg");
このコマンドを実行すると、保存されていたグラフが新しい Figure ウィンドウに表示されます。
- スクリプト化
グラフの作成と表示を別々のスクリプトに分けることができます。例えば、データ処理を行うスクリプトでグラフを保存し、別のスクリプトで保存したグラフを読み込んで表示するといった使い方が可能です。 - 結果の共有
保存した.hg
ファイルを他の人と共有することで、同じグラフを相手の Octave 環境で再現できます。 - 作業の再開
以前に作成したグラフを、データや設定を保持したまま簡単に再利用できます。
hgload
関数は、保存された.hg
ファイルから Figure オブジェクトを読み込み、現在の Octave のワークスペースに復元します。hgsave
関数は、現在の Figure オブジェクト全体(グラフのデータ、スタイル、軸の設定、ラベルなど)をファイルに保存します。
"hgload" の一般的なエラーとトラブルシューティング
ファイルが見つからない (File Not Found)
- トラブルシューティング
- ファイル名が正しいか、拡張子 (.hg) が付いているかを確認してください。
- ファイルが現在の Octave の作業ディレクトリにあるか確認してください。もし別のディレクトリにある場合は、絶対パスまたは相対パスでファイルを指定する必要があります。
- ファイルが存在するディレクトリに移動してから
hgload
を実行するか、正しいパスを指定してください。
- 原因
指定したファイル名が存在しないか、パスが間違っている場合に発生します。 - エラーメッセージの例
error: hgload: unable to open file 'ファイル名.hg' for reading
ファイルが破損しているか、Octave のバージョンが異なる
- トラブルシューティング
- 可能であれば、元のグラフを作成した Octave 環境で再度保存し直してみてください。
- 古いバージョンの Octave で保存したファイルを新しいバージョンで読み込む場合は、互換性の問題がないか確認してください。Octave のバージョンによっては、古い形式の
.hg
ファイルを読み込めない場合があります。 - ファイルが破損している場合は、残念ながら復旧は難しい可能性があります。
- 原因
保存された.hg
ファイルが何らかの原因で破損しているか、保存時と読み込み時の Octave のバージョンが大きく異なる場合に発生することがあります。 - エラーメッセージの例
- 読み込み中にエラーが発生し、具体的なメッセージが表示されないことがあります。
- 古いバージョンの Octave で保存した
.hg
ファイルを、新しいバージョンの Octave で読み込もうとした際に互換性の問題が発生することがあります。
グラフィックスツールキット (HGUi) がロードされていない
- トラブルシューティング
graphics_toolkit
関数を使って、現在のグラフィックスツールキットを確認してください。graphics_toolkit
- もし "gnuplot" など、HGUi 以外のツールキットが設定されている場合は、HGUi に切り替えてみてください。
一般的に、graphics_toolkit("fltk"); % または "qt"
.hg
ファイルは "fltk" または "qt" ツールキットで作成・読み込みが行われます。
- 原因
Octave Graphics Toolkit (HGUi) が正しくロードされていない場合に発生することがあります。 - エラーメッセージの例
- 関連する関数が見つからないといったエラーメッセージが表示されることがあります。
保存時にエラーが発生している
- トラブルシューティング
hgsave
を実行した際にエラーメッセージが表示されていないか確認してください。- ディスクの空き容量が十分にあるか確認してください。
- ファイルシステムに問題がないか確認してください。
- 原因
hgsave
の実行中に何らかのエラーが発生し、ファイルが完全に書き込まれていない可能性があります。 - エラーメッセージの例
hgsave
を実行した際にエラーが発生している場合、.hg
ファイルが正しく保存されていない可能性があります。
ワークスペースの変数が干渉している
- トラブルシューティング
clear all
コマンドなどでワークスペースをクリアしてからhgload
を実行してみてください。- 保存された
.hg
ファイルがどのような変数を含んでいるか不明な場合は、注意が必要です。
- 原因
読み込もうとしている.hg
ファイルが、現在のワークスペースに存在する変数と同じ名前の変数を含んでいる場合、予期しない動作を引き起こす可能性があります。
- 再起動する
Octave を再起動することで、一時的な問題が解消されることがあります。 - Octave のバージョンを確認する
使用している Octave のバージョンによって、挙動が異なる場合があります。version
コマンドで確認できます。 - シンプルなケースで試す
まずは簡単なグラフを保存・読み込みするテストを行い、基本的な動作を確認してみるのが有効です。 - Octave のドキュメントを参照する
help hgload
コマンドを実行すると、"hgload" 関数の詳細な情報や注意点が表示されます。 - エラーメッセージをよく読む
Octave が表示するエラーメッセージは、問題の原因を特定するための重要な情報を含んでいます。
基本的な例:グラフを作成・保存し、後で読み込む
この例では、簡単なサイン波のグラフを作成し、hgsave
でファイルに保存した後、Octave を再起動したかのように振る舞い、hgload
で保存したグラフを読み込んで表示します。
% 1. グラフの作成
x = 0:0.1:2*pi;
y = sin(x);
plot(x, y);
title("サイン波");
xlabel("角度");
ylabel("振幅");
% 2. 作成したグラフをファイルに保存 (sin_wave.hg という名前で保存)
filename = "sin_wave.hg";
hgsave(filename);
disp(['グラフを ', filename, ' に保存しました。']);
% ここで Octave を閉じたり、別の作業をしたと仮定します...
% 3. 保存したグラフを読み込んで表示
clear all; % ワークスペースをクリア (Octave の再起動をシミュレート)
disp(['グラフ ', filename, ' を読み込みます...']);
hgload(filename);
disp('グラフを読み込みました。');
このコードを実行すると、まずサイン波のグラフが表示され、その後、"sin_wave.hg" というファイルに保存されます。clear all
はワークスペースの変数をすべてクリアし、Octave を再起動した状態を模擬します。最後に hgload("sin_wave.hg")
を実行することで、保存されたグラフが新しい Figure ウィンドウに表示されます。
複数のグラフを保存・読み込む
複数の Figure オブジェクトが存在する場合、hgsave
はデフォルトで現在の Figure オブジェクトのみを保存します。すべての Figure オブジェクトを保存・読み込むには、それぞれの Figure のハンドルを取得して操作する必要があります。
% 1. 2つのグラフを作成
figure(1);
x1 = 0:0.1:2*pi;
y1 = sin(x1);
plot(x1, y1);
title("サイン波 1");
figure(2);
x2 = 0:0.1:3*pi;
y2 = cos(x2);
plot(x2, y2);
title("コサイン波 1");
% 2. すべての Figure オブジェクトのハンドルを取得
all_figures = get(0, 'children');
filenames = {"sin_wave_fig1.hg", "cos_wave_fig2.hg"};
% 3. 各 Figure をそれぞれのファイルに保存
for i = 1:length(all_figures)
hgsave(all_figures(i), filenames{i});
disp(['Figure ', num2str(get(all_figures(i), 'Number')), ' を ', filenames{i}, ' に保存しました。']);
end
% ここで Octave を閉じたり、別の作業をしたと仮定します...
% 4. 保存したすべてのグラフを読み込む
clear all;
disp('保存されたグラフを読み込みます...');
loaded_figures = {};
for i = 1:length(filenames)
loaded_figures{i} = hgload(filenames{i});
disp(['グラフ ', filenames{i}, ' を読み込みました。']);
end
% loaded_figures には読み込まれた Figure オブジェクトのハンドルが格納されています。
この例では、2つの異なるグラフを作成し、それぞれの Figure オブジェクトのハンドルを取得して、別々のファイルに保存しています。その後、clear all
でワークスペースをクリアし、保存したファイルを順番に hgload
で読み込んでいます。読み込まれた Figure オブジェクトのハンドルは loaded_figures
というセル配列に格納されます。
スクリプトの一部として hgload
を使用する
hgload
は、データ処理を行うスクリプトとは別のスクリプトで、保存されたグラフを読み込んで表示する際に便利です。
script_generate_plot.m
% データの生成
x = linspace(0, 10, 100);
y = x.^2;
% プロットの作成と装飾
plot(x, y);
title("二次関数");
xlabel("x");
ylabel("y");
% グラフをファイルに保存
hgsave("quadratic_plot.hg");
disp("グラフを quadratic_plot.hg に保存しました。");
script_display_plot.m
% 保存されたグラフを読み込んで表示
filename = "quadratic_plot.hg";
disp(['グラフ ', filename, ' を読み込みます...']);
hgload(filename);
disp("グラフを表示しました。");
このように、グラフの作成と保存を行うスクリプト (script_generate_plot.m
) と、保存されたグラフを読み込んで表示するスクリプト (script_display_plot.m
) を分けることができます。
グラフのデータを保存し、再描画する
Figure オブジェクト全体を保存するのではなく、グラフの描画に必要なデータ(プロットする x, y データ、軸ラベル、タイトルなど)をファイルに保存し、後からそのデータを読み込んでグラフを再描画する方法です。
% 1. グラフの作成とデータの保存
x = 0:0.1:2*pi;
y = sin(x);
title_str = "サイン波";
xlabel_str = "角度";
ylabel_str = "振幅";
save("sin_wave_data.mat", "x", "y", "title_str", "xlabel_str", "ylabel_str");
disp("グラフのデータを sin_wave_data.mat に保存しました。");
% ここで Octave を閉じたり、別の作業をしたと仮定します...
% 2. データを読み込んでグラフを再描画
clear all;
load("sin_wave_data.mat");
plot(x, y);
title(title_str);
xlabel(xlabel_str);
ylabel(ylabel_str);
disp("データを読み込み、グラフを再描画しました。");
- 欠点
- 線の色、スタイル、凡例の位置など、グラフの見た目の詳細な設定は再度行う必要があります。
- 複雑なグラフ(複数のサブプロットや特殊なオブジェクトを含む)の場合、保存・復元するデータが多くなる可能性があります。
- 利点
- ファイルサイズが
.hg
ファイルよりも小さくなる可能性があります(特にデータ量が少ない場合)。 - 異なる Octave のバージョン間での互換性が高いです。
- 必要に応じてデータの再処理や修正が容易です。
- ファイルサイズが
グラフの設定をスクリプトとして保存する
グラフの作成コマンド自体をスクリプトファイル(.m
ファイル)として保存しておき、後からそのスクリプトを実行することで同じグラフを再現する方法です。
% 1. グラフ作成コマンドをスクリプト (create_sin_wave.m) として保存
% (create_sin_wave.m の内容)
% ----------------------------------------
x = 0:0.1:2*pi;
y = sin(x);
plot(x, y, 'r--', 'linewidth', 2); % 赤の破線で描画
title("サイン波 (スクリプトで生成)");
xlabel("角度");
ylabel("振幅");
legend("sin(x)");
grid on;
% ----------------------------------------
disp("グラフ作成スクリプト create_sin_wave.m を保存しました。");
% ここで Octave を閉じたり、別の作業をしたと仮定します...
% 2. スクリプトを実行してグラフを再描画
clear all;
run("create_sin_wave.m");
disp("スクリプトを実行し、グラフを再描画しました。");
- 欠点
- 保存するのはデータではなくコマンドなので、データ自体は別途管理する必要があります。
- 対話的に行ったグラフの微調整などはスクリプトに反映させる必要があります。
- 利点
- グラフの作成手順が明確に記録されます。
- パラメータの変更や再実行が容易です。
- バージョン管理システムとの連携がしやすいです。
他のファイル形式でエクスポートする
グラフを画像ファイル(PNG, JPEG など)やベクトルグラフィックスファイル(SVG, EPS など)としてエクスポートし、後から表示する方法です。これは厳密には「読み込み」とは異なりますが、結果を保存・共有する代替手段となります。
% 1. グラフの作成
x = 0:0.1:2*pi;
y = sin(x);
plot(x, y);
title("サイン波");
xlabel("角度");
ylabel("振幅");
% 2. グラフを PNG ファイルとして保存
print("sin_wave.png", "-dpng");
disp("グラフを sin_wave.png に保存しました。");
% 3. グラフを SVG ファイルとして保存
print("sin_wave.svg", "-dsvg");
disp("グラフを sin_wave.svg に保存しました。");
% 後から画像ビューアなどで表示できます。
- 欠点
- 保存されるのは画像であり、Octave 上でインタラクティブに操作したり、データを抽出したりすることはできません。
- 再描画のために元のデータや設定が必要になります。
- 利点
- 他のアプリケーションや環境でも容易に表示・共有できます。
- レポートやプレゼンテーションへの組み込みが容易です。
Figure オブジェクトのプロパティを保存・復元する (より高度な方法)
Figure オブジェクトのハンドルを取得し、そのプロパティ(軸の範囲、ラベル、線のスタイルなど)を構造体として保存し、後からそのプロパティを新しい Figure オブジェクトに適用する方法です。これはより高度なプログラミング技術を必要とします。
% 1. グラフの作成とプロパティの保存
figure_handle = figure();
x = 0:0.1:2*pi;
y = sin(x);
plot(x, y);
title("サイン波");
xlabel("角度");
ylabel("振幅");
figure_properties = get(figure_handle);
save("sin_wave_props.mat", "figure_properties");
close(figure_handle);
disp("Figure のプロパティを sin_wave_props.mat に保存しました。");
% ここで Octave を閉じたり、別の作業をしたと仮定します...
% 2. プロパティを読み込んで新しい Figure に適用
clear all;
load("sin_wave_props.mat");
new_figure_handle = figure();
set(new_figure_handle, figure_properties);
% 必要に応じて、プロットデータなどを再度追加する必要があります。
x = 0:0.1:2*pi;
y = sin(x);
plot(x, y);
disp("保存された Figure のプロパティを新しい Figure に適用しました。");
- 欠点
- プログラミングが複雑になります。
- 保存するプロパティを適切に選択する必要があります。
- プロットデータ自体は別途保存・読み込みが必要です。
- 利点
- グラフの見た目の多くの側面を復元できます。
.hg
ファイルよりも互換性が高い可能性があります。