国際化対応もバッチリ！Qt `QTextStream`でロケールに合わせた数値表示

QTextStream::setRealNumberNotation()とは

QTextStream::setRealNumberNotation()は、QtのQTextStreamクラスのメンバー関数で、ストリームに浮動小数点数（floatやdouble）を書き出す際の表記形式を設定するために使用されます。

QTextStreamは、ファイルや文字列、標準入出力など、様々なテキストベースのデータストリームを扱うための便利なインターフェースを提供します。数値を書き出す際、その表示形式を細かく制御できる機能の一つがこのsetRealNumberNotation()です。

引数と利用可能な表記形式

この関数は、QTextStream::RealNumberNotation型の列挙値を引数として受け取ります。主な列挙値は以下の3つです。

1. • 数値を科学的表記（指数表記）で出力します。例えば、12345.0は1.2345e+04のように、0.000123は1.23e-04のように出力されます。
   • C++標準ライブラリのprintf()関数の%eフラグに相当します。

2. QTextStream::FixedNotation (固定小数点表記)

   • 数値を固定小数点表記で出力します。例えば、12345.0は12345.000000のように、0.000123は0.000123のように出力されます。
   • 小数点以下の桁数は、QTextStream::setRealNumberPrecision()で設定できます。
   • C++標準ライブラリのprintf()関数の%fフラグに相当します。

3. QTextStream::SmartNotation (スマート表記)

   • 数値を最も適切な形式で出力します。これは、数値の大きさに応じて科学的表記と固定小数点表記を自動的に切り替えるものです。
   • 例えば、大きな数値や非常に小さな数値は科学的表記で、通常の範囲の数値は固定小数点表記で出力されます。
   • C++標準ライブラリのprintf()関数の%gフラグに相当します。

以下にC++での使用例を示します。

#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug> // qlDebug()用

int main() {
    QString outputString;
    QTextStream stream(&outputString);

    double value1 = 12345.6789;
    double value2 = 0.0000012345;
    double value3 = 123.45;

    // 1. 科学的表記 (ScientificNotation)
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::ScientificNotation);
    stream << "Scientific: " << value1 << ", " << value2 << "\n";
    qDebug() << outputString; // 出力例: "Scientific: 1.234568e+04, 1.234500e-06"

    outputString.clear(); // 出力文字列をクリア

    // 2. 固定小数点表記 (FixedNotation)
    // 小数点以下の桁数を設定するために setRealNumberPrecision() もよく使われます
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);
    stream.setRealNumberPrecision(5); // 小数点以下5桁
    stream << "Fixed (5 precision): " << value1 << ", " << value2 << "\n";
    qDebug() << outputString; // 出力例: "Fixed (5 precision): 12345.67890, 0.00000" (四捨五入や桁合わせによる)

    outputString.clear();

    // 3. スマート表記 (SmartNotation)
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::SmartNotation);
    // setRealNumberPrecision() も SmartNotation の挙動に影響を与えます
    stream.setRealNumberPrecision(6); // デフォルトの精度に戻すか、明示的に設定
    stream << "Smart: " << value1 << ", " << value2 << ", " << value3 << "\n";
    qDebug() << outputString; // 出力例: "Smart: 12345.7, 1.2345e-06, 123.45" (数値により自動選択)

    return 0;
}

---

QTextStream::setRealNumberNotation()自体が直接エラーを発生させることは稀ですが、意図しない出力結果になったり、他のフォーマット設定と組み合わせて使う際に混乱が生じることがあります。以下に、一般的な問題点とそれらのトラブルシューティング方法を挙げます。

想定通りの浮動小数点数フォーマットにならない

問題の現象
setRealNumberNotation()でFixedNotationを設定したのに科学的表記になったり、SmartNotationなのに常に科学的表記になってしまう、など。

原因とトラブルシューティング

• 設定の適用が遅い/リセットされている
  setRealNumberNotation()は、その関数が呼び出された時点から以降の出力に適用されます。もし、設定後に別の関数呼び出しや操作でストリームの状態がリセットされたり、別のフォーマット設定が上書きされたりすると、意図しない結果になることがあります。

  トラブルシューティング
  浮動小数点数を出力する直前に設定を呼び出しているか確認してください。特に、複数のストリーム操作を行う関数内で、ストリームの状態が予期せず変更されていないか確認が必要です。

• デフォルトの動作を理解していない
  QTextStreamはデフォルトでSmartNotationを使用します。これは、数値の大きさに応じて自動的に最適な表記を選択するため、小さい値や非常に大きい値では科学的表記になることがあります。明示的にFixedNotationを設定していないと、このデフォルトの挙動で出力されることになります。

  トラブルシューティング
  意図する形式がFixedNotationであれば、必ずstream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);と明示的に設定してください。

• setRealNumberPrecision()との組み合わせ
  setRealNumberNotation()は、浮動小数点数の「表記形式」を設定しますが、小数点以下の「桁数」はQTextStream::setRealNumberPrecision()で制御されます。

  • FixedNotationの場合: setRealNumberPrecision()で設定された桁数で固定小数点表示されます。
  • ScientificNotationの場合: setRealNumberPrecision()で設定された桁数が有効数字の桁数になります。
  • SmartNotationの場合: setRealNumberPrecision()で設定された桁数を「最大有効数字」として、値の大きさに応じて最適な形式（固定小数点または科学的）が選択されます。もしsetRealNumberPrecision()が小さすぎる値に設定されていると、値が少しでも大きい場合にすぐに科学的表記に切り替わってしまうことがあります。

  トラブルシューティング
  setRealNumberPrecision()の設定を調整し、希望する表示範囲をカバーしているか確認してください。

doubleではなくintが出力されてしまう

問題の現象
浮動小数点数を出力したいのに、なぜか整数として出力されてしまう。

原因とトラブルシューティング

• 変数の型がdoubleやfloatではない
  これはsetRealNumberNotation()とは直接関係ありませんが、よくある間違いです。QTextStreamに渡す変数がintやlongなどの整数型である場合、当然ながら浮動小数点数としてのフォーマットは適用されません。

  トラブルシューティング
  出力したい数値がdoubleまたはfloat型であることを確認してください。必要に応じて型キャストを行ってください。

  int integerValue = 123;
  double doubleValue = 123.0; // 明示的に浮動小数点数にする
  stream << (double)integerValue; // キャスト
  

ロケールの影響 (稀だが考慮すべき点)

問題の現象
小数点としてピリオド（.）ではなくカンマ（,）が出力されるなど、国や地域ごとのフォーマットが適用されてしまう。

原因とトラブルシューティング
QTextStreamはデフォルトでシステムのロケール設定に従って数値フォーマットを行うことがあります。setRealNumberNotation()自体は表記形式を設定しますが、小数点記号や桁区切り文字はQLocaleの設定に依存する場合があります。

トラブルシューティング
もし特定のロケールに依存しない、または特定のロケールに強制したい場合は、QTextStream::setLocale()を使用します。

// 常にUS英語のロケールで出力する（ピリオドを小数点として使用）
stream.setLocale(QLocale(QLocale::English, QLocale::UnitedStates));
stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);
stream.setRealNumberPrecision(2);
stream << 1234.567; // 出力例: 1234.57

QDebugとの混同

問題の現象
QTextStreamで設定したはずのフォーマットがqDebug()の出力に反映されない。

原因とトラブルシューティング
qDebug()は通常、独自のフォーマット規則を持っており、QTextStreamの設定とは独立しています。QTextStreamのフォーマット設定は、そのQTextStreamオブジェクトを通して出力されるテキストにのみ影響します。

トラブルシューティング
QTextStreamでフォーマットされた結果をQStringに格納し、そのQStringをqDebug()で出力することで、意図したフォーマットのデバッグ出力を得られます。

QString debugOutput;
QTextStream stream(&debugOutput);
stream.setRealNumberNotation(QTextStream::ScientificNotation);
stream << 12345.67;
qDebug() << "Formatted output:" << debugOutput;

---

QTextStream::setRealNumberNotation()は、浮動小数点数の出力形式を制御するために非常に便利です。ここでは、異なる表記形式（科学的、固定小数点、スマート）と、関連するsetRealNumberPrecision()やsetLocale()との組み合わせの例を示します。

準備

これらの例を実行するには、Qtプロジェクト（例: Qt Console Application）を作成し、.proファイルにQT += coreを追加してください。

基本的なインクルード

#include <QCoreApplication> // コンソールアプリケーションの場合
#include <QTextStream>      // QTextStreamを使用するため
#include <QString>          // QStringを使用するため
#include <QDebug>           // qlDebug()で出力を確認するため
#include <QFile>            // ファイル出力の例で使用
#include <QLocale>          // ロケール設定の例で使用

例1：異なる表記形式の比較

この例では、同じ浮動小数点数をScientificNotation、FixedNotation、SmartNotationの3つの異なる形式で出力し、その違いを示します。

#include <QCoreApplication>
#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QCoreApplication a(argc, argv);

    double value1 = 12345.6789;
    double value2 = 0.00000123; // 非常に小さい値
    double value3 = 54.321;     // 通常の値

    QString outputBuffer;
    QTextStream stream(&outputBuffer);

    // --- 1. 科学的表記 (ScientificNotation) ---
    // setRealNumberPrecision() で有効数字の桁数を指定します
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::ScientificNotation);
    stream.setRealNumberPrecision(6); // 有効数字6桁

    stream << "--- Scientific Notation ---\n";
    stream << "Value 1: " << value1 << "\n";
    stream << "Value 2: " << value2 << "\n";
    stream << "Value 3: " << value3 << "\n\n";

    qDebug() << outputBuffer;
    outputBuffer.clear(); // バッファをクリア

    // --- 2. 固定小数点表記 (FixedNotation) ---
    // setRealNumberPrecision() で小数点以下の桁数を指定します
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);
    stream.setRealNumberPrecision(2); // 小数点以下2桁

    stream << "--- Fixed Notation (Precision 2) ---\n";
    stream << "Value 1: " << value1 << "\n";
    stream << "Value 2: " << value2 << "\n";
    stream << "Value 3: " << value3 << "\n\n";

    qDebug() << outputBuffer;
    outputBuffer.clear();

    // 固定小数点表記で、より多くの精度を指定
    stream.setRealNumberPrecision(8); // 小数点以下8桁
    stream << "--- Fixed Notation (Precision 8) ---\n";
    stream << "Value 1: " << value1 << "\n";
    stream << "Value 2: " << value2 << "\n";
    stream << "Value 3: " << value3 << "\n\n";

    qDebug() << outputBuffer;
    outputBuffer.clear();

    // --- 3. スマート表記 (SmartNotation) ---
    // 値の大きさに応じて自動的に切り替わります
    // setRealNumberPrecision() は有効数字の最大桁数として機能します
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::SmartNotation);
    stream.setRealNumberPrecision(6); // デフォルトの精度に近く、一般的な表示に適しています

    stream << "--- Smart Notation (Precision 6) ---\n";
    stream << "Value 1: " << value1 << "\n";
    stream << "Value 2: " << value2 << "\n";
    stream << "Value 3: " << value3 << "\n\n";

    qDebug() << outputBuffer;
    outputBuffer.clear();

    // SmartNotation で、より大きな精度を指定
    stream.setRealNumberPrecision(10); // より多くの有効数字を考慮
    stream << "--- Smart Notation (Precision 10) ---\n";
    stream << "Value 1: " << value1 << "\n";
    stream << "Value 2: " << value2 << "\n";
    stream << "Value 3: " << value3 << "\n\n";

    qDebug() << outputBuffer;
    outputBuffer.clear();

    return a.exec();
}

出力例（環境によって小数点以下の丸めなどが若干異なる場合があります）：

--- Scientific Notation ---
Value 1: 1.234568e+04
Value 2: 1.230000e-06
Value 3: 5.432100e+01

--- Fixed Notation (Precision 2) ---
Value 1: 12345.68
Value 2: 0.00
Value 3: 54.32

--- Fixed Notation (Precision 8) ---
Value 1: 12345.67890000
Value 2: 0.00000123
Value 3: 54.32100000

--- Smart Notation (Precision 6) ---
Value 1: 12345.7
Value 2: 1.23e-06
Value 3: 54.321

--- Smart Notation (Precision 10) ---
Value 1: 12345.6789
Value 2: 1.2345e-06
Value 3: 54.321

例2：ファイルへの出力とロケール設定

この例では、QFileを使用してテキストファイルに浮動小数点数を書き込み、setLocale()がどのように小数点表記に影響するかを示します。

#include <QCoreApplication>
#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug>
#include <QFile>
#include <QLocale> // QLocale を使用するため

int main(int argc, char *argv[]) {
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QString fileName = "numbers.txt";
    QFile file(fileName);

    if (!file.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text | QIODevice::Truncate)) {
        qDebug() << "ファイルをオープンできません: " << file.errorString();
        return 1;
    }

    QTextStream stream(&file);
    double pi = 3.1415926535;
    double largeNumber = 1234567.89;

    // デフォルトのロケールで出力（システム設定に依存）
    stream << "--- Default Locale (System Dependant) ---\n";
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);
    stream.setRealNumberPrecision(4);
    stream << "Pi: " << pi << "\n";
    stream << "Large Number: " << largeNumber << "\n\n";

    // US英語ロケールでの出力（小数点にピリオド、桁区切りなし）
    stream << "--- US English Locale ---\n";
    stream.setLocale(QLocale(QLocale::English, QLocale::UnitedStates));
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);
    stream.setRealNumberPrecision(4);
    stream << "Pi: " << pi << "\n";
    stream << "Large Number: " << largeNumber << "\n\n";

    // ドイツ語ロケールでの出力（小数点にカンマ、桁区切りにピリオド）
    stream << "--- German Locale ---\n";
    stream.setLocale(QLocale(QLocale::German, QLocale::Germany));
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);
    stream.setRealNumberPrecision(4);
    stream << "Pi: " << pi << "\n";
    stream << "Large Number: " << largeNumber << "\n\n";

    // ロケールをリセットしてSmartNotationを使用
    stream << "--- Reset Locale, Smart Notation ---\n";
    stream.setLocale(QLocale()); // デフォルトのロケールにリセット
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::SmartNotation);
    stream.setRealNumberPrecision(6); // 有効数字6桁
    stream << "Pi: " << pi << "\n";
    stream << "Large Number: " << largeNumber << "\n\n";

    file.close();
    qDebug() << "ファイル '" << fileName << "' に出力しました。";

    // ファイルの内容をqDebugで確認（オプション）
    QFile readFile(fileName);
    if (readFile.open(QIODevice::ReadOnly | QIODevice::Text)) {
        QTextStream in(&readFile);
        qDebug() << "\n--- File Content ---";
        qDebug() << in.readAll();
        readFile.close();
    }

    return a.exec();
}

--- Default Locale (System Dependant) ---
Pi: 3.1416
Large Number: 1234567.8900

--- US English Locale ---
Pi: 3.1416
Large Number: 1234567.8900

--- German Locale ---
Pi: 3,1416
Large Number: 1.234.567,8900

--- Reset Locale, Smart Notation ---
Pi: 3.14159
Large Number: 1.23457e+06

---

QString::number()関数

QString::number()は、数値をQStringに変換するための非常に柔軟な静的関数です。浮動小数点数に対しては、setRealNumberNotation()と同様のフォーマットオプションを直接引数として指定できます。

• 書式
  QString QString::number(double n, char format = 'g', int precision = 6)
  • n: 変換する浮動小数点数
  • format: フォーマット文字。
    • 'e' または 'E': 科学的表記（例: 1.23e+04）
    • 'f': 固定小数点表記（例: 12345.68）
    • 'g' または 'G': スマート表記（デフォルト。最も簡潔な形式を選択）
  • precision: 精度。'e'または'E'では有効数字の桁数、'f'では小数点以下の桁数、'g'または'G'では有効数字の最大桁数。

例

#include <QCoreApplication>
#include <QString>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QCoreApplication a(argc, argv);

    double value = 12345.6789;

    // 科学的表記
    QString s_scientific = QString::number(value, 'e', 2); // 有効数字2桁
    qDebug() << "QString::number (scientific): " << s_scientific;
    // 出力例: "1.23e+04"

    // 固定小数点表記
    QString s_fixed = QString::number(value, 'f', 2); // 小数点以下2桁
    qDebug() << "QString::number (fixed): " << s_fixed;
    // 出力例: "12345.68"

    // スマート表記
    QString s_smart = QString::number(value, 'g', 6); // 有効数字最大6桁
    qDebug() << "QString::number (smart): " << s_smart;
    // 出力例: "12345.7" (Qtのバージョンや値によって"12345.6789"となることもあります)

    return a.exec();
}

利点

• ストリーム全体の設定を変更するQTextStreamとは異なり、個々の数値変換ごとにフォーマットを制御できます。
• 単一の数値をQStringに変換する際に、非常に簡潔に記述できます。

欠点

QString::arg()関数 (printfスタイル)

QString::arg()は、Qt独自の文字列フォーマット機能で、C言語のprintfに似た形式指定子を使用できます。浮動小数点数に対しても同様のフォーマットが可能です。

• 書式
  QString QString::arg(double a, int fieldWidth = 0, char format = 'g', int precision = -1, const QChar &fillChar = QLatin1Char(' ')) const
  • a: 挿入する浮動小数点数
  • fieldWidth: フィールドの最小幅
  • format: フォーマット文字（'e', 'E', 'f', 'g', 'G'）
  • precision: 精度
  • fillChar: パディング文字

例

#include <QCoreApplication>
#include <QString>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QCoreApplication a(argc, argv);

    double value = 123.4567;

    // printfスタイルのフォーマット文字列を使用
    QString s1 = QString("Value: %1").arg(value, 0, 'f', 2); // 小数点以下2桁の固定小数点
    qDebug() << s1;
    // 出力例: "Value: 123.46"

    QString s2 = QString("Scientific: %1").arg(value, 0, 'e', 3); // 有効数字3桁の科学的表記
    qDebug() << s2;
    // 出力例: "Scientific: 1.235e+02"

    QString s3 = QString("Smart: %1").arg(value, 0, 'g', 5); // 有効数字最大5桁のスマート表記
    qDebug() << s3;
    // 出力例: "Smart: 123.46"

    // フィールド幅とパディング
    QString s4 = QString("Padded: %1").arg(value, 10, 'f', 2, '0'); // 幅10、左に0でパディング
    qDebug() << s4;
    // 出力例: "Padded: 000123.46"

    return a.exec();
}

利点

• 一つの文字列に複数の値を埋め込む場合に便利です。
• C言語のprintfに慣れている開発者には直感的です。

欠点

• QTextStreamのように、連続する出力に対して設定を保持するわけではありません。

QLocale::toString()関数

QLocaleクラスは、地域設定（ロケール）に基づいた数値、日付、時刻などのフォーマットを提供します。これには、浮動小数点数のフォーマットも含まれます。小数点記号や桁区切り文字などもロケールに合わせて自動的に調整されます。

• QLocale::toString()は、QString::number()の引数と似ていますが、設定されたロケールに基づいてフォーマットを行います。
• 書式
  QString QLocale::toString(double f, char format = 'g', int precision = 6) const
  • f: 変換する浮動小数点数
  • format: フォーマット文字（'e', 'E', 'f', 'g', 'G'）
  • precision: 精度

例

#include <QCoreApplication>
#include <QString>
#include <QDebug>
#include <QLocale>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QCoreApplication a(argc, argv);

    double value = 1234567.89123;

    // デフォルトのロケールで出力
    QLocale defaultLocale;
    qDebug() << "Default Locale (Fixed): " << defaultLocale.toString(value, 'f', 2);
    // 出力例（日本のロケールの場合）: "Default Locale (Fixed): 1234567.89"

    qDebug() << "Default Locale (Smart): " << defaultLocale.toString(value, 'g', 6);
    // 出力例（日本のロケールの場合）: "Default Locale (Smart): 1.23457e+06"

    // ドイツ語ロケールで出力（小数点にカンマ、桁区切りにピリオド）
    QLocale germanLocale(QLocale::German, QLocale::Germany);
    qDebug() << "German Locale (Fixed): " << germanLocale.toString(value, 'f', 2);
    // 出力例: "German Locale (Fixed): 1.234.567,89"

    qDebug() << "German Locale (Smart): " << germanLocale.toString(value, 'g', 6);
    // 出力例: "German Locale (Smart): 1.234.57E+06"

    // US英語ロケールで出力（小数点にピリオド、桁区切りにカンマ）
    QLocale usLocale(QLocale::English, QLocale::UnitedStates);
    qDebug() << "US Locale (Fixed): " << usLocale.toString(value, 'f', 2);
    // 出力例: "US Locale (Fixed): 1,234,567.89"

    qDebug() << "US Locale (Smart): " << usLocale.toString(value, 'g', 6);
    // 出力例: "US Locale (Smart): 1.23457e+06"


    return a.exec();
}

利点

• QTextStream::setLocale()と同様のロケール設定を個別に適用できます。
• 国際化対応（I18n）が重要である場合、ロケールに応じた適切な数値フォーマットを簡単に実現できます。

欠点

• QTextStreamやQString::arg()に比べて、コードがやや冗長になる可能性があります。

C++標準ライブラリのストリーム操作 (<iomanip>を使用)

Qtの機能に依存せず、C++標準ライブラリのiostreamと<iomanip>ヘッダを使用して浮動小数点数をフォーマットすることも可能です。これはQt以外のC++プロジェクトでも共通して使える方法です。

• std::setfill(char): パディング文字
• std::setw(n): フィールド幅
• std::setprecision(n): 精度（std::fixedの場合は小数点以下の桁数、それ以外は有効数字の桁数）
• std::scientific: 科学的表記
• std::fixed: 固定小数点表記

例

#include <iostream> // std::cout, std::fixed, std::scientific
#include <iomanip>  // std::setprecision, std::setw, std::setfill
#include <string>   // std::stringを使用する場合

int main() {
    double value = 12345.6789;

    // 固定小数点表記
    std::cout << "Fixed: " << std::fixed << std::setprecision(2) << value << std::endl;
    // 出力例: Fixed: 12345.68

    // 科学的表記
    std::cout << "Scientific: " << std::scientific << std::setprecision(3) << value << std::endl;
    // 出力例: Scientific: 1.235e+04

    // デフォルト（通常はSmartNotationに類似）
    std::cout.unsetf(std::ios_base::floatfield); // fixedやscientificの設定を解除
    std::cout << "Default (precision 6): " << std::setprecision(6) << value << std::endl;
    // 出力例: Default (precision 6): 12345.7

    // 幅とパディング
    std::cout << "Padded: " << std::fixed << std::setprecision(2) << std::setw(10) << std::setfill('0') << value << std::endl;
    // 出力例: Padded: 0012345.68

    // std::stringstream を使用して文字列に変換
    std::stringstream ss;
    ss << std::fixed << std::setprecision(2) << value;
    std::string s = ss.str();
    std::cout << "Using stringstream: " << s << std::endl;
    // 出力例: Using stringstream: 12345.68

    return 0;
}

利点

• 標準的な方法であり、多くのC++開発者にとって馴染み深いです。
• Qtに依存しない純粋なC++の機能なので、移植性が高いです。

• QtのQStringやQLocaleの豊富な機能（例: arg()のような便利な文字列置換、ロケール名の指定による自動フォーマット）に比べると、手動でのロケール管理や文字列結合が必要になる場合があります。

方法	用途	特徴
QTextStream::setRealNumberNotation()	ストリームへの連続的な浮動小数点数出力	ストリーム全体のフォーマットを設定、setRealNumberPrecision()と連携
QString::number()	単一の浮動小数点数をQStringに変換	最も簡潔、変換ごとにフォーマット指定
QString::arg()	フォーマット文字列への複数値の埋め込み	printfライクな構文、柔軟な文字列生成
QLocale::toString()	ロケールに基づいた浮動小数点数のQString変換	国際化対応、ロケール固有の小数点/桁区切りに対応
C++標準ストリーム (<iomanip>)	純粋なC++環境でのフォーマット、std::coutなど	Qtに依存しない、iostreamに直接適用