知っておきたい!Go言語 big.Float.Int()のよくあるエラーと解決策
「big.Float.Int()」はGo言語のmath/big
パッケージに属するFloat
型のメソッドです。このメソッドは、Float
型の浮動小数点数を整数部のみに変換した*big.Int
型の値を返します。
具体的な動作としては、以下のようになります。
-
小数点以下の切り捨て(Truncation):
Int()
メソッドは、小数点以下を単純に切り捨てます。つまり、正の数であれば小数点以下を切り捨て、負の数であれば小数点以下を切り上げます(例:3.14は3になり、-3.14は-3になります)。 -
*big.Int
型の返却: 結果は*big.Int
型(big.Int
型へのポインタ)で返されます。これは、非常に大きな整数を扱うことができるmath/big
パッケージの標準的な形式です。
なぜこれが必要なのか?
Go言語の組み込みのfloat64
やfloat32
型は、小数点以下の精度が限られています。また、int
型も表現できる整数の範囲が限られています。
math/big
パッケージのFloat
型は、任意の精度で浮動小数点数を表現できます。Int()
メソッドを使うことで、この高精度な浮動小数点数から、オーバーフローを気にすることなく(十分に大きな整数を表現できる)整数部分だけを取り出すことができるようになります。
使用例
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
// 正の浮動小数点数
f1 := new(big.Float).SetString("123.456")
i1 := f1.Int(nil) // nilを渡すと新しいbig.Intが作成されます
fmt.Printf("f1: %s, i1: %s (Type: %T)\n", f1.String(), i1.String(), i1) // 出力: f1: 123.456, i1: 123 (Type: *big.Int)
// 負の浮動小数点数
f2 := new(big.Float).SetString("-789.123")
i2 := f2.Int(nil)
fmt.Printf("f2: %s, i2: %s (Type: %T)\n", f2.String(), i2.String(), i2) // 出力: f2: -789.123, i2: -789 (Type: *big.Int)
// 非常に大きな浮動小数点数
f3 := new(big.Float).SetString("98765432109876543210.12345")
i3 := f3.Int(nil)
fmt.Printf("f3: %s, i3: %s (Type: %T)\n", f3.String(), i3.String(), i3) // 出力: f3: 98765432109876543210.12345, i3: 98765432109876543210 (Type: *big.Int)
// 結果を既存のbig.Intに格納する場合
f4 := new(big.Float).SetString("5.67")
var existingInt big.Int
i4 := f4.Int(&existingInt) // 既存のbig.Intへのポインタを渡す
fmt.Printf("f4: %s, i4: %s (Type: %T)\n", f4.String(), i4.String(), i4) // 出力: f4: 5.67, i4: 5 (Type: *big.Int)
fmt.Printf("existingInt: %s (Type: %T)\n", existingInt.String(), &existingInt) // 出力: existingInt: 5 (Type: *big.Int)
}
精度に関する問題 (Precision Issues)
big.Float
は任意精度浮動小数点数ですが、Int()
メソッドは小数点以下を切り捨てるため、元のbig.Float
が持つ精度が失われます。
よくある間違い
元のbig.Float
の精度が低い、または意図しない丸めモードで計算された結果をInt()
に渡してしまうこと。
例
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
// デフォルト精度(通常53ビット)でFloatを作成
f := new(big.Float).SetFloat64(3.9999999999999996) // float64の表現では4.0に非常に近いが、内部的には4未満
i := f.Int(nil)
fmt.Printf("f: %s, i: %s\n", f.String(), i.String()) // 多くの環境で f: 4, i: 4 となる可能性がある (float64の丸めによる)
// 高精度を設定した場合
fHighPrec := new(big.Float).SetPrec(100).SetString("3.9999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999")
iHighPrec := fHighPrec.Int(nil)
fmt.Printf("fHighPrec: %s, iHighPrec: %s\n", fHighPrec.String(), iHighPrec.String()) // 出力: fHighPrec: 3.99..., iHighPrec: 3
}
トラブルシューティング
- 期待する丸め動作が必要な場合は、
Int()
ではなく、big.Float
の他のメソッド(例:Float().SetInt(intVal).SetMode(big.ToNearestEven)
など)や、適切な丸めモードを設定してから整数に変換する方法を検討してください。Int()
は常に0への切り捨て(truncation)です。 SetString()
を使って文字列から初期化することで、浮動小数点数の表現による誤差を避けることができます。big.Float
を初期化する際、または計算を行う際に、十分なSetPrec()
を使って精度を設定しているか確認してください。特にfloat64
から変換する場合は、float64
が持つ精度(通常53ビット)以上の精度をbig.Float
に設定しても、元のfloat64
の精度以上の情報は得られません。
無限大 (Infinity) や非数 (NaN) の扱い
big.Float
は無限大や非数(NaN)を表現できますが、これらをInt()
に変換しようとすると特別な挙動を示します。
よくある間違い
IsInf()
やIsNaN()
でチェックせずにInt()
を呼び出し、予期しない結果(nil
が返ってくる)になる。
例
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
// 無限大
inf := new(big.Float).SetInf(false) // 負の無限大
iInf, accInf := inf.Int(nil)
fmt.Printf("Inf: %s, Int: %v, Accuracy: %v\n", inf.String(), iInf, accInf) // 出力: Inf: -Inf, Int: <nil>, Accuracy: Below
// 非数 (NaN)
nan := new(big.Float)
nan.SetString("NaN") // SetStringはNaNをサポートしている
iNaN, accNaN := nan.Int(nil)
fmt.Printf("NaN: %s, Int: %v, Accuracy: %v\n", nan.String(), iNaN, accNaN) // 出力: NaN: NaN, Int: <nil>, Accuracy: Exact
}
トラブルシューティング
Int()
を呼び出す前に、IsInf()
やIsNaN()
を使って入力が無限大や非数でないことを確認することが重要です。- 無限大や非数を
Int()
に変換しようとすると、*big.Int
の戻り値はnil
になります。 Int()
メソッドは2つの戻り値を返します。2番目の戻り値はbig.Accuracy
型で、変換がExact
(正確)、Below
(元の値より小さい)、Above
(元の値より大きい)のいずれであったかを示します。
メモリ管理とパフォーマンス
big.Int
やbig.Float
は任意精度であるため、扱う数値が大きくなるとそれに応じてメモリ使用量も増え、計算に時間がかかる場合があります。
よくある間違い
不必要に新しい*big.Int
インスタンスを生成し続けること。
例
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
f := new(big.Float).SetString("12345678901234567890.123")
// 毎回新しいbig.Intを生成する (非効率的)
for i := 0; i < 3; i++ {
result := f.Int(nil) // 新しいbig.Intが作成される
fmt.Printf("Result %d: %s\n", i, result.String())
}
fmt.Println("---")
// 既存のbig.Intを再利用する (効率的)
var reusableInt big.Int
for i := 0; i < 3; i++ {
result := f.Int(&reusableInt) // 既存のbig.Intに結果が格納される
fmt.Printf("Result %d: %s\n", i, result.String())
}
}
トラブルシューティング
Int(z *big.Int)
メソッドの引数z
にnil
を渡すと新しい*big.Int
が割り当てられますが、既存の*big.Int
へのポインタを渡すことで、その*big.Int
が再利用され、不要なメモリ割り当てを避けることができます。特にループ内でInt()
を頻繁に呼び出す場合は、このテクニックがパフォーマンス向上に寄与します。
big.Float
が0の場合、Int()
は0を返します。これは期待通りの動作です。
よくある間違い(というより確認事項)
正のゼロと負のゼロの区別。big.Float
は負のゼロ(-0.0)を表現できますが、Int()
は符号を考慮せずに0を返します。
例
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
fPosZero := new(big.Float).SetFloat64(0.0)
iPosZero := fPosZero.Int(nil)
fmt.Printf("Pos Zero: %s, Int: %s\n", fPosZero.String(), iPosZero.String())
fNegZero := new(big.Float).SetString("-0.0")
iNegZero := fNegZero.Int(nil)
fmt.Printf("Neg Zero: %s, Int: %s\n", fNegZero.String(), iNegZero.String()) // Intは"0"を返す
}
トラブルシューティング
- ほとんどの場合、正のゼロと負のゼロの区別は整数の世界では意味を持たないため、これは問題になりません。もしこの区別が重要であるならば、
Int()
の前にbig.Float
のSign()
メソッドなどで符号を確認する必要があります。
big.Float.Int()
を使用する際の一般的なエラーとトラブルシューティングのポイントは以下の通りです。
- パフォーマンス: ループなどで繰り返し
Int()
を呼び出す場合は、既存の*big.Int
インスタンスを引数として渡すことで、不要なメモリ割り当てを避ける。 - 特殊な値: 無限大やNaNを扱う場合は、
Int()
の戻り値がnil
になること、およびAccuracy
の戻り値を確認し、事前にIsInf()
やIsNaN()
でチェックする。 - 精度:
big.Float
の適切な精度設定を確認し、必要に応じてSetPrec()
やSetString()
を使用する。
big.Float.Int()
とは?
big.Float.Int()
は、math/big
パッケージのbig.Float
型(任意精度浮動小数点数)のメソッドです。このメソッドは、big.Float
の整数部分を抽出し、それを*big.Int
型(任意精度整数)として返します。小数点以下は常に切り捨てられます(0方向への丸め)。
メソッドのシグネチャは以下のようになります。
func (f *Float) Int(z *Int) (*Int, Accuracy)
- 戻り値2 (
Accuracy
): 変換の精度を示す値(big.Exact
,big.Below
,big.Above
)。無限大やNaNの場合には異なる意味を持ちます。 - 戻り値1 (
*Int
): 抽出された整数部分を表す*big.Int
。z
が渡された場合はそれと同じポインタ、nil
が渡された場合は新しく作成されたポインタ。 z
: 結果を格納する*big.Int
へのポインタ。nil
を渡すと新しい*big.Int
が作成されます。f
: メソッドを呼び出す*big.Float
インスタンス。
例1: 基本的な使い方と小数点以下の切り捨て
この例では、正の数と負の数でInt()
がどのように動作し、小数点以下が切り捨てられるかを示します。
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
fmt.Println("--- 例1: 基本的な使い方と小数点以下の切り捨て ---")
// 1. 正の浮動小数点数
f1 := new(big.Float).SetString("123.456")
// Int()メソッドを呼び出す。nilを渡すと新しいbig.Intが作成される。
i1, acc1 := f1.Int(nil)
fmt.Printf("元の値: %s, 整数部分: %s, 精度: %v\n", f1.String(), i1.String(), acc1)
// 出力: 元の値: 123.456, 整数部分: 123, 精度: Exact
// 2. 負の浮動小数点数
f2 := new(big.Float).SetString("-789.123")
// 負の数の場合も小数点以下が切り捨てられる(-3.14 -> -3)
i2, acc2 := f2.Int(nil)
fmt.Printf("元の値: %s, 整数部分: %s, 精度: %v\n", f2.String(), i2.String(), acc2)
// 出力: 元の値: -789.123, 整数部分: -789, 精度: Exact
// 3. ぴったり整数値の浮動小数点数
f3 := new(big.Float).SetString("500.00")
i3, acc3 := f3.Int(nil)
fmt.Printf("元の値: %s, 整数部分: %s, 精度: %v\n", f3.String(), i3.String(), acc3)
// 出力: 元の値: 500, 整数部分: 500, 精度: Exact
}
解説
Accuracy
の戻り値はExact
となっています。これは、浮動小数点数から整数部分を抽出する操作は「正確」に行われたことを意味します。小数点以下が切り捨てられても、この文脈では「正確」です。f1.Int(nil)
のようにnil
を渡すと、Int()
メソッドは新しく*big.Int
型のインスタンスを作成し、そのポインタを返します。new(big.Float).SetString("...")
を使って、高精度な浮動小数点数を文字列から初期化しています。これはfloat64
からの変換で発生する可能性のある丸め誤差を避けるためによく使われます。
例2: 既存の*big.Int
を再利用するパフォーマンス最適化
ループなどでInt()
メソッドを繰り返し呼び出す場合、毎回新しい*big.Int
を割り当てるのは非効率です。この例では、既存の*big.Int
インスタンスを再利用する方法を示します。
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
fmt.Println("\n--- 例2: 既存の*big.Intを再利用するパフォーマンス最適化 ---")
numbers := []string{
"10.1", "20.5", "30.9", "40.0", "-5.2",
}
// 新しいbig.Intを毎回生成する (非効率的)
fmt.Println("毎回新しいbig.Intを生成:")
for _, s := range numbers {
f := new(big.Float).SetString(s)
i, _ := f.Int(nil) // ここで新しいbig.Intが割り当てられる
fmt.Printf("Float: %s, Int: %s\n", f.String(), i.String())
}
fmt.Println("\n既存のbig.Intを再利用:")
// 既存のbig.Intを宣言し、それを再利用する
var reusableInt big.Int
for _, s := range numbers {
f := new(big.Float).SetString(s)
// reusableIntへのポインタを渡すことで、割り当てを再利用する
i, _ := f.Int(&reusableInt)
// iはreusableIntと同じポインタを指している
fmt.Printf("Float: %s, Int: %s (ポインタアドレス: %p)\n", f.String(), i.String(), i)
}
// 最後にreusableIntの値を表示して、最後に格納された値を確認
fmt.Printf("最終的なreusableIntの値: %s\n", reusableInt.String())
}
解説
- 最後の
reusableInt.String()
は、最後に処理された値(この場合は"-5")がreusableInt
に格納されていることを示します。 fmt.Printf
でポインタアドレスを表示している部分を見ると、i
が常に同じアドレスを指していることが確認できます。これは、同じメモリ領域が再利用されていることを意味します。- 2番目のループでは、ループの前に
var reusableInt big.Int
と宣言したbig.Int
変数のアドレスをf.Int(&reusableInt)
として渡しています。これにより、Int()
メソッドは結果をこの既存のreusableInt
に格納し、新しいメモリ割り当ては発生しません。 - 最初のループでは、
f.Int(nil)
を呼び出すたびに新しいbig.Int
オブジェクトがメモリに割り当てられます。
big.Float
は無限大やNaNを表現できます。これらをInt()
に変換しようとすると、特別な挙動を示します。
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
fmt.Println("\n--- 例3: 無限大 (Infinity) や非数 (NaN) の扱い ---")
// 1. 正の無限大
infPos := new(big.Float).SetInf(true) // trueで正の無限大
iInfPos, accInfPos := infPos.Int(nil)
// 無限大を整数に変換すると、*big.Intはnilになる
fmt.Printf("元の値: %s, 整数部分: %v, 精度: %v (IsInf: %t)\n",
infPos.String(), iInfPos, accInfPos, infPos.IsInf())
// 出力: 元の値: +Inf, 整数部分: <nil>, 精度: Above (IsInf: true)
// 2. 負の無限大
infNeg := new(big.Float).SetInf(false) // falseで負の無限大
iInfNeg, accInfNeg := infNeg.Int(nil)
fmt.Printf("元の値: %s, 整数部分: %v, 精度: %v (IsInf: %t)\n",
infNeg.String(), iInfNeg, accInfNeg, infNeg.IsInf())
// 出力: 元の値: -Inf, 整数部分: <nil>, 精度: Below (IsInf: true)
// 3. 非数 (NaN)
nan := new(big.Float)
nan.SetString("NaN") // NaNを文字列から設定
iNaN, accNaN := nan.Int(nil)
// NaNを整数に変換すると、*big.Intはnilになる
fmt.Printf("元の値: %s, 整数部分: %v, 精度: %v (IsNaN: %t)\n",
nan.String(), iNaN, accNaN, nan.IsNaN())
// 出力: 元の値: NaN, 整数部分: <nil>, 精度: Exact (IsNaN: true)
// 重要な注意点: Int()を呼び出す前にIsInf()やIsNaN()でチェックする
value := new(big.Float).SetString("100.5")
if value.IsInf() || value.IsNaN() {
fmt.Println("値は無限大またはNaNです。整数に変換できません。")
} else {
intValue, _ := value.Int(nil)
fmt.Printf("安全に変換できる値: %s, 整数部分: %s\n", value.String(), intValue.String())
}
}
- 最後のブロックでは、
Int()
を呼び出す前にIsInf()
とIsNaN()
を使って、値が有効な数値であることを確認するベストプラクティスを示しています。これにより、nil
ポインタのデアファレンス(nilを指すポインタの値を参照しようとすること)によるパニックを防ぐことができます。 Accuracy
の戻り値は、無限大の場合はBelow
またはAbove
、NaNの場合はExact
となりますが、*big.Int
がnil
であることから、これらのAccuracy
は変換が成功しなかったことを示唆しています。- 無限大やNaNに対して
Int()
を呼び出すと、*big.Int
の戻り値は常にnil
になります。これはエラーではありませんが、呼び出し側でnil
チェックを行う必要があります。 SetString("NaN")
で非数(NaN)を作成します。SetInf(true)
で正の無限大、SetInf(false)
で負の無限大を作成します。
big.Float.Int()
は**0への切り捨て(truncation)**を行います。もし、他の丸めモード(四捨五入、切り上げ、切り捨てなど)が必要な場合や、特定の条件下での整数化が必要な場合は、以下の方法を検討します。
big.Float.ToNearestInt(): 最も近い整数への丸め
このメソッドは、big.Float
値を最も近い整数に丸めます。0.5の場合は偶数丸め(half to even)を行います。これは、統計処理や金融計算などで一般的に使用される丸めルールです。
特徴
- 結果は
*big.Float
で返されるため、さらにInt()
で変換する必要がある(またはSetInt()
で直接*big.Int
に変換)。 - 四捨五入に似ているが、0.5の端数処理が偶数丸め。
使用例
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
fmt.Println("--- big.Float.ToNearestInt() の例 ---")
// 1. 通常の四捨五入に近い例
f1 := new(big.Float).SetString("3.7")
rounded1 := new(big.Float)
f1.ToNearestInt(rounded1) // rounded1 に結果が格納される
i1, _ := rounded1.Int(nil)
fmt.Printf("元の値: %s, 最も近い整数 (Float): %s, 整数部分 (Int): %s\n", f1.String(), rounded1.String(), i1.String())
// 出力: 元の値: 3.7, 最も近い整数 (Float): 4, 整数部分 (Int): 4
// 2. 0.5 の偶数丸め
f2 := new(big.Float).SetString("3.5")
rounded2 := new(big.Float)
f2.ToNearestInt(rounded2)
i2, _ := rounded2.Int(nil) // 3.5 -> 4 (偶数)
fmt.Printf("元の値: %s, 最も近い整数 (Float): %s, 整数部分 (Int): %s\n", f2.String(), rounded2.String(), i2.String())
// 出力: 元の値: 3.5, 最も近い整数 (Float): 4, 整数部分 (Int): 4
f3 := new(big.Float).SetString("2.5")
rounded3 := new(big.Float)
f3.ToNearestInt(rounded3)
i3, _ := rounded3.Int(nil) // 2.5 -> 2 (偶数)
fmt.Printf("元の値: %s, 最も近い整数 (Float): %s, 整数部分 (Int): %s\n", f3.String(), rounded3.String(), i3.String())
// 出力: 元の値: 2.5, 最も近い整数 (Float): 2, 整数部分 (Int): 2
}
big.Floatとbig.Intの間の変換メソッド(SetInt, SetUint64, SetFloat64など)
big.Float
には、big.Int
やGoの組み込み整数型との間で変換を行うためのメソッドがいくつかあります。これらはbig.Float.Int()
とは逆の操作を行いますが、big.Int
や他の整数型からbig.Float
を作成し、その後必要に応じて別の丸め処理を適用するという文脈で代替手段となりえます。
特徴
- 浮動小数点数から整数への変換(ただし、
Int()
と同じく切り捨て)。 - 整数から浮動小数点数への変換。
使用例 (FloatからIntへの直接変換は Int() のみ)
big.Float
からbig.Int
へ直接、明示的な丸めモードを指定して変換するメソッドは現状ありません。Int()
が唯一の直接的な方法です。
しかし、big.Int
からbig.Float
への変換は可能です。
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
fmt.Println("\n--- big.Int と big.Float の相互変換の例 ---")
// big.Int から big.Float を作成
i := new(big.Int).SetString("12345")
f := new(big.Float).SetInt(i)
fmt.Printf("big.Int: %s, big.Float: %s\n", i.String(), f.String())
// 出力: big.Int: 12345, big.Float: 12345
// float64 から big.Float を作成
f64 := 3.14159
fBig := new(big.Float).SetFloat64(f64)
fmt.Printf("float64: %f, big.Float: %s\n", f64, fBig.String())
// 出力: float64: 3.141590, big.Float: 3.14159
}
手動での丸め処理とbig.Float.Cmp()
もし、big.Float.ToNearestInt()
が提供する偶数丸め以外の特定の丸めルール(例: 常に切り上げ、常に切り下げ、通常の四捨五入など)が必要な場合、手動で処理を実装することが考えられます。これには、big.Float.Cmp()
メソッド(比較)やbig.Float.Add()
, big.Float.Sub()
などの演算メソッドを組み合わせます。
特徴
- コードが複雑になりがち。
- 任意の丸めルールを実装できる。
使用例: 通常の四捨五入(0.5は切り上げ)を実装
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
// roundHalfUp は、0.5を切り上げる四捨五入を行う関数
func roundHalfUp(f *big.Float) *big.Int {
// 値の符号を確認
sign := f.Sign()
if sign == 0 {
return new(big.Int).SetInt64(0)
}
// 整数部分を取得 (切り捨て)
truncatedInt, _ := f.Int(nil)
// 小数部分を取得 (元の値 - 整数部分)
// 例: 3.7 - 3 = 0.7
// 例: -3.7 - (-3) = -0.7
frac := new(big.Float).Sub(f, new(big.Float).SetInt(truncatedInt))
// 0.5 と比較するための基準となる値
half := new(big.Float).SetFloat64(0.5)
// 負の数の場合は、0.5の判断基準も負にする
if sign < 0 {
half.Neg(half) // half を -0.5 にする
}
// 小数部分が0.5以上(絶対値で)なら切り上げ
// f >= 0 の場合: frac.Cmp(half) >= 0 (例: 0.7 >= 0.5)
// f < 0 の場合: frac.Cmp(half) <= 0 (例: -0.7 <= -0.5)
if (sign >= 0 && frac.Cmp(half) >= 0) || (sign < 0 && frac.Cmp(half) <= 0) {
// 整数部分に1を足す(または引く)
if sign >= 0 {
truncatedInt.Add(truncatedInt, big.NewInt(1))
} else {
truncatedInt.Sub(truncatedInt, big.NewInt(1))
}
}
return truncatedInt
}
func main() {
fmt.Println("\n--- 手動での通常の四捨五入 (roundHalfUp) の例 ---")
testValues := []string{"3.7", "3.5", "2.5", "-3.7", "-3.5", "-2.5", "0.0"}
for _, s := range testValues {
f := new(big.Float).SetString(s)
resultInt := roundHalfUp(f)
fmt.Printf("元の値: %s, 四捨五入後 (Int): %s\n", f.String(), resultInt.String())
}
/*
出力例:
元の値: 3.7, 四捨五入後 (Int): 4
元の値: 3.5, 四捨五入後 (Int): 4
元の値: 2.5, 四捨五入後 (Int): 3
元の値: -3.7, 四捨五入後 (Int): -4
元の値: -3.5, 四捨五入後 (Int): -4
元の値: -2.5, 四捨五入後 (Int): -3
元の値: 0, 四捨五入後 (Int): 0
*/
}
解説
このroundHalfUp
関数は、以下のステップで通常の四捨五入(0.5は切り上げ)を実装しています。
f.Int(nil)
で元の値の整数部分(切り捨て)を取得します。f.Sub(f, new(big.Float).SetInt(truncatedInt))
で小数点部分を計算します。- 小数部分が0.5以上(負の数の場合は-0.5以下)であれば、整数部分を増減させます。
big.Float.SetMode(): 丸めモードの設定 (演算時の丸め)
big.Float
には、演算(加算、減算、乗算、除算など)の際に使用する丸めモードを設定するSetMode()
メソッドがあります。これはInt()
のような変換とは直接関係ありませんが、特定の丸めモードで計算された結果を最終的にInt()
で切り捨てる場合など、間接的に影響を与える可能性があります。
丸めモードの例
big.ToNegativeInf
: 負の無限大への丸め(切り捨て)。big.ToPositiveInf
: 正の無限大への丸め(切り上げ)。big.AwayFromZero
: 0から遠ざかる方向への丸め(絶対値の切り上げ)。big.ToZero
: 0への切り捨て(Int()
がこれに相当)。big.ToNearestEven
: 最も近い整数に丸め、0.5は偶数に丸める(デフォルト)。
使用例
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
fmt.Println("\n--- big.Float.SetMode() の例 (演算時の丸め) ---")
// 新しいFloatを作成し、丸めモードを設定
f := new(big.Float).SetPrec(53) // デフォルト精度 (float64相当)
// ToPositiveInf (切り上げ)
f.SetMode(big.ToPositiveInf)
f.SetString("3.1")
result1 := new(big.Float)
result1.Add(f, new(big.Float).SetInt64(0)) // 演算で丸めが適用される
i1, _ := result1.Int(nil)
fmt.Printf("3.1 (ToPositiveInf): Float=%s, Int=%s\n", result1.String(), i1.String())
// 出力: 3.1 (ToPositiveInf): Float=4, Int=4
f.SetString("3.9")
result2 := new(big.Float)
result2.Add(f, new(big.Float).SetInt64(0))
i2, _ := result2.Int(nil)
fmt.Printf("3.9 (ToPositiveInf): Float=%s, Int=%s\n", result2.String(), i2.String())
// 出力: 3.9 (ToPositiveInf): Float=4, Int=4
// ToNegativeInf (切り捨て)
f.SetMode(big.ToNegativeInf)
f.SetString("3.9")
result3 := new(big.Float)
result3.Add(f, new(big.Float).SetInt64(0))
i3, _ := result3.Int(nil)
fmt.Printf("3.9 (ToNegativeInf): Float=%s, Int=%s\n", result3.String(), i3.String())
// 出力: 3.9 (ToNegativeInf): Float=3, Int=3
f.SetString("-3.1")
result4 := new(big.Float)
result4.Add(f, new(big.Float).SetInt64(0))
i4, _ := result4.Int(nil)
fmt.Printf("-3.1 (ToNegativeInf): Float=%s, Int=%s\n", result4.String(), i4.String())
// 出力: -3.1 (ToNegativeInf): Float=-4, Int=-4 (負の方向への切り捨て)
}
解説
SetMode()
は、big.Float
の演算が行われるときに適用される丸めルールを設定します。上記の例では、Add()
(0を加算するだけの操作)で丸めが適用され、その結果のbig.Float
に対してInt()
を呼び出すことで、期待する整数値を得ています。
これはbig.Float.Int()
の直接の代替ではありませんが、整数化の前に特定の丸めルールで値を調整したい場合に有効なアプローチです。
代替方法 | 主な用途 | 丸めルール | 注意点 |
---|---|---|---|
big.Float.Int() | デフォルト: 0への切り捨て | 0への切り捨て | 無限大/NaNはnil を返す。 |
big.Float.ToNearestInt() | 最も近い整数への丸め(偶数丸め) | 偶数丸め | 結果は*big.Float で返されるため、さらにInt() が必要。 |
手動での丸め処理 | 任意のカスタム丸めルール(例: 通常の四捨五入) | カスタム | コードが複雑になり、正確な実装が必要。 |
big.Float.SetMode() | 演算時の丸めモードの設定 | ToPositiveInf , ToNegativeInf など | 演算に適用されるもので、直接的な整数化メソッドではない。 |