【Go言語】big.Float.Format()で困ったら読む記事:よくあるエラーと解決策
このメソッドは、fmt.Formatter
インターフェースを実装しており、fmt
パッケージの書式設定関数(例: fmt.Printf
, fmt.Sprint
など)によって自動的に呼び出されます。
引数:
c rune
: 書式動詞(format verb)を表す文字です。%f
,%e
,%g
などがこれにあたります。s fmt.State
: 書式設定の状態を表すインターフェースです。出力の幅、精度、フラグ(例:+
,#
,)などの情報を含んでいます。
s.Write()
を使って出力ストリームに書き込みます。
動作:
Format()
メソッドは、f
の値をs
とc
で指定された書式に従って文字列に変換し、その結果をs
に書き込みます。
書式動詞 (c
) の種類と動作:
書式動詞 (c ) | 説明 | 例 |
---|---|---|
f | 符号付きの小数表現 (例: -123.456 ) | v := big.NewFloat(123.456); fmt.Printf("%f\n", v) -> 123.456000 |
e | 指数表現 (例: -1.23456e+02 ) | v := big.NewFloat(123.456); fmt.Printf("%e\n", v) -> 1.234560e+02 |
E | 指数表現 (大文字のE) (例: -1.23456E+02 ) | v := big.NewFloat(123.456); fmt.Printf("%E\n", v) -> 1.234560E+02 |
g | 精度に応じて%f または%e の短い方を選択 | v := big.NewFloat(123.456); fmt.Printf("%g\n", v) -> 123.456 <br> v := big.NewFloat(1234567890.0); fmt.Printf("%g\n", v) -> 1.23456789e+09 |
G | 精度に応じて%f または%E の短い方を選択 | v := big.NewFloat(1234567890.0); fmt.Printf("%G\n", v) -> 1.23456789E+09 |
v | デフォルトの書式設定。%g と同じ | v := big.NewFloat(123.456); fmt.Printf("%v\n", v) -> 123.456 |
フラグと精度:
fmt.Printf
などと同様に、Format()
はフラグ (+
, -
, #
, ) や幅、精度も解釈します。
- 精度:
%f
,%e
,%E
の場合: 小数点以下の桁数を指定します(デフォルトは6)。%g
,%G
の場合: 有効数字の桁数を指定します。
- 幅: 出力される文字列の最小幅を指定します。
例
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
f := big.NewFloat(123.456789)
// %f: デフォルトの精度 (小数点以下6桁)
fmt.Printf("%%f: %f\n", f)
// %.2f: 小数点以下2桁
fmt.Printf("%%.2f: %.2f\n", f)
// %10.2f: 幅10、小数点以下2桁 (右詰め)
fmt.Printf("%%10.2f: %10.2f\n", f)
// %-10.2f: 幅10、小数点以下2桁 (左詰め)
fmt.Printf("%%-10.2f: %-10.2f\n", f)
// %e: 指数表記
fmt.Printf("%%e: %e\n", f)
// %.3e: 指数表記、小数点以下3桁
fmt.Printf("%%.3e: %.3e\n", f)
// %g: 短い方を選択 (有効数字の桁数)
fmt.Printf("%%g: %g\n", f)
g := big.NewFloat(1234567890.12345)
fmt.Printf("%%g (large number): %g\n", g) // 指数表記になる
h := big.NewFloat(0.000000123)
fmt.Printf("%%g (small number): %g\n", h) // 指数表記になる
// %.2g: 有効数字2桁
fmt.Printf("%%.2g: %.2g\n", f)
}
%f: 123.456789
%.2f: 123.46
%10.2f: 123.46
%-10.2f: 123.46
%e: 1.234568e+02
%.3e: 1.235e+02
%g: 123.456789
%g (large number): 1.23456789012345e+09
%g (small number): 1.23e-07
%.2g: 1.2e+02
予期しない精度 (Precision)
問題
Format()
を使用する際に、期待する小数点以下の桁数や有効数字にならないことがあります。これは、big.Float
の精度設定とFormat()
に渡す書式動詞や精度指定の組み合わせによって起こります。
- 書式動詞と精度指定の誤解
%f
の場合、精度は小数点以下の桁数を意味します。%g
の場合、精度は有効数字の桁数を意味します。- これらの違いを理解していないと、期待と異なる出力になります。
- big.NewFloatのデフォルト精度
big.NewFloat(x)
でFloat
を生成すると、デフォルトでfloat64
と同じ53ビットの精度になります。この精度が、文字列からの初期化 (SetString
) や他の演算によって設定される精度と異なる場合、表示される値に影響が出ることがあります。
トラブルシューティング
- 書式動詞と精度の意味を理解する
fmt
パッケージの書式動詞の意味を再確認し、必要に応じて%f
と%g
を使い分け、適切な精度を指定します。 - SetPrec()で明示的に精度を設定する
Float
を初期化する際や計算の前に、SetPrec()
メソッドで必要な精度を明示的に設定します。これにより、予期しない丸め誤差や精度の低下を防ぎ、Format()
で期待通りの表示を得られる可能性が高まります。f := new(big.Float).SetPrec(100).SetFloat64(1.0 / 3.0) // 100ビットの精度を設定 fmt.Printf("%.30f\n", f) // 30桁表示
丸め誤差 (Rounding Errors)
問題
big.Float
は任意精度ですが、それでも無限の精度を持つわけではありません。特に、十進数で正確に表現できない二進数(例: 0.1)を扱う場合や、複雑な計算を行うと、わずかな丸め誤差が発生し、Format()
で表示される値が期待とわずかに異なることがあります。
トラブルシューティング
- 誤差許容範囲の考慮
厳密な等価性を期待するのではなく、ある程度の誤差許容範囲で比較する(例:f.Cmp(g) == 0
ではなくf.Sub(f, g).Abs(f).Cmp(epsilon) < 0
)など、浮動小数点数計算の性質を考慮した処理を行います。 - big.RoundingModeの理解と設定
math/big
パッケージには様々な丸めモード (big.ToNearestEven
,big.AwayFromZero
など) があります。デフォルトはToNearestEven
ですが、特定の要件がある場合はSetMode()
で丸めモードを変更することで、期待する丸め動作を実現できることがあります。 - SetString()での初期化
float64
からの変換ではなく、文字列として正確な値を初期化することで、最初の段階での丸め誤差を防ぐことができます。// f := big.NewFloat(0.1) // float64の丸め誤差を含む f, _ := new(big.Float).SetString("0.1") // 文字列で正確に初期化 fmt.Printf("%f\n", f)
無限大 (Infinity) や非数 (NaN) の表示
問題
big.Float
は無限大 (Inf
) や非数 (NaN
) も表現できます。これらの値に対してFormat()
を適用すると、通常は+Inf
, -Inf
, NaN
として表示されますが、アプリケーションによってはこれらを特別に扱いたい場合があります。
トラブルシューティング
- IsInf()とIsNaN()で事前にチェック
Format()
を呼び出す前に、f.IsInf()
やf.IsNaN()
メソッドを使って値の状態を確認し、必要に応じて独自の処理や表示ロジックを実装します。f := big.NewFloat(0) g := big.NewFloat(0) // 0/0 は NaN になる h := new(big.Float).Quo(f, g) if h.IsNaN() { fmt.Println("Result is NaN") } else { fmt.Printf("%f\n", h) }
パフォーマンスへの影響
問題
big.Float
は任意精度であるため、float64
に比べて計算やフォーマットのパフォーマンスが低下する可能性があります。特に、非常に大きな精度を設定したり、大量の数値を繰り返しフォーマットしたりする場合に顕著になります。
トラブルシューティング
- 大量処理の最適化
多数のbig.Float
を一度にフォーマットする必要がある場合は、文字列結合の回数を減らす、バッファを再利用するなどの最適化を検討します。 - 必要最小限の精度を使用する
常に最大精度を求めるのではなく、アプリケーションの要件を満たす最小限の精度に設定することで、パフォーマンスを改善できます。
問題
Format(s fmt.State, c rune)
は、fmt.Formatter
インターフェースの実装であり、直接呼び出すことは稀です。通常はfmt.Printf
などの関数がこれを呼び出します。もし誤って直接呼び出し、fmt.State
やrune
引数を不適切に渡すと、予期しない動作やパニックが発生する可能性があります。
- String()メソッドの利用
単純にbig.Float
の文字列表現が必要な場合は、fmt.Stringer
インターフェースを実装しているString()
メソッドを使用するのが最も簡単です。ただし、String()
はデフォルトの書式で出力されるため、カスタマイズが必要な場合はfmt.Printf
を利用します。f := big.NewFloat(123.456) s := f.String() // デフォルトの書式で文字列を取得 fmt.Println(s)
- fmt.Printfなどの標準関数を使用する
big.Float.Format()
メソッドは、fmt.Printf
やfmt.Sprintf
などのfmt
パッケージの関数を通じて使用するのが適切です。直接呼び出す必要はほとんどありません。
以下の例では、様々な書式動詞、精度、フラグを使ってbig.Float
の値をどのように表示するかを示します。
例1: 基本的な書式設定
この例では、異なる書式動詞 (%f
, %e
, %g
) を使ってbig.Float
の値を整形する方法を示します。
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
// big.Float型の値を作成
f := big.NewFloat(123.456789)
fmt.Println("--- 基本的な書式設定 ---")
// %f: 符号付きの小数表現 (デフォルトの精度: 小数点以下6桁)
// format: [-]ddd.ddd
fmt.Printf("%%f (デフォルト): %f\n", f)
// %e: 指数表現 (デフォルトの精度: 小数点以下6桁)
// format: [-]d.dddde±dd
fmt.Printf("%%e (デフォルト): %e\n", f)
// %E: 指数表現 (大文字のE)
// format: [-]d.ddddE±dd
fmt.Printf("%%E (デフォルト): %E\n", f)
// %g: 精度に応じて %f または %e の短い方を選択 (有効数字のデフォルト精度)
// format: 精度に応じて変わる
fmt.Printf("%%g (デフォルト): %g\n", f)
// %G: 精度に応じて %f または %E の短い方を選択 (有効数字のデフォルト精度)
fmt.Printf("%%G (デフォルト): %G\n", f)
// %v: デフォルトの書式設定 (%g と同じ)
fmt.Printf("%%v (デフォルト): %v\n", f)
// 非常に大きな数と小さな数で %g の挙動を見る
largeNum := big.NewFloat(1234567890123.456)
smallNum := big.NewFloat(0.00000000123456)
fmt.Printf("%%g (大きな数): %g\n", largeNum)
fmt.Printf("%%g (小さな数): %g\n", smallNum)
}
出力例
--- 基本的な書式設定 ---
%f (デフォルト): 123.456789
%e (デフォルト): 1.234568e+02
%E (デフォルト): 1.234568E+02
%g (デフォルト): 123.456789
%G (デフォルト): 123.456789
%v (デフォルト): 123.456789
%g (大きな数): 1.234567890123456e+12
%g (小さな数): 1.23456e-09
解説
%v
は%g
と同じ動作をします。%g
と%G
は、値の大きさに応じて自動的に%f
または%e
/%E
を選択します。これは、有効数字の桁数を基準としており、非常に大きな数や小さな数では指数表記になります。%e
と%E
は指数形式で表示します。デフォルトの精度は小数点以下6桁です。%f
は小数点形式で表示します。デフォルトの精度は小数点以下6桁です。fmt.Printf
の書式文字列(例:"%f\n"
)を使用すると、内部的にf.Format()
が呼び出され、f
の値が指定された書式で整形されます。
例2: 精度 (Precision) の指定
小数点以下の桁数や有効数字の桁数を制御します。
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
f := big.NewFloat(123.456789)
fmt.Println("\n--- 精度 (Precision) の指定 ---")
// %.2f: 小数点以下2桁
fmt.Printf("%%.2f: %.2f\n", f)
// %.0f: 小数点以下0桁 (整数部分のみ)
fmt.Printf("%%.0f: %.0f\n", f)
// %.3e: 指数表現、小数点以下3桁
fmt.Printf("%%.3e: %.3e\n", f)
// %.4g: 有効数字4桁
// %g の精度は有効数字の桁数を意味する
fmt.Printf("%%.4g: %.4g\n", f)
// 別の値で %.4g の挙動を見る
g := big.NewFloat(12345.6789)
fmt.Printf("%%.4g (12345.6789): %.4g\n", g) // 指数表記になる
h := big.NewFloat(0.000123456)
fmt.Printf("%%.4g (0.000123456): %.4g\n", h) // 指数表記になる
}
出力例
--- 精度 (Precision) の指定 ---
%.2f: 123.46
%.0f: 123
%.3e: 1.235e+02
%.4g: 123.5
%.4g (12345.6789): 1.235e+04
%.4g (0.000123456): 1.235e-04
解説
%g
、%G
の場合、これは有効数字の桁数を意味します。%f
、%e
、%E
の場合、これは小数点以下の桁数を意味します。.
の後に数字を続けることで精度を指定します。
例3: 幅 (Width) とフラグ (Flags) の指定
出力される文字列の最小幅を指定したり、特定の表示フラグ(符号、ゼロ埋め、左寄せなど)を使ったりします。
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
f := big.NewFloat(123.456)
negF := big.NewFloat(-7.89)
fmt.Println("\n--- 幅 (Width) とフラグ (Flags) の指定 ---")
// %10f: 最小幅10文字で右寄せ
fmt.Printf("%%10f: '%10f'\n", f)
// %-10f: 最小幅10文字で左寄せ
fmt.Printf("%%-10f: '%-10f'\n", f)
// %010f: 最小幅10文字でゼロ埋め (正の数)
fmt.Printf("%%010f: '%010f'\n", f)
// %010f: 最小幅10文字でゼロ埋め (負の数)
fmt.Printf("%%010f (負の数): '%010f'\n", negF) // 符号の後にゼロが続く
// %+f: 常に符号を表示
fmt.Printf("%%+f: %+f\n", f)
fmt.Printf("%%+f (負の数): %+f\n", negF)
// % f: 負の数には符号、正の数にはスペースを表示 (符号の位置を揃えるため)
fmt.Printf("%% f: % f\n", f)
fmt.Printf("%% f (負の数): % f\n", negF)
// %#f: 小数点以下が0の場合でも小数点を表示 (整数値の場合)
// big.Floatは通常、必要に応じて小数点を表示するため、このフラグの効果は限定的
intF := big.NewFloat(123)
fmt.Printf("%%#f: %#f\n", intF) // 123.000000
fmt.Printf("%%f (通常): %f\n", intF) // 123.000000 (big.Floatではデフォルトで表示されることが多い)
// %#g: 不必要な末尾のゼロを表示 (有効数字の桁数に影響)
precG := new(big.Float).SetPrec(50).SetFloat64(123.4) // 高い精度で作成
fmt.Printf("%%g: %g\n", precG) // 123.4
fmt.Printf("%%#g: %#g\n", precG) // 123.4000000000000000000000000000000000000000000000000
}
出力例
--- 幅 (Width) とフラグ (Flags) の指定 ---
%10f: ' 123.456000'
%-10f: '123.456000'
%010f: '0123.456000'
%010f (負の数): '-07.890000'
%+f: +123.456000
%+f (負の数): -7.890000
% f: 123.456000
% f (負の数): -7.890000
%#f: 123.000000
%f (通常): 123.000000
%g: 123.4
%#g: 123.4000000000000000000000000000000000000000000000000
解説
#
フラグは、%f
では通常小数点以下がない場合でも小数点を表示し、%g
では不必要な末尾のゼロを保持します。ただし、big.Float
はデフォルトで精度に応じて末尾のゼロを表示するため、%f
での効果は限定的です。- スペースフラグ (
) は、正の数にスペースを表示し、負の数には符号を表示します。これにより、符号の位置が揃います。
+
フラグは、正の数にも常に符号(+
)を表示します。0
フラグを使うと、幅が足りない場合に先頭をゼロで埋めます。- 数字で幅を指定すると、右寄せ(デフォルト)または左寄せ(
-
フラグ)で出力されます。
big.Float
自身の精度が、Format()
で表示される結果にどのように影響するかを示す例です。
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
fmt.Println("\n--- big.Floatの精度とFormat()の関連 ---")
// デフォルト精度 (float64相当の53ビット) で作成
fDefault := big.NewFloat(1.0 / 3.0)
fmt.Printf("デフォルト精度 (1/3): %.20f\n", fDefault) // 20桁表示
// 100ビットの精度で作成
fPrec100 := new(big.Float).SetPrec(100).SetFloat64(1.0 / 3.0)
fmt.Printf("100ビット精度 (1/3): %.30f\n", fPrec100) // 30桁表示
// 100ビットの精度で文字列から作成 (より正確)
fPrec100Str, _, err := new(big.Float).SetPrec(100).Parse("0.333333333333333333333333333333", 10)
if err != nil {
fmt.Println("Error parsing string:", err)
return
}
fmt.Printf("100ビット精度 (文字列から): %.30f\n", fPrec100Str)
// 計算結果の精度
a := new(big.Float).SetPrec(64).SetFloat64(0.1)
b := new(big.Float).SetPrec(64).SetFloat64(0.2)
sum := new(big.Float).SetPrec(64).Add(a, b)
fmt.Printf("0.1 + 0.2 (精度64ビット): %.20f\n", sum) // 0.3はfloat64で正確に表現できない
// 異なる精度で計算
a2 := new(big.Float).SetPrec(128).SetFloat64(0.1)
b2 := new(big.Float).SetPrec(128).SetFloat64(0.2)
sum2 := new(big.Float).SetPrec(128).Add(a2, b2)
fmt.Printf("0.1 + 0.2 (精度128ビット): %.20f\n", sum2)
}
出力例
--- big.Floatの精度とFormat()の関連 ---
デフォルト精度 (1/3): 0.33333333333333331483
100ビット精度 (1/3): 0.333333333333333333333333333333
100ビット精度 (文字列から): 0.333333333333333333333333333333
0.1 + 0.2 (精度64ビット): 0.30000000000000004441
0.1 + 0.2 (精度128ビット): 0.30000000000000000000
0.1 + 0.2
の例は、float64
では丸め誤差が発生するが、big.Float
で十分な精度(128ビット)を設定すると正確な結果が得られることを示しています。SetString()
やParse()
で文字列から初期化すると、より高い精度で値を表現できます。SetFloat64()
で初期化する場合、元になるfloat64
の精度以上の正確さは得られません。big.Float
の内部的な精度(ビット数で指定)は、SetPrec()
メソッドで設定します。これがFormat()
で表示される最終的な値の正確さに影響します。
主な代替方法は以下の通りです。
f.String() メソッドの使用
big.Float
型はfmt.Stringer
インターフェースを実装しており、String()
メソッドを持っています。これは、fmt.Print
系関数で%v
書式動詞を使った場合と同じデフォルトの文字列表現を返します。最もシンプルで手軽な方法です。
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
f := big.NewFloat(123.456789)
// String() メソッドを使用
s := f.String()
fmt.Printf("String()による出力: %s\n", s)
// 非常に小さな数
smallF := big.NewFloat(0.00000000123)
sSmall := smallF.String()
fmt.Printf("String()による小さな数の出力: %s\n", sSmall)
// String() は fmt.Sprint/Println のデフォルト動作
fmt.Println("fmt.Printlnによる出力:", f)
}
出力例
String()による出力: 123.456789
String()による小さな数の出力: 1.23e-09
fmt.Printlnによる出力: 123.456789
特徴
- カスタマイズ性
書式(小数点以下の桁数、指数表記にするかなど)を細かく制御することはできません。 - デフォルト書式
fmt.Sprintf("%g", f)
と同じような、値に応じて最適な(短い)表現を返します。 - シンプルさ
最も簡単にbig.Float
を文字列に変換できます。
f.Text(buf []byte, form byte, prec int) メソッドの使用
Text()
メソッドは、big.Float
の値を指定された書式(form
)と精度(prec
)でバイトスライスとしてフォーマットし、それを返します。これは、fmt.Sprintf
が内部的に行っている処理に近いもので、より低レベルで、かつ効率的な文字列生成が可能です。
prec int
: 精度を指定します。'f'
,'e'
,'E'
では小数点以下の桁数、'g'
,'G'
では有効数字の桁数です。-1
を指定すると、big.Float
の完全な精度で出力されます。form byte
: 書式を指定する文字で、'f'
,'e'
,'E'
,'g'
,'G'
など、fmt
パッケージの書式動詞に対応します。buf []byte
: 結果を書き込むためのオプションのバッファです。nil
の場合、新しいバッファが割り当てられます。
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
f := big.NewFloat(123.456789)
fPrec := new(big.Float).SetPrec(100).SetString("0.123456789012345678901234567890")
fmt.Println("\n--- Text() メソッドの使用 ---")
// %f 形式で小数点以下2桁
textF := f.Text(nil, 'f', 2)
fmt.Printf("Text(f, 2)による出力: %s\n", textF)
// %e 形式で小数点以下3桁
textE := f.Text(nil, 'e', 3)
fmt.Printf("Text(e, 3)による出力: %s\n", textE)
// %g 形式で有効数字5桁
textG := f.Text(nil, 'g', 5)
fmt.Printf("Text(g, 5)による出力: %s\n", textG)
// 完全な精度で出力 (prec = -1)
textFullPrec := fPrec.Text(nil, 'f', -1)
fmt.Printf("Text(f, -1)による完全な精度出力: %s\n", textFullPrec)
// 既存のバイトスライスをバッファとして利用
buf := make([]byte, 0, 30) // 30バイトの容量を持つバッファ
bufferedText := f.Text(buf, 'f', 4)
fmt.Printf("Text(buf, f, 4)による出力: %s\n", bufferedText)
fmt.Printf("バッファの容量: %d, 長さ: %d\n", cap(bufferedText), len(bufferedText))
}
出力例
--- Text() メソッドの使用 ---
Text(f, 2)による出力: 123.46
Text(e, 3)による出力: 1.235e+02
Text(g, 5)による出力: 123.46
Text(f, -1)による完全な精度出力: 0.123456789012345678901234567890
Text(buf, f, 4)による出力: 123.4568
バッファの容量: 30, 長さ: 8
特徴
- フラグの欠如
+
,(スペース),
0
,#
などの書式フラグを直接制御することはできません。これらのフラグが必要な場合は、fmt.Sprintf
が依然として最も簡単な方法です。 - 低レベル
返されるのがバイトスライスなので、最終的に文字列として扱いたい場合はstring()
で変換する必要があります。 - パフォーマンス
既存のバイトスライスをバッファとして再利用できるため、大量の数値変換を行う場合にアロケーションを減らし、パフォーマンスを向上させることができます。 - 詳細な制御
fmt.Sprintf
と同様に書式と精度を細かく制御できます。
f.GobEncode() と f.GobDecode() / f.MarshalText() / f.UnmarshalText()
これらは主にシリアライズ(構造体をバイト列に変換すること)とデシリアライズ(バイト列を構造体に戻すこと)のためのメソッドですが、big.Float
の値をバイト列として表現する代替手段と考えることもできます。
- MarshalText() / UnmarshalText()
encoding.TextMarshaler
およびencoding.TextUnmarshaler
インターフェースの実装。JSONやYAMLなどのテキストベースの形式でデータをやり取りする際に使用されます。MarshalText()
はText(-1, 'g')
とほぼ同じ結果を返します。 - GobEncode() / GobDecode()
Goのencoding/gob
パッケージを使ったバイナリシリアライズ/デシリアライズ用。
これらの方法は、人間が読みやすい形式での表示というよりは、プログラム間でのbig.Float
の値の正確な受け渡しに適しています。
package main
import (
"fmt"
"math/big"
)
func main() {
f := big.NewFloat(123.456789)
fmt.Println("\n--- MarshalText() の使用 ---")
// MarshalText() を使用
textBytes, err := f.MarshalText()
if err != nil {
fmt.Println("MarshalText error:", err)
return
}
fmt.Printf("MarshalText()による出力: %s\n", textBytes)
// UnmarshalText() で元に戻す
g := new(big.Float)
err = g.UnmarshalText(textBytes)
if err != nil {
fmt.Println("UnmarshalText error:", err)
return
}
fmt.Printf("UnmarshalText()で復元: %v\n", g)
fmt.Printf("元の値と一致するか: %t\n", f.Cmp(g) == 0)
}
出力例
--- MarshalText() の使用 ---
MarshalText()による出力: 123.456789
UnmarshalText()で復元: 123.456789
元の値と一致するか: true
- 人間可読性
String()
やfmt.Sprintf
ほど人間が読みやすいことを重視しているわけではありませんが、十分可読性はあります。 - シリアライズ用途
主にデータ構造の一部としてbig.Float
を扱う場合に便利です。 - 正確なデータ交換
big.Float
の値をテキスト形式で正確に保存・復元するのに適しています。
- データ永続化やネットワーク転送
big.Float
の値をファイルに保存したり、ネットワーク経由で送信したりする場合は、MarshalText()
/UnmarshalText()
やGobEncode()
/GobDecode()
が適しています。 - パフォーマンス重視で低レベルな制御
大量の数値を変換し、かつ書式フラグが不要な場合はf.Text()
が有効です。バッファの再利用による最適化が可能です。 - シンプルな文字列変換
書式設定のカスタマイズが不要で、単にデフォルトの文字列表現が欲しい場合はf.String()
が最適です。 - 最も一般的で柔軟なフォーマット
fmt.Sprintf
やfmt.Printf
(big.Float.Format()
を介して呼び出される) を使うのが最も一般的で、幅、精度、各種フラグによる多様なフォーマットが可能です。