Qt QTextStream::status()徹底解説：ファイルI/Oのエラーを完全理解

2025-05-26

QTextStream::status() は、Qt プログラミングにおける QTextStream クラスのメンバ関数で、テキストストリームの現在の状態を返します。

QTextStream は、テキストの読み書きを行うための便利なインターフェースを提供します。ファイル、QString、QByteArray など、様々な種類のデバイスと連携して動作します。

status() 関数が返すのは QTextStream::Status 型の列挙値で、これは以下のいずれかの状態を示します。

QTextStream::WriteFailed:
- 書き込み操作が失敗しました。ディスクがいっぱいになった、ファイルがロックされている、書き込み権限がないなどの理由が考えられます。
QTextStream::ReadPastEnd:
- 読み込み操作がストリームの終端を超えて行われようとしました。通常、atEnd() メソッドを使ってストリームの終端に達していないかを確認してから読み込みを行うことで回避できます。
QTextStream::ReadCorruptData:
- 読み込み操作中に壊れたデータが検出されました。例えば、ストリームのエンコーディング設定と実際のデータのエンコーディングが一致しない場合などに発生する可能性があります。
QTextStream::Ok:
- ストリームが正常な状態であり、エラーは発生していません。読み書き操作は成功しています。

`status()` を使う理由

status() メソッドは、テキストの読み書き処理が正しく行われたかどうかを確認し、エラーが発生した場合には適切な対応を行うために非常に重要です。特に、ファイル操作など、予期せぬ問題が発生する可能性がある処理においては、常にストリームの状態を確認する習慣をつけることが推奨されます。

#include <QCoreApplication>
#include <QFile>
#include <QTextStream>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QFile file("output.txt");
    if (file.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream out(&file);

        out << "Hello, Qt!\n";
        qDebug() << "書き込み後のステータス: " << out.status(); // 通常は Ok

        out << "これは追加のテキストです。\n";
        qDebug() << "追加書き込み後のステータス: " << out.status(); // 通常は Ok

        // ここで意図的にエラーを発生させるのは難しいが、
        // 例えば、ファイルシステムが読み取り専用になった場合など
        // out.setStatus(QTextStream::WriteFailed); // 意図的にエラーを設定する例（通常は直接行わない）

        if (out.status() == QTextStream::WriteFailed) {
            qDebug() << "書き込みエラーが発生しました。";
        }

        file.close();
    } else {
        qDebug() << "ファイルのオープンに失敗しました。";
    }

    QFile inputFile("non_existent_file.txt");
    if (!inputFile.open(QIODevice::ReadOnly | QIODevice::Text)) {
        qDebug() << "読み込み対象のファイルが見つかりません。";
    } else {
        QTextStream in(&inputFile);
        QString line = in.readLine();
        qDebug() << "最初の行を読んだ後のステータス: " << in.status(); // ReadPastEnd になる可能性あり（ファイルが空の場合など）

        // ファイルの終端に到達した後にさらに読み込みを試みる
        in.readAll(); // すでに終端に達している場合
        qDebug() << "readAll後のステータス: " << in.status(); // ReadPastEnd になる可能性が高い
        
        inputFile.close();
    }

    return a.exec();
}

QTextStream::WriteFailed (書き込み失敗)

発生状況
ファイルへの書き込み操作中にエラーが発生した場合に返されます。

よくある原因

QFile::open() の失敗
- QTextStream を初期化する前に、基となる QFile の open() メソッドが失敗している。QFile::open() の戻り値を必ず確認しましょう。
デバイスが利用できない
- USBメモリやネットワークドライブなど、接続が切断されたデバイスに書き込もうとしている。
無効なファイルパス
- 指定したファイルパスが無効である（例：存在しないドライブレター、不正な文字が含まれている）。
ファイルが他のプロセスによってロックされている
- 同じファイルが別のアプリケーションやプロセスによって開かれており、書き込みがブロックされている。
ディスクの空き容量不足
- 書き込もうとしているファイルサイズに対して、ディスクの空き容量が不足している。
書き込み権限がない
- ファイルを保存しようとしているディレクトリに、アプリケーションが書き込み権限を持っていない。
- 特に、システムディレクトリや他のユーザーが所有するディレクトリに書き込もうとする場合に多いです。

トラブルシューティング

QFile::open() のエラーハンドリング

QFile::open() が false を返した場合、QFile::error() や QFile::errorString() を使って詳細なエラー情報を取得し、ユーザーに通知します。

QFile file("path/to/your/file.txt");
if (!file.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text)) {
    qDebug() << "ファイルオープン失敗: " << file.errorString();
    // エラー処理
    return;
}
QTextStream out(&file);
out << "Some text";
if (out.status() == QTextStream::WriteFailed) {
    qDebug() << "QTextStream書き込み失敗！";
}
file.close();

ファイルパスの検証
- QFileInfo などを使って、指定したファイルパスが有効かどうかを確認します。
ファイルのロック解除
- タスクマネージャーなどで、そのファイルを使用している可能性のある他のプロセスを終了させます。
ディスクの空き容量の確認
- システムのディスクの空き容量を確認し、不要なファイルを削除するなどして容量を確保します。
- ファイルを保存しようとしているディレクトリのアクセス権限を確認します。必要に応じて、管理者権限でアプリケーションを実行するか、別のディレクトリに保存するようにユーザーに促します。

QTextStream::ReadPastEnd (読み込みが終端を超えた)

発生状況
読み込み操作がストリームの終端に達した後も、さらに読み込みを試みた場合に返されます。

よくある原因

ループ条件の誤り
- ファイルの内容を全て読み込むループ処理で、終了条件が正しく設定されていない。
atEnd() のチェック漏れ
- QTextStream::atEnd() でストリームの終端に達したかどうかを確認せずに、readLine() や readAll() などの読み込み操作を続けた場合。

トラブルシューティング

do-while ループの使用

特に最初の読み込みでストリームが空の場合にも対応するため、do-while ループを使用することが推奨される場合があります。

QTextStream stream(stdin); // 例として標準入力
QString line;
do {
    line = stream.readLine();
    if (!line.isNull()) { // readLine() は終端で空のQStringを返す
        qDebug() << "読み込んだ行: " << line;
    }
} while (!line.isNull() && !stream.atEnd()); // または単に !line.isNull()

atEnd() による終端チェック

読み込み操作を行う前に、必ず stream.atEnd() を確認するようにします。

QFile file("input.txt");
if (!file.open(QIODevice::ReadOnly | QIODevice::Text)) {
    qDebug() << "ファイルオープン失敗";
    return;
}
QTextStream in(&file);
while (!in.atEnd()) { // 必ず atEnd() をチェック
    QString line = in.readLine();
    qDebug() << line;
}
if (in.status() == QTextStream::ReadPastEnd) {
    qDebug() << "ストリームの終端を超えて読み込みを試みました。（通常、ループの終了条件が正しければ発生しない）";
}
file.close();

QTextStream::ReadCorruptData (壊れたデータ読み込み)

発生状況
ストリームから読み込んだデータが、現在のエンコーディング設定と一致しない場合や、不正な形式のデータが検出された場合に返されます。

よくある原因

ファイルの破損
- ファイル自体が破損している場合。
不正な文字シーケンス
- バイナリファイルや、定義されていない文字コードが含まれるファイルをテキストとして読み込もうとした場合。
エンコーディングの不一致
- ファイルを読み込む際に設定したエンコーディング（例：UTF-8、Shift-JIS）が、実際のファイルのエンコーディングと異なる場合。特に、BOM（Byte Order Mark）がないUTF-8ファイルや、異なるOS間でファイルをやり取りする場合に発生しやすいです。

トラブルシューティング

入力データの検証
- テキストストリームから読み込んだ文字列を、正規表現や他の検証ロジックでチェックし、予期せぬ文字やパターンが含まれていないかを確認します。

正しいエンコーディングの設定

ファイルのエンコーディングを正確に把握し、QTextStream::setCodec() を使って正しいエンコーディングを設定します。
QTextCodec::codecForName("UTF-8") や QTextCodec::codecForLocale() などを活用します。
BOMを検出させるために setAutoDetectUnicode(true)（デフォルトで有効）にしておくと良いでしょう。

QFile file("input.txt");
if (!file.open(QIODevice::ReadOnly | QIODevice::Text)) {
    qDebug() << "ファイルオープン失敗";
    return;
}
QTextStream in(&file);
in.setCodec("UTF-8"); // あるいは "Shift-JIS" など、正しいエンコーディングを設定
// in.setAutoDetectUnicode(true); // デフォルトでtrue

QString content = in.readAll();
if (in.status() == QTextStream::ReadCorruptData) {
    qDebug() << "データ破損またはエンコーディング不一致のエラー！";
    // ユーザーにエンコーディングの選択肢を与えるなどの対応
}
file.close();

発生状況
ストリームが正常な状態であり、読み書き操作が成功している場合に返されます。

トラブルシューティング

連続する操作の途中でstatus()をチェックすることで、どこでエラーが発生したかを特定しやすくなります。
特にトラブルシューティングは不要ですが、操作が成功したことを確認するために利用します。

QDebug を活用したログ出力
- qDebug() を使って、QTextStream::status() の値だけでなく、関連するファイルパス、開いているデバイスの種類、エンコーディング設定などもログに出力することで、デバッグが非常にしやすくなります。
QTextStream::resetStatus() の利用
- 一度エラー状態になった QTextStream は、そのエラー状態を維持します。エラーを処理した後に同じストリームで操作を続けたい場合は、resetStatus() を呼び出して状態をリセットする必要があります。ただし、エラーの原因が解決されていない限り、すぐに同じエラーが再発生する可能性があります。
バッファリングの理解
- QTextStream は内部でバッファを使用しています。ファイルへの書き込みが完了したことを確実にするには、flush() を呼び出すか、close() を行う必要があります。エラーが発生した際にバッファの内容がフラッシュされていない可能性があります。
QFile のオープンモードと QTextStream の操作の整合性
- QFile を QIODevice::ReadOnly で開いているのに QTextStream で書き込みを試みたり、その逆を行ったりすると、エラーが発生します。常にオープンモードと操作の整合性を確認しましょう。

QTextStream::Ok (正常) の確認

最も基本的なケースで、読み書きが問題なく行われたことを示します。

#include <QCoreApplication>
#include <QFile>
#include <QTextStream>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // ----------------------------------------
    // 書き込み操作と Ok ステータスの確認
    // ----------------------------------------
    QFile writeFile("normal_write.txt");
    if (writeFile.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream out(&writeFile);
        out << "Hello, QTextStream!\n";
        out << "This is a normal write operation.\n";

        // 書き込み後のステータスを確認
        if (out.status() == QTextStream::Ok) {
            qDebug() << "書き込み成功: ステータスは Ok です。";
        } else {
            qDebug() << "書き込みエラー: ステータスは Ok ではありませんでした。";
        }
        writeFile.close();
    } else {
        qDebug() << "ファイル 'normal_write.txt' を開けませんでした。";
    }

    // ----------------------------------------
    // 読み込み操作と Ok ステータスの確認
    // ----------------------------------------
    QFile readFile("normal_write.txt"); // 上で作成したファイルを読み込む
    if (readFile.open(QIODevice::ReadOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream in(&readFile);
        
        QString line1 = in.readLine();
        qDebug() << "読み込んだ行1: " << line1;
        // 最初の行を読んだ後のステータスを確認
        if (in.status() == QTextStream::Ok) {
            qDebug() << "読み込み成功 (行1): ステータスは Ok です。";
        } else {
            qDebug() << "読み込みエラー (行1): ステータスは Ok ではありませんでした。";
        }

        QString line2 = in.readLine();
        qDebug() << "読み込んだ行2: " << line2;
        // 2番目の行を読んだ後のステータスを確認
        if (in.status() == QTextStream::Ok) {
            qDebug() << "読み込み成功 (行2): ステータスは Ok です。";
        } else {
            qDebug() << "読み込みエラー (行2): ステータスは Ok ではありませんでした。";
        }

        readFile.close();
    } else {
        qDebug() << "ファイル 'normal_write.txt' を読み込み用に開けませんでした。";
    }

    return a.exec();
}

QTextStream::WriteFailed (書き込み失敗) の確認

ファイルへの書き込み権限がない場合や、ディスク容量が不足している場合などに発生します。

#include <QCoreApplication>
#include <QFile>
#include <QTextStream>
#include <QDebug>
#include <QStandardPaths> // 特権が必要なディレクトリパスを取得するため

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // 通常、書き込み権限がないシステムディレクトリなど
    // 例: Windowsの "C:\" の直下、Linuxの "/" の直下など
    // 環境によっては、このパスが書き込み可能である可能性もあります。
    // 確実なテストのためには、実際に書き込み権限のないディレクトリを指定してください。
    QString protectedPath = QStandardPaths::writableLocation(QStandardPaths::HomeLocation) + "/protected_folder_xyz/unwritable_file.txt";
    // 確実なテストのためには、存在しない保護されたディレクトリ内にファイルを指定する
    // または、意図的にアクセス権を変更したディレクトリを使う
    
    // ディレクトリが存在しない場合、QFile::open() が失敗する可能性があります。
    // mkdirなどをしない限り、QFile::open() が失敗し、QTextStream に到達しないかもしれません。
    // この例では、QFile::open()が成功したと仮定し、QTextStreamでWriteFailedを発生させます。
    // より確実なテストのためには、意図的にアクセス権を変更したディレクトリにファイルを配置するなどしてください。

    qDebug() << "試行するパス: " << protectedPath;

    QFile writeFile(protectedPath);
    // 書き込み専用でファイルを開く
    if (writeFile.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream out(&writeFile);
        out << "This text should cause a write failure.\n";
        out.flush(); // 強制的にバッファをフラッシュしてエラーを発生させる可能性を高める

        // 書き込み後のステータスを確認
        if (out.status() == QTextStream::WriteFailed) {
            qDebug() << "成功: QTextStream::WriteFailed が検出されました。";
            qDebug() << "原因: 書き込み権限がないか、ディスク容量不足などの可能性があります。";
        } else if (out.status() == QTextStream::Ok) {
            qDebug() << "警告: 意図に反して書き込みが成功しました。";
            qDebug() << "おそらく指定されたパスに書き込み権限があります。";
        } else {
            qDebug() << "予期せぬステータス: " << out.status();
        }
        writeFile.close();
    } else {
        qDebug() << "ファイル '" << protectedPath << "' を開けませんでした。";
        qDebug() << "QFile::open() のエラー: " << writeFile.errorString();
        qDebug() << "この場合、QTextStream::status() はチェックされません。";
    }

    return a.exec();
}

実行時の注意点
このコードをテストするには、実際に書き込み権限がない場所（例: Windowsの C:\ 直下、Linuxの / 直下など、通常のユーザーでは書き込めない場所）を指定する必要があります。ただし、これらのパスは通常、QFile::open() の段階で失敗する可能性が高いです。より確実なテストのためには、テスト用に書き込み権限を意図的に削除したディレクトリを作成し、その中にファイルを書き込もうとすると良いでしょう。

QTextStream::ReadPastEnd (読み込みが終端を超えた) の確認

ファイルの終端に到達した後も、さらに読み込み操作を試みた場合に発生します。

#include <QCoreApplication>
#include <QFile>
#include <QTextStream>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // テスト用の短いファイルを作成
    QFile testFile("short_file.txt");
    if (testFile.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream out(&testFile);
        out << "Line 1\n";
        out << "Line 2\n";
        testFile.close();
    } else {
        qDebug() << "テストファイル 'short_file.txt' を作成できませんでした。";
        return 1;
    }

    QFile readFile("short_file.txt");
    if (readFile.open(QIODevice::ReadOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream in(&readFile);

        // 最初の行を読み込む (Ok)
        QString line1 = in.readLine();
        qDebug() << "読み込んだ行1: " << line1;
        qDebug() << "ステータス (行1後): " << in.status(); // Ok

        // 2番目の行を読み込む (Ok)
        QString line2 = in.readLine();
        qDebug() << "読み込んだ行2: " << line2;
        qDebug() << "ステータス (行2後): " << in.status(); // Ok (まだ終端ではない)

        // ファイルの終端に到達しているか確認
        if (in.atEnd()) {
            qDebug() << "ファイルの終端に到達しました。";
        }

        // さらに読み込みを試みる -> ReadPastEnd になるはず
        QString line3 = in.readLine(); // ファイルはもう空なので、これは空のQStringを返す
        qDebug() << "読み込んだ行3 (終端後): " << line3;
        
        // ReadPastEnd ステータスを確認
        if (in.status() == QTextStream::ReadPastEnd) {
            qDebug() << "成功: QTextStream::ReadPastEnd が検出されました。";
            qDebug() << "原因: ファイルの終端を超えて読み込みを試みました。";
        } else {
            qDebug() << "予期せぬステータス (終端後): " << in.status();
        }

        readFile.close();
    } else {
        qDebug() << "ファイル 'short_file.txt' を開けませんでした。";
    }

    // 空のファイルを読み込むケース
    QFile emptyFile("empty_file.txt");
    if (emptyFile.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text)) {
        emptyFile.close(); // 空のファイルを作成
    }

    if (emptyFile.open(QIODevice::ReadOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream in(&emptyFile);
        
        qDebug() << "\n--- 空のファイルの読み込みテスト ---";
        QString content = in.readAll(); // 空のファイルを全て読み込む
        qDebug() << "読み込んだ内容 (空のファイル): '" << content << "'";

        if (in.status() == QTextStream::ReadPastEnd) {
            qDebug() << "成功: 空のファイルの読み込みで ReadPastEnd が検出されました。";
        } else {
            qDebug() << "予期せぬステータス (空のファイル): " << in.status();
        }
        emptyFile.close();
    } else {
        qDebug() << "ファイル 'empty_file.txt' を開けませんでした。";
    }

    return a.exec();
}

主にエンコーディングの不一致や、テキストとして不適切なバイナリデータを読み込もうとした場合に発生します。

#include <QCoreApplication>
#include <QFile>
#include <QTextStream>
#include <QDebug>
#include <QTextCodec>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // ----------------------------------------
    // Shift-JISで書き込み、UTF-8で読み込むことでエラーを発生させる
    // ----------------------------------------
    QString sjisFile = "sjis_file.txt";
    QFile writeFile(sjisFile);
    if (writeFile.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream out(&writeFile);
        // Shift-JISで書き込む設定
        QTextCodec* sjisCodec = QTextCodec::codecForName("Shift-JIS");
        if (sjisCodec) {
            out.setCodec(sjisCodec);
            out << "こんにちは、世界！\n"; // 日本語のテキスト
            qDebug() << "Shift-JISで書き込みました。";
        } else {
            qDebug() << "Shift-JISコーデックが見つかりませんでした。";
            writeFile.close();
            return 1;
        }
        writeFile.close();
    } else {
        qDebug() << "ファイル '" << sjisFile << "' を開けませんでした。";
        return 1;
    }

    QFile readFile(sjisFile);
    if (readFile.open(QIODevice::ReadOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream in(&readFile);
        // UTF-8で読み込む設定 (意図的に間違ったエンコーディング)
        in.setCodec("UTF-8"); 
        
        QString content = in.readAll();
        qDebug() << "UTF-8として読み込んだ内容: " << content;

        // ReadCorruptData ステータスを確認
        if (in.status() == QTextStream::ReadCorruptData) {
            qDebug() << "成功: QTextStream::ReadCorruptData が検出されました。";
            qDebug() << "原因: Shift-JISで書かれたファイルをUTF-8として読み込もうとしました。";
        } else {
            qDebug() << "予期せぬステータス: " << in.status();
        }
        readFile.close();
    } else {
        qDebug() << "ファイル '" << sjisFile << "' を開けませんでした。";
    }

    // ----------------------------------------
    // バイナリファイルをテキストとして読み込むことでエラーを発生させる（場合によっては）
    // ----------------------------------------
    QString binaryFile = "binary_data.bin";
    QFile binWriteFile(binaryFile);
    if (binWriteFile.open(QIODevice::WriteOnly)) { // テキストモードではない
        QByteArray data;
        data.append(char(0xFF)); // 不正なバイトシーケンス
        data.append(char(0xFE));
        data.append(char(0x00));
        data.append(char(0x01));
        binWriteFile.write(data);
        binWriteFile.close();
        qDebug() << "\nバイナリファイルを作成しました。";
    } else {
        qDebug() << "バイナリファイル '" << binaryFile << "' を作成できませんでした。";
        return 1;
    }

    QFile binReadFile(binaryFile);
    if (binReadFile.open(QIODevice::ReadOnly | QIODevice::Text)) { // テキストモードで読み込む
        QTextStream in(&binReadFile);
        in.setCodec("UTF-8"); // UTF-8として読み込もうとする

        QString content = in.readAll();
        qDebug() << "バイナリファイルをテキストとして読み込んだ内容: " << content;

        if (in.status() == QTextStream::ReadCorruptData) {
            qDebug() << "成功: バイナリデータの読み込みで ReadCorruptData が検出されました。";
            qDebug() << "原因: 不正なバイトシーケンスをUTF-8としてデコードしようとしました。";
        } else {
            qDebug() << "予期せぬステータス (バイナリ): " << in.status();
        }
        binReadFile.close();
    } else {
        qDebug() << "ファイル '" << binaryFile << "' を開けませんでした。";
    }

    return a.exec();
}

基底デバイス (QIODevice) のエラーチェック

QTextStream は、QFile や QByteArray などの QIODevice を基盤として動作します。そのため、基底デバイスのエラー状態をチェックすることが、QTextStream で発生する問題の根本原因を特定する上で非常に役立ちます。

`QFile::open()` の戻り値

ファイルを読み書きするために最初に QFile::open() を呼び出しますが、このメソッドは成功した場合に true を、失敗した場合に false を返します。QTextStream を初期化する前に、必ずこの戻り値をチェックすべきです。

#include <QCoreApplication>
#include <QFile>
#include <QTextStream>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QFile file("non_existent_folder/output.txt"); // 存在しないフォルダ内のファイル

    // QTextStream を使う前に QFile のオープンをチェック
    if (!file.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text)) {
        qDebug() << "ファイルオープンに失敗しました！";
        qDebug() << "エラーコード: " << file.error();         // QIODevice::FileError の列挙値
        qDebug() << "エラー文字列: " << file.errorString(); // 人間が読めるエラーメッセージ
        // ここでアプリケーションを終了するか、エラーをユーザーに通知する
        return 1; 
    }

    QTextStream out(&file);
    out << "Some text.";
    qDebug() << "書き込み後の QTextStream::status(): " << out.status(); // Ok になる可能性が高い

    file.close();

    return a.exec();
}

解説
QFile::open() が失敗した場合、QTextStream は基底デバイスにアクセスできないため、それ以降の QTextStream の操作は意味がありません。QFile::error() は具体的なエラーコード（例: QFile::PermissionsError、QFile::DiskError など）を返し、QFile::errorString() はそのエラーの人間が読める説明を提供します。これは QTextStream::status() が提供する情報よりも詳細な場合が多いです。

`QIODevice::bytesAvailable()` と `QIODevice::atEnd()`

読み込み操作を行う際、QTextStream::status() が ReadPastEnd を返す前に、ストリームの終端に到達したことを確認できます。

QIODevice::atEnd(): ストリームの終端に到達したかどうかを bool で返します。
QIODevice::bytesAvailable(): 読み込み可能なバイト数を返します。

#include <QCoreApplication>
#include <QFile>
#include <QTextStream>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QFile file("example.txt");
    if (file.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream out(&file);
        out << "Line 1\nLine 2\n";
        file.close();
    }

    if (file.open(QIODevice::ReadOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream in(&file);

        while (!in.atEnd()) { // QTextStream::atEnd() も利用できる
            QString line = in.readLine();
            qDebug() << "読み込んだ行: " << line;
        }

        // while ループの後で、atEnd() は true になっているはず
        if (in.atEnd()) {
            qDebug() << "ファイルの終端に到達しました。";
        }
        
        // 更に読み込もうとすると QTextStream::ReadPastEnd になる可能性があるが、
        // atEnd() を適切に使えばその状態になるのを防げる
        QString extraLine = in.readLine();
        qDebug() << "余分な読み込み後の QTextStream::status(): " << in.status();

        file.close();
    }

    return a.exec();
}

解説
while (!in.atEnd()) のようなループ構造は、QTextStream::ReadPastEnd ステータスが発生するのを根本的に防ぎます。これは status() を使ったエラーチェックよりも、予防的なアプローチと言えます。

QTextStream の戻り値と例外的な振る舞い

QTextStream のいくつかのメソッドは、それ自身の戻り値で操作の成否や結果を示す場合があります。

`QTextStream::readLine()` / `QTextStream::readAll()`

readAll(): すべてのデータを読み込み、エラーが発生した場合でも読み込んだ内容を返します（一部しか読めていない可能性あり）。
readLine(): データの終端に到達した場合や、エラーが発生した場合は空の QString を返します。ただし、ファイルに実際に空行が含まれている場合も空の QString を返すため、この戻り値だけでエラーを判断するのは不十分です。atEnd() と組み合わせて使うのが一般的です。

#include <QCoreApplication>
#include <QFile>
#include <QTextStream>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QFile file("empty.txt");
    if (file.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text)) {
        file.close(); // 空のファイルを作成
    }

    if (file.open(QIODevice::ReadOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream in(&file);
        
        QString line = in.readLine();
        if (line.isNull()) { // 実際には空行も null ではないので、このチェックはあまり使われない
                             // readLine() は終端では空の QString を返す
            qDebug() << "readLine() が null を返しました（通常は発生しない）。";
        } else if (line.isEmpty() && in.atEnd()) {
            qDebug() << "readLine() が空の文字列を返し、ファイルの終端に到達しました。";
        } else {
            qDebug() << "読み込んだ行: " << line;
        }

        qDebug() << "readLine() 後の QTextStream::status(): " << in.status();

        file.close();
    }

    return a.exec();
}

解説
readLine() が空の文字列を返しても、それがエラーによるものなのか、単にファイルの終端に到達したためなのか、あるいは実際に空行が書かれていたのかは、その時点の QTextStream::status() や QTextStream::atEnd() を確認しないと断定できません。そのため、これらは status() の完全な代替というよりは、補助的な情報として利用されます。

エンコーディング関連の問題（ReadCorruptData の主な原因）を避けるために、QTextCodec を設定する際にそれが有効であったかを確認できます。

#include <QCoreApplication>
#include <QFile>
#include <QTextStream>
#include <QDebug>
#include <QTextCodec>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QFile file("encoded_text.txt");
    if (file.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream out(&file);
        
        // 存在しないコーデック名を設定しようとする
        QTextCodec* invalidCodec = QTextCodec::codecForName("NonExistentCodec");
        if (invalidCodec) {
            out.setCodec(invalidCodec);
            qDebug() << "存在しないコーデックが設定されました（これは問題がある）。";
        } else {
            qDebug() << "コーデック 'NonExistentCodec' は見つかりませんでした。";
            // デフォルトのコーデックが使用される
        }
        
        // 正しいコーデックを設定
        QTextCodec* utf8Codec = QTextCodec::codecForName("UTF-8");
        if (utf8Codec) {
            out.setCodec(utf8Codec);
            out << "こんにちは、世界！";
            qDebug() << "UTF-8で書き込みました。";
        } else {
            qDebug() << "UTF-8コーデックが見つかりませんでした。";
        }
        
        file.close();
    }

    return a.exec();
}

解説
QTextCodec::codecForName() は、指定された名前のコーデックが見つからない場合に nullptr を返します。これにより、QTextStream::setCodec() に無効なコーデックを設定してしまうことによる ReadCorruptData の発生を事前に防ぐことができます。

QTextStream::status() は、QTextStream レベルでの操作結果を簡潔に示してくれますが、エラーの診断においては、基底となる QFile (または他の QIODevice) のエラー情報が最も詳細で根本的な情報を提供することが多いです。

したがって、これらの方法は「代替」というよりも、QTextStream を使った堅牢なファイル入出力処理を実装するための、QTextStream::status() と組み合わせるべき補完的なアプローチと考えるのが適切です。

操作後: QTextStream::status() で最終的な操作の成否を確認する。
エンコーディング設定時: QTextCodec::codecForName() が nullptr を返さないかチェックする。
読み込み中: QTextStream::atEnd() を使ってループを制御し、ReadPastEnd を防ぐ。
ファイルオープン前: QFile::open() の戻り値と QFile::error() をチェックする。

Qt QTextStream::device()徹底解説: テキスト処理の核となるQIODeviceとは？

もう少し詳しく説明します。QTextStreamは、テキストデータ（文字の並び）を読み書きするための便利なクラスです。ファイル、ネットワークソケット、メモリ上のデータなど、様々な「デバイス」に対して、統一された方法でテキストを扱うことができます。

Qt QTextStreamの一般的なエラーとトラブルシューティング：デストラクタの役割とは？

QtプログラミングにおけるQTextStream::~QTextStream()は、QTextStreamクラスのデストラクタを指します。C++では、クラス名にチルダ（~）を付けたものがデストラクタです。デストラクタは、そのクラスのオブジェクトが破棄される際に自動的に呼び出される特殊なメンバ関数です。

Qtプログラミング必見！QTextStreamとエンコーディングの代替手法

QTextStream::encoding()は、QTextStreamオブジェクトが現在使用しているテキストエンコーディング（文字コード）を取得するための関数です。QTextStreamは、Qtフレームワークでテキストの読み書きを行うためのクラスです。QFileなどのQIODevice（入出力デバイス）と連携して動作し、ファイルや文字列などのテキストデータを簡単に扱うことができます。

QTextStream::fieldAlignment()

具体的には、以下のいずれかの値を返します。QTextStream::AlignTrailing: 数値の場合、符号や基数プレフィックスが数値の直前に表示され、全体が右寄せされます。文字列の場合はAlignRightと同じです。QTextStream::AlignLeading: 数値の場合、符号や基数プレフィックス（例: "0x"）がフィールドの先頭に表示され、残りの部分は右寄せされます。文字列の場合はAlignLeftと同じです。

QTextStream::fieldWidth()でつまずかない！Qtのテキスト出力エラーと解決策

QTextStream::fieldWidth() は、Qtの QTextStream クラスのメンバ関数で、現在設定されている「フィールド幅」を返します。QTextStream は、ファイルやデバイス、文字列などに対してテキストの読み書きを行うためのクラスです。テキストを出力する際に、特定のフォーマットで出力したい場合に、この「フィールド幅」という概念が重要になります。

QTextStream::flush()は必要？Qtファイル書き込みのベストプラクティス

QTextStreamは、ファイルやデバイスに対してテキストデータを読み書きするためのQtのクラスです。データを書き込む際、通常はすぐに物理的なファイルやデバイスに書き込まれるわけではありません。効率化のため、データは一度「バッファ」と呼ばれる一時的なメモリ領域に蓄えられます。

日本語対応も安心！Qt QTextStreamでのBOM生成とエンコーディングのベストプラクティス

BOM は、Unicode テキストファイルで、そのファイルがどの UTF (UTF-8, UTF-16, UTF-32 など) でエンコードされているか、そしてバイトの順序 (エンディアン、Big-Endian か Little-Endian か) がどうなっているかを示すために、ファイルの先頭に挿入される特別なバイト列です。

QTextStreamで進数を操る：integerBase()とsetIntegerBase()の使い方

具体的には以下の通りです。基数の設定 setIntegerBase()関数を使って、読み書きする整数の基数を明示的に設定できます。例えば、16進数で読み書きしたい場合はsetIntegerBase(16)と設定します。デフォルトの動作読み取り時デフォルトでは0が返されます。これは、QTextStreamが数値のプレフィックス（例：0xは16進数、0から始まる場合は8進数）を自動的に検出して基数を判断することを意味します。書き込み時デフォルトでは10（10進数）が使用されます。

QtプログラミングにおけるQTextStream::locale()徹底解説

ロケールとは、ある特定の地域や文化圏における言語、日付と時刻の形式、数値の表現方法（小数点や桁区切り）、通貨記号などの慣習を定義する情報のことです。例えば、日本では小数点にピリオドを、桁区切りにカンマを使うのが一般的ですが、ヨーロッパの一部では小数点にカンマを、桁区切りにピリオドを使う場合があります。

【Qt入門】QTextStream::numberFlags()を使った数値出力のカスタマイズ方法

QTextStream::numberFlags() は、Qt プログラミングにおける QTextStream クラスのメンバ関数で、数値の出力形式を制御するためのフラグ群を取得します。QTextStream は、テキストの読み書きを便利に行うためのクラスで、ファイル、バイト配列、QString など、様々なI/Oデバイスを扱えます。数値を出力する際に、例えば16進数で表示するか、常に符号を表示するか、小数点以下の桁数を強制するか、といった細かな設定をしたい場合に numberFlags() で現在の設定を取得し、setNumberFlags() で変更します。

Qt QTextStream::status()徹底解説：ファイルI/Oのエラーを完全理解

status() を使う理由

QTextStream::WriteFailed (書き込み失敗)

QTextStream::ReadPastEnd (読み込みが終端を超えた)

QTextStream::ReadCorruptData (壊れたデータ読み込み)

QTextStream::Ok (正常) の確認

QTextStream::WriteFailed (書き込み失敗) の確認

QTextStream::ReadPastEnd (読み込みが終端を超えた) の確認

基底デバイス (QIODevice) のエラーチェック

QFile::open() の戻り値

QIODevice::bytesAvailable() と QIODevice::atEnd()

QTextStream の戻り値と例外的な振る舞い

QTextStream::readLine() / QTextStream::readAll()

`status()` を使う理由

`QFile::open()` の戻り値

`QIODevice::bytesAvailable()` と `QIODevice::atEnd()`

`QTextStream::readLine()` / `QTextStream::readAll()`