MariaDB10.2におけるウィンドウ関数:データ分析を革新する強力なツール
利点
ウィンドウ関数の主な利点は次のとおりです。
- ランキングや順位付けなどの分析が可能: ウィンドウ関数を使用して、行のランキングや順位付けなどの分析処理を簡単に行うことができます。
- より柔軟な集計処理が可能: ウィンドウを任意の条件で定義できるため、状況に応じて必要な集計処理を柔軟に実行できます。
- サブクエリなしで集計処理を実行できる: 集計処理をサブクエリで記述する必要がなくなり、クエリをより簡潔でわかりやすくすることができます。
基本概念
ウィンドウ関数は、以下の3つの要素で構成されます。
- パーティショニング: ウィンドウをさらに細分化する条件です。
- ウィンドウ: 関数の評価対象となる行の集合です。
代表的なウィンドウ関数
MariaDBでサポートされている代表的なウィンドウ関数は次のとおりです。
- NTH_VALUE: ウィンドウ内のN番目の値を取得します。
- DENSE_RANK: ウィンドウ内の行の稠密な順位付けを行います。
- CUME_DIST: ウィンドウ内の累積分布を計算します。
- LAST_VALUE: ウィンドウ内の最後の値を取得します.
- FIRST_VALUE: ウィンドウ内の最初の値を取得します。
- SUM: 合計値を計算します。
- MIN: 最小値を取得します。
- MAX: 最大値を取得します。
- COUNT: 件数をカウントします。
- AVG: 平均値を計算します。
使用方法
ウィンドウ関数は、OVER
句を使用してウィンドウとパーティショニングを定義します。
SELECT
id,
salary,
AVG(salary) OVER (PARTITION BY department) AS avg_salary
FROM employees;
この例では、AVG
関数を使用して各部署の平均給与を計算しています。PARTITION BY department
句は、ウィンドウを部署ごとに分割することを定義します。
MariaDBのウィンドウ関数について詳しくは、以下のリソースを参照してください。
例1:部門ごとの売上平均と売上合計
この例では、sales
テーブルを使用して、各部門の売上平均と売上合計を算出します。
SELECT
department,
AVG(sales) OVER (PARTITION BY department) AS avg_sales,
SUM(sales) OVER (PARTITION BY department) AS total_sales
FROM sales;
例2:顧客ごとの購入履歴の最新記録
この例では、customers
とorders
テーブルを使用して、各顧客の最新の注文情報(注文日、商品名、価格)を取得します。
SELECT
c.customer_id,
o.order_date,
o.product,
o.price
FROM customers AS c
JOIN orders AS o ON c.customer_id = o.customer_id
ORDER BY c.customer_id, o.order_date DESC
ROWS BETWEEN 0 PRECEDING AND 1 CURRENT ROW;
例3:連続する月の売上推移
この例では、sales
テーブルを使用して、各月の売上と前月比を算出します。
SELECT
sale_date,
sales,
(sales - LAG(sales, 1) OVER (ORDER BY sale_date)) AS sales_diff
FROM sales;
例4:在庫状況の可視化
この例では、products
とinventory
テーブルを使用して、各商品の在庫状況(在庫数、発注点、発注量)を算出します。
SELECT
p.product_id,
i.quantity,
(i.quantity - p.reorder_point) AS stock_diff,
p.reorder_quantity
FROM products AS p
LEFT JOIN inventory AS i ON p.product_id = i.product_id;
例5:顧客ロイヤルティプログラムのランク付け
この例では、customers
とtransactions
テーブルを使用して、各顧客のロイヤルティランク(銅、銀、金、プラチナ)を算出します。
SELECT
customer_id,
SUM(transaction_amount) OVER (PARTITION BY customer_id) AS total_amount,
CASE
WHEN total_amount < 100 THEN 'Bronze'
WHEN total_amount < 500 THEN 'Silver'
WHEN total_amount < 1000 THEN 'Gold'
ELSE 'Platinum'
END AS loyalty_rank
FROM customers
JOIN transactions ON customers.customer_id = transactions.customer_id;
これらの例はほんの一例であり、ウィンドウ関数は様々な目的に活用できます。
- ウィンドウ関数は比較的新しい機能なので、すべてのデータベースシステムでサポートされているわけではありません。使用前に、ご利用のデータベースシステムがウィンドウ関数をサポートしていることを確認してください。
- 上記の例では、基本的なウィンドウ関数のみを使用しています。より複雑な分析には、複数のウィンドウ関数やパーティショニング条件を組み合わせることもできます。
サブクエリを使用する
最も一般的な代替方法は、サブクエリを使用して必要な集計処理や操作を実行する方法です。例えば、以下のクエリは、部門ごとの平均給与をサブクエリを使用して算出しています。
SELECT
id,
salary,
(SELECT AVG(salary) FROM employees WHERE department = e.department) AS avg_salary
FROM employees AS e;
この方法では、サブクエリを複数回実行する必要がある場合があり、処理速度が遅くなる場合があるという欠点があります。
カーソルを使用する
カーソルを使用して、行をループ処理し、必要な集計処理や操作を実行する方法もあります。例えば、以下のクエリは、部門ごとの平均給与をカーソルを使用して算出しています。
DECLARE cursor_emp IS
FOR SELECT id, salary, department FROM employees;
BEGIN
DECLARE @avg_salary DECIMAL(10,2);
DECLARE @department VARCHAR(255);
OPEN cursor_emp;
LOOP
FETCH cursor_emp INTO @id, @salary, @department;
IF @department <> @department_prev THEN
IF @department_prev IS NOT NULL THEN
-- 前回の部門の平均給与を出力
SELECT @department_prev, @avg_salary;
END IF;
SET @department_prev = @department;
SET @avg_salary = @salary;
ELSE
SET @avg_salary = (@avg_salary + @salary) / 2;
END IF;
END LOOP;
CLOSE cursor_emp;
END
この方法は、サブクエリよりも柔軟性がありますが、複雑な処理になるとコーディングが煩雑になるという欠点があります。
COMMON TABLE EXPRESSION (CTE)を使用する
CTEを使用して、再帰的に必要な集計処理や操作を実行する方法もあります。例えば、以下のクエリは、部門ごとの累積売上をCTEを使用して算出しています。
WITH recursive cte_sales AS (
SELECT
department,
sale_date,
sales,
SUM(sales) OVER (PARTITION BY department ORDER BY sale_date) AS total_sales
FROM sales
UNION ALL
SELECT
c.department,
s.sale_date,
s.sales,
c.total_sales + s.sales
FROM cte_sales AS c
JOIN sales AS s ON c.department = s.department AND c.sale_date < s.sale_date
)
SELECT * FROM cte_sales;
この方法は、複雑な処理をモジュール化できるという利点がありますが、CTEがサポートされていないデータベースシステムもあります。
MariaDB 10.2以前でウィンドウ関数を代替する場合、サブクエリ、カーソル、CTEのいずれかを使用することができます。それぞれの方法には利点と欠点があるため、状況に応じて適切な方法を選択する必要があります。