【Go言語】big.Float.Format()で困ったら読む記事:よくあるエラーと解決策

2025-06-01

このメソッドは、fmt.Formatterインターフェースを実装しており、fmtパッケージの書式設定関数(例: fmt.Printf, fmt.Sprintなど)によって自動的に呼び出されます。

引数:

  • c rune: 書式動詞(format verb)を表す文字です。%f, %e, %gなどがこれにあたります。
  • s fmt.State: 書式設定の状態を表すインターフェースです。出力の幅、精度、フラグ(例: +, #, )などの情報を含んでいます。s.Write()を使って出力ストリームに書き込みます。

動作:

Format()メソッドは、fの値をscで指定された書式に従って文字列に変換し、その結果をsに書き込みます。

書式動詞 (c) の種類と動作:

書式動詞 (c)説明
f符号付きの小数表現 (例: -123.456)v := big.NewFloat(123.456); fmt.Printf("%f\n", v) -> 123.456000
e指数表現 (例: -1.23456e+02)v := big.NewFloat(123.456); fmt.Printf("%e\n", v) -> 1.234560e+02
E指数表現 (大文字のE) (例: -1.23456E+02)v := big.NewFloat(123.456); fmt.Printf("%E\n", v) -> 1.234560E+02
g精度に応じて%fまたは%eの短い方を選択v := big.NewFloat(123.456); fmt.Printf("%g\n", v) -> 123.456 <br> v := big.NewFloat(1234567890.0); fmt.Printf("%g\n", v) -> 1.23456789e+09
G精度に応じて%fまたは%Eの短い方を選択v := big.NewFloat(1234567890.0); fmt.Printf("%G\n", v) -> 1.23456789E+09
vデフォルトの書式設定。%gと同じv := big.NewFloat(123.456); fmt.Printf("%v\n", v) -> 123.456

フラグと精度:

fmt.Printfなどと同様に、Format()はフラグ (+, -, #, ) や幅、精度も解釈します。

  • 精度:
    • %f, %e, %Eの場合: 小数点以下の桁数を指定します(デフォルトは6)。
    • %g, %Gの場合: 有効数字の桁数を指定します。
  • : 出力される文字列の最小幅を指定します。


package main

import (
	"fmt"
	"math/big"
)

func main() {
	f := big.NewFloat(123.456789)

	// %f: デフォルトの精度 (小数点以下6桁)
	fmt.Printf("%%f: %f\n", f)

	// %.2f: 小数点以下2桁
	fmt.Printf("%%.2f: %.2f\n", f)

	// %10.2f: 幅10、小数点以下2桁 (右詰め)
	fmt.Printf("%%10.2f: %10.2f\n", f)

	// %-10.2f: 幅10、小数点以下2桁 (左詰め)
	fmt.Printf("%%-10.2f: %-10.2f\n", f)

	// %e: 指数表記
	fmt.Printf("%%e: %e\n", f)

	// %.3e: 指数表記、小数点以下3桁
	fmt.Printf("%%.3e: %.3e\n", f)

	// %g: 短い方を選択 (有効数字の桁数)
	fmt.Printf("%%g: %g\n", f)

	g := big.NewFloat(1234567890.12345)
	fmt.Printf("%%g (large number): %g\n", g) // 指数表記になる

	h := big.NewFloat(0.000000123)
	fmt.Printf("%%g (small number): %g\n", h) // 指数表記になる

	// %.2g: 有効数字2桁
	fmt.Printf("%%.2g: %.2g\n", f)
}
%f: 123.456789
%.2f: 123.46
%10.2f:     123.46
%-10.2f: 123.46    
%e: 1.234568e+02
%.3e: 1.235e+02
%g: 123.456789
%g (large number): 1.23456789012345e+09
%g (small number): 1.23e-07
%.2g: 1.2e+02


予期しない精度 (Precision)

問題
Format()を使用する際に、期待する小数点以下の桁数や有効数字にならないことがあります。これは、big.Floatの精度設定とFormat()に渡す書式動詞や精度指定の組み合わせによって起こります。

  • 書式動詞と精度指定の誤解
    • %fの場合、精度は小数点以下の桁数を意味します。
    • %gの場合、精度は有効数字の桁数を意味します。
    • これらの違いを理解していないと、期待と異なる出力になります。
  • big.NewFloatのデフォルト精度
    big.NewFloat(x)Floatを生成すると、デフォルトでfloat64と同じ53ビットの精度になります。この精度が、文字列からの初期化 (SetString) や他の演算によって設定される精度と異なる場合、表示される値に影響が出ることがあります。

トラブルシューティング

  • 書式動詞と精度の意味を理解する
    fmtパッケージの書式動詞の意味を再確認し、必要に応じて%f%gを使い分け、適切な精度を指定します。
  • SetPrec()で明示的に精度を設定する
    Floatを初期化する際や計算の前に、SetPrec()メソッドで必要な精度を明示的に設定します。これにより、予期しない丸め誤差や精度の低下を防ぎ、Format()で期待通りの表示を得られる可能性が高まります。
    f := new(big.Float).SetPrec(100).SetFloat64(1.0 / 3.0) // 100ビットの精度を設定
    fmt.Printf("%.30f\n", f) // 30桁表示
    

丸め誤差 (Rounding Errors)

問題
big.Floatは任意精度ですが、それでも無限の精度を持つわけではありません。特に、十進数で正確に表現できない二進数(例: 0.1)を扱う場合や、複雑な計算を行うと、わずかな丸め誤差が発生し、Format()で表示される値が期待とわずかに異なることがあります。

トラブルシューティング

  • 誤差許容範囲の考慮
    厳密な等価性を期待するのではなく、ある程度の誤差許容範囲で比較する(例: f.Cmp(g) == 0ではなくf.Sub(f, g).Abs(f).Cmp(epsilon) < 0)など、浮動小数点数計算の性質を考慮した処理を行います。
  • big.RoundingModeの理解と設定
    math/bigパッケージには様々な丸めモード (big.ToNearestEven, big.AwayFromZeroなど) があります。デフォルトはToNearestEvenですが、特定の要件がある場合はSetMode()で丸めモードを変更することで、期待する丸め動作を実現できることがあります。
  • SetString()での初期化
    float64からの変換ではなく、文字列として正確な値を初期化することで、最初の段階での丸め誤差を防ぐことができます。
    // f := big.NewFloat(0.1) // float64の丸め誤差を含む
    f, _ := new(big.Float).SetString("0.1") // 文字列で正確に初期化
    fmt.Printf("%f\n", f)
    

無限大 (Infinity) や非数 (NaN) の表示

問題
big.Floatは無限大 (Inf) や非数 (NaN) も表現できます。これらの値に対してFormat()を適用すると、通常は+Inf, -Inf, NaNとして表示されますが、アプリケーションによってはこれらを特別に扱いたい場合があります。

トラブルシューティング

  • IsInf()とIsNaN()で事前にチェック
    Format()を呼び出す前に、f.IsInf()f.IsNaN()メソッドを使って値の状態を確認し、必要に応じて独自の処理や表示ロジックを実装します。
    f := big.NewFloat(0)
    g := big.NewFloat(0)
    
    // 0/0 は NaN になる
    h := new(big.Float).Quo(f, g) 
    
    if h.IsNaN() {
        fmt.Println("Result is NaN")
    } else {
        fmt.Printf("%f\n", h)
    }
    

パフォーマンスへの影響

問題
big.Floatは任意精度であるため、float64に比べて計算やフォーマットのパフォーマンスが低下する可能性があります。特に、非常に大きな精度を設定したり、大量の数値を繰り返しフォーマットしたりする場合に顕著になります。

トラブルシューティング

  • 大量処理の最適化
    多数のbig.Floatを一度にフォーマットする必要がある場合は、文字列結合の回数を減らす、バッファを再利用するなどの最適化を検討します。
  • 必要最小限の精度を使用する
    常に最大精度を求めるのではなく、アプリケーションの要件を満たす最小限の精度に設定することで、パフォーマンスを改善できます。

問題
Format(s fmt.State, c rune)は、fmt.Formatterインターフェースの実装であり、直接呼び出すことは稀です。通常はfmt.Printfなどの関数がこれを呼び出します。もし誤って直接呼び出し、fmt.Staterune引数を不適切に渡すと、予期しない動作やパニックが発生する可能性があります。

  • String()メソッドの利用
    単純にbig.Floatの文字列表現が必要な場合は、fmt.Stringerインターフェースを実装しているString()メソッドを使用するのが最も簡単です。ただし、String()はデフォルトの書式で出力されるため、カスタマイズが必要な場合はfmt.Printfを利用します。
    f := big.NewFloat(123.456)
    s := f.String() // デフォルトの書式で文字列を取得
    fmt.Println(s)
    
  • fmt.Printfなどの標準関数を使用する
    big.Float.Format()メソッドは、fmt.Printffmt.Sprintfなどのfmtパッケージの関数を通じて使用するのが適切です。直接呼び出す必要はほとんどありません。


以下の例では、様々な書式動詞、精度、フラグを使ってbig.Floatの値をどのように表示するかを示します。

例1: 基本的な書式設定

この例では、異なる書式動詞 (%f, %e, %g) を使ってbig.Floatの値を整形する方法を示します。

package main

import (
	"fmt"
	"math/big"
)

func main() {
	// big.Float型の値を作成
	f := big.NewFloat(123.456789)

	fmt.Println("--- 基本的な書式設定 ---")

	// %f: 符号付きの小数表現 (デフォルトの精度: 小数点以下6桁)
	// format: [-]ddd.ddd
	fmt.Printf("%%f (デフォルト): %f\n", f)

	// %e: 指数表現 (デフォルトの精度: 小数点以下6桁)
	// format: [-]d.dddde±dd
	fmt.Printf("%%e (デフォルト): %e\n", f)

	// %E: 指数表現 (大文字のE)
	// format: [-]d.ddddE±dd
	fmt.Printf("%%E (デフォルト): %E\n", f)

	// %g: 精度に応じて %f または %e の短い方を選択 (有効数字のデフォルト精度)
	// format: 精度に応じて変わる
	fmt.Printf("%%g (デフォルト): %g\n", f)

	// %G: 精度に応じて %f または %E の短い方を選択 (有効数字のデフォルト精度)
	fmt.Printf("%%G (デフォルト): %G\n", f)

	// %v: デフォルトの書式設定 (%g と同じ)
	fmt.Printf("%%v (デフォルト): %v\n", f)

	// 非常に大きな数と小さな数で %g の挙動を見る
	largeNum := big.NewFloat(1234567890123.456)
	smallNum := big.NewFloat(0.00000000123456)

	fmt.Printf("%%g (大きな数): %g\n", largeNum)
	fmt.Printf("%%g (小さな数): %g\n", smallNum)
}

出力例

--- 基本的な書式設定 ---
%f (デフォルト): 123.456789
%e (デフォルト): 1.234568e+02
%E (デフォルト): 1.234568E+02
%g (デフォルト): 123.456789
%G (デフォルト): 123.456789
%v (デフォルト): 123.456789
%g (大きな数): 1.234567890123456e+12
%g (小さな数): 1.23456e-09

解説

  • %v%gと同じ動作をします。
  • %g%Gは、値の大きさに応じて自動的に%fまたは%e/%Eを選択します。これは、有効数字の桁数を基準としており、非常に大きな数や小さな数では指数表記になります。
  • %e%Eは指数形式で表示します。デフォルトの精度は小数点以下6桁です。
  • %fは小数点形式で表示します。デフォルトの精度は小数点以下6桁です。
  • fmt.Printfの書式文字列(例: "%f\n")を使用すると、内部的にf.Format()が呼び出され、fの値が指定された書式で整形されます。

例2: 精度 (Precision) の指定

小数点以下の桁数や有効数字の桁数を制御します。

package main

import (
	"fmt"
	"math/big"
)

func main() {
	f := big.NewFloat(123.456789)

	fmt.Println("\n--- 精度 (Precision) の指定 ---")

	// %.2f: 小数点以下2桁
	fmt.Printf("%%.2f: %.2f\n", f)

	// %.0f: 小数点以下0桁 (整数部分のみ)
	fmt.Printf("%%.0f: %.0f\n", f)

	// %.3e: 指数表現、小数点以下3桁
	fmt.Printf("%%.3e: %.3e\n", f)

	// %.4g: 有効数字4桁
	// %g の精度は有効数字の桁数を意味する
	fmt.Printf("%%.4g: %.4g\n", f)

	// 別の値で %.4g の挙動を見る
	g := big.NewFloat(12345.6789)
	fmt.Printf("%%.4g (12345.6789): %.4g\n", g) // 指数表記になる
	h := big.NewFloat(0.000123456)
	fmt.Printf("%%.4g (0.000123456): %.4g\n", h) // 指数表記になる
}

出力例

--- 精度 (Precision) の指定 ---
%.2f: 123.46
%.0f: 123
%.3e: 1.235e+02
%.4g: 123.5
%.4g (12345.6789): 1.235e+04
%.4g (0.000123456): 1.235e-04

解説

  • %g%Gの場合、これは有効数字の桁数を意味します。
  • %f%e%Eの場合、これは小数点以下の桁数を意味します。
  • .の後に数字を続けることで精度を指定します。

例3: 幅 (Width) とフラグ (Flags) の指定

出力される文字列の最小幅を指定したり、特定の表示フラグ(符号、ゼロ埋め、左寄せなど)を使ったりします。

package main

import (
	"fmt"
	"math/big"
)

func main() {
	f := big.NewFloat(123.456)
	negF := big.NewFloat(-7.89)

	fmt.Println("\n--- 幅 (Width) とフラグ (Flags) の指定 ---")

	// %10f: 最小幅10文字で右寄せ
	fmt.Printf("%%10f: '%10f'\n", f)

	// %-10f: 最小幅10文字で左寄せ
	fmt.Printf("%%-10f: '%-10f'\n", f)

	// %010f: 最小幅10文字でゼロ埋め (正の数)
	fmt.Printf("%%010f: '%010f'\n", f)

	// %010f: 最小幅10文字でゼロ埋め (負の数)
	fmt.Printf("%%010f (負の数): '%010f'\n", negF) // 符号の後にゼロが続く

	// %+f: 常に符号を表示
	fmt.Printf("%%+f: %+f\n", f)
	fmt.Printf("%%+f (負の数): %+f\n", negF)

	// % f: 負の数には符号、正の数にはスペースを表示 (符号の位置を揃えるため)
	fmt.Printf("%% f: % f\n", f)
	fmt.Printf("%% f (負の数): % f\n", negF)

	// %#f: 小数点以下が0の場合でも小数点を表示 (整数値の場合)
	// big.Floatは通常、必要に応じて小数点を表示するため、このフラグの効果は限定的
	intF := big.NewFloat(123)
	fmt.Printf("%%#f: %#f\n", intF) // 123.000000
	fmt.Printf("%%f (通常): %f\n", intF) // 123.000000 (big.Floatではデフォルトで表示されることが多い)

	// %#g: 不必要な末尾のゼロを表示 (有効数字の桁数に影響)
	precG := new(big.Float).SetPrec(50).SetFloat64(123.4) // 高い精度で作成
	fmt.Printf("%%g: %g\n", precG)   // 123.4
	fmt.Printf("%%#g: %#g\n", precG) // 123.4000000000000000000000000000000000000000000000000
}

出力例

--- 幅 (Width) とフラグ (Flags) の指定 ---
%10f: ' 123.456000'
%-10f: '123.456000'
%010f: '0123.456000'
%010f (負の数): '-07.890000'
%+f: +123.456000
%+f (負の数): -7.890000
% f:  123.456000
% f (負の数): -7.890000
%#f: 123.000000
%f (通常): 123.000000
%g: 123.4
%#g: 123.4000000000000000000000000000000000000000000000000

解説

  • #フラグは、%fでは通常小数点以下がない場合でも小数点を表示し、%gでは不必要な末尾のゼロを保持します。ただし、big.Floatはデフォルトで精度に応じて末尾のゼロを表示するため、%fでの効果は限定的です。
  • スペースフラグ () は、正の数にスペースを表示し、負の数には符号を表示します。これにより、符号の位置が揃います。
  • +フラグは、正の数にも常に符号(+)を表示します。
  • 0フラグを使うと、幅が足りない場合に先頭をゼロで埋めます。
  • 数字で幅を指定すると、右寄せ(デフォルト)または左寄せ(-フラグ)で出力されます。

big.Float自身の精度が、Format()で表示される結果にどのように影響するかを示す例です。

package main

import (
	"fmt"
	"math/big"
)

func main() {
	fmt.Println("\n--- big.Floatの精度とFormat()の関連 ---")

	// デフォルト精度 (float64相当の53ビット) で作成
	fDefault := big.NewFloat(1.0 / 3.0)
	fmt.Printf("デフォルト精度 (1/3): %.20f\n", fDefault) // 20桁表示

	// 100ビットの精度で作成
	fPrec100 := new(big.Float).SetPrec(100).SetFloat64(1.0 / 3.0)
	fmt.Printf("100ビット精度 (1/3): %.30f\n", fPrec100) // 30桁表示

	// 100ビットの精度で文字列から作成 (より正確)
	fPrec100Str, _, err := new(big.Float).SetPrec(100).Parse("0.333333333333333333333333333333", 10)
	if err != nil {
		fmt.Println("Error parsing string:", err)
		return
	}
	fmt.Printf("100ビット精度 (文字列から): %.30f\n", fPrec100Str)

	// 計算結果の精度
	a := new(big.Float).SetPrec(64).SetFloat64(0.1)
	b := new(big.Float).SetPrec(64).SetFloat64(0.2)
	sum := new(big.Float).SetPrec(64).Add(a, b)
	fmt.Printf("0.1 + 0.2 (精度64ビット): %.20f\n", sum) // 0.3はfloat64で正確に表現できない

	// 異なる精度で計算
	a2 := new(big.Float).SetPrec(128).SetFloat64(0.1)
	b2 := new(big.Float).SetPrec(128).SetFloat64(0.2)
	sum2 := new(big.Float).SetPrec(128).Add(a2, b2)
	fmt.Printf("0.1 + 0.2 (精度128ビット): %.20f\n", sum2)
}

出力例

--- big.Floatの精度とFormat()の関連 ---
デフォルト精度 (1/3): 0.33333333333333331483
100ビット精度 (1/3): 0.333333333333333333333333333333
100ビット精度 (文字列から): 0.333333333333333333333333333333
0.1 + 0.2 (精度64ビット): 0.30000000000000004441
0.1 + 0.2 (精度128ビット): 0.30000000000000000000
  • 0.1 + 0.2の例は、float64では丸め誤差が発生するが、big.Floatで十分な精度(128ビット)を設定すると正確な結果が得られることを示しています。
  • SetString()Parse()で文字列から初期化すると、より高い精度で値を表現できます。
  • SetFloat64()で初期化する場合、元になるfloat64の精度以上の正確さは得られません。
  • big.Floatの内部的な精度(ビット数で指定)は、SetPrec()メソッドで設定します。これがFormat()で表示される最終的な値の正確さに影響します。


主な代替方法は以下の通りです。

f.String() メソッドの使用

big.Float型はfmt.Stringerインターフェースを実装しており、String()メソッドを持っています。これは、fmt.Print系関数で%v書式動詞を使った場合と同じデフォルトの文字列表現を返します。最もシンプルで手軽な方法です。

package main

import (
	"fmt"
	"math/big"
)

func main() {
	f := big.NewFloat(123.456789)

	// String() メソッドを使用
	s := f.String()
	fmt.Printf("String()による出力: %s\n", s)

	// 非常に小さな数
	smallF := big.NewFloat(0.00000000123)
	sSmall := smallF.String()
	fmt.Printf("String()による小さな数の出力: %s\n", sSmall)

	// String() は fmt.Sprint/Println のデフォルト動作
	fmt.Println("fmt.Printlnによる出力:", f)
}

出力例

String()による出力: 123.456789
String()による小さな数の出力: 1.23e-09
fmt.Printlnによる出力: 123.456789

特徴

  • カスタマイズ性
    書式(小数点以下の桁数、指数表記にするかなど)を細かく制御することはできません。
  • デフォルト書式
    fmt.Sprintf("%g", f)と同じような、値に応じて最適な(短い)表現を返します。
  • シンプルさ
    最も簡単にbig.Floatを文字列に変換できます。

f.Text(buf []byte, form byte, prec int) メソッドの使用

Text()メソッドは、big.Floatの値を指定された書式(form)と精度(prec)でバイトスライスとしてフォーマットし、それを返します。これは、fmt.Sprintfが内部的に行っている処理に近いもので、より低レベルで、かつ効率的な文字列生成が可能です。

  • prec int: 精度を指定します。'f', 'e', 'E' では小数点以下の桁数、'g', 'G' では有効数字の桁数です。-1を指定すると、big.Floatの完全な精度で出力されます。
  • form byte: 書式を指定する文字で、'f', 'e', 'E', 'g', 'G' など、fmtパッケージの書式動詞に対応します。
  • buf []byte: 結果を書き込むためのオプションのバッファです。nilの場合、新しいバッファが割り当てられます。
package main

import (
	"fmt"
	"math/big"
)

func main() {
	f := big.NewFloat(123.456789)
	fPrec := new(big.Float).SetPrec(100).SetString("0.123456789012345678901234567890")

	fmt.Println("\n--- Text() メソッドの使用 ---")

	// %f 形式で小数点以下2桁
	textF := f.Text(nil, 'f', 2)
	fmt.Printf("Text(f, 2)による出力: %s\n", textF)

	// %e 形式で小数点以下3桁
	textE := f.Text(nil, 'e', 3)
	fmt.Printf("Text(e, 3)による出力: %s\n", textE)

	// %g 形式で有効数字5桁
	textG := f.Text(nil, 'g', 5)
	fmt.Printf("Text(g, 5)による出力: %s\n", textG)

	// 完全な精度で出力 (prec = -1)
	textFullPrec := fPrec.Text(nil, 'f', -1)
	fmt.Printf("Text(f, -1)による完全な精度出力: %s\n", textFullPrec)

	// 既存のバイトスライスをバッファとして利用
	buf := make([]byte, 0, 30) // 30バイトの容量を持つバッファ
	bufferedText := f.Text(buf, 'f', 4)
	fmt.Printf("Text(buf, f, 4)による出力: %s\n", bufferedText)
	fmt.Printf("バッファの容量: %d, 長さ: %d\n", cap(bufferedText), len(bufferedText))
}

出力例

--- Text() メソッドの使用 ---
Text(f, 2)による出力: 123.46
Text(e, 3)による出力: 1.235e+02
Text(g, 5)による出力: 123.46
Text(f, -1)による完全な精度出力: 0.123456789012345678901234567890
Text(buf, f, 4)による出力: 123.4568
バッファの容量: 30, 長さ: 8

特徴

  • フラグの欠如
    +, (スペース), 0, # などの書式フラグを直接制御することはできません。これらのフラグが必要な場合は、fmt.Sprintfが依然として最も簡単な方法です。
  • 低レベル
    返されるのがバイトスライスなので、最終的に文字列として扱いたい場合はstring()で変換する必要があります。
  • パフォーマンス
    既存のバイトスライスをバッファとして再利用できるため、大量の数値変換を行う場合にアロケーションを減らし、パフォーマンスを向上させることができます。
  • 詳細な制御
    fmt.Sprintfと同様に書式と精度を細かく制御できます。

f.GobEncode() と f.GobDecode() / f.MarshalText() / f.UnmarshalText()

これらは主にシリアライズ(構造体をバイト列に変換すること)とデシリアライズ(バイト列を構造体に戻すこと)のためのメソッドですが、big.Floatの値をバイト列として表現する代替手段と考えることもできます。

  • MarshalText() / UnmarshalText()
    encoding.TextMarshalerおよびencoding.TextUnmarshalerインターフェースの実装。JSONやYAMLなどのテキストベースの形式でデータをやり取りする際に使用されます。MarshalText()Text(-1, 'g')とほぼ同じ結果を返します。
  • GobEncode() / GobDecode()
    Goのencoding/gobパッケージを使ったバイナリシリアライズ/デシリアライズ用。

これらの方法は、人間が読みやすい形式での表示というよりは、プログラム間でのbig.Floatの値の正確な受け渡しに適しています。

package main

import (
	"fmt"
	"math/big"
)

func main() {
	f := big.NewFloat(123.456789)

	fmt.Println("\n--- MarshalText() の使用 ---")

	// MarshalText() を使用
	textBytes, err := f.MarshalText()
	if err != nil {
		fmt.Println("MarshalText error:", err)
		return
	}
	fmt.Printf("MarshalText()による出力: %s\n", textBytes)

	// UnmarshalText() で元に戻す
	g := new(big.Float)
	err = g.UnmarshalText(textBytes)
	if err != nil {
		fmt.Println("UnmarshalText error:", err)
		return
	}
	fmt.Printf("UnmarshalText()で復元: %v\n", g)
	fmt.Printf("元の値と一致するか: %t\n", f.Cmp(g) == 0)
}

出力例

--- MarshalText() の使用 ---
MarshalText()による出力: 123.456789
UnmarshalText()で復元: 123.456789
元の値と一致するか: true
  • 人間可読性
    String()fmt.Sprintfほど人間が読みやすいことを重視しているわけではありませんが、十分可読性はあります。
  • シリアライズ用途
    主にデータ構造の一部としてbig.Floatを扱う場合に便利です。
  • 正確なデータ交換
    big.Floatの値をテキスト形式で正確に保存・復元するのに適しています。
  • データ永続化やネットワーク転送
    big.Floatの値をファイルに保存したり、ネットワーク経由で送信したりする場合は、MarshalText() / UnmarshalText()GobEncode() / GobDecode() が適しています。
  • パフォーマンス重視で低レベルな制御
    大量の数値を変換し、かつ書式フラグが不要な場合はf.Text()が有効です。バッファの再利用による最適化が可能です。
  • シンプルな文字列変換
    書式設定のカスタマイズが不要で、単にデフォルトの文字列表現が欲しい場合はf.String()が最適です。
  • 最も一般的で柔軟なフォーマット
    fmt.Sprintffmt.Printf (big.Float.Format()を介して呼び出される) を使うのが最も一般的で、幅、精度、各種フラグによる多様なフォーマットが可能です。