もう迷わない！QTextStream::FieldAlignmentのよくあるエラーと解決策

QTextStream::FieldAlignment (enum) とは

QTextStream::FieldAlignment は、Qt の QTextStream クラスで使用される列挙型（enum）です。これは、テキストを特定の幅の「フィールド」に出力する際に、そのフィールド内でテキストをどのように配置するか（位置揃え）を指定するために使われます。

QTextStream は、ファイルや文字列、バイト配列などへのテキストの読み書きを便利に行うためのクラスです。特定の幅を持つフィールドにテキストを整形して出力したい場合に、setFieldWidth() でフィールドの幅を設定し、setFieldAlignment() でこの FieldAlignment 列挙型の値を指定することで、テキストの配置を制御できます。

利用可能な値

QTextStream::FieldAlignment には以下の値があります。

• QTextStream::AlignAccountingStyle: AlignRight と似ていますが、数字の出力に特化したアライメントです。特に、マイナス記号などの符号がある場合に、符号をフィールドの左端に揃え、数字自体は右揃えにする会計的な書式に適しています。 例：

  • -123.45 の場合、符号 - は左端に、数字 123.45 は右揃えになります。
  • 123.45 の場合、符号がないため全体が右揃えになります。

• QTextStream::AlignCenter: フィールドの中央にテキストを揃え、余ったスペースはテキストの両側に均等に挿入されます。 例：" Hello " (フィールド幅が8の場合、完全に均等でない場合は左右どちらかに1文字多くなることがあります)

• QTextStream::AlignRight: フィールドの右側にテキストを揃え、余ったスペースはテキストの左側に挿入されます。 例：" Hello" (フィールド幅が8の場合)

• QTextStream::AlignLeft: フィールドの左側にテキストを揃え、余ったスペース（パディング文字）はテキストの右側に挿入されます。 例："Hello " (フィールド幅が8の場合)

#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug> // デバッグ出力用

int main() {
    QString output;
    QTextStream stream(&output);

    stream.setFieldWidth(10); // フィールド幅を10に設定

    // AlignLeft (デフォルト)
    stream << QTextStream::AlignLeft << "Left" << endl;
    qDebug() << "AlignLeft:" << output; // "Left      "

    output.clear(); // 出力をクリア

    // AlignRight
    stream << QTextStream::AlignRight << "Right" << endl;
    qDebug() << "AlignRight:" << output; // "     Right"

    output.clear();

    // AlignCenter
    stream << QTextStream::AlignCenter << "Center" << endl;
    qDebug() << "AlignCenter:" << output; // "  Center  "

    output.clear();

    // AlignAccountingStyle (数字の場合に違いが明確)
    stream << QTextStream::AlignAccountingStyle << -123.45 << endl;
    qDebug() << "AlignAccountingStyle (-123.45):" << output; // "-    123.45" (例: 符号が左寄せ、数字が右寄せ)

    output.clear();

    stream << QTextStream::AlignAccountingStyle << 678.90 << endl;
    qDebug() << "AlignAccountingStyle (678.90):" << output; // "    678.90" (符号がないため右寄せ)

    return 0;
}

この例では、QTextStream を使って文字列 (QString) にテキストを書き込み、setFieldWidth() と setFieldAlignment() を組み合わせて、異なるアライメントでテキストが出力される様子を示しています。

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setFieldWidth() の設定忘れ、または不適切な設定

エラーの症状
テキストが揃わない、または意図した通りのパディング（空白）が挿入されない。

原因
QTextStream::FieldAlignment は、テキストを特定の幅のフィールド内で配置するために機能します。この「フィールド幅」を setFieldWidth() で明示的に設定しないと、アライメント設定は効果がありません。デフォルトのフィールド幅は0であり、これはアライメントが適用されないことを意味します。また、フィールド幅がテキストの長さよりも短い場合も、意図したようにアライメントが機能しません。

トラブルシューティング

• 適切なフィールド幅を設定する
  出力したいテキストの最大長を考慮し、それよりも十分な幅を設定します。フィールド幅がテキストの長さよりも小さい場合、テキストは切り捨てられることはありませんが、アライメントによるパディングは発生しません。
• setFieldWidth() を呼び出すことを確認する
  setFieldAlignment() を使う前に、必ず stream.setFieldWidth(desired_width); のようにフィールド幅を設定してください。

例

// 悪い例：フィールド幅が設定されていない
QTextStream stream(&output);
stream << QTextStream::AlignRight << "Hello" << endl; // アライメントが効かない

// 良い例：フィールド幅を設定
QTextStream stream(&output);
stream.setFieldWidth(10);
stream << QTextStream::AlignRight << "Hello" << endl; // "     Hello" と出力される

setFieldAlignment() の適用順序と永続性

エラーの症状
一度設定したアライメントが、期待しない箇所で適用され続けてしまう、または特定の出力にしか適用されない。

原因
QTextStream のアライメント設定は、ストリームの状態として保持されます。つまり、一度 setFieldAlignment() を呼び出すと、その設定は明示的に変更されるまで、その後のすべての出力に影響を与えます。これは、ある行だけアライメントを変更したい場合に、次の行の出力に意図せず影響を与えてしまう原因となります。

トラブルシューティング

• ストリームマニピュレータを利用する
  Qt は left, right, center といった便利なストリームマニピュレータを提供しています。これらは setFieldAlignment() を呼び出すのと同等ですが、コードがより読みやすくなります。
• アライメントを明示的にリセットする
  特定の出力に対してのみアライメントを適用したい場合は、その出力が終わった後、QTextStream::AlignLeft (デフォルト) などに戻すか、QTextStream::setFieldAlignment(QTextStream::AlignLeft); のように明示的に設定し直してください。

例

QTextStream stream(&output);
stream.setFieldWidth(10);

stream << QTextStream::AlignRight << "Value1" << endl; // 右揃え
stream << "Value2" << endl; // Value2 も右揃えになる (意図しない場合がある)

// 意図した挙動にするためには:
output.clear();
stream << QTextStream::AlignRight << "Value1" << endl; // 右揃え
stream << QTextStream::AlignLeft << "Value2" << endl; // 左揃えに戻す

あるいは、マニピュレータを使ってより簡潔に書くことができます。

QTextStream stream(&output);
stream.setFieldWidth(10);

stream << right << "Value1" << endl; // 右揃え
stream << left << "Value2" << endl;  // 左揃えに戻す

AlignAccountingStyle の挙動の誤解

エラーの症状
AlignAccountingStyle を使用しているのに、数字の出力が期待通りにならない（符号が左端に揃わない、など）。

原因
AlignAccountingStyle は、数値の符号をフィールドの左端に揃え、数値自体は右揃えにする特殊なアライメントです。これは主に会計関連のレポートなどで使用されます。このアライメントは、文字列データに対しては AlignRight と同じ挙動を示します。また、数値であっても正の数の場合は符号がないため、単なる AlignRight と同じに見えることがあります。

トラブルシューティング

• 文字列への適用に注意する
  文字列に対しては AlignAccountingStyle の特殊な効果は適用されません。文字列をアライメントしたい場合は、AlignLeft, AlignRight, AlignCenter を適切に使用してください。
• 符号付きの数値でテストする
  AlignAccountingStyle の効果をテストするには、負の数（例: -123.45）を使用してください。正の数では AlignRight との差が分かりにくい場合があります。

例

QTextStream stream(&output);
stream.setFieldWidth(10);

stream << QTextStream::AlignAccountingStyle << -123.45 << endl;
qDebug() << output; // "-    123.45" のようになる

output.clear();
stream << QTextStream::AlignAccountingStyle << "Some Text" << endl;
qDebug() << output; // " Some Text" のようになり、AlignRight と同じになる

出力バッファリングによる遅延

エラーの症状
QTextStream で出力してもすぐに結果が見えない、または一部の出力が欠落しているように見える。

原因
QTextStream は内部バッファを使用して効率的な書き込みを行います。これにより、少量のデータを頻繁に書き込む際にI/O操作のオーバーヘッドを減らすことができます。しかし、これによりデータが実際に基になるデバイス（ファイル、コンソールなど）に書き込まれるまでに遅延が生じることがあります。

トラブルシューティング

• endl マニピュレータを使用する
  endl は改行を出力するだけでなく、ストリームをフラッシュする効果もあります。そのため、<< endl を使用している場合は、通常、明示的な flush() は不要です。
• flush() を明示的に呼び出す
  データがすぐにデバイスに書き込まれるようにしたい場合は、stream.flush(); を呼び出します。

例

QTextStream stream(stdout); // 標準出力へのストリーム

stream.setFieldWidth(10);
stream << QTextStream::AlignRight << "Data1"; // まだ表示されないかもしれない
stream.flush(); // ここでData1が表示される

stream << QTextStream::AlignLeft << "Data2" << endl; // Data2が表示され、フラッシュされる

フィールド幅が狭すぎてテキストが収まらない

エラーの症状
テキストがアライメントされず、単にフィールド幅を超えて出力される。

原因
QTextStream のフィールドアライメントは、フィールド幅がテキストの長さよりも長い場合にのみ、パディングを挿入してアライメント効果を発揮します。フィールド幅がテキストの長さ以下の場合、テキストは切り捨てられることなくそのまま出力され、アライメントによる視覚的な効果は失われます。

トラブルシューティング

• 動的にフィールド幅を調整する
  プログラムで出力する文字列の長さに応じて setFieldWidth() を動的に変更することを検討します。例えば、一連の項目を揃える場合、まずすべての項目の長さを計算し、その最大値に基づいてフィールド幅を設定します。
• フィールド幅を適切に計算する
  出力する可能性のある最も長いテキストの長さを考慮し、それよりも広いフィールド幅を設定します。

QTextStream stream(&output);
stream.setFieldWidth(5); // フィールド幅が短い

stream << QTextStream::AlignRight << "LongText" << endl;
qDebug() << output; // "LongText" とそのまま出力され、右揃えの効果はない

---

QTextStream::FieldAlignment は、QTextStream を介してテキストを整形して出力する際に、特定の幅のフィールド内でテキストをどのように配置するか（位置揃え）を制御するために使用されます。

以下の例では、様々なアライメントオプションと、それらを効果的に使用する方法を示します。

例1：基本的なアライメント（左、右、中央）

この例では、QTextStream::AlignLeft (デフォルト)、QTextStream::AlignRight、QTextStream::AlignCenter の基本的な使い方を示します。

#include <QCoreApplication>
#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug> // デバッグ出力用

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // QDebug::qSetMessagePattern("%{message}"); // 必要であれば、QDebugの出力形式を簡略化

    QString outputString; // 出力結果を格納するQString
    QTextStream stream(&outputString); // QString に書き込むストリームを作成

    const int fieldWidth = 15; // フィールドの幅を設定

    qDebug() << "--- 基本的なアライメントの例 ---";
    qDebug() << QString("フィールド幅: %1").arg(fieldWidth);
    qDebug() << "--------------------------------";

    // 1. AlignLeft (左揃え - デフォルトのアライメント)
    stream.setFieldWidth(fieldWidth); // フィールド幅を設定
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignLeft); // 左揃えを設定 (通常は不要、デフォルトのため)
    stream << "Left Aligned" << endl; // テキストを出力
    qDebug() << "Left:" << outputString.trimmed(); // 出力文字列から末尾の改行などを除去して表示
    outputString.clear(); // 次の出力のために文字列をクリア

    // 2. AlignRight (右揃え)
    stream.setFieldWidth(fieldWidth); // フィールド幅を設定
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignRight); // 右揃えを設定
    stream << "Right Aligned" << endl;
    qDebug() << "Right:" << outputString.trimmed();
    outputString.clear();

    // 3. AlignCenter (中央揃え)
    stream.setFieldWidth(fieldWidth); // フィールド幅を設定
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignCenter); // 中央揃えを設定
    stream << "Center Aligned" << endl;
    qDebug() << "Center:" << outputString.trimmed();
    outputString.clear();

    qDebug() << "--------------------------------";

    return 0;
}

出力例

--- 基本的なアライメントの例 ---
フィールド幅: 15
--------------------------------
Left: "Left Aligned   "
Right: "   Right Aligned"
Center: "  Center Aligned "
--------------------------------

解説

• outputString.clear(): 各アライメントの出力を個別に見るために、QString をクリアしています。
• endl: 改行を出力し、かつストリームをフラッシュします。
• setFieldAlignment(): 各アライメントを明示的に設定しています。AlignLeft はデフォルトなので、通常は設定する必要はありませんが、コードの意図を明確にするために含めています。
• setFieldWidth(15): 各出力が15文字の幅を持つフィールド内に収まるように指定しています。

例2：AlignAccountingStyle の使用（数値の整形）

AlignAccountingStyle は、特に数値、特に符号を持つ数値を会計的な書式で表示するのに役立ちます。

#include <QCoreApplication>
#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QString outputString;
    QTextStream stream(&outputString);

    const int fieldWidth = 15;

    qDebug() << "--- AlignAccountingStyle の例 ---";
    qDebug() << QString("フィールド幅: %1").arg(fieldWidth);
    qDebug() << "--------------------------------";

    stream.setFieldWidth(fieldWidth);
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignAccountingStyle);

    // 正の数: AlignRight と同様の挙動
    stream << 12345.67 << endl;
    qDebug() << "Positive:" << outputString.trimmed();
    outputString.clear();

    // 負の数: 符号が左端に、数値が右端に揃う
    stream << -987.65 << endl;
    qDebug() << "Negative:" << outputString.trimmed();
    outputString.clear();

    // 0 の場合
    stream << 0.00 << endl;
    qDebug() << "Zero:" << outputString.trimmed();
    outputString.clear();

    // 非常に大きな（正の）数
    stream << 123456789.00 << endl;
    qDebug() << "Large Positive:" << outputString.trimmed();
    outputString.clear();

    // 非常に大きな（負の）数
    stream << -123456789.00 << endl;
    qDebug() << "Large Negative:" << outputString.trimmed();
    outputString.clear();

    qDebug() << "--------------------------------";

    // 注意: 文字列に対して AlignAccountingStyle は AlignRight と同じ挙動を示す
    stream.setFieldWidth(fieldWidth);
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignAccountingStyle);
    stream << "Text Example" << endl;
    qDebug() << "Text (Accounting Style):" << outputString.trimmed();
    outputString.clear();

    return 0;
}

出力例

--- AlignAccountingStyle の例 ---
フィールド幅: 15
--------------------------------
Positive: "       12345.67"
Negative: "-       987.65"
Zero: "           0.00"
Large Positive: "    123456789"
Large Negative: "-   123456789"
--------------------------------
Text (Accounting Style): "   Text Example"

解説

• 文字列に対しては特別な効果はなく、AlignRight と同様に扱われます。
• 正の数の場合や、フィールド幅より文字列が長い場合は、AlignRight と同じ挙動になります。
• AlignAccountingStyle は、負の数の場合にマイナス記号 (-) をフィールドの左端に配置し、数値部分を右揃えにします。これにより、会計帳簿のような体裁を保つことができます。

例3：複数のアライメントとフィールド幅の組み合わせ

この例では、テーブルのような形式でデータを表示するために、異なるアライメントとフィールド幅を組み合わせて使用する方法を示します。

#include <QCoreApplication>
#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QTextStream stream(stdout); // 標準出力に直接書き込むストリーム

    // ヘッダーの出力
    stream.setFieldWidth(10);
    stream << QTextStream::AlignCenter << "Name";
    stream.setFieldWidth(5);
    stream << QTextStream::AlignRight << "Qty";
    stream.setFieldWidth(8);
    stream << QTextStream::AlignRight << "Price";
    stream.setFieldWidth(10);
    stream << QTextStream::AlignRight << "Total";
    stream << endl;

    // 区切り線の出力
    stream.setFieldWidth(10); stream << QTextStream::AlignLeft << "----------";
    stream.setFieldWidth(5);  stream << QTextStream::AlignLeft << "-----";
    stream.setFieldWidth(8);  stream << QTextStream::AlignLeft << "--------";
    stream.setFieldWidth(10); stream << QTextStream::AlignLeft << "----------";
    stream << endl;

    // データ行の出力
    // Item 1
    stream.setFieldWidth(10); stream << QTextStream::AlignLeft << "Apple";
    stream.setFieldWidth(5);  stream << QTextStream::AlignRight << 10;
    stream.setFieldWidth(8);  stream << QTextStream::AlignRight << 0.50;
    stream.setFieldWidth(10); stream << QTextStream::AlignRight << (10 * 0.50);
    stream << endl;

    // Item 2
    stream.setFieldWidth(10); stream << QTextStream::AlignLeft << "Banana";
    stream.setFieldWidth(5);  stream << QTextStream::AlignRight << 5;
    stream.setFieldWidth(8);  stream << QTextStream::AlignRight << 1.20;
    stream.setFieldWidth(10); stream << QTextStream::AlignRight << (5 * 1.20);
    stream << endl;

    // Item 3 (長い名前のアイテム)
    stream.setFieldWidth(10); stream << QTextStream::AlignLeft << "Strawberry"; // "Strawberry" はフィールド幅を超える
    stream.setFieldWidth(5);  stream << QTextStream::AlignRight << 2;
    stream.setFieldWidth(8);  stream << QTextStream::AlignRight << 2.50;
    stream.setFieldWidth(10); stream << QTextStream::AlignRight << (2 * 2.50);
    stream << endl;

    // Item 4 (負の数値の例 - Accounting Style を想定)
    stream.setFieldWidth(10); stream << QTextStream::AlignLeft << "Refund";
    stream.setFieldWidth(5);  stream << QTextStream::AlignRight << -1; // ここはQtyなのでAlignRight
    stream.setFieldWidth(8);  stream << QTextStream::AlignRight << 5.00; // ここはPriceなのでAlignRight
    stream.setFieldWidth(10); stream << QTextStream::AlignAccountingStyle << -5.00; // Totalは会計スタイル
    stream << endl;

    return 0;
}

出力例

  Name     Qty   Price     Total
---------- ----- -------- ----------
Apple       10    0.5     5
Banana       5    1.2     6
Strawberry   2    2.5     5
Refund      -1    5.0        -5

• Refund の行では、Total の列に AlignAccountingStyle を適用し、負の値の表示を確認しています。
• Strawberry の行では、"Strawberry" がフィールド幅 10 を超えているため、そのまま出力され、アライメントによる空白は挿入されていません。しかし、これはテキストが切り捨てられるよりも望ましい挙動です。
• 各列のヘッダーとデータ行で、setFieldWidth() と setFieldAlignment() を項目ごとに変更しています。
• この例では、QTextStream を直接標準出力 (stdout) に接続しています。

---

QString::arg() メソッド

QString::arg() は、文字列の書式設定を行うための非常に柔軟なメソッドです。フィールド幅を指定することで、テキストのアライメントも実現できます。

特徴

• 埋める文字（パディング文字）も指定できます。
• フィールド幅を正の値で指定すると右揃え、負の値で指定すると左揃えになります。
• QTextStream のようにストリーム全体の状態を変更するのではなく、単一の文字列の書式設定に特化しています。

利点

• QTextStream のようにストリームの状態管理を心配する必要がありません。
• 中間文字列を生成するのに便利です。
• より細かく個別の文字列のフォーマットを制御できます。

欠点

• 中央揃えや AlignAccountingStyle のような特殊なアライメントは、直接サポートされていません（自力で実装する必要があります）。

コード例

#include <QCoreApplication>
#include <QString>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    const int fieldWidth = 15;

    qDebug() << "--- QString::arg() の例 ---";

    // 左揃え (fieldWidth を負の値にする)
    QString s1 = QString("'%1'").arg("Left", -fieldWidth, QChar(' '));
    qDebug() << "Left:" << s1;

    // 右揃え (fieldWidth を正の値にする)
    QString s2 = QString("'%1'").arg("Right", fieldWidth, QChar(' '));
    qDebug() << "Right:" << s2;

    // ゼロ埋めの右揃え（数値の場合によく使う）
    QString s3 = QString("'%1'").arg(123, fieldWidth, 10, QChar('0'));
    qDebug() << "Zero-padded Right:" << s3;

    // 中央揃え (手動で実装)
    QString textToCenter = "Center";
    int paddingLeft = (fieldWidth - textToCenter.length()) / 2;
    int paddingRight = fieldWidth - textToCenter.length() - paddingLeft;
    QString s4 = QString("'%1%2%3'").arg(QString(paddingLeft, ' ')).arg(textToCenter).arg(QString(paddingRight, ' '));
    qDebug() << "Center (manual):" << s4;

    qDebug() << "---------------------------";

    return 0;
}

出力例

--- QString::arg() の例 ---
Left: "'Left           '"
Right: "'        Right'"
Zero-padded Right: "'00000000000123'"
Center (manual): "'     Center    '"
---------------------------

C++ 標準ライブラリの <iomanip> (iostream マニピュレータ)

Qt アプリケーションでも、標準 C++ ライブラリの iostream と <iomanip> ヘッダを使用することができます。これはファイル出力やコンソール出力など、QTextStream と同様の目的で使用できます。

特徴

• std::setfill(): パディング文字を設定します。これもストリームの状態として保持されます。
• std::left, std::right, std::internal: アライメントを指定します。これらはストリームの状態として保持され、変更されるまで有効です。
• std::setw(): フィールド幅を設定します。これは次の出力操作にのみ適用されます。

利点

• C++ 開発者には馴染み深い方法かもしれません。
• 標準 C++ なので、Qt に依存しないコードになります。

欠点

• 国際化（i18n）やUnicodeサポートに関しては、QTextStream の方がよりQtエコシステムに統合されており、扱いやすい場合があります。
• Qt の QString を直接扱うのが少し手間になることがあります（std::string に変換する必要がある場合など）。

コード例

#include <iostream> // 標準入出力
#include <iomanip>  // iomanip マニピュレータ用
#include <string>   // std::string 用

int main()
{
    const int fieldWidth = 15;

    std::cout << "--- C++ iomanip の例 ---" << std::endl;
    std::cout << "フィールド幅: " << fieldWidth << std::endl;
    std::cout << "------------------------" << std::endl;

    // 左揃え
    std::cout << std::left << std::setw(fieldWidth) << "Left Aligned" << std::endl;

    // 右揃え
    std::cout << std::right << std::setw(fieldWidth) << "Right Aligned" << std::endl;

    // 中央揃え (手動または複雑な計算が必要)
    std::string textToCenter = "Center Aligned";
    int padding = fieldWidth - textToCenter.length();
    int paddingLeft = padding / 2;
    int paddingRight = padding - paddingLeft;
    std::cout << std::string(paddingLeft, ' ') << textToCenter << std::string(paddingRight, ' ') << std::endl;

    // ゼロ埋めの右揃え
    std::cout << std::right << std::setfill('0') << std::setw(fieldWidth) << 12345 << std::endl;
    std::cout << std::setfill(' '); // パディング文字をデフォルトに戻す

    std::cout << "------------------------" << std::endl;

    return 0;
}

出力例

--- C++ iomanip の例 ---
フィールド幅: 15
------------------------
Left Aligned   
   Right Aligned
  Center Aligned 
00000000012345
------------------------

最も基本的な方法として、QString のメソッド（leftJustified(), rightJustified(), repeated(), mid(), length() など）を組み合わせて、パディングや切り捨てを自分で行う方法があります。

特徴

• 非常に柔軟で、どんなカスタムフォーマットでも実現できます。
• Qt の文字列操作機能を直接利用します。

利点

• 特定の要件に合わせて完全にカスタマイズできます。
• 外部ライブラリやストリームの状態に依存しません。

欠点

• パフォーマンスが懸念される場合は、手動で最適化が必要になることがあります。
• エラーが発生しやすく、デバッグが難しくなる可能性があります。
• コードが冗長になりがちで、複雑なフォーマットほどコード量が増えます。

コード例

#include <QCoreApplication>
#include <QString>
#include <QDebug>

// 手動で中央揃えを行うヘルパー関数
QString customCentered(const QString& text, int width, QChar fillChar = ' ') {
    if (text.length() >= width) {
        return text; // 幅より長い場合は切り捨てない
    }
    int padding = width - text.length();
    int paddingLeft = padding / 2;
    int paddingRight = padding - paddingLeft;
    return QString(paddingLeft, fillChar) + text + QString(paddingRight, fillChar);
}

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    const int fieldWidth = 15;

    qDebug() << "--- 手動での文字列操作の例 ---";

    // 左揃え
    QString s1 = "Left Aligned";
    qDebug() << "Left:" << s1.leftJustified(fieldWidth, ' ');

    // 右揃え
    QString s2 = "Right Aligned";
    qDebug() << "Right:" << s2.rightJustified(fieldWidth, ' ');

    // 中央揃え (ヘルパー関数を使用)
    QString s3 = "Center Aligned";
    qDebug() << "Center:" << customCentered(s3, fieldWidth, ' ');

    // ゼロ埋めの右揃え（数値の場合）
    int num = 123;
    QString s4 = QString::number(num).rightJustified(fieldWidth, '0');
    qDebug() << "Zero-padded Right:" << s4;

    qDebug() << "------------------------------";

    return 0;
}

--- 手動での文字列操作の例 ---
Left: "Left Aligned   "
Right: "   Right Aligned"
Center: " Center Aligned "
Zero-padded Right: "00000000000123"
------------------------------

• 手動での文字列操作:

  • 最適なケース: 非常に特殊なアライメント要件がある場合、または最大限の制御が必要な場合。ただし、コードが複雑になるため、他の方法で実現できない場合に検討するのが良いでしょう。

• <iomanip>:

  • 最適なケース: Qt への依存を最小限に抑えたい場合、または既存の C++ 標準ライブラリのコードベースに Qt を統合する場合。

• QString::arg():

  • 最適なケース: 個々の文字列を整形する場合や、より細かいフォーマット制御が必要な場合。中央揃えなどの高度なアライメントは手動で補う必要がありますが、ほとんどの一般的な整形ニーズに対応できます。

• QTextStream::FieldAlignment:

  • 最適なケース: 複数の項目を一度に整形し、特にファイルやコンソールへの継続的な出力を行う場合。テーブル形式のデータ出力に非常に便利です。ストリームの状態管理に慣れていれば効率的です。