SQLiteの%zは非対応?タイムゾーン表示の基本とプログラミングのコツ

2025-05-27

SQLiteの strftime() 関数における %z は、タイムゾーンオフセットを表すための書式指定子です。

しかし、SQLiteの標準的な strftime() 関数では、%z はサポートされていません。

一般的に、C言語の strftime() 関数や他のプログラミング言語の類似関数では、%z はUTCからのオフセットを +HHMM または -HHMM の形式(例: 日本標準時なら +0900)で表示するために使われます。

なぜサポートされていないのか?

SQLiteは「lite」なデータベースであり、多くのRDBMSが持つような高度なタイムゾーン管理機能を組み込んでいません。タイムゾーンの変換や管理は、アプリケーション層(SQLiteを利用するプログラム側)で行うことが推奨されています。

タイムゾーンオフセットが必要な場合の対処法

もしSQLiteでタイムゾーンオフセットを含む日付・時刻の文字列が必要な場合は、以下のいずれかの方法を検討する必要があります。

  1. アプリケーション側での処理
    SQLiteからUTCまたはローカルタイムの日付・時刻を取得し、使用しているプログラミング言語 (Python, Java, C#, PHPなど) の日付・時刻ライブラリを使ってタイムゾーンオフセットを付加してフォーマットするのが最も一般的で推奨される方法です。

  2. UTCとローカルタイムの差分を計算
    SQLiteの strftime('%s', 'now', 'localtime') - strftime('%s', 'now') のようにして、localtime を適用した場合としない場合のUnixエポックからの秒数の差分を計算し、それを分や時間に変換してオフセットを自力で作成する方法も考えられます。ただし、これは複雑で、夏時間などによって予期せぬ結果になる可能性があります。

  3. タイムゾーン情報をデータとして保存
    日付・時刻データとは別に、タイムゾーン名やオフセットを別のカラムに保存しておき、表示時にそれらを結合する方法です。



重要な前提
まず最初に認識すべきことは、SQLiteの組み込みstrftime()関数は、標準Cライブラリのstrftime()のようにタイムゾーンオフセット(%z)を直接サポートしていません。 これはSQLiteの設計思想によるもので、シンプルなデータベースであるため、複雑なタイムゾーン処理はアプリケーション側に委ねられています。

この前提を理解していれば、%zに関する「エラー」のほとんどは、**「期待通りの結果が得られない」**という誤解から生じていることになります。

%zに関する一般的な「エラー」と誤解

    • 誤解
      strftime('%Y-%m-%d %H:%M:%S%z', 'now') のように %z を使うと、タイムゾーンオフセット(例: +0900)が出力されるはずだと考える。
    • 現実
      SQLiteのstrftime()関数は%zを認識しないため、通常は空文字列が返されるか、あるいは単に無視されて日付/時刻部分のみが表示されます。これはエラーメッセージを出すのではなく、単にそのフォーマット指定子を処理できないためです。
  1. タイムゾーン付きの日付/時刻を保存・比較したいが、うまくできない

    • 誤解
      タイムゾーンオフセットを含んだ文字列(例: 2023-10-27T10:30:00+09:00)をSQLiteに保存すれば、タイムゾーンを考慮した比較や変換ができるはずだと考える。
    • 現実
      SQLiteは日付/時刻を内部的にTEXT、REAL、INTEGERのいずれかで保存します。タイムゾーン情報を含む文字列をTEXT型で保存することはできますが、SQLiteの組み込み関数はデフォルトではそのタイムゾーンオフセットを解釈して、それに基づいて時刻を調整したり比較したりする機能は持っていません。
  2. localtime修飾子を使っているのにタイムゾーンが反映されない

    • 誤解
      strftime('%Y-%m-%d %H:%M:%S', 'now', 'localtime')のようにlocaltimeを使うと、自動的に現在のシステムタイムゾーンのオフセットが計算されて表示されると考える。
    • 現実
      localtime修飾子は、内部的なUTC時刻をシステムのローカルタイムに変換して表示する機能です。しかし、この変換された時刻にタイムゾーンオフセット自体(例: +0900)を付加して出力する機能は%zを含め、SQLiteの組み込み関数にはありません。 localtimeはあくまで時刻の値自体をローカルタイムに調整するもので、そのタイムゾーン情報を文字列として出力するものではありません。

SQLiteでタイムゾーンオフセットを扱いたい場合の基本的な考え方は、**「アプリケーション層で処理する」**です。

  1. SQLiteに保存するデータ形式の決定

    • 推奨
      日付/時刻データは**UTC(協定世界時)**で保存することを強く推奨します。これにより、タイムゾーンに依存しない一貫した時刻をデータベースに保つことができます。SQLiteのCURRENT_TIMESTAMPはデフォルトでUTCを返します。
      CREATE TABLE my_events (
          id INTEGER PRIMARY KEY,
          event_name TEXT,
          event_time_utc TEXT DEFAULT CURRENT_TIMESTAMP
      );
      
    • 必要であれば、UTCのタイムスタンプに加えて、ユーザーのタイムゾーンオフセットやタイムゾーン名(例: +09:00Asia/Tokyo)を別のカラムとしてTEXT型で保存することも検討します。
      CREATE TABLE my_events_with_tz (
          id INTEGER PRIMARY KEY,
          event_name TEXT,
          event_time_utc TEXT, -- UTC時刻
          timezone_offset TEXT, -- 例: '+09:00'
          timezone_name TEXT    -- 例: 'Asia/Tokyo'
      );
      
  2. 表示時・処理時のタイムゾーン変換

    • SQLiteから取得したUTC時刻は、アプリケーション側でユーザーのタイムゾーン設定に基づいてローカルタイムに変換し、必要に応じてタイムゾーンオフセットを付加して表示します。
    • 多くのプログラミング言語には、強力な日付/時刻ライブラリがあります(例: Pythonのdatetime、Javaのjava.time、JavaScriptのDateIntl.DateTimeFormatなど)。これらを使用して、UTC時刻を目的のタイムゾーンに変換し、任意のフォーマット(%zを含む)で文字列化します。

    例 (Pythonの場合)

    import sqlite3
    from datetime import datetime, timezone, timedelta
    
    conn = sqlite3.connect(':memory:')
    cursor = conn.cursor()
    
    cursor.execute("CREATE TABLE my_events (id INTEGER PRIMARY KEY, event_time_utc TEXT)")
    cursor.execute("INSERT INTO my_events (event_time_utc) VALUES (datetime('now', 'utc'))")
    conn.commit()
    
    # UTC時刻を取得
    cursor.execute("SELECT event_time_utc FROM my_events WHERE id = 1")
    utc_str = cursor.fetchone()[0]
    print(f"UTC時刻 (SQLiteから直接): {utc_str}") # 例: 2023-10-27 01:30:00
    
    # Pythonでタイムゾーン付きのdatetimeオブジェクトに変換
    # SQLiteのdatetime()はミリ秒精度を持たないため、ここでは秒までとしています。
    # strptimeのフォーマットに注意
    dt_utc = datetime.strptime(utc_str, '%Y-%m-%d %H:%M:%S').replace(tzinfo=timezone.utc)
    print(f"UTC時刻 (Python datetimeオブジェクト): {dt_utc}") # 例: 2023-10-27 01:30:00+00:00
    
    # 日本のタイムゾーンに変換して表示
    # Python 3.9+であれば zoneinfo モジュールが使えます
    try:
        from zoneinfo import ZoneInfo
        japan_tz = ZoneInfo("Asia/Tokyo")
    except ImportError:
        # 古いPythonバージョンでは pytz などのライブラリが必要
        import pytz
        japan_tz = pytz.timezone("Asia/Tokyo")
    
    dt_japan_local = dt_utc.astimezone(japan_tz)
    print(f"日本時間 (変換後、%z付き): {dt_japan_local.strftime('%Y-%m-%d %H:%M:%S%z')}")
    # 例: 2023-10-27 10:30:00+0900 (夏時間を考慮した正確なオフセット)
    
    conn.close()
    
  3. 時刻計算とタイムゾーン

    • SQLiteのdatetime()julianday()関数は、'+1 day''-3 hours'のような修飾子で時刻の加減算が可能です。しかし、これはタイムゾーンを考慮した賢い計算ではなく、単純な時間の加算・減算です。
    • タイムゾーンの境界をまたぐ計算(例: 夏時間の切り替わりを考慮した日付計算)が必要な場合は、これもアプリケーション側のライブラリを使用すべきです。
  • これにより、データベースのデータの一貫性を保ちつつ、ユーザーに適切なタイムゾーンで情報を提示できます。
  • SQLiteで日付/時刻を扱う際は、UTCで保存し、表示や計算が必要な場合にアプリケーション側でタイムゾーン変換を行うのがベストプラクティスです。
  • SQLiteのstrftime()%zをサポートしていません。 これはエラーではなく、単にその機能が提供されていないだけです。


前述の通り、SQLiteのstrftime()関数は、組み込みでは%z(タイムゾーンオフセット)をサポートしていません。 したがって、SQLiteのクエリ内で直接%zを使ってタイムゾーンオフセットを含む日付/時刻文字列を生成することはできません。

このため、「SQLiteの%zに関連するプログラミング例」という場合、それは以下の2つの主要なケースに集約されます。

  1. SQLiteから取得した日付/時刻データを、アプリケーション側でタイムゾーンオフセット付きの文字列として整形する例。 (これが最も一般的で推奨される方法です)
  2. (非常に限定的かつ非推奨ですが)SQLiteのユーザー定義関数(UDF)として%zのような機能を実装する例。

ここでは、最も実用的な「1. アプリケーション側での処理」に焦点を当てて、Pythonを例に説明します。

ここでは、SQLiteにUTC時刻を保存し、Pythonでそれを取得して、指定したタイムゾーンのオフセット付き時刻として表示する例を示します。

シナリオ

  • Pythonプログラムからその時刻を取得し、日本のタイムゾーン(JST, UTC+9)でタイムゾーンオフセット付きの文字列として表示します。
  • SQLiteデータベースにイベントの発生時刻をUTCで保存します。

必要なライブラリ

  • zoneinfo (Python 3.9+): タイムゾーン情報を扱うための標準モジュール。3.8以前の場合はpytzなどの外部ライブラリが必要です。
  • datetime: Python標準の日付/時刻モジュール
  • sqlite3: Python標準のSQLiteインターフェース

コード例

import sqlite3
from datetime import datetime, timezone, timedelta
# Python 3.9以降の標準ライブラリ
try:
    from zoneinfo import ZoneInfo
except ImportError:
    # Python 3.8以前の場合、pip install pytz でインストールが必要
    print("zoneinfo が見つかりません。pytz を使用します。pip install pytz を実行してください。")
    import pytz

def get_japan_timezone():
    """日本時間(Asia/Tokyo)のタイムゾーンオブジェクトを返します。"""
    try:
        return ZoneInfo("Asia/Tokyo")
    except NameError: # zoneinfo がない場合(Python 3.8以前)
        return pytz.timezone("Asia/Tokyo")

# --- 1. SQLiteデータベースの準備 ---
# メモリ上の一時的なデータベースを作成
conn = sqlite3.connect(':memory:')
cursor = conn.cursor()

# イベントテーブルの作成(時刻はUTCで保存)
cursor.execute("""
    CREATE TABLE IF NOT EXISTS events (
        id INTEGER PRIMARY KEY,
        event_name TEXT NOT NULL,
        event_time_utc TEXT NOT NULL -- UTC時刻をISO 8601形式で保存
    )
""")

# 現在のUTC時刻を挿入
# SQLiteのdatetime('now', 'utc')は YYYY-MM-DD HH:MM:SS 形式で返します
utc_now_str = cursor.execute("SELECT datetime('now', 'utc')").fetchone()[0]
cursor.execute("INSERT INTO events (event_name, event_time_utc) VALUES (?, ?)",
               ("会議開始", utc_now_str))
conn.commit()

print(f"SQLiteに保存されたUTC時刻: {utc_now_str}\n")

# --- 2. SQLiteから時刻データを取得し、Pythonで処理 ---

# データベースからイベントデータを取得
cursor.execute("SELECT event_name, event_time_utc FROM events WHERE id = 1")
event_name, event_time_utc_str = cursor.fetchone()

print(f"取得したイベント名: {event_name}")
print(f"取得したUTC時刻文字列: {event_time_utc_str}")

# SQLiteから取得したUTC時刻文字列をPythonのdatetimeオブジェクトに変換
# SQLiteのdatetime()はミリ秒を含まないので、フォーマットに注意
# .replace(tzinfo=timezone.utc) でUTCであることを明示
dt_utc = datetime.strptime(event_time_utc_str, '%Y-%m-%d %H:%M:%S').replace(tzinfo=timezone.utc)
print(f"Pythonのdatetimeオブジェクト (UTC): {dt_utc}")

# 日本のタイムゾーンに変換
japan_tz = get_japan_timezone()
dt_japan_local = dt_utc.astimezone(japan_tz)
print(f"Pythonのdatetimeオブジェクト (日本時間): {dt_japan_local}")

# --- 3. タイムゾーンオフセット (%z) を含む形式で表示 ---
# Pythonのstrftime()を使って %z フォーマット指定子を使用
formatted_time_japan = dt_japan_local.strftime('%Y-%m-%d %H:%M:%S%z')
print(f"日本時間(%zを含む形式で表示): {formatted_time_japan}")

print("\n--- 補足: SQLiteでlocaltimeを使っても%zは出ない ---")
# SQLiteのlocaltime修飾子を使っても、%zは出力されません
sqlite_local_time_str = cursor.execute("SELECT datetime('now', 'localtime')").fetchone()[0]
print(f"SQLiteのdatetime('now', 'localtime'): {sqlite_local_time_str}")

# 以下は試しても無駄です(SQLiteは %z をサポートしていないため)
# sqlite_attempt_with_percent_z = cursor.execute("SELECT strftime('%Y-%m-%d %H:%M:%S%z', 'now', 'localtime')").fetchone()[0]
# print(f"SQLiteでstrftime('%z')を試行: {sqlite_attempt_with_percent_z}") # -> %z部分は空になるか無視される

# データベース接続を閉じる
conn.close()

実行結果の例

SQLiteに保存されたUTC時刻: 2023-10-27 06:30:00

取得したイベント名: 会議開始
取得したUTC時刻文字列: 2023-10-27 06:30:00
Pythonのdatetimeオブジェクト (UTC): 2023-10-27 06:30:00+00:00
Pythonのdatetimeオブジェクト (日本時間): 2023-10-27 15:30:00+09:00
日本時間(%zを含む形式で表示): 2023-10-27 15:30:00+0900

--- 補足: SQLiteでlocaltimeを使っても%zは出ない ---
SQLiteのdatetime('now', 'localtime'): 2023-10-27 15:30:00

(※実行時の実際の時刻によって日付や時刻は異なります)

  1. SQLiteへの保存
    datetime('now', 'utc') を使って、タイムゾーン情報を含まない純粋なUTC時刻文字列をデータベースに保存しています。これは、どのタイムゾーンのユーザーが見ても一貫した「基準時刻」を提供するための最良の方法です。
  2. Pythonでの取得と変換
    • SQLiteから取得した文字列は、datetime.strptime() を使ってPythonのdatetimeオブジェクトに変換します。この際、.replace(tzinfo=timezone.utc) を使って、このdatetimeオブジェクトがUTCであることを明示的に設定することが重要です。
    • get_japan_timezone() 関数(zoneinfoまたはpytzを使用)で日本のタイムゾーンオブジェクトを取得します。
    • dt_utc.astimezone(japan_tz) を使って、UTCのdatetimeオブジェクトを日本のローカルタイムゾーンに変換します。この時点で、dt_japan_localオブジェクトには正しい日本のローカル時刻と、+09:00のようなタイムゾーンオフセット情報が含まれています。
  3. %zでの整形
    最後に、dt_japan_local.strftime('%Y-%m-%d %H:%M:%S%z') を使うことで、Pythonのstrftime()%zを認識し、タイムゾーンオフセット(例: +0900)を含んだ文字列を生成します。


アプリケーション層での処理(最も推奨される方法)

これが最も一般的で、堅牢で、推奨される方法です。SQLiteにはUTC時刻を保存し、タイムゾーンの考慮やオフセットの付加は、SQLiteを利用するアプリケーション側で行います。

基本的な流れ

  1. SQLiteへの保存
    すべての時刻データをUTCで保存します。
    • 例: datetime('now', 'utc') を使用。
    • 理由: UTCはタイムゾーンや夏時間に影響されない普遍的な時刻であり、データの整合性が保たれます。
  2. SQLiteからの取得
    保存されたUTC時刻文字列を取得します。
  3. アプリケーションでの変換
    取得したUTC時刻を、表示したいタイムゾーン(例:ユーザーの現地時間)に変換します。
  4. オフセット付き整形
    変換された時刻を、%zなどの書式指定子をサポートする言語の機能を使って整形します。

プログラミング言語例 (Python)

import sqlite3
from datetime import datetime, timezone
# Python 3.9以降の標準ライブラリ
try:
    from zoneinfo import ZoneInfo
except ImportError:
    # Python 3.8以前の場合、pip install pytz でインストールが必要
    print("zoneinfo が見つかりません。pytz を使用します。pip install pytz を実行してください。")
    import pytz

def get_timezone_obj(tz_name):
    """指定されたタイムゾーン名のタイムゾーンオブジェクトを返します。"""
    try:
        return ZoneInfo(tz_name)
    except NameError: # zoneinfo がない場合
        return pytz.timezone(tz_name)

# --- 1. データベースのセットアップ ---
conn = sqlite3.connect(':memory:') # メモリ内のDB
cursor = conn.cursor()

# UTC時刻を保存するテーブルを作成
cursor.execute("""
    CREATE TABLE IF NOT EXISTS events (
        id INTEGER PRIMARY KEY AUTOINCREMENT,
        event_name TEXT NOT NULL,
        event_time_utc TEXT NOT NULL
    )
""")

# 現在のUTC時刻を挿入
current_utc_time = cursor.execute("SELECT datetime('now', 'utc')").fetchone()[0]
cursor.execute("INSERT INTO events (event_name, event_time_utc) VALUES (?, ?)",
               ("会議開始", current_utc_time))
conn.commit()
print(f"SQLiteに保存されたUTC時刻: {current_utc_time}\n")

# --- 2. データ取得とアプリケーションでの処理 ---

# データベースからUTC時刻を取得
cursor.execute("SELECT event_name, event_time_utc FROM events WHERE id = 1")
event_name, event_time_str_utc = cursor.fetchone()

print(f"イベント名: {event_name}")
print(f"SQLiteから取得したUTC時刻文字列: {event_time_str_utc}")

# UTC時刻文字列をdatetimeオブジェクトに変換し、UTCであることを明示
# SQLiteのdatetime()は秒までなので、strptimeのフォーマットに合わせる
dt_utc = datetime.strptime(event_time_str_utc, '%Y-%m-%d %H:%M:%S').replace(tzinfo=timezone.utc)
print(f"Python datetimeオブジェクト (UTC): {dt_utc}")

# 例: 日本時間 (UTC+9) に変換
japan_tz = get_timezone_obj("Asia/Tokyo")
dt_japan_local = dt_utc.astimezone(japan_tz)
print(f"Python datetimeオブジェクト (日本時間): {dt_japan_local}")

# タイムゾーンオフセット (%z) を含む形式で表示
formatted_japan_time = dt_japan_local.strftime('%Y-%m-%d %H:%M:%S%z')
print(f"日本時間(%zを含む形式): {formatted_japan_time}")

# 例: アメリカ西海岸時間 (Pacific Time, UTC-7/UTC-8) に変換
us_west_coast_tz = get_timezone_obj("America/Los_Angeles")
dt_us_west_coast_local = dt_utc.astimezone(us_west_coast_tz)
print(f"アメリカ西海岸時間(%zを含む形式): {dt_us_west_coast_local.strftime('%Y-%m-%d %H:%M:%S%z')}")

conn.close()

利点

  • 分離
    データベースはデータ保存に集中し、時刻の表現はアプリケーションの責務となります。
  • 汎用性
    データベースの時刻がUTCに統一されているため、異なる地域や異なるタイムゾーンを持つアプリケーションが同じデータソースを共有できます。
  • 正確性
    各プログラミング言語の堅牢なタイムゾーンライブラリを利用するため、夏時間(DST)の切り替わりなど、複雑なタイムゾーンルールにも正確に対応できます。

タイムゾーンオフセットを別のカラムに保存する

日付/時刻データ(UTC)とは別に、そのデータがどのタイムゾーンを表すのか、あるいはその時点でのオフセットがどうだったのかを別のカラムに保存する方法です。

適用ケース

  • 過去の特定の時点におけるタイムゾーンオフセットを厳密に保存したい場合(例:ログ、監査データ)。
  • ユーザーが入力した「現地時間」を、そのタイムゾーンのオフセットと共に記録しておきたい場合。

テーブル構造の例

CREATE TABLE IF NOT EXISTS user_activity (
    id INTEGER PRIMARY KEY AUTOINCREMENT,
    action_description TEXT NOT NULL,
    action_time_utc TEXT NOT NULL,    -- UTC時刻
    user_timezone_offset TEXT,        -- 例: '+09:00', '-07:00'
    user_timezone_name TEXT           -- 例: 'Asia/Tokyo', 'America/Los_Angeles'
);

プログラミング言語例 (Python)

import sqlite3
from datetime import datetime, timezone, timedelta
try:
    from zoneinfo import ZoneInfo
except ImportError:
    import pytz

def get_timezone_offset_and_name(dt_obj, tz_name):
    """datetimeオブジェクトとタイムゾーン名からオフセットと名前を返します。"""
    try:
        tz = ZoneInfo(tz_name)
    except NameError:
        tz = pytz.timezone(tz_name)

    # タイムゾーン変換
    dt_local = dt_obj.astimezone(tz)
    
    # オフセットを文字列形式で取得 (例: +09:00)
    # Python 3.9+のdatetime.isoformat()はオフセットを含む
    offset_str = dt_local.strftime('%z') # 例: +0900
    # ISO 8601形式 (+HH:MM) に変換
    if len(offset_str) == 5: # 例: +0900 -> +09:00
        offset_str = f"{offset_str[0]}{offset_str[1:3]}:{offset_str[3:]}"
    
    return offset_str, tz_name

# --- データベースのセットアップ (user_activityテーブル) ---
conn = sqlite3.connect(':memory:')
cursor = conn.cursor()

cursor.execute("""
    CREATE TABLE IF NOT EXISTS user_activity (
        id INTEGER PRIMARY KEY AUTOINCREMENT,
        action_description TEXT NOT NULL,
        action_time_utc TEXT NOT NULL,
        user_timezone_offset TEXT,
        user_timezone_name TEXT
    )
""")
conn.commit()

# --- データ挿入例 ---
# ユーザーが「現在、日本時間で」何かを記録する場合
now_utc = datetime.now(timezone.utc)
japan_tz = get_timezone_obj("Asia/Tokyo")
japan_offset_str, japan_tz_name = get_timezone_offset_and_name(now_utc, "Asia/Tokyo")

cursor.execute("INSERT INTO user_activity (action_description, action_time_utc, user_timezone_offset, user_timezone_name) VALUES (?, ?, ?, ?)",
               ("ユーザーが設定を更新", now_utc.strftime('%Y-%m-%d %H:%M:%S'), japan_offset_str, japan_tz_name))
conn.commit()

# --- データ取得と表示例 ---
cursor.execute("SELECT action_description, action_time_utc, user_timezone_offset, user_timezone_name FROM user_activity WHERE id = 1")
desc, time_utc, tz_offset, tz_name = cursor.fetchone()

print(f"アクティビティ: {desc}")
print(f"保存されたUTC時刻: {time_utc}")
print(f"保存されたオフセット: {tz_offset}")
print(f"保存されたタイムゾーン名: {tz_name}")

# アプリケーションで元のローカル時刻を再構築
# この場合は保存されているオフセットをそのまま使う
combined_time_str = f"{time_utc}{tz_offset}"
try:
    # datetime.fromisoformat はタイムゾーンオフセット付き文字列を直接パースできる
    # ただし、秒の小数部がない場合は ValueError が発生する可能性があるので注意
    # この例ではstrftimeで秒の小数部を出力していないので問題ない
    dt_local_reconstructed = datetime.fromisoformat(combined_time_str)
    print(f"再構築された現地時刻(オフセット付き): {dt_local_reconstructed}")
except ValueError:
    # fromisoformat が使えない場合は strptime と timedelta を使う
    print("fromisoformat でエラー。別の方法で再構築します。")
    dt_utc_naive = datetime.strptime(time_utc, '%Y-%m-%d %H:%M:%S')
    # オフセット文字列を timedelta に変換
    # 例: "+09:00" -> timedelta(hours=9)
    sign = 1 if tz_offset[0] == '+' else -1
    hours = int(tz_offset[1:3])
    minutes = int(tz_offset[4:6])
    offset_td = timedelta(hours=sign * hours, minutes=sign * minutes)
    dt_local_reconstructed = dt_utc_naive + offset_td
    # タイムゾーン情報を付加
    # ここでは、元のタイムゾーンオブジェクトがないため、オフセットだけを付加
    # dt_local_reconstructed = dt_local_reconstructed.replace(tzinfo=timezone(offset_td)) # これは複雑になるので省略
    print(f"再構築された現地時刻(オフセット付き、手動計算): {dt_local_reconstructed} {tz_offset}")


conn.close()

利点

  • 特定の時点でのオフセット(夏時間など)も正確に記録できます。
  • 元のタイムゾーンオフセット情報がデータベースに永続的に保存されるため、後からその情報が必要な場合に役立ちます。

欠点

  • タイムゾーンの規則そのものは保存されず、オフセットのみが保存されるため、未来の時刻の計算や、過去の夏時間ルール変更への対応はアプリケーション側で別途行う必要があります。

SQLiteはC/C++で記述されており、SQLの組み込み関数では不足する機能のために、ユーザーが独自の関数(UDF)をC/C++などの言語で作成し、SQLiteにロードして使用することができます。理論的には、このUDF内でシステムタイムゾーンオフセットを取得し、%zのようなフォーマット文字列を生成する関数を実装することも可能です。

考慮事項

  • 推奨されない理由
    タイムゾーン処理は複雑で、夏時間などのルール変更に頻繁に対応する必要があります。アプリケーション側の成熟したライブラリ(Pythonのzoneinfo/pytz、Javaのjava.timeなど)を利用する方が、はるかにメンテナンスが容易で正確です。SQLiteのコア機能としてタイムゾーン処理がないのは、この複雑性を避けるためと考えられます。
  • 依存関係
    OSのタイムゾーン情報取得APIに依存するため、OSによって実装が異なります。
  • ポータビリティ
    UDFはデータベースファイルと共に移植されるわけではなく、実行環境ごとにビルドとロードが必要です。これはクロスプラットフォームなアプリケーションには不向きです。
  • 複雑性
    C/C++でのプログラミングとSQLiteへのUDFのロードに関する知識が必要になります。

例 (概念的なもの、実際のコードは非常に複雑)

// timezone_udf.c (概念的なC言語のUDFコード)
#include <sqlite3.h>
#include <stdio.h>
#include <time.h> // システムの時刻関数を使用

// タイムゾーンオフセットを返すUDF
void get_local_tz_offset(sqlite3_context *context, int argc, sqlite3_value **argv) {
    time_t rawtime;
    struct tm *info;
    char buffer[6]; // 例: +0900\0

    time(&rawtime);
    info = localtime(&rawtime); // ローカルタイム構造体を取得

    // オフセットを計算または取得(OS依存のAPIを使う必要がある)
    // ここでは tm_gmtoff を利用(GNU拡張など、ポータブルではない可能性あり)
    // 標準的なC言語では tm_gmtoff はないため、自力で計算するかOS依存APIを使う
    // 例: (info->tm_gmtoff / 3600) * 100 + (info->tm_gmtoff % 3600) / 60
    
    // ISO 8601形式 (+HHMM) に整形
    // 例として固定値を返す (実際は動的に計算)
    snprintf(buffer, sizeof(buffer), "+0900"); 

    sqlite3_result_text(context, buffer, -1, SQLITE_TRANSIENT);
}

// UDFをSQLiteに登録する関数
int sqlite3_timezone_init(sqlite3 *db, char **pzErrMsg, const sqlite3_api_routines *pApi) {
    SQLITE_EXTENSION_INIT2(pApi);
    sqlite3_create_function(db, "GET_LOCAL_TZ_OFFSET", 0, SQLITE_UTF8, NULL, get_local_tz_offset, NULL, NULL);
    return SQLITE_OK;
}

SQLでの使用 (UDFがロードされている場合)

SELECT datetime('now') || GET_LOCAL_TZ_OFFSET();
-- 期待される結果 (例): 2023-10-27 15:30:00+0900

この方法は、ほとんどのユースケースでは推奨されません。 アプリケーションの複雑性が増し、移植性が低下するため、特別な要件がない限り避けるべきです。