MariaDBでスマートにデータ操作:VALUES/VALUEを使いこなすための詳細解説
MariaDBにおいて、VALUES
とVALUE
キーワードは、INSERT ... ON DUPLICATE KEY UPDATE
ステートメントで使用される重要な機能です。この機能は、重複キーエラーが発生した場合に、挿入される行の値を使用して既存の行を更新するのに役立ちます。
本記事では、VALUES
とVALUE
のプログラミングについて、SQL文と構造の観点から詳細に解説します。
VALUESとVALUEの機能
1 VALUES
VALUES
キーワードは、挿入される行の値を参照するために使用されます。具体的には、INSERT ... ON DUPLICATE KEY UPDATE
ステートメントのUPDATE
節で使用され、重複キーエラーが発生した場合に、既存の行を更新する値を指定します。
2 VALUE
VALUE
キーワードは、個々の列の値を参照するために使用されます。これは、VALUES
キーワードと組み合わせて使用し、特定の列の値を更新する際に役立ちます。
VALUESとVALUEの使用例
以下の例は、VALUES
とVALUE
を使用して、customers
テーブルにデータを挿入し、重複キーエラーが発生した場合に既存の行を更新する方法を示しています。
INSERT INTO customers (name, email, city)
VALUES ('John Doe', '[email protected]', 'San Francisco')
ON DUPLICATE KEY UPDATE
email = VALUE(email),
city = CONCAT(VALUE(city), ', USA');
この例では、customers
テーブルに新しい行が挿入されます。name
、email
、city
列にそれぞれJohn Doe
、[email protected]
、San Francisco
という値が設定されます。
もしemail
列に同じ値を持つ既存の行が存在する場合、UPDATE
節が実行され、既存の行のemail
列とcity
列が更新されます。
city
列は、挿入される行のcity
列の値 (VALUE(city)
) に文字列', USA'
を連結した値で更新されます。email
列は、挿入される行のemail
列の値 (VALUE(email)
) で更新されます。
- MariaDB 10.3.3以降では、
VALUES
はVALUE
に置き換えられました。しかし、互換性の理由から、VALUES
の使用も引き続き可能です。 VALUE
キーワードは、個々の列の値のみを参照できます。式や関数などを参照することはできません。VALUES
とVALUE
は、INSERT ... ON DUPLICATE KEY UPDATE
ステートメントでのみ使用できます。他のステートメントで使用すると、エラーが発生します。
複数の行を挿入し、重複キーエラーが発生した場合に既存の行を更新する
INSERT INTO customers (name, email, city)
VALUES
('John Doe', '[email protected]', 'San Francisco'),
('Jane Doe', '[email protected]', 'New York'),
('Peter Jones', '[email protected]', 'Chicago')
ON DUPLICATE KEY UPDATE
email = VALUES(email),
city = CONCAT(VALUE(city), ', USA');
VALUEを使用して、個々の列の値を更新する
INSERT INTO products (name, price, quantity)
VALUES ('Laptop', 1200, 10)
ON DUPLICATE KEY UPDATE
price = VALUE(price) * 1.1,
quantity = quantity + VALUE(quantity);
この例では、products
テーブルに新しい行が挿入されます。重複キーエラーが発生した場合、UPDATE
節が実行され、既存の行のprice
列とquantity
列が更新されます。
quantity
列は、既存の行のquantity
列の値に、挿入される行のquantity
列の値 (VALUE(quantity)
) を加算した値で更新されます。price
列は、挿入される行のprice
列の値 (VALUE(price)
) に1.1を乗算した値で更新されます。
INSERT INTO orders (customer_id, product_id, quantity)
VALUES
(1, 123, 1),
(2, 456, 2)
ON DUPLICATE KEY UPDATE
quantity = quantity + (
SELECT quantity
FROM order_details
WHERE order_id = VALUES(order_id)
AND product_id = VALUES(product_id)
);
この例では、orders
テーブルに2つの行が挿入されます。重複キーエラーが発生した場合、UPDATE
節が実行され、既存の行のquantity
列が更新されます。
quantity
列は、既存の行のquantity
列の値に、サブクエリで取得した値を加算した値で更新されます。サブクエリは、order_details
テーブルから、同じorder_id
とproduct_id
を持つ既存の注文詳細レコードのquantity
列の値を取得します。
以下に、いくつかの代替方法と、それぞれ使用すべきシナリオをご紹介します。
INSERT ... SELECT ステートメント
INSERT ... SELECT
ステートメントは、別のテーブルからデータを抽出し、新しい行として挿入するのに役立ちます。このステートメントを使用することで、VALUES
キーワードを使用せずに、重複キーエラーが発生した場合の既存行の更新を処理できます。
例
INSERT INTO customers (name, email, city)
SELECT name, email, city
FROM new_customers
ON DUPLICATE KEY UPDATE
email = VALUES(email),
city = CONCAT(VALUES(city), ', USA');
この例では、new_customers
テーブルからデータを選択し、customers
テーブルに挿入します。ON DUPLICATE KEY UPDATE
節は、customers
テーブルに重複するレコードが存在する場合に実行されます。
サブクエリを使用した UPDATE ステートメント
サブクエリを使用した UPDATE
ステートメントは、既存の行を更新するために複雑な条件を使用する場合に役立ちます。この方法では、VALUES
キーワードを使用せずに、重複キーエラーが発生した場合の更新処理を柔軟に制御できます。
例
UPDATE customers
SET email = (
SELECT email
FROM new_customers
WHERE new_customers.id = customers.id
),
city = CONCAT((
SELECT city
FROM new_customers
WHERE new_customers.id = customers.id
), ', USA')
WHERE EXISTS (
SELECT 1
FROM new_customers
WHERE new_customers.id = customers.id
);
この例では、new_customers
テーブルと customers
テーブルの id
列を基に、customers
テーブルのレコードを更新します。サブクエリは、new_customers
テーブルから email
列と city
列の値を取得し、customers
テーブルの対応するレコードを更新するために使用されます。
MERGE ステートメント (MariaDB 10.5以降)
MariaDB 10.5 以降では、MERGE
ステートメントを使用して、挿入と更新をより効率的に処理できます。このステートメントは、VALUES
キーワードを使用せずに、重複キーエラーが発生した場合の処理を簡潔に記述できます。
例
MERGE INTO customers
USING new_customers AS nc
ON nc.id = customers.id
WHEN MATCHED THEN
UPDATE SET
email = nc.email,
city = CONCAT(nc.city, ', USA');
WHEN NOT MATCHED THEN
INSERT (name, email, city)
VALUES (nc.name, nc.email, nc.city);
この例では、new_customers
テーブルと customers
テーブルの id
列を基に、レコードをマージします。WHEN MATCHED
節は、customers
テーブルに一致するレコードが存在する場合に実行されます。WHEN NOT MATCHED
節は、customers
テーブルに一致するレコードが存在しない場合に実行されます。
ストアドプロシージャ
より複雑なロジックが必要な場合は、ストアドプロシージャを使用して、VALUES
キーワードを使用せずに重複キーエラー処理をカプセル化することができます。
例
CREATE PROCEDURE update_or_insert_customer(
IN customer_name VARCHAR(255),
IN customer_email VARCHAR(255),
IN customer_city VARCHAR(255)
)
BEGIN
INSERT INTO customers (name, email, city)
VALUES (customer_name, customer_email, customer_city)
ON DUPLICATE KEY UPDATE
email = customer_email,
city = CONCAT(customer_city, ', USA');
END;
この例では、update_or_insert_customer
というストアドプロシージャを作成します。このプロシージャは、3つの引数を受け取り、customers
テーブルに新しいレコードを挿入するか、既存のレコードを更新します。
最適な代替方法の選択
使用する代替方法は、具体的な状況と要件によって異なります。
- より複雑な条件が必要な場合は、サブクエリ
- シンプルな挿入と更新処理の場合は、
INSERT ... SELECT
ステートメントが適しています。