【Qt入門】QTextStream::setFieldAlignment()で美しくテキストを揃える方法

QTextStream::setFieldAlignment() とは

QTextStream::setFieldAlignment()は、QtのQTextStreamクラスが提供する関数で、テキストを出力する際に、指定されたフィールド幅内でテキストをどのように配置するか（揃え方）を設定するために使用されます。

QTextStreamは、ファイルや文字列、コンソールなどに対してテキストを読み書きするための便利なインターフェースを提供します。特に、整形されたテキスト（例えば、表形式のデータなど）を出力する際に、setFieldAlignment()とsetFieldWidth()（フィールド幅を設定する関数）を組み合わせて使うことで、きれいにレイアウトされた出力を生成できます。

FieldAlignment 列挙型

setFieldAlignment()関数には、QTextStream::FieldAlignmentという列挙型の値を引数として渡します。この列挙型は以下の値を持ちます。

• QTextStream::AlignAccountingStyle:
  • AlignRightと似ていますが、数字の符号（プラスやマイナス）がフィールドの左端に揃えられる点が異なります。これは会計処理などで数字を整列させる際に便利です。
  • 例: |-$123.45 | （符号が左、数字が右）
• QTextStream::AlignCenter:
  • フィールドの中央にテキストを揃えます。
  • テキストがフィールド幅より短い場合、残りのスペースは左右に均等にパディングされます。
  • 例: | テキスト |
• QTextStream::AlignRight:
  • フィールドの右端にテキストを揃えます。
  • テキストがフィールド幅より短い場合、残りのスペースは左側にパディングされます。
  • 例: | テキスト|
• QTextStream::AlignLeft:
  • フィールドの左端にテキストを揃えます。
  • テキストがフィールド幅より短い場合、残りのスペースは右側にパディング（詰め物）されます。
  • 例: |テキスト |

以下にC++での使用例を示します。

#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug> // デバッグ出力用

int main() {
    QString output;
    QTextStream stream(&output);

    stream.setFieldWidth(10); // フィールド幅を10文字に設定

    // 左揃え
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignLeft);
    stream << "Left" << "|" << "Text" << Qt::endl; // Qt::endl は改行とフラッシュ

    // 右揃え
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignRight);
    stream << "Right" << "|" << "Align" << Qt::endl;

    // 中央揃え
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignCenter);
    stream << "Center" << "|" << "Align" << Qt::endl;

    // パディング文字の設定（デフォルトはスペース）
    stream.setPadChar('-'); // パディング文字をハイフンに設定
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignLeft);
    stream << "Pad" << "|" << "Char" << Qt::endl;

    qDebug() << output;

    return 0;
}

このコードを実行すると、以下のような出力が得られます（qDebug()の出力形式による若干の違いはありますが、内容としては）。

"Left      |Text      \n"
"     Right|    Align\n"
"  Center  |  Align  \n"
"Pad-------|Char------\n"

---

setFieldWidth() との組み合わせ忘れ

• トラブルシューティング:
  • 必ず setFieldWidth() を呼び出して、適切なフィールド幅を設定していることを確認してください。
  • 出力しようとしているテキストの長さが、設定したフィールド幅を超えていないか確認してください。超えている場合、テキストは切り捨てられることはなく、フィールド幅は無視されて全てのテキストが出力されます。
• 原因: setFieldAlignment() は、フィールド幅 (setFieldWidth()) が設定されていて、かつそのフィールド幅がテキストの長さよりも大きい場合にのみ効果を発揮します。フィールド幅が設定されていない（デフォルトの0）か、テキストがフィールド幅を上回っている場合、アライメントは意味をなしません。
• エラーの症状: setFieldAlignment() を設定しても、テキストが期待通りに整列されない。パディング（余白）が全く入らない、あるいは予想外の場所にパディングされる。

// 悪い例: フィールド幅が設定されていない
QTextStream stream(&output);
stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignRight);
stream << "Hello" << "World"; // 整列されない

// 良い例: フィールド幅を設定
QTextStream stream2(&output);
stream2.setFieldWidth(10); // フィールド幅を設定
stream2.setFieldAlignment(QTextStream::AlignRight);
stream2 << "Hello"; // "     Hello" と出力される

endl や他のマニピュレータへの影響

• トラブルシューティング:
  • endl を出力する直前に setFieldWidth(0) を呼び出してフィールド幅をリセットし、endl の後に再度必要なフィールド幅を設定し直すのが一般的な解決策です。
  • あるいは、単純な改行が必要な場合は、"\n" を直接出力し、必要に応じて flush() を呼び出すことで、この問題を回避できます。
• 原因: QTextStream のフィールド幅とアライメントの設定は、ストリームに流し込むあらゆる要素に適用されます。これには、文字列だけでなく、数値や endl のようなマニピュレータも含まれます。endl は通常、改行文字とストリームのフラッシュを行いますが、setFieldWidth() が有効な場合、その endl 自体も設定されたフィールド幅でパディングされます。
• エラーの症状: endl (改行) や flush などのストリームマニピュレータを出力した際に、余分なパディングや空白が挿入される。

// 問題のある例: endl にもフィールド幅が適用される
QTextStream stream(&output);
stream.setFieldWidth(10);
stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignLeft);
stream << "Item1" << Qt::endl; // "Item1     \n" となり、改行の前にもスペースが入る

// 解決策1: endl の前後にフィールド幅をリセット
QTextStream stream2(&output);
stream2.setFieldWidth(10);
stream2.setFieldAlignment(QTextStream::AlignLeft);
stream2 << "Item1" << qSetFieldWidth(0) << Qt::endl << qSetFieldWidth(10);
stream2 << "Item2" << qSetFieldWidth(0) << Qt::endl;

// 解決策2: 明示的に改行とフラッシュ
QTextStream stream3(&output);
stream3.setFieldWidth(10);
stream3.setFieldAlignment(QTextStream::AlignLeft);
stream3 << "Item1" << "\n"; // これだけではフラッシュされない
stream3.flush(); // 必要であれば手動でフラッシュ

複数の要素に対するアライメントの一貫性

• トラブルシューティング:
  • 各フィールドを出力する直前に、そのフィールドに適用したいアライメントを明示的に設定してください。
  • 複雑な表形式の出力には、QString::arg() や QString::sprintf() などの QString の整形機能を利用することも検討してください。これらの機能は、QTextStream のアライメントとは独立して動作し、より細かな制御が可能です。
• 原因: QTextStream のアライメント設定は、その設定が変更されるまで持続します。つまり、一度 setFieldAlignment(AlignLeft) を設定すると、次に setFieldAlignment() を呼び出すまで、すべての出力が左揃えになります。異なる列で異なるアライメントが必要な場合、列ごと、あるいはフィールドごと（必要であれば）に設定し直す必要があります。
• エラーの症状: 複数の列を持つ表形式のデータを出力しようとした際、各列のアライメントがばらばらになる、または期待通りにならない。

// 複数の列を持つ表の例
QTextStream stream(&output);

// ヘッダー
stream.setFieldWidth(10);
stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignLeft);
stream << "Name" << Qt::endl;

stream.setFieldWidth(5);
stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignRight);
stream << "Age" << Qt::endl;

stream.setFieldWidth(0); // 幅をリセット
stream << "---" << "---" << Qt::endl;

// データ行
stream.setFieldWidth(10);
stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignLeft);
stream << "Alice";

stream.setFieldWidth(5);
stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignRight);
stream << 30 << Qt::endl;

stream.setFieldWidth(10);
stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignLeft);
stream << "Bob";

stream.setFieldWidth(5);
stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignRight);
stream << 25 << Qt::endl;

qDebug() << output;
/*
Name      
  Age
---
Alice      30
Bob      25
*/

上記のように、フィールド幅やアライメントは、各要素の出力前に設定を繰り返す必要があります。

文字エンコーディングの問題

• トラブルシューティング:
  • QTextStream::setCodec() を使用して、明示的にエンコーディング（例: QTextCodec::codecForName("UTF-8")）を設定してください。
  • 出力先の環境（コンソール、ファイルビューアなど）がそのエンコーディングを正しく解釈できることを確認してください。
  • QString の文字幅の計算は、あくまで文字数ベースであり、表示上のグリフ幅とは異なる場合があることを理解してください。複雑な多言語テキストの厳密な整形には、より高度なテキストレイアウトライブラリ（Qt の QFontMetrics や QTextLayout など）を検討する必要があるかもしれません。

AlignAccountingStyle の誤解

• トラブルシューティング:
  • AlignAccountingStyle は主に数値の出力に特化したアライメントであることを理解してください。
  • 数値に符号が含まれていることを確認してください。必要に応じて QTextStream::ForceSign フラグ (stream << QTextStream::ForceSign << value;) を使用して、常に符号を表示させることもできます。
• 原因: AlignAccountingStyle は、数字の符号 (+ や -) をフィールドの左端に揃え、残りの数字部分を右に揃えるという特殊な動作をします。符号がない数字や、数字以外のテキストに対しては、通常の AlignRight と同じような動作になります。
• エラーの症状: AlignAccountingStyle を使用したにもかかわらず、数字の符号が期待通りに左に揃えられない。

---

例1: 基本的なアライメントの適用

この例では、異なるアライメントオプション (AlignLeft, AlignRight, AlignCenter) を使用して、同じテキストがフィールド幅内でどのように配置されるかを示します。

#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug> // デバッグ出力用

int main() {
    QString output;
    QTextStream stream(&output); // QString に出力するための QTextStream

    // フィールド幅を15文字に設定
    // setFieldAlignment は setFieldWidth と組み合わせて初めて意味をなします
    stream.setFieldWidth(15);
    stream.setPadChar('.'); // パディング文字をピリオドに設定（デフォルトはスペース）

    // --- 左揃え (AlignLeft) ---
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignLeft);
    stream << "左揃え"; // フィールド幅内で左に揃えられ、右側がパディングされる
    stream << "|"; // 区切り文字
    stream << "Left"; // 別のテキストも左揃え
    stream << Qt::endl; // 改行とフラッシュ

    // --- 右揃え (AlignRight) ---
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignRight);
    stream << "右揃え"; // フィールド幅内で右に揃えられ、左側がパディングされる
    stream << "|";
    stream << "Right";
    stream << Qt::endl;

    // --- 中央揃え (AlignCenter) ---
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignCenter);
    stream << "中央揃え"; // フィールド幅内で中央に揃えられ、左右がパディングされる
    stream << "|";
    stream << "Center";
    stream << Qt::endl;

    // 結果を出力 (QDebug は自動で引用符を追加することがあります)
    qDebug() << "--- 基本的なアライメントの適用 ---";
    qDebug() << output;

    /*
    予想される出力 (QDebug の出力形式に依存):
    "--- 基本的なアライメントの適用 ---"
    "左揃え........|Left...........\n"
    "........右揃え|..........Right\n"
    ".....中央揃え..|....Center.....\n"
    */

    return 0;
}

解説

• Qt::endl は改行を行い、同時にストリームをフラッシュします。
• 各 setFieldAlignment() の呼び出しにより、その後に続く出力が指定されたアライメントに従って整形されます。
• stream.setPadChar('.'); で、余ったスペースを埋める文字をピリオドに設定しています。
• stream.setFieldWidth(15); で、各出力要素に15文字分のスペースを割り当てます。

例2: 表形式データの出力 (複数の列と動的なアライメント変更)

この例では、QTextStream を使ってシンプルな表形式のデータを出力する方法を示します。各列で異なるアライメントを設定し、データの種類によってアライメントを切り替える様子がわかります。

#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug>
#include <QList> // QList を使用

struct Product {
    QString name;
    double price;
    int quantity;
};

int main() {
    QString output;
    QTextStream stream(&output);

    // ヘッダー行の出力
    stream.setFieldWidth(20);
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignLeft);
    stream << "商品名";

    stream.setFieldWidth(10);
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignRight); // 価格は右揃え
    stream << "価格";

    stream.setFieldWidth(8);
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignRight); // 数量も右揃え
    stream << "数量";

    // ヘッダーの後に改行し、次の行への影響を避けるためにフィールド幅をリセット
    stream.setFieldWidth(0); // 重要: endl や次の行にフィールド幅が適用されるのを防ぐ
    stream << Qt::endl;

    // 区切り線
    stream.setFieldWidth(38); // 全体の幅に合わせて設定
    stream.setPadChar('-');
    stream << "" << Qt::endl; // 空文字列をパディングして区切り線を作成
    stream.setPadChar(' '); // パディング文字をスペースに戻す

    // 商品データのリスト
    QList<Product> products = {
        {"りんご", 120.0, 5},
        {"バナナ (長め)", 98.5, 12},
        {"みかん", 60.0, 200}
    };

    // 各商品データの出力
    for (const Product& p : products) {
        // 商品名 (左揃え)
        stream.setFieldWidth(20);
        stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignLeft);
        stream << p.name;

        // 価格 (右揃え、小数点以下2桁表示)
        stream.setFieldWidth(10);
        stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignRight);
        stream.setRealNumberPrecision(2); // 小数点以下の精度
        stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation); // 固定小数点表記
        stream << p.price;

        // 数量 (右揃え)
        stream.setFieldWidth(8);
        stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignRight);
        stream << p.quantity;

        // 各行の終わりに改行し、次の行への影響を避けるためにフィールド幅をリセット
        stream.setFieldWidth(0); // 重要
        stream << Qt::endl;
    }

    qDebug() << "--- 表形式データの出力 ---";
    qDebug() << output;

    /*
    予想される出力:
    "--- 表形式データの出力 ---"
    "商品名                価格      数量\n"
    "--------------------------------------\n"
    "りんご                 120.00       5\n"
    "バナナ (長め)            98.50      12\n"
    "みかん                   60.00     200\n"
    */

    return 0;
}

解説

• QTextStream::AlignAccountingStyle も使用できますが、これは主に符号付きの数値（特に負の数）の左揃えと、数値自体の右揃えを組み合わせる場合に役立ちます。
• 価格の表示には setRealNumberPrecision() と setRealNumberNotation() を使用して、小数点以下の桁数と表示形式を制御しています。
• stream.setFieldWidth(0); は非常に重要です。これを呼び出すことで、その後の出力（特に Qt::endl や次の行の最初の要素）に、前の setFieldWidth() の設定が適用されるのを防ぎます。これを忘れると、Qt::endl 自体がフィールド幅でパディングされたり、次の行の最初の要素が意図しないパディングを受けたりする可能性があります。
• ヘッダー行とデータ行で、それぞれの列に合わせた setFieldWidth() と setFieldAlignment() を設定しています。

例3: AlignAccountingStyle の使用

この例では、AlignAccountingStyle が数値の符号と数値本体をどのように配置するかを示します。

#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug>

int main() {
    QString output;
    QTextStream stream(&output);

    stream.setFieldWidth(15); // フィールド幅を15に設定
    stream.setPadChar('_');   // パディング文字をアンダースコアに設定

    // --- AlignRight (比較用) ---
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignRight);
    stream << "通常右揃え:" << Qt::endl;
    stream << 123.45 << Qt::endl;
    stream << -678.90 << Qt::endl;
    stream << Qt::endl;

    // --- AlignAccountingStyle ---
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignAccountingStyle);
    stream << "会計スタイル:" << Qt::endl;
    stream << 123.45 << Qt::endl;   // 正の数は AlignRight と同じように見えることが多い
    stream << -678.90 << Qt::endl;  // 符号が左に、数値が右に揃う
    stream << 0.0 << Qt::endl;
    stream << Qt::endl;

    // 常に符号を表示させる場合 (QTextStream::ForceSign)
    stream.setFieldAlignment(QTextStream::AlignAccountingStyle);
    stream << "符号強制表示 (会計スタイル):" << Qt::endl;
    stream << QTextStream::ForceSign << 123.45 << Qt::endl; // +123.45 と表示される
    stream << QTextStream::ForceSign << -678.90 << Qt::endl;
    stream << QTextStream::ForceSign << 0.0 << Qt::endl;
    stream << QTextStream::NoForceSign; // 設定を元に戻す

    qDebug() << "--- AlignAccountingStyle の使用 ---";
    qDebug() << output;

    /*
    予想される出力:
    "--- AlignAccountingStyle の使用 ---"
    "通常右揃え:\n"
    "_________123.45\n"
    "________-678.90\n"
    "\n"
    "会計スタイル:\n"
    "_________123.45\n"
    "-________678.90\n"
    "__________0.0\n"
    "\n"
    "符号強制表示 (会計スタイル):\n"
    "+________123.45\n"
    "-________678.90\n"
    "+__________0.0\n"
    */

    return 0;
}

• QTextStream::ForceSign マニピュレータを使用すると、正の数にも明示的にプラス記号 (+) が表示されるようになり、AlignAccountingStyle の効果がより明確になります。
• AlignAccountingStyle は、特に負の数において、符号がフィールドの左端に揃えられ、数値部分が右端に揃えられるという特殊な動作をします。正の数の場合は、通常の AlignRight と同じに見えることが多いです。

---

QString::arg() を使用する

QString::arg() は、Qt で文字列整形を行うための最も一般的で推奨される方法の1つです。printf スタイルのフォーマットに似ていますが、より型安全で Unicode フレンドリーです。フィールド幅とパディング文字を指定できます。

特徴

• 小数点の精度: 浮動小数点数に対しては、小数点以下の精度や表記法も指定できます。
• アライメントと幅: 負のフィールド幅を指定することで左揃え、正のフィールド幅で右揃えが可能です。パディング文字も指定できます。
• 型安全: 引数の型が自動的に処理される。

例

#include <QString>
#include <QDebug>

int main() {
    QString name = "Alice";
    int age = 30;
    double score = 95.75;

    // 左揃え
    // 負のフィールド幅 (-10) で左揃え、デフォルトのスペースでパディング
    QString s1 = QString("名前: %1 | スコア: %2").arg(name, -10).arg(score, 0, 'f', 2);
    qDebug() << s1;
    // 出力例: "名前: Alice      | スコア: 95.75"

    // 右揃え
    // 正のフィールド幅 (8) で右揃え、'*' でパディング
    QString s2 = QString("商品コード: %1 | 数量: %2").arg("A123", 8, QChar('*')).arg(age, 4, QChar('0'));
    qDebug() << s2;
    // 出力例: "商品コード: ****A123 | 数量: 0030"

    // 複数の引数と異なるアライメントを組み合わせた表形式
    QString header = QString("%1 %2 %3")
                         .arg("項目", -15) // 左揃え
                         .arg("価格", 10)  // 右揃え
                         .arg("在庫", 8);   // 右揃え
    qDebug() << header;

    QString item1 = QString("%1 %2 %3")
                        .arg("ペン", -15)
                        .arg(150.0, 10, 'f', 2)
                        .arg(50, 8);
    qDebug() << item1;

    QString item2 = QString("%1 %2 %3")
                        .arg("ノート (A4)", -15)
                        .arg(320.50, 10, 'f', 2)
                        .arg(10, 8);
    qDebug() << item2;

    /* 予想される出力:
    "項目           価格       在庫"
    "ペン             150.00       50"
    "ノート (A4)      320.50       10"
    */

    return 0;
}

利点

• シンプルで直感的な構文。
• 国際化（i18n）が容易。
• QTextStream のようにストリームの状態を保持しないため、意図しないパディングやアライメントの影響を受けにくい。

QString::leftJustified(), QString::rightJustified()

これらの関数は、文字列を指定された幅で左右に揃えるための直接的な方法を提供します。

特徴

• 文字列が指定された幅より長い場合、切り捨てるか否かを制御できる。
• 埋め草文字（パディング文字）を指定できる。
• 既存の QString オブジェクトに対して呼び出す。

例

#include <QString>
#include <QDebug>

int main() {
    QString text = "Hello";
    int width = 10;
    QChar fill = '_';

    // 左揃え
    QString leftAligned = text.leftJustified(width, fill);
    qDebug() << "左揃え: " << leftAligned; // 出力: "左揃え: Hello_____"

    // 右揃え
    QString rightAligned = text.rightJustified(width, fill);
    qDebug() << "右揃え: " << rightAligned; // 出力: "右揃え: _____Hello"

    QString longText = "Very long text";
    // 切り捨てずに左揃え
    QString noTruncate = longText.leftJustified(5, '.', false); // false で切り捨てなし
    qDebug() << "切り捨てなし: " << noTruncate; // 出力: "切り捨てなし: Very long text"

    // 切り捨てて左揃え
    QString truncate = longText.leftJustified(5, '.', true); // true で切り捨て
    qDebug() << "切り捨てあり: " << truncate; // 出力: "切り捨てあり: Very " (または "Very.")

    return 0;
}

利点

• 切り捨ての制御ができる。
• 単一の文字列を整形する場合に非常にシンプル。

欠点

• 複数の値を組み合わせた複雑な整形には向かない。
• 中央揃えの機能はない。

QString::sprintf() / QString::asprintf() (Cスタイルの printf フォーマット)

QString::sprintf() は、C++標準ライブラリの sprintf 関数に似た機能を提供します。Qt 5.14 以降では QString::sprintf() が非推奨となり、代わりに静的関数である QString::asprintf() の使用が推奨されています。

特徴

• フィールド幅（例: %10s）や精度（例: %.2f）を指定できる。
• %s, %d, %f などの書式指定子を使用する。
• C言語の printf に慣れている開発者には使いやすい。

注意点

• 非推奨: ほとんどの新しいコードでは QString::arg() の使用が推奨されます。
• Unicode サポートが QString::arg() ほどシームレスではない場合があります。
• QString::sprintf() は QString オブジェクトのメソッドであり、char* バッファへの書き込みではないため、バッファオーバーフローの心配は少ないですが、書式文字列と引数の型が一致しない場合は未定義の動作を引き起こす可能性があります。

例 (推奨されないが、代替として存在)

#include <QString>
#include <QDebug>

int main() {
    double value = 123.456;
    int count = 7;
    const char* label = "Item"; // QString ではない生文字配列

    // QString::asprintf を使用
    QString s1 = QString::asprintf("Value: %10.2f | Count: %-5d | Label: %s",
                                   value, count, label);
    qDebug() << s1;
    // 出力例: "Value:     123.46 | Count: 7     | Label: Item"

    // 旧式の QString::sprintf (非推奨)
    // QString s2;
    // s2.sprintf("Value: %10.2f", value);
    // qDebug() << s2;

    return 0;
}

利点

• C言語の printf に精通していれば、すぐに使える。

欠点

• QString::arg() の方がより Qt スタイルで推奨される。
• Unicode サポートが不十分な場合がある。
• 型安全性が低い。

非常に特殊な要件や、上記の方法で実現できない複雑なケースでは、文字列操作関数 (QString::repeated(), QString::size(), QString::mid()) を組み合わせて手動でパディングやアライメントを実装することも可能です。

例 (中央揃えの簡易実装)

#include <QString>
#include <QDebug>

QString centerJustified(const QString& text, int width, QChar fill = ' ') {
    int textLength = text.length();
    if (textLength >= width) {
        return text; // 幅より長いか同じ場合はそのまま返す
    }

    int totalPadding = width - textLength;
    int leftPadding = totalPadding / 2;
    int rightPadding = totalPadding - leftPadding;

    return QString(fill).repeated(leftPadding) + text + QString(fill).repeated(rightPadding);
}

int main() {
    QString text = "Hello";
    QString centered = centerJustified(text, 15, '-');
    qDebug() << centered; // 出力: "----Hello----"

    QString longText = "This is a very long string.";
    QString notPadded = centerJustified(longText, 10, '-');
    qDebug() << notPadded; // 出力: "This is a very long string." (幅より長いのでパディングなし)

    return 0;
}

利点

• 究極の柔軟性があり、あらゆるアライメントロジックを実装できる。

• 通常は上記のような標準的な方法で十分。
• エラーが発生しやすくなる。
• コード量が多くなり、複雑になる。