wal-index

2025-05-31

SQLiteのWALモード(Write-Ahead Logging)は、データベースの堅牢性と並行性を向上させるための重要な機能です。このWALモードにおいて、WAL-indexは非常に重要な役割を果たす内部データ構造です。

WALモードの基本的な仕組み

通常のジャーナルモード(rollback journal)では、変更を加える前に元のデータを一時ファイルに書き出し、コミット時に元のデータを上書きします。これに対しWALモードでは、すべての変更はまず「WALファイル」(.-wal拡張子を持つファイル)という新しいログファイルに追記されます。元のデータベースファイル(.-db拡張子を持つファイル)は、変更されません。

読み取りは元のデータベースファイルから行われ、書き込みはWALファイルに追記されるため、読み取りと書き込みが同時にブロックされることなく並行して行えるようになります。

WAL-indexの役割

WAL-indexは、WALファイル内のデータを効率的に検索するためのインメモリ(RAM内)のハッシュマップです。WALファイルには、データベースの変更履歴が追記されていきますが、特定のページ(データベースの最小単位)の最新の状態を知るためには、WALファイル全体をスキャンするのは非効率です。

WAL-indexは、各データベースページのページ番号をキーとして、そのページに対する最新の変更がWALファイルのどこに記録されているかを示すオフセットを値として保持します。

具体的には、以下のような役割を果たします。

  1. 高速な読み取り
    アプリケーションがデータベースからデータを読み取る際、要求されたページがWALファイル内で更新されているかどうかを素早く判断するためにWAL-indexが使用されます。もし更新されていれば、WALファイルから最新のデータを取得します。これにより、読み取り処理がWALファイル全体をスキャンすることなく、非常に高速に行われます。
  2. コミットの高速化
    新しい変更がWALファイルに書き込まれる際、WAL-indexも更新されます。これにより、どのページが変更されたかを効率的に追跡し、次の読み取り操作で正しいデータが参照されるようにします。
  3. チェックポイント処理の補助
    WALファイルがある程度のサイズになると、その内容がメインのデータベースファイルにマージ(同期)されます。このプロセスを「チェックポイント」と呼びます。WAL-indexは、チェックポイント処理中にどのページが変更されたかを特定し、メインデータベースファイルへの書き込みを効率的に行うために利用されます。

WAL-indexの管理

WAL-indexは通常、データベースファイルとは別に、メモリ上に存在します。SQLiteは、パフォーマンスを最大化するためにWAL-indexをメモリに保持しようとします。しかし、システムがクラッシュした場合や、WAL-indexが大きくなりすぎてメモリに収まりきらない場合のために、WAL-indexの一部は「.-shm」(共有メモリ)ファイルというディスク上のファイルに保存されることもあります。この.-shmファイルは、クラッシュ後のリカバリや、複数のプロセスが同じデータベースにアクセスする際にWAL-indexの状態を共有するために使用されます。



SQLiteのWAL(Write-Ahead Logging)モードは、同時読み取りと書き込みのパフォーマンスを向上させる強力な機能ですが、その内部構造であるWAL-indexに関連して、いくつかの問題が発生する可能性があります。

WALファイル (.wal) および共有メモリファイル (.shm) の肥大化

問題の状況
データベースファイル(.db)の他に、.walファイルや.shmファイルが異常に大きくなることがあります。通常、これらのファイルはデータベースが正しくクローズされるか、チェックポイント処理が完了すると削除またはリセットされますが、何らかの原因で残り続けることがあります。

原因

  • アプリケーションのクラッシュや不適切な終了
    データベースへの接続が適切に閉じられないままアプリケーションが終了した場合、WALファイルやSHMファイルがディスク上に残ることがあります。
  • 非常に大きな書き込みトランザクション
    単一の書き込みトランザクションが非常に多くのデータを変更する場合、そのトランザクションが完了するまでWALファイルは大きくなり続けます。
  • チェックポイントの停滞 (Checkpoint starvation)
    読み取りトランザクションが長時間開いている場合、チェックポイントはWALファイルを完全にリセットできません。読み取り中のデータがWALファイルから削除されるのを防ぐためです。多数の同時読み取りトランザクションが常に存在すると、WALファイルは肥大化し続けます。
  • 自動チェックポイントの無効化または遅延
    SQLiteはデフォルトで、WALファイルが一定のサイズ(1000ページ)を超えると自動的にチェックポイントを実行します。しかし、アプリケーションがこの自動チェックポイントを無効にしたり、極端に遅延させたりすると、WALファイルが際限なく肥大化する可能性があります。

トラブルシューティング

  • クリーンなデータベース接続の終了
    アプリケーションがデータベースを終了する際に、すべてのデータベース接続が適切に閉じられていることを確認します。これにより、不要なWALファイルやSHMファイルがディスク上に残ることを防ぎます。
  • 定期的な手動チェックポイント
    アプリケーションの性質によっては、定期的にPRAGMA wal_checkpoint(TRUNCATE);を実行してWALファイルを強制的にマージし、サイズをリセットすることが有効です。ただし、この操作は読み取りを一時的にブロックする可能性があるため、注意が必要です。
  • 読み取りトランザクションの管理
    長時間実行される読み取りトランザクションを特定し、その期間を短縮することを検討します。読み取り処理が完了したら、速やかにデータベース接続を閉じるか、トランザクションを終了させます。
  • 自動チェックポイントの確認
    PRAGMA wal_autocheckpoint; を使って設定を確認します。ゼロ(0)になっている場合は自動チェックポイントが無効化されている可能性があります。適切な値を設定するか、明示的にPRAGMA wal_checkpoint(RESTART);またはPRAGMA wal_checkpoint(TRUNCATE);を実行してチェックポイントを促します。

データベースへのアクセス拒否やロックの問題

問題の状況
WALモードでは、通常、読み取りと書き込みが同時に行えますが、特定の場合にデータベースへのアクセスがブロックされたり、ロックに関連するエラーが発生したりすることがあります。

原因

  • ネットワークファイルシステムでの使用
    WALモードは、すべてのプロセスが共有メモリを必要とするため、ネットワークファイルシステム(NFSなど)では正常に動作しません。すべてのデータベース接続は同じホストマシン上にある必要があります。
  • SHMファイルへの書き込み権限の欠如
    WALモードのデータベースは、共有メモリファイル(.shm)を必要とします。このファイルが存在しない場合、SQLiteはそれを作成しようとしますが、ディレクトリへの書き込み権限がないと失敗します。また、既存のSHMファイルがある場合、それに対する書き込み権限がないと、読み取り専用で開くこともできません(SQLite 3.22.0以降では、-shmと-walファイルが既に存在するか、作成可能であれば、読み取り専用WALモードデータベースファイルを開くことが可能です)。

トラブルシューティング

  • ネットワークファイルシステムの使用中止
    WALモードはネットワークファイルシステムでの使用には適していません。このような環境でSQLiteを使用する場合は、ロールバックジャーナルモード(PRAGMA journal_mode=DELETE;など)の使用を検討するか、データベースをローカルに移動することを考慮します。
  • ファイルシステムの権限確認
    データベースファイル、WALファイル、SHMファイルが格納されているディレクトリに対する適切な読み書き権限があることを確認します。

データ破損の可能性

問題の状況
非常に稀なケースですが、システムのクラッシュやストレージの問題、SQLiteライブラリのバグなどが組み合わさることで、WAL-indexやWALファイルに起因するデータ破損が発生する可能性があります。

原因

  • SQLiteライブラリの古いバージョン
    古いバージョンのSQLiteには、WALモードに関する既知のバグが存在する可能性があります。
  • ディスクの不具合や電源喪失
    WALモードはクラッシュリカバリに優れていますが、fsync(ディスクへの物理的な書き込みを保証する操作)が正しく行われないような極端な状況では、データの一貫性が損なわれる可能性があります。

トラブルシューティング

  • ストレージシステムの健全性確認
    データベースが動作しているディスクやストレージシステムが正常に機能していることを確認します。
  • 定期的なバックアップ
    どのようなデータベースシステムでも言えることですが、定期的なバックアップはデータ損失を防ぐための最も重要な手段です。SQLiteのbackup APIを利用して、稼働中に安全なバックアップを取得できます。
  • 最新のSQLiteバージョンへの更新
    常に最新の安定版SQLiteライブラリを使用することをお勧めします。バグ修正やパフォーマンス改善が継続的に行われています。

パフォーマンスの低下

問題の状況
WALモードを有効にしたにもかかわらず、期待されるパフォーマンスが得られない、または特定の操作が遅い。

原因

  • チェックポイント処理の頻度
    チェックポイントが頻繁に実行されすぎると、そのオーバーヘッドがパフォーマンスに影響を与える可能性があります。
  • 多数の小さいトランザクション
    WALモードは多数の小さなトランザクションよりも、ある程度のまとまったトランザクションに最適化されています。非常に多数の個別のINSERT/UPDATE操作を行う場合、オーバーヘッドが大きくなる可能性があります。
  • WAL-indexのキャッシュミス
    WAL-indexはメモリ上に保持されますが、非常に大きなデータベースで多くのページが頻繁に更新される場合、WAL-indexがメモリに収まりきらず、ディスク上のSHMファイルへのアクセスが増えることでパフォーマンスが低下する可能性があります。
  • チェックポイント設定の最適化
    アプリケーションのアクセスパターンに応じて、wal_autocheckpointの値や手動チェックポイントの頻度を調整します。
  • PRAGMA cache_sizeの調整
    SQLiteのページキャッシュサイズを調整して、WAL-indexがメモリに保持されやすくなるようにします。


しかし、WALモードに関連する設定や操作は、WAL-indexの効率やデータベースの挙動に影響を与えます。ここでは、WALモードを有効にする方法、その挙動を制御するPRAGMAステートメント、そして関連する監視について、Pythonのsqlite3モジュールを例に説明します。

WAL-index自体を直接コードで扱うことはありませんが、WALモードを有効にし、その挙動を最適化するための設定を行うことはできます。

WALモードの有効化

データベース接続を開いた後、PRAGMA journal_mode = WAL; ステートメントを実行することで、WALモードを有効にできます。

import sqlite3
import os

db_name = 'my_wal_database.db'

# 既存のデータベースファイルをクリーンアップ(テスト用)
if os.path.exists(db_name):
    os.remove(db_name)
if os.path.exists(db_name + '-wal'):
    os.remove(db_name + '-wal')
if os.path.exists(db_name + '-shm'):
    os.remove(db_name + '-shm')

try:
    conn = sqlite3.connect(db_name)
    cursor = conn.cursor()

    # WALモードを有効にする
    cursor.execute("PRAGMA journal_mode = WAL;")
    result = cursor.execute("PRAGMA journal_mode;").fetchone()
    print(f"ジャーナルモード: {result[0]}") # 出力例: ('wal',)

    # テーブルの作成とデータの挿入
    cursor.execute("CREATE TABLE IF NOT EXISTS users (id INTEGER PRIMARY KEY, name TEXT);")
    for i in range(10):
        cursor.execute("INSERT INTO users (name) VALUES (?);", (f"User{i}",))
    conn.commit()

    print(f"データベース '{db_name}' がWALモードで作成されました。")
    print(f"関連ファイル: {db_name}, {db_name}-wal, {db_name}-shm")

except sqlite3.Error as e:
    print(f"エラーが発生しました: {e}")
finally:
    if conn:
        conn.close()

# WALモードを有効にすると、`my_wal_database.db-wal` と `my_wal_database.db-shm` ファイルが作成されます。

解説

  • この操作により、データベースファイルと同じディレクトリに.wal(Write-Ahead Log)ファイルと.shm(Shared Memory)ファイルが作成されます。WAL-indexは、主にこの.shmファイルとメモリに存在します。
  • PRAGMA journal_mode = WAL; を実行すると、SQLiteは内部的にWALモードに切り替わり、WAL-indexの管理を開始します。

自動チェックポイントの制御

WALモードでは、WALファイルが肥大化しないように、定期的にチェックポイント(WALファイルの内容をメインデータベースファイルにマージする処理)が行われます。この自動チェックポイントの頻度をPRAGMA wal_autocheckpointで制御できます。

import sqlite3

db_name = 'my_wal_database.db'

try:
    conn = sqlite3.connect(db_name)
    cursor = conn.cursor()

    # 現在の自動チェックポイント設定を確認
    cursor.execute("PRAGMA wal_autocheckpoint;")
    current_autocheckpoint = cursor.fetchone()[0]
    print(f"現在の自動チェックポイント設定 (ページ数): {current_autocheckpoint}")

    # 自動チェックポイントの閾値を変更(例: 2000ページ)
    # デフォルトは1000ページです。0に設定すると自動チェックポイントが無効になります。
    cursor.execute("PRAGMA wal_autocheckpoint = 2000;")
    print(f"自動チェックポイント設定を2000ページに変更しました。")

    # 大量の書き込みを行い、WALファイルとSHMファイルの変化を観察
    # このコードは、自動チェックポイントの動作を「促す」もので、
    # 必ずしもすぐにチェックポイントが実行されるわけではありません。
    # 実際には、コネクションが閉じられるか、他の要因によってトリガーされます。
    for i in range(10000): # 10000回の書き込みをシミュレート
        cursor.execute("INSERT INTO users (name) VALUES (?);", (f"NewUser{i}",))
    conn.commit()
    print("大量の書き込みを実行しました。")

except sqlite3.Error as e:
    print(f"エラーが発生しました: {e}")
finally:
    if conn:
        conn.close()

解説

  • PRAGMA wal_autocheckpoint = N; でこの値を変更できます。Nを大きくするとチェックポイントの頻度が減り、WALファイルは大きくなる傾向があります。Nを小さくするとチェックポイントの頻度が増えますが、その分オーバーヘッドも増える可能性があります。N=0に設定すると自動チェックポイントは完全に無効になります(非推奨)。
  • PRAGMA wal_autocheckpoint; で現在の設定値(WALファイルが何ページに達したら自動的にチェックポイントを実行するか)を取得できます。

手動チェックポイントの実行

自動チェックポイントに加えて、アプリケーションから明示的にチェックポイントをトリガーすることもできます。これは、特定のタイミングでWALファイルをクリーンアップしたい場合に便利です。

import sqlite3

db_name = 'my_wal_database.db'

try:
    conn = sqlite3.connect(db_name)
    cursor = conn.cursor()

    # まずは少しデータを挿入してWALファイルを作成
    cursor.execute("INSERT INTO users (name) VALUES ('TestUser1');")
    cursor.execute("INSERT INTO users (name) VALUES ('TestUser2');")
    conn.commit()
    print("データを挿入しました。WALファイルが存在するはずです。")

    # 手動チェックポイントを実行し、WALファイルを切り詰める
    # TRUNCATEは、使用されていないWALファイルの内容をメインデータベースファイルにマージし、
    # WALファイルをゼロから再開します。
    # RESTARTは、WALファイルの内容をマージしますが、ファイルサイズは維持する可能性があります。
    cursor.execute("PRAGMA wal_checkpoint(TRUNCATE);")
    print("手動チェックポイント(TRUNCATE)を実行しました。WALファイルがクリーンアップされたはずです。")

    # もう一度データを挿入
    cursor.execute("INSERT INTO users (name) VALUES ('TestUser3');")
    conn.commit()
    print("さらにデータを挿入しました。新しいWALエントリが作成されました。")

except sqlite3.Error as e:
    print(f"エラーが発生しました: {e}")
finally:
    if conn:
        conn.close()

解説

  • PRAGMA wal_checkpoint(PASSIVE); は、競合しない範囲でチェックポイントを実行します。
  • PRAGMA wal_checkpoint(RESTART); も同様にマージを行いますが、WALファイルが必ずしも切り詰められるとは限りません。
  • PRAGMA wal_checkpoint(TRUNCATE); は、WALファイルの内容をメインデータベースファイルにマージし、WALファイルを可能な限り切り詰めます。これにより、.walファイルは小さく保たれます。

ページキャッシュサイズの調整

WAL-indexは主にメモリに保持されますが、データベースのページキャッシュサイズもパフォーマンスに影響を与えます。PRAGMA cache_sizeで設定できます。

import sqlite3

db_name = 'my_wal_database.db'

try:
    conn = sqlite3.connect(db_name)
    cursor = conn.cursor()

    # 現在のキャッシュサイズを確認(ページ数)
    cursor.execute("PRAGMA cache_size;")
    current_cache_size = cursor.fetchone()[0]
    print(f"現在のキャッシュサイズ (ページ数): {current_cache_size}")

    # キャッシュサイズを増やす(例: 5000ページ)
    # より多くのデータをメモリに保持できるため、ディスクI/Oが減少する可能性があります。
    # 負の値を指定すると、キロバイト単位で設定できます(例: -2000000 は 2GB)。
    cursor.execute("PRAGMA cache_size = 5000;")
    print(f"キャッシュサイズを5000ページに変更しました。")

except sqlite3.Error as e:
    print(f"エラーが発生しました: {e}")
finally:
    if conn:
        conn.close()
  • PRAGMA cache_size = N; で、SQLiteがメモリに保持するデータベースページの数を設定します。値が大きいほど多くのメモリを使用しますが、ディスクアクセスが減少し、パフォーマンスが向上する可能性があります。WAL-indexもキャッシュされたページに依存するため、この設定は間接的にWAL-indexの効率にも影響を与えます。


SQLite の WAL-index は SQLite 内部の最適化メカニズムであり、開発者が直接操作するための API は提供されていません。したがって、「WAL-index のプログラミングの代替方法」というよりは、「WAL モードにおけるデータベースの挙動を最適化し、WAL-index の恩恵を最大限に受けるための代替アプローチや考慮事項」と理解するのが適切です。

WAL-index 自体は SQLite が自動で管理するため、直接的な「プログラミング」の対象ではありません。しかし、アプリケーションの設計やデータベースの操作方法を工夫することで、WAL モードと WAL-index の性能を間接的に向上させることができます。

トランザクションのバッチ処理 (Batching Transactions)

詳細

  • これにより、ディスクI/Oが削減され、全体的な書き込みパフォーマンスが向上します。
  • COMMIT 操作は、WAL ファイルに新しいエントリを書き込み、WAL-index を更新します。多数の小さなトランザクションを頻繁にコミットすると、これらのオーバーヘッドが積み重なります。

例 (Python)

import sqlite3
import time

db_name = 'batch_wal_database.db'

# データベースの初期設定(WALモード有効化)
conn = sqlite3.connect(db_name)
cursor = conn.cursor()
cursor.execute("PRAGMA journal_mode = WAL;")
conn.commit() # WALモード変更をコミット
cursor.execute("CREATE TABLE IF NOT EXISTS items (id INTEGER PRIMARY KEY, value TEXT);")
conn.commit()
conn.close()

# 多数の個別コミット
start_time = time.time()
conn_individual = sqlite3.connect(db_name)
cursor_individual = conn_individual.cursor()
for i in range(1000):
    cursor_individual.execute("INSERT INTO items (value) VALUES (?);", (f"Individual_{i}",))
    conn_individual.commit() # 各挿入後にコミット
conn_individual.close()
print(f"個別コミットでの挿入時間: {time.time() - start_time:.4f}秒")


# トランザクションでバッチ処理
start_time = time.time()
conn_batch = sqlite3.connect(db_name)
cursor_batch = conn_batch.cursor()
conn_batch.execute("BEGIN;") # トランザクション開始
for i in range(1000):
    cursor_batch.execute("INSERT INTO items (value) VALUES (?);", (f"Batch_{i}",))
conn_batch.commit() # 全ての挿入後に一度だけコミット
conn_batch.close()
print(f"バッチ処理での挿入時間: {time.time() - start_time:.4f}秒")

結果の傾向
バッチ処理の方がはるかに高速になります。

データベース接続の適切な管理とプーリング (Connection Management and Pooling)

アプローチ
データベース接続のオープン/クローズを頻繁に行わず、可能な限り接続を再利用することで、WAL-index の初期化や共有メモリ (SHM) ファイルへのアクセスオーバーヘッドを減らします。

詳細

  • 永続的な接続を使用するか、接続プールを導入することで、これらの初期化コストを削減し、WAL-index がメモリ上で効率的に維持される機会を増やします。
  • 新しい接続が確立されるたびに、SQLite は WAL-index の状態を読み込み、必要に応じて初期化します。頻繁な接続の確立と終了は、このオーバーヘッドを増大させます。

例 (概念的なもの、実際のプール実装はライブラリに依存)

# 概念的な例 - 実際のアプリケーションでは接続プールライブラリを使用する

import sqlite3

class DatabaseConnectionPool:
    def __init__(self, db_name, max_connections=5):
        self.db_name = db_name
        self.max_connections = max_connections
        self.connections = []
        self._initialize_connections()

    def _initialize_connections(self):
        for _ in range(self.max_connections):
            conn = sqlite3.connect(self.db_name)
            conn.execute("PRAGMA journal_mode = WAL;")
            self.connections.append(conn)

    def get_connection(self):
        # 実際には、アイドル状態の接続を返すロジックが必要
        if self.connections:
            return self.connections.pop(0) # 簡単な例
        else:
            # プールが枯渇したら新しい接続を作成するか、待機する
            conn = sqlite3.connect(self.db_name)
            conn.execute("PRAGMA journal_mode = WAL;")
            return conn

    def release_connection(self, conn):
        # 実際には、接続をプールに戻すロジックが必要
        self.connections.append(conn) # 簡単な例

    def close_all(self):
        for conn in self.connections:
            conn.close()
        self.connections = []

# 使用例
# pool = DatabaseConnectionPool('my_app.db')
# conn = pool.get_connection()
# # ... データベース操作 ...
# pool.release_connection(conn)
# pool.close_all()

読み取り専用接続の利用 (Read-Only Connections)

アプローチ
読み取り専用の操作を行う場合は、明示的にデータベースを読み取り専用モードで開くことで、WAL-index のロックや共有メモリの競合を最小限に抑えます。

詳細

  • 特に多数の読み取りが発生するアプリケーションでは、読み取り専用接続を適切に利用することで、全体的なスループットを向上させることができます。
  • 読み取り専用の接続は、WAL-index への書き込みロックを必要とせず、WAL ファイルの状態を読み取るのみです。これにより、読み取り処理が書き込み処理と競合する可能性が低減されます。
  • SQLiteは、複数の読み取り接続と単一の書き込み接続が同時に存在するWALモードで並行性を実現します。

例 (Python)

import sqlite3

db_name = 'my_wal_database.db'

# 読み取り専用接続を開く
try:
    # uri=True を指定し、mode=ro を追加することで読み取り専用に
    conn_ro = sqlite3.connect(f"file:{db_name}?mode=ro", uri=True)
    cursor_ro = conn_ro.cursor()

    cursor_ro.execute("PRAGMA journal_mode;") # WALモードが適用されているはず
    print(f"読み取り専用接続のジャーナルモード: {cursor_ro.fetchone()[0]}")

    cursor_ro.execute("SELECT COUNT(*) FROM users;")
    count = cursor_ro.fetchone()[0]
    print(f"読み取り専用接続から読み取ったユーザー数: {count}")

    # 読み取り専用なので書き込みは失敗する
    try:
        cursor_ro.execute("INSERT INTO users (name) VALUES ('ReadOnlyTest');")
        conn_ro.commit()
    except sqlite3.OperationalError as e:
        print(f"読み取り専用接続での書き込み試行: {e}") # Expected error: attempt to write a readonly database

except sqlite3.Error as e:
    print(f"エラーが発生しました: {e}")
finally:
    if conn_ro:
        conn_ro.close()

PRAGMA の利用による最適化 (Using PRAGMAs for Optimization)

前回の説明でも触れましたが、WAL-index の動作を間接的に制御し、パフォーマンスを最適化するために PRAGMA ステートメントを適切に利用することが重要です。これは「代替方法」というよりは「適切な設定」ですが、非常に重要なアプローチです。

詳細

  • PRAGMA synchronous: FULL (デフォルト) は非常に安全ですが、ディスクへの書き込みが保証されるためパフォーマンスに影響します。NORMAL は高速ですが、電源喪失時に一部のデータが失われる可能性があります(WALモードのリカバリ機能は依然として動作しますが、最後の数トランザクションが失われる可能性)。アプリケーションの要件に応じて調整します。
  • PRAGMA cache_size: ページキャッシュのサイズを増やすことで、より多くのWAL-indexデータ(および通常のデータベースページ)がメモリに保持され、ディスクI/Oが削減されます。
  • PRAGMA wal_autocheckpoint: 自動チェックポイントの頻度を調整し、WAL ファイルのサイズとチェックポイントのオーバーヘッドのバランスを取ります。


前回の説明のコード例を参照してください。

データベース設計の最適化 (Database Design Optimization)

アプローチ
テーブル構造やインデックスを最適化することで、WAL-index が管理する必要のあるデータの変更量を減らし、全体的なパフォーマンスを向上させます。

  • 大きなLOB (Large Object) の扱い
    大量のバイナリデータ(画像、動画など)をBLOBとしてデータベースに直接保存すると、WAL ファイルが非常に大きくなる可能性があります。これらのデータはファイルシステムに保存し、データベースにはパスのみを保存する「外部ストレージ」アプローチも検討できます。
  • 正規化/非正規化のバランス
    データの重複を減らす正規化はデータ整合性に優れますが、複雑なクエリや多数の結合が必要になる場合があります。非正規化は読み取り性能を向上させることがありますが、更新時のデータ整合性維持が難しくなることがあります。アプリケーションのアクセスパターンに合わせて適切なバランスを見つけることが重要です。
  • インデックスの最適化
    不要なインデックスを削除したり、クエリに最適なインデックスを作成したりすることで、更新時にインデックスを更新するコストを削減します。インデックスの更新も WAL ファイルに記録され、WAL-index に影響を与えます。