もう迷わない！QTextStream::RealNumberNotationのエラーとトラブルシューティング

QTextStream::RealNumberNotation は、Qt の QTextStream クラスで使用される列挙型（enum）で、浮動小数点数（float や double）を文字列として出力する際の表記方法を指定するために使われます。

この列挙型には、以下の3つの値があります。

1. • これはデフォルトの表記方法です。
   • 数値に応じて、固定小数点表記（例: 123.45）と指数表記（例: 1.23e+05）のどちらか、より適切な方を選択して出力します。
   • C言語の printf() 関数の %g フラグに似ています。例えば、大きな数や非常に小さな数は指数表記になり、そうでない場合は固定小数点表記になります。

2. QTextStream::FixedNotation (または FixedNotation)

   • 常に固定小数点表記で出力します。
   • 小数点以下の桁数は、QTextStream::setRealNumberPrecision() で設定された精度に従います。
   • C言語の printf() 関数の %f フラグに似ています。例: 12345.678000

3. QTextStream::ScientificNotation (または ScientificNotation)

   • 常に指数表記（科学的表記）で出力します。
   • 小数点以下の桁数は、QTextStream::setRealNumberPrecision() で設定された精度に従います。
   • C言語の printf() 関数の %e フラグに似ています。例: 1.234568e+04

使用例

QTextStream を使って数値を出力する際に、setRealNumberNotation() メソッドを使ってこれらの表記方法を設定することができます。

#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug> // qlDebug() 用

int main() {
    QString outputString;
    QTextStream stream(&outputString);

    double value = 12345.6789;
    double smallValue = 0.0000123;

    // SmartNotation (デフォルト)
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::SmartNotation);
    stream << "SmartNotation (Value): " << value << "\n";
    stream << "SmartNotation (SmallValue): " << smallValue << "\n";

    // FixedNotation
    outputString.clear(); // 出力文字列をクリア
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);
    stream.setRealNumberPrecision(5); // 小数点以下5桁に設定
    stream << "FixedNotation (Value): " << value << "\n";
    stream << "FixedNotation (SmallValue): " << smallValue << "\n";

    // ScientificNotation
    outputString.clear(); // 出力文字列をクリア
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::ScientificNotation);
    stream.setRealNumberPrecision(3); // 小数点以下3桁に設定
    stream << "ScientificNotation (Value): " << value << "\n";
    stream << "ScientificNotation (SmallValue): " << smallValue << "\n";

    qDebug() << outputString;

    return 0;
}

このコードを実行すると、以下のような出力が得られます（環境によって小数点以下の精度が多少異なる場合があります）。

SmartNotation (Value): 12345.6789
SmartNotation (SmallValue): 1.23e-05
FixedNotation (Value): 12345.67890
FixedNotation (SmallValue): 0.00001
ScientificNotation (Value): 1.235e+04
ScientificNotation (SmallValue): 1.230e-05

---

QTextStream::RealNumberNotation は、浮動小数点数の出力形式を制御するためのものであり、それ自体が直接的なエラーの原因となることは稀です。しかし、期待通りの出力が得られない、または他のフォーマット設定との兼ね合いで問題が発生する可能性があります。

期待通りの数値形式にならない

問題の現象
setRealNumberNotation() で FixedNotation や ScientificNotation を設定したのに、期待通りの出力形式にならない、または SmartNotation のように動作する。

考えられる原因とトラブルシューティング

• ロケールの影響
  QTextStream はロケール（地域設定）に影響を受けます。小数点記号（. または ,）や桁区切り（, または .）がロケールによって変わる場合があります。

  • 対策
    
    • 特定のロケールで出力したい場合は、QTextStream::setLocale() を使用して明示的にロケールを設定します。
    • C言語の標準的な表記（小数点記号は.）で統一したい場合は、stream.setLocale(QLocale::cLocale()); のように cLocale を設定することがよくあります。

• SmartNotation の挙動の誤解
  SmartNotation は「スマート」に最適な形式を選びますが、ユーザーが期待する形式と異なる場合もあります。例えば、1.0 のような整数に見える値が 1 と表示され、1.000 とは表示されないなどです。

  • 対策
    特定の形式を厳密に制御したい場合は、FixedNotation または ScientificNotation を明示的に使用し、setRealNumberPrecision() で桁数を調整してください。

• setRealNumberPrecision() との兼ね合い
  FixedNotation や ScientificNotation を使う場合、setRealNumberPrecision() で指定する小数点以下の桁数も重要です。この設定がされていない、または不適切な値になっていると、期待通りの表示にならないことがあります。

  • 例
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation); と設定しても、setRealNumberPrecision() が呼び出されていないと、デフォルトの精度（通常は6桁）が適用されます。
  • 対策
    setRealNumberPrecision() を適切に設定してください。

  QTextStream stream(&outputString);
  stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);
  stream.setRealNumberPrecision(2); // 小数点以下2桁に設定
  stream << 123.4567; // 出力: "123.46" (丸められる)
  

数値が出力されない、またはゴミデータが出力される

問題の現象
浮動小数点数を出力しようとしているのに、何も表示されない、または意味不明な文字列が表示される。

考えられる原因とトラブルシューティング

• 出力バッファのフラッシュ忘れ
  QTextStream は内部バッファを使用しているため、すぐにデータがデバイスに書き込まれないことがあります。特にプログラムの終了前に flush() を呼び出さないと、一部のデータが失われる可能性があります。

  • 対策
    重要な出力の後、またはプログラム終了前に stream.flush(); を呼び出すか、ストリームのデストラクタが自動的にフラッシュするようにデバイスが閉じられていることを確認してください（例: QFile::close()）。

• QTextStream が有効な QIODevice または QString に関連付けられていない
  QTextStream は、出力先（ファイル、コンソール、文字列など）が設定されていないと機能しません。

  • 対策
    QTextStream を初期化する際に、有効な QIODevice ポインタ（QFile, QProcess, QTcpSocket など）または QString ポインタを渡しているか確認してください。

    // 良い例: QString に出力
    QString output;
    QTextStream stream(&output);
    stream << 123.45;
    
    // 良い例: QFile に出力
    QFile file("output.txt");
    if (file.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream stream(&file);
        stream << 123.45;
        file.close();
    } else {
        // エラー処理
    }
    

予期せぬ丸めや精度不足

問題の現象
出力される浮動小数点数が、元の値から丸められたり、期待よりも少ない精度で表示されたりする。

考えられる原因とトラブルシューティング

• 浮動小数点数の限界
  float や double はコンピュータで表現できる精度の限界があります。非常に大きな数や、小数点以下が非常に多い数を扱う場合、たとえ QTextStream の精度設定を高くしても、元の数値の時点で精度が失われている可能性があります。

  • 対策
    
    • 計算の途中で精度が失われていないか、元の数値の表現に問題がないか確認してください。
    • より高い精度が必要な場合は、Qtには直接的な高精度浮動小数点型はありませんが、Boost.Multiprecisionなどの外部ライブラリの利用を検討してください。

• setRealNumberPrecision() の設定不足
  これは最も一般的な原因です。setRealNumberPrecision() は、FixedNotation および ScientificNotation で小数点以下の桁数を直接指定します。

  • 対策
    必要な精度に合わせて setRealNumberPrecision() の値を増やしてください。

  QTextStream stream(&outputString);
  stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);
  stream.setRealNumberPrecision(10); // 精度を10桁に設定
  stream << 0.12345678901234; // 出力: "0.1234567890" (過剰な桁は丸められる)
  

コンパイルエラー: QTextStream::SmartNotation などが認識されない

問題の現象
QTextStream::SmartNotation などの列挙型がコンパイルエラーになる（例: 'SmartNotation' is not a member of 'QTextStream'）。

考えられる原因とトラブルシューティング

• Qtのバージョンによる違い
  非常に古いQtのバージョンでは、これらの列挙型が異なる名前であったり、存在しない可能性も理論的には考えられますが、現代のQtでは標準的に利用できます。

  • 対策
    使用しているQtのバージョンが古い場合は、ドキュメントを確認してください。

• 必要なヘッダファイルのインクルード忘れ
  QTextStream やその関連する列挙型を使用するには、適切なヘッダファイルをインクルードする必要があります。

  • 対策
    #include <QTextStream> がソースファイルの先頭にあることを確認してください。

全体的なトラブルシューティングのヒント

• Qtドキュメントの参照
  常にQtの公式ドキュメント（QTextStream のページ）を参照し、各メソッドの具体的な挙動や制約を確認してください。最新の情報がそこに含まれています。
• シンプルなコードで再現テスト
  複雑なプログラムの中で問題が発生した場合、QTextStream のフォーマット部分だけを抜き出して、非常にシンプルなコードで同じ問題が再現するかどうかを試してください。これにより、問題が QTextStream の設定にあるのか、それとも他のコード部分にあるのかを特定しやすくなります。
• qDebug() を活用する
  中間的な値や、QTextStream に渡す前の浮動小数点数の値を qDebug() で出力して確認してください。qDebug() はデフォルトで高精度で出力されるため、問題の切り分けに役立ちます。

---

QTextStream::RealNumberNotation は、浮動小数点数（float や double）をテキストストリームに出力する際の形式を制御するために使用されます。ここでは、各表記方法（SmartNotation、FixedNotation、ScientificNotation）の基本的な使い方と、関連する他の設定（setRealNumberPrecision()、setLocale()）との組み合わせ例を示します。

これらの例では、出力をQStringに書き込み、qDebug()でコンソールに表示します。

準備

Qtプロジェクトを作成し、.proファイルにQT += coreを追加してください。

// main.cpp
#include <QCoreApplication>
#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug> // qDebug() を使用するために必要

// 各表記方法をテストする関数
void testRealNumberNotation(double value, double smallValue) {
    QString output;
    QTextStream stream(&output);

    qDebug() << "--- Value: " << value << ", Small Value: " << smallValue << " ---";

    // 1. SmartNotation (デフォルト)
    // 数値に応じて最適な形式を自動選択
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::SmartNotation);
    stream.setRealNumberPrecision(6); // デフォルトの精度に戻す (通常は6)
    output.clear(); // 出力文字列をクリア
    stream << "SmartNotation (Normal): " << value << "\n";
    stream << "SmartNotation (Small): " << smallValue << "\n";
    stream << "SmartNotation (Integer-like): " << 100.0 << "\n";
    qDebug() << output;

    // 2. FixedNotation
    // 常に固定小数点表記
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);
    stream.setRealNumberPrecision(2); // 小数点以下2桁
    output.clear();
    stream << "FixedNotation (Precision 2, Normal): " << value << "\n";
    stream << "FixedNotation (Precision 2, Small): " << smallValue << "\n";
    stream << "FixedNotation (Precision 2, Integer-like): " << 100.0 << "\n";
    qDebug() << output;

    stream.setRealNumberPrecision(8); // 小数点以下8桁
    output.clear();
    stream << "FixedNotation (Precision 8, Normal): " << value << "\n";
    stream << "FixedNotation (Precision 8, Small): " << smallValue << "\n";
    qDebug() << output;

    // 3. ScientificNotation
    // 常に指数表記
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::ScientificNotation);
    stream.setRealNumberPrecision(4); // 小数点以下4桁
    output.clear();
    stream << "ScientificNotation (Precision 4, Normal): " << value << "\n";
    stream << "ScientificNotation (Precision 4, Small): " << smallValue << "\n";
    qDebug() << output;

    stream.setRealNumberPrecision(1); // 小数点以下1桁
    output.clear();
    stream << "ScientificNotation (Precision 1, Normal): " << value << "\n";
    qDebug() << output;
}

int main(int argc, char *argv[]) {
    QCoreApplication a(argc, argv);

    double num1 = 12345.6789;
    double num2 = 0.000000123;
    double num3 = 987654321.0;
    double num4 = 0.00123456789;

    testRealNumberNotation(num1, num2);
    testRealNumberNotation(num3, num4);

    // ロケールの影響を確認
    qDebug() << "\n--- Testing with Locale (German) ---";
    QString localeOutput;
    QTextStream localeStream(&localeOutput);
    localeStream.setLocale(QLocale(QLocale::German, QLocale::Germany)); // ドイツのロケール設定
    localeStream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);
    localeStream.setRealNumberPrecision(2);
    localeStream << "German Locale (Value): " << 1234.567 << "\n";
    qDebug() << localeOutput;

    qDebug() << "\n--- Testing with Locale (C Locale - standard) ---";
    QString cLocaleOutput;
    QTextStream cLocaleStream(&cLocaleOutput);
    cLocaleStream.setLocale(QLocale::cLocale()); // Cロケール（標準の小数点「.」）
    cLocaleStream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);
    cLocaleStream.setRealNumberPrecision(2);
    cLocaleStream << "C Locale (Value): " << 1234.567 << "\n";
    qDebug() << cLocaleOutput;

    return a.exec();
}

各表記方法の詳細

1. • 説明: これはデフォルトの挙動であり、数値の大きさに応じて最も「賢明な」形式（固定小数点表記または指数表記）を自動的に選択します。C言語のprintf()関数の%gフォーマット指定子に似ています。
   • 挙動の例:
     • 123.456 → 123.456 (固定小数点)
     • 0.0000123 → 1.23e-05 (指数表記)
     • 123456789.0 → 1.23457e+08 (指数表記)
     • 100.0 → 100 (末尾のゼロは省略される)

2. QTextStream::FixedNotation

   • 説明: 常に固定小数点表記で出力します。小数点以下の桁数は、setRealNumberPrecision()で指定された値に従います。指定がない場合、デフォルトの精度（通常は6）が適用されます。C言語のprintf()関数の%fフォーマット指定子に似ています。
   • 挙動の例 (setRealNumberPrecision(2)の場合):
     • 123.456 → 123.46 (四捨五入される)
     • 0.0000123 → 0.00 (精度が足りず丸められる)
     • 100.0 → 100.00 (末尾のゼロが追加される)

3. QTextStream::ScientificNotation

   • 説明: 常に指数表記（科学的表記）で出力します。小数点以下の桁数は、setRealNumberPrecision()で指定された値に従います。C言語のprintf()関数の%eフォーマット指定子に似ています。
   • 挙動の例 (setRealNumberPrecision(4)の場合):
     • 12345.6789 → 1.2346e+04
     • 0.000000123 → 1.2300e-07

• setLocale(const QLocale &locale):

  • 数値の出力形式は、ロケール（地域設定）によって異なります。例えば、欧米では小数点にピリオド（.）を使いますが、多くのヨーロッパ諸国ではカンマ（,）を使います。setLocale()を使用することで、この挙動を制御できます。
  • 例では、ドイツのロケールを設定した場合に小数点記号がカンマになることを示しています。標準的な（C言語スタイルの）数値形式が必要な場合は、QLocale::cLocale()を使用するのが一般的です。

• setRealNumberPrecision(int precision):

  • これはQTextStream::RealNumberNotationと密接に関連しており、FixedNotationおよびScientificNotationの場合に小数点以下の出力桁数を決定します。SmartNotationの場合も最大桁数に影響しますが、厳密な意味での小数点以下桁数を指定するものではありません。

---

QString::number()

QString::number() は、数値（整数または浮動小数点数）をQStringに変換するための非常に汎用的な静的メソッドです。浮動小数点数に関しては、QTextStream::RealNumberNotationと同様のフォーマットオプションを提供します。

• 特徴
  
  • 直接QStringを生成するため、一時的なQTextStreamオブジェクトを作成する必要がありません。
  • format引数（'g', 'f', 'e'など）とprecision引数で、QTextStream::setRealNumberNotation()とsetRealNumberPrecision()に似た制御が可能です。
  • ロケールに依存しないため、常にCロケールのようなピリオドを小数点として使用します。ロケールを考慮する場合は、次に説明するQLocale::toString()を使用します。
• 基本的な使い方
  

  #include <QString>
  #include <QDebug>
  
  int main() {
      double value = 12345.6789;
      double smallValue = 0.0000123;
  
      // SmartNotation (char 'g' または 'G' に相当)
      // 'g' または 'G' を使用すると、自動的に最適な表記が選択されます。
      // デフォルトの精度は6です。
      qDebug() << "QString::number (Smart - default):" << QString::number(value);
      qDebug() << "QString::number (Smart - small):" << QString::number(smallValue);
      qDebug() << "QString::number (Smart - precision 10):" << QString::number(value, 'g', 10);
  
      // FixedNotation (char 'f' または 'F' に相当)
      // 指定された小数点以下の桁数で固定表記します。
      qDebug() << "QString::number (Fixed - precision 2):" << QString::number(value, 'f', 2);
      qDebug() << "QString::number (Fixed - precision 8):" << QString::number(smallValue, 'f', 8);
  
      // ScientificNotation (char 'e' または 'E' に相当)
      // 常に指数表記します。
      qDebug() << "QString::number (Scientific - precision 3):" << QString::number(value, 'e', 3);
      qDebug() << "QString::number (Scientific - precision 5):" << QString::number(smallValue, 'e', 5);
  
      return 0;
  }
  

QLocale::toString()

QLocaleクラスのtoString()メソッドは、特定のロケール（地域設定）に基づいて数値を文字列にフォーマットしたい場合に非常に強力です。

• 特徴
  
  • QTextStream::setLocale()と同様に、小数点記号、桁区切り記号などがロケールに合わせて自動的に調整されます。
  • QString::number()と同様に、format引数（'g', 'f', 'e'）とprecision引数で出力形式を制御できます。
  • 特に国際化対応のアプリケーションで、ユーザーの地域設定に合わせた数値表示が必要な場合に適しています。
• 基本的な使い方
  

  #include <QLocale>
  #include <QString>
  #include <QDebug>
  
  int main() {
      double value = 12345.6789;
  
      // システムのデフォルトロケールを使用
      QLocale defaultLocale;
      qDebug() << "Default Locale (Value):" << defaultLocale.toString(value);
  
      // ドイツのロケールを使用 (小数点にカンマを使用)
      QLocale germanLocale(QLocale::German, QLocale::Germany);
      qDebug() << "German Locale (Fixed - precision 2):" << germanLocale.toString(value, 'f', 2);
      qDebug() << "German Locale (Scientific - precision 3):" << germanLocale.toString(value, 'e', 3);
  
      // Cロケール (常にピリオドを小数点として使用)
      QLocale cLocale = QLocale::cLocale();
      qDebug() << "C Locale (Fixed - precision 2):" << cLocale.toString(value, 'f', 2);
  
      return 0;
  }
  

QString::arg() (書式指定文字列)

QString::arg()は、書式指定文字列（%1, %2など）を使用して複数の値を埋め込む際に非常に便利です。浮動小数点数に対しても、C言語のprintfライクなフォーマット指定が可能です。

• 特徴
  
  • C言語のprintfに慣れている開発者には直感的かもしれません。
  • フィールド幅、パディング文字、フォーマットの種類、精度など、非常に柔軟なフォーマット指定が可能です。
  • QTextStreamのようにストリーム形式で逐次的に出力するのではなく、一度にQStringを構築したい場合に適しています。
• 基本的な使い方
  

  #include <QString>
  #include <QDebug>
  
  int main() {
      double value = 123.4567;
  
      // 固定小数点表記、小数点以下2桁
      qDebug() << QString("Value: %1").arg(value, 0, 'f', 2); // 0は最小フィールド幅、無視される
      // ScientificNotation
      qDebug() << QString("Value: %1").arg(value, 0, 'e', 3);
      // フィールド幅とパディング
      qDebug() << QString("Padded: %1").arg(value, 10, 'f', 2, QChar('0')); // 幅10、'0'で埋める
  
      // 複数の引数
      double v1 = 10.12;
      double v2 = 20.345;
      qDebug() << QString("First: %1, Second: %2").arg(v1, 0, 'f', 1).arg(v2, 0, 'f', 2);
  
      return 0;
  }
  

C++ 標準ライブラリの std::to_string / std::stringstream / std::format (C++20)

Qtアプリケーションであっても、C++標準ライブラリの機能を使用することも可能です。

• std::format (C++20以降)
  

  • C++20で導入された新しいフォーマットライブラリで、Pythonのstr.format()やRustのformat!マクロに似た、型安全で柔軟な書式設定を提供します。非常に強力で推奨されるモダンなC++のアプローチです。

  •   #include <string>
      #include <format> // C++20
      #include <iostream>
    
      int main() {
          double value = 123.4567;
    
          // 固定小数点表記、小数点以下2桁
          std::cout << std::format("Value: {:.2f}\n", value);
          // ScientificNotation、小数点以下3桁
          std::cout << std::format("Value: {:.3e}\n", value);
          // 幅10、'0'で埋める、小数点以下2桁の固定小数点
          std::cout << std::format("Padded: {:010.2f}\n", value);
    
          return 0;
      }
    

  • 特徴
    非常に強力で読みやすいフォーマット文字列を提供します。QTextStreamやQString::arg()よりも柔軟でエラーになりにくいです。ただし、C++20以降の標準なので、古いコンパイラでは利用できません。

• std::stringstream
  

  • C++のストリーム機能を利用して、より柔軟なフォーマットが可能です。std::fixed、std::scientific、std::setprecisionなどのマニピュレータを使用します。

  •   #include <sstream>
      #include <iomanip> // std::setprecision, std::fixed, std::scientific
      #include <iostream>
    
      int main() {
          double value = 123.456789;
    
          std::stringstream ss;
          ss << std::fixed << std::setprecision(2) << value;
          std::cout << "stringstream (Fixed - precision 2): " << ss.str() << std::endl;
    
          ss.str(""); // クリア
          ss.clear(); // フラグもクリア
          ss << std::scientific << std::setprecision(3) << value;
          std::cout << "stringstream (Scientific - precision 3): " << ss.str() << std::endl;
    
          return 0;
      }
    

  • 特徴
    C++標準の機能であり、Qtに依存しません。QTextStreamに似たストリームベースのインターフェースを提供します。ロケール設定も可能です。
• • 最もシンプルですが、フォーマット制御がほとんどできません。 浮動小数点数はデフォルトの精度で出力され、小数点以下のゼロが除去されないなど、QTextStream::SmartNotationやQString::number('g')のような挙動ではありません。

  •   #include <string>
      #include <iostream> // qDebug() の代わりに直接出力
    
      int main() {
          double value = 123.45;
          double smallValue = 0.0000123;
          std::cout << "std::to_string (Value): " << std::to_string(value) << std::endl;
          std::cout << "std::to_string (SmallValue): " << std::to_string(smallValue) << std::endl;
          return 0;
      }
      // 出力例:
      // std::to_string (Value): 123.450000
      // std::to_string (SmallValue): 0.000012
    

代替方法	特徴	どのような場合に使用するか
QString::number()	シンプルで直接的。Cロケールのような挙動。formatとprecisionで制御。	最も一般的なQtでの数値→文字列変換。ロケールを考慮しない場合。
QLocale::toString()	ロケール（地域設定）に基づいてフォーマット。小数点記号や桁区切りが自動調整。	国際化対応アプリケーション。ユーザーの地域に合わせた表示が必要な場合。
QString::arg()	printfライクな書式指定文字列で柔軟なフォーマット。複数の値を一度に埋め込める。	フォーマットされた文字列全体を構築したい場合。C言語の経験がある場合。
std::stringstream	C++標準のストリーム。マニピュレータで詳細なフォーマット。	Qtに依存せず、C++標準のみで完結させたい場合。ストリームベースの処理。
std::format (C++20)	最新のC++標準。型安全で強力な書式設定。読みやすく柔軟。	モダンなC++開発。C++20以降の環境が利用できる場合。