Django ORM vs Raw SQL vs サードパーティ製ライブラリ:クエリ作成の最適な方法を選択する
このガイドでは、Django の Making queries ドキュメント を基に、初心者向けにクエリ作成の基本を分かりやすく解説します。
モデルとマネージャー
まず、Django モデルについて理解する必要があります。 モデルは、データベース内のデータ構造を Python クラスとして表します。 各モデルには、フィールド、関係、メソッドなどを定義することができます。
モデルには、マネージャーと呼ばれるオブジェクトが付属しています。 マネージャーは、データベースに対してクエリを実行するためのメソッドを提供します。
基本的なクエリ
全てのオブジェクトを取得する
すべてのオブジェクトを取得するには、マネージャー名.all()
メソッドを使用します。 例えば、Book
モデルのすべての書籍を取得するには、次のように記述します。
from .models import Book
books = Book.objects.all()
このクエリは、Book
テーブル内のすべてのレコードを books
という変数に格納します。
特定のオブジェクトを取得する
特定のオブジェクトを取得するには、マネージャー名.get()
メソッドを使用します。 get()
メソッドは、主キー (primary key) またはユニークフィールド (unique field) を引数として受け取り、それに一致するオブジェクトを返します。
例えば、主キーが 1 である書籍を取得するには、次のように記述します。
book = Book.objects.get(pk=1)
または、ユニークなフィールドである slug
が "my-book" である書籍を取得するには、次のように記述します。
book = Book.objects.get(slug="my-book")
オブジェクトが見つからない場合は、DoesNotExist
例外が発生します。
フィルタリング
フィルタリングを使用して、クエリ結果を絞り込むことができます。 フィルタリングは、マネージャー名.filter()
メソッドを使用して実行します。
例えば、著者名が "John Doe" である書籍を取得するには、次のように記述します。
books = Book.objects.filter(author__name="John Doe")
このクエリは、author
という名前の関連フィールドを持つオブジェクトのみを返し、そのフィールドの name
属性が "John Doe" であるものを選択します。
さらに複雑なフィルタリング条件を作成するために、論理演算子 (AND, OR, NOT) と比較演算子 (==, !=, <, >, <=, >=) を組み合わせて使用することができます。
クエリセットは、データベースから取得したオブジェクトの集合を表します。 クエリセットには、さまざまな操作を実行するためのメソッドが用意されています。
並べ替え
order_by()
メソッドを使用して、クエリ結果を並べ替えることができます。 引数として、並べ替えたいフィールド名を指定します。 昇順で並べ替えるには、フィールド名の後に asc
を、降順で並べ替えるには desc
を指定します。
例えば、発行日順に書籍を並べ替えるには、次のように記述します。
books = Book.objects.order_by("publication_date")
除外
exclude()
メソッドを使用して、特定のオブジェクトをクエリ結果から除外することができます。 引数として、除外したい条件を指定します。
例えば、在庫切れの書籍を除外するには、次のように記述します。
books = Book.objects.exclude(stock=0)
制限
limit()
メソッドを使用して、クエリ結果の数を制限することができます。 引数として、取得するオブジェクトの最大数を指定します。
例えば、最初の 10 件の書籍のみを取得するには、次のように記述します。
books = Book.objects.all()[:10]
Django ORM は、さまざまな種類のクエリを実行するための豊富な機能を提供しています。
- 部分一致:
contains
やstartswith
などの演算子を使用して、部分一致 - 集計:
count()
,sum()
,avg()
,min()
,max()
などの集計関数を使用して、クエリ結果の集計値を取得することができます。
from django.db import models
class Book(models.Model):
title = models.CharField(max_length=255)
author = models.ForeignKey('Author', on_delete=models.CASCADE)
publication_date = models.DateField()
stock = models.IntegerField()
class Author(models.Model):
name = models.CharField(max_length=255)
このコードは、2 つのモデル (Book
と Author
) を定義します。 Book
モデルには、タイトル、著者、発行日、在庫数などのフィールドがあります。 Author
モデルには、名前というフィールドがあります。
全ての書籍を取得する
from .models import Book
books = Book.objects.all()
特定の書籍を取得する
from .models import Book
book = Book.objects.get(pk=1)
このコードは、主キーが 1 である書籍を book
という変数に格納します。
from .models import Book
books = Book.objects.filter(author__name="John Doe")
このコードは、著者名が "John Doe" である書籍を books
という変数に格納します。
from .models import Book
books = Book.objects.order_by("publication_date")
このコードは、発行日順に書籍を books
という変数に格納します。
from .models import Book
books = Book.objects.exclude(stock=0)
このコードは、在庫切れの書籍を books
という変数から除外します。
from .models import Book
books = Book.objects.all()[:10]
このコードは、最初の 10 件の書籍のみを books
という変数に格納します。
集計
from .models import Book
book_count = Book.objects.count()
このコードは、Book
テーブル内のレコード数を book_count
という変数に格納します。
部分一致
from .models import Book
books = Book.objects.filter(title__contains="Django")
Django ORM を使用する
Django ORM は、Django でクエリを作成するための最も一般的で推奨される方法です。 ORM は、データベースとの複雑なやり取りを、より直感的で Python 的な方法で記述することができます。
Raw SQL を使用する
より複雑なクエリや、ORM で表現するのが難しいクエリを作成する必要がある場合は、Raw SQL を使用することができます。 Raw SQL は、データベースに直接クエリを実行するための方法です。
サードパーティ製ライブラリを使用する
Django には、クエリを作成するための機能を拡張するサードパーティ製ライブラリがいくつかあります。 例えば、django-filter
ライブラリを使用して、より洗練されたフィルタリング機能を追加したり、django-queryset-chain
ライブラリを使用して、複数のクエリセットを連結することができます。
各方法の比較
方法 | 利点 | 欠点 |
---|---|---|
Django ORM | 習得が簡単、直感的、Django との統合が良好 | 複雑なクエリには不向きな場合がある |
Raw SQL | 柔軟性が高い、複雑なクエリが可能 | 習得が難しい、デバッグが難しい、Django との統合が弱い |
サードパーティ製ライブラリ | 特定のユースケースに特化した機能を提供できる | 導入と習得が複雑になる場合がある |
どの方法を選択すべきか
- 特定のユースケースに特化した機能が必要な場合は、サードパーティ製ライブラリを使用することを検討してください。
- 複雑なクエリや、ORM で表現するのが難しいクエリを作成する必要がある場合は、Raw SQL を使用することを検討してください。
- 初心者であれば、Django ORM を使用することをお勧めします。 ORM は、Django でクエリを作成するための最も簡単で直感的な方法です。
上記の情報に加えて、以下の点にも注意する必要があります。
- テスト: すべてのクエリを十分にテストする必要があります。 テストを行うことで、クエリが正しく動作し、予期しない結果を招かないことを確認することができます。
- セキュリティ: 常に安全なクエリを実装する必要があります。 ユーザー入力のサニタイズを行い、SQL インジェクションなどの脆弱性を防ぐ対策を講じてください。
- パフォーマンス: クエリのパフォーマンスを考慮することが重要です。 特に、大量のデータを扱う場合は、クエリを効率的に実行する必要があります。