初心者必見！Qt QTextStreamでの数値フォーマット実践コード例と注意点

このメソッドは、現在設定されている実数表記のモードを返します。設定可能なモードは、QTextStream::RealNumberNotation 列挙型によって定義されており、以下の3つの値があります。

• QTextStream::ScientificNotation
  常に科学的表記（指数表記）を使用します。これは、printf()関数の%eフラグに似ています。例えば、1.234560e+02や1.230000e-04のように表示されます。

• QTextStream::FixedNotation
  常に固定小数点表記を使用します。これは、printf()関数の%fフラグに似ています。例えば、123.456や0.000123のように表示されます。精度（小数点以下の桁数）は、setRealNumberPrecision()で設定できます。

• QTextStream::SmartNotation (デフォルト)
  最も適切な表記方法を自動的に選択します。これは、C++のprintf()関数の%gフラグに似ています。数値の大きさに応じて、固定小数点表記（例: 123.45）または科学的表記（例: 1.23e+02）のどちらか読みやすい方が選ばれます。

使用例

QTextStream で浮動小数点数を出力する際に、どの表記方法が使われるかを確認するために realNumberNotation() を呼び出すことができます。

#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug> // qDebug() を使用するために必要

int main() {
    QString output;
    QTextStream stream(&output);

    // デフォルトの表記モードを確認
    qDebug() << "デフォルトの表記モード:" << stream.realNumberNotation(); // 通常は QTextStream::SmartNotation

    double value1 = 123456.789;
    double value2 = 0.00000123;
    double value3 = 123.45;

    // SmartNotation (デフォルト) で出力
    stream << value1 << " " << value2 << " " << value3 << "\n";
    qDebug() << "SmartNotationでの出力:" << output;

    // FixedNotation に設定
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);
    output.clear(); // 出力文字列をクリア
    stream << value1 << " " << value2 << " " << value3 << "\n";
    qDebug() << "FixedNotationでの出力:" << output;

    // ScientificNotation に設定
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::ScientificNotation);
    output.clear();
    stream << value1 << " " << value2 << " " << value3 << "\n";
    qDebug() << "ScientificNotationでの出力:" << output;

    return 0;
}

このコードを実行すると、以下のような出力が得られるでしょう（具体的な数値は環境やQtのバージョンによって若干異なる場合があります）。

デフォルトの表記モード: QTextStream::SmartNotation
SmartNotationでの出力: "123456.789 1.23e-06 123.45\n"
FixedNotationでの出力: "123456.789000 0.000001 123.450000\n"
ScientificNotationでの出力: "1.234568e+05 1.230000e-06 1.234500e+02\n"

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ここでは、QTextStream::realNumberNotation() と関連する setRealNumberNotation()、setRealNumberPrecision() を使用する際によくある問題と、そのトラブルシューティングについて説明します。

よくある間違いと問題点

1. • 問題
     QTextStream::SmartNotation を使用している場合、大きな数値や非常に小さな数値は自動的に科学的表記（例: 1.23e+06, 4.56e-07）で出力されます。ユーザーが常に固定小数点表記（例: 1234567.89）を期待している場合、これは「意図しない結果」となります。
   • 原因
     SmartNotation の挙動を誤解している。Qtは読みやすさを考慮して自動的に表記を切り替えます。
   • トラブルシューティング
     常に固定小数点表記が必要な場合は、明示的に stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation); を設定します。

2. 桁落ちや不正確な出力

   • 問題
     浮動小数点数が出力されたときに、期待する小数点以下の桁数が出力されない、または丸め誤差が発生する。
   • 原因
     setRealNumberPrecision() で設定した精度が不適切であるか、デフォルトの精度（通常は6桁）が期待に合っていない。
   • トラブルシューティング
     
     • 必要な小数点以下の桁数を setRealNumberPrecision() で明示的に指定します。例えば、stream.setRealNumberPrecision(2); で小数点以下2桁になります。
     • QTextStream::FixedNotation と組み合わせて使用しないと、SmartNotation や ScientificNotation では期待通りの桁数にならないことがあります。

3. ストリーム設定の混同

   • 問題
     複数の QTextStream オブジェクトを使用している場合や、同じ QTextStream オブジェクトを異なる目的で使用している場合に、表記設定が意図せず上書きされてしまう。
   • 原因
     QTextStream の設定（表記モードや精度など）は、そのストリームオブジェクトに固有のものです。ある場所で設定したものが、他の場所での出力にも影響を与えます。
   • トラブルシューティング
     
     • 各 QTextStream オブジェクトに対して、それぞれ必要な設定を明示的に行います。
     • 特定の出力ブロックに対してのみ一時的に設定を変更したい場合は、設定を変更し、出力後に元の設定に戻すようにします。
     • Qt 5.10 以降では、QTextStream マニピュレータ（例: fixed, scientific, qSetRealNumberPrecision(n)）を使用すると、ストリームの状態を一時的に変更し、その後のストリーム操作にのみ影響を与えることができます。これは、std::fixed, std::scientific, std::setprecision() と同様の挙動です。

4. QString::toDouble() / QString::toFloat() との不一致

   • 問題
     QTextStream で出力した文字列を QString::toDouble() などで読み込もうとしたときに、変換エラーや予期せぬ値になる。
   • 原因
     QTextStream の出力形式（特にロケール設定）と、QString::toDouble() が期待する入力形式が一致していない可能性があります。例えば、小数点記号がカンマ（,）になっているのに、読み込み側がピリオド（.）を期待しているなど。
   • トラブルシューティング
     
     • QTextStream で出力する際に setLocale() を使用して、明示的にロケールを設定し、読み込み側でも同じロケールを使用するようにします。
     • 数値の入出力には、可能な限り QDataStream のようなバイナリ形式のストリームを使用することを検討します。これにより、表記形式による問題が回避されます。

5. realNumberNotation() の誤用

   • 問題
     QTextStream::realNumberNotation() を設定しようとする（これはセッターではなくゲッター）。
   • 原因
     メソッドの役割を誤解している。realNumberNotation() は現在の設定を取得するためのものであり、設定を変更するには setRealNumberNotation() を使用します。
   • トラブルシューティング
     stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation); のように set プレフィックスの付いたメソッドを使用します。

• 出力デバイスの確認
  QTextStream が書き込んでいるデバイス（QFile, QString, QBuffer など）が正しく設定されており、書き込み権限があるか確認します。realNumberNotation() 自体とは直接関係ありませんが、出力が見えない場合の原因として考えられます。
• ロケールの確認
  浮動小数点数の表記はロケールに強く依存します。QTextStream::setLocale() を使用して、明示的にロケールを設定することで、異なるシステムでの挙動の違いをなくすことができます。例えば、stream.setLocale(QLocale::C); とすることで、C言語の標準ロケール（小数点記号がピリオド）を使用できます。
• Qtドキュメントの参照
  常に最新のQtドキュメントを確認します。特に、バージョンアップで挙動が変わる可能性があるため、使用しているQtのバージョンに合わせたドキュメントを参照することが重要です。
• シンプルなテストケース
  問題を切り分けるために、最小限のコードで問題が再現するかどうかを試します。余分なコードを排除することで、真の原因を見つけやすくなります。
• デバッグ出力の活用
  qDebug() を使用して、realNumberNotation() や realNumberPrecision() の現在の値を頻繁に出力し、意図した通りの設定になっているかを確認します。

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Qt のコードを実行するには、Qt開発環境がセットアップされており、.pro ファイルに QT += core が追加されている必要があります。

例1: 各表記モードの基本的な使用方法

この例では、SmartNotation (デフォルト), FixedNotation, ScientificNotation の3つの表記モードがどのように機能するかを示します。

#include <QCoreApplication>
#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug> // qDebug() を使用するため

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    double value1 = 12345.6789;
    double value2 = 0.000000123; // 非常に小さい値
    double value3 = 987654321.0; // 非常に大きい値
    double value4 = 123.45;     // 中程度の値

    QString outputString;
    QTextStream stream(&outputString);

    qDebug() << "--- QTextStream::SmartNotation (デフォルト) ---";
    // デフォルトはSmartNotation。必要に応じて科学的表記に切り替わる
    // 明示的に設定することも可能: stream.setRealNumberNotation(QTextStream::SmartNotation);
    stream << "Value 1 (Smart): " << value1 << "\n";
    stream << "Value 2 (Smart): " << value2 << "\n";
    stream << "Value 3 (Smart): " << value3 << "\n";
    stream << "Value 4 (Smart): " << value4 << "\n";
    qDebug() << outputString;
    outputString.clear(); // 次のモードのためにクリア

    qDebug() << "\n--- QTextStream::FixedNotation ---";
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);
    // 固定小数点表記。小数点以下の桁数は setRealNumberPrecision() で制御される (デフォルトは6)
    stream << "Value 1 (Fixed): " << value1 << "\n";
    stream << "Value 2 (Fixed): " << value2 << "\n";
    stream << "Value 3 (Fixed): " << value3 << "\n";
    stream << "Value 4 (Fixed): " << value4 << "\n";
    qDebug() << outputString;
    outputString.clear();

    qDebug() << "\n--- QTextStream::ScientificNotation ---";
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::ScientificNotation);
    // 常に科学的表記
    stream << "Value 1 (Scientific): " << value1 << "\n";
    stream << "Value 2 (Scientific): " << value2 << "\n";
    stream << "Value 3 (Scientific): " << value3 << "\n";
    stream << "Value 4 (Scientific): " << value4 << "\n";
    qDebug() << outputString;
    outputString.clear();

    // 現在の表記モードを取得
    QTextStream::RealNumberNotation currentNotation = stream.realNumberNotation();
    qDebug() << "\n現在の表記モード (Scientific):" << currentNotation;
    // 上記の出力は、QTextStream::ScientificNotation に対応する整数値になる

    return a.exec();
}

出力例

--- QTextStream::SmartNotation (デフォルト) ---
"Value 1 (Smart): 12345.6789\nValue 2 (Smart): 1.23e-7\nValue 3 (Smart): 9.87654e+08\nValue 4 (Smart): 123.45\n"

--- QTextStream::FixedNotation ---
"Value 1 (Fixed): 12345.678900\nValue 2 (Fixed): 0.000000\nValue 3 (Fixed): 987654321.000000\nValue 4 (Fixed): 123.450000\n"

--- QTextStream::ScientificNotation ---
"Value 1 (Scientific): 1.234568e+04\nValue 2 (Scientific): 1.230000e-07\nValue 3 (Scientific): 9.876543e+08\nValue 4 (Scientific): 1.234500e+02\n"

現在の表記モード (Scientific): QTextStream::ScientificNotation

例2: 精度 (Precision) の制御

setRealNumberPrecision() を使用して、小数点以下の桁数を制御する方法を示します。これは FixedNotation で特に重要です。

#include <QCoreApplication>
#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    double pi = 3.1415926535;
    double smallValue = 0.000123456;

    QString outputString;
    QTextStream stream(&outputString);

    qDebug() << "--- 精度制御 (FixedNotation) ---";
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::FixedNotation);

    // デフォルトの精度 (通常6) で出力
    stream << "Pi (Default Precision): " << pi << "\n";
    stream << "Small Value (Default Precision): " << smallValue << "\n";
    qDebug() << outputString;
    outputString.clear();

    // 精度を2桁に設定
    stream.setRealNumberPrecision(2);
    stream << "Pi (Precision 2): " << pi << "\n";
    stream << "Small Value (Precision 2): " << smallValue << "\n";
    qDebug() << outputString;
    outputString.clear();

    // 精度を10桁に設定
    stream.setRealNumberPrecision(10);
    stream << "Pi (Precision 10): " << pi << "\n";
    stream << "Small Value (Precision 10): " << smallValue << "\n";
    qDebug() << outputString;
    outputString.clear();

    qDebug() << "\n--- 精度制御 (ScientificNotation) ---";
    stream.setRealNumberNotation(QTextStream::ScientificNotation);
    stream.setRealNumberPrecision(4); // 仮数部の桁数に影響

    stream << "Pi (Scientific, Precision 4): " << pi << "\n";
    stream << "Small Value (Scientific, Precision 4): " << smallValue << "\n";
    qDebug() << outputString;
    outputString.clear();

    return a.exec();
}

出力例

--- 精度制御 (FixedNotation) ---
"Pi (Default Precision): 3.141593\nSmall Value (Default Precision): 0.000123\n"
"Pi (Precision 2): 3.14\nSmall Value (Precision 2): 0.00\n"
"Pi (Precision 10): 3.1415926535\nSmall Value (Precision 10): 0.0001234560\n"

--- 精度制御 (ScientificNotation) ---
"Pi (Scientific, Precision 4): 3.1416e+00\nSmall Value (Scientific, Precision 4): 1.2346e-04\n"

Qt 5.10以降では、C++の標準ストリームに似たマニピュレータを使用して、一時的にストリームの設定を変更できます。これにより、設定の元に戻し忘れを防ぐことができます。

#include <QCoreApplication>
#include <QTextStream>
#include <QString>
#include <QDebug>

// QTextStream のマニピュレータを使用するために必要
#include <QtGlobal> // qSetRealNumberPrecision など

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    double value = 123.456789;

    QString outputString;
    QTextStream stream(&outputString);

    qDebug() << "--- マニピュレータを使用した出力 ---";

    // デフォルトの表記モードと精度
    stream << "Default: " << value << "\n";
    qDebug() << outputString;
    outputString.clear();

    // fixed マニピュレータを使用 (FixedNotationに一時的に変更)
    // qSetRealNumberPrecision(2) で精度も一時的に変更
    stream << "Fixed (Prec 2): " << fixed << qSetRealNumberPrecision(2) << value << "\n";
    // ここで、ストリームの設定は元の状態に戻っている (SmartNotation, デフォルト精度)
    stream << "Back to Default: " << value << "\n";
    qDebug() << outputString;
    outputString.clear();

    // scientific マニピュレータを使用
    stream << "Scientific (Prec 3): " << scientific << qSetRealNumberPrecision(3) << value << "\n";
    stream << "Back to Default: " << value << "\n";
    qDebug() << outputString;
    outputString.clear();

    // smart マニピュレータで明示的にSmartNotationに戻すことも可能
    stream << "Smart (Prec 5): " << smart << qSetRealNumberPrecision(5) << value << "\n";
    qDebug() << outputString;
    outputString.clear();

    return a.exec();
}

出力例

--- マニピュレータを使用した出力 ---
"Default: 123.457\n"
"Fixed (Prec 2): 123.46\nBack to Default: 123.457\n"
"Scientific (Prec 3): 1.235e+02\nBack to Default: 123.457\n"
"Smart (Prec 5): 123.46\n"

これらの例は、QTextStream::realNumberNotation() を含む QTextStream の浮動小数点数出力機能の主要な使い方を示しています。

• Qt 5.10 以降では、マニピュレータ (fixed, scientific, smart, qSetRealNumberPrecision) を使用すると、一時的に出力形式を変更できるため、コードが簡潔になり、エラーも減らせます。
• realNumberNotation() で現在の設定を取得できます。
• setRealNumberPrecision() で小数点以下の桁数（または有効数字の桁数）を設定できます。
• setRealNumberNotation() で出力モード（固定小数点、科学的、スマート）を設定できます。

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主な代替方法は以下の通りです。

1. QString::number()
2. QString::arg()
3. QLocale::toString()
4. C++標準ライブラリのストリーム (std::stringstream)
5. C++標準ライブラリの std::format (C++20以降)
6. Cスタイルの sprintf (または snprintf)

それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

QString::number()

QString::number() は、数値を QString に変換するための静的メソッドです。浮動小数点数に対しては、QTextStream と同様にフォーマット文字と精度を指定できます。

• int precision: 桁数を指定します。'g' の場合は有効数字の桁数、'f' や 'e' の場合は小数点以下の桁数を意味します。
• char format:
  • 'g' (デフォルト): QTextStream::SmartNotation に相当し、最もコンパクトな表記を選びます。
  • 'f': QTextStream::FixedNotation に相当し、固定小数点表記になります。
  • 'e': QTextStream::ScientificNotation に相当し、科学的表記になります。

例

#include <QString>
#include <QDebug>

int main() {
    double value = 12345.6789;

    // 'g' フォーマット (デフォルト) - SmartNotationに近い
    QString s1 = QString::number(value);
    qDebug() << "QString::number(g):" << s1; // 12345.6789 or 1.23457e+04

    // 'f' フォーマット - FixedNotation
    QString s2 = QString::number(value, 'f', 2); // 小数点以下2桁
    qDebug() << "QString::number(f, 2):" << s2; // 12345.68

    // 'e' フォーマット - ScientificNotation
    QString s3 = QString::number(value, 'e', 3); // 小数点以下3桁
    qDebug() << "QString::number(e, 3):" << s3; // 1.235e+04

    // 'f' フォーマットで高精度
    QString s4 = QString::number(value, 'f', 6);
    qDebug() << "QString::number(f, 6):" << s4; // 12345.678900

    return 0;
}

QString::arg()

QString::arg() は、フォーマット文字列内のプレースホルダー (%1, %2 など) を値で置き換えるための強力なメソッドです。浮動小数点数に対しても、その形式を制御できます。

• arg(double a, int fieldWidth = 0, char format = 'g', int precision = -1, QChar fillChar = QLatin1Char(' '))
  • format と precision は QString::number() と同じ意味を持ちます。
  • fieldWidth は全体の最小幅を指定し、fillChar は余白を埋める文字を指定します。

例

#include <QString>
#include <QDebug>

int main() {
    double temp = 25.75;
    double humidity = 62.3;

    // デフォルト ('g' フォーマット)
    QString s1 = QString("現在の温度: %1℃, 湿度: %2%").arg(temp).arg(humidity);
    qDebug() << "QString::arg(g):" << s1; // 現在の温度: 25.75℃, 湿度: 62.3%

    // 'f' フォーマットで小数点以下1桁
    QString s2 = QString("温度: %1℃ (%.1f), 湿度: %2% (%.1f)").arg(temp, 0, 'f', 1).arg(humidity, 0, 'f', 1);
    qDebug() << "QString::arg(f, 1):" << s2; // 温度: 25.8℃ (25.8), 湿度: 62.3% (62.3)

    // 科学的表記で最小幅とパディング
    QString s3 = QString("科学的表記: %1").arg(1234567.89, 12, 'e', 2, QChar('0'));
    qDebug() << "QString::arg(e, pad):" << s3; // 科学的表記: 001.23e+06

    // ロケール依存のフォーマット (%L1) - デフォルトロケールを使用
    QString s4 = QString("ロケール依存: %L1").arg(1234.56);
    qDebug() << "QString::arg(%L1):" << s4; // (日本のロケールなら) ロケール依存: 1,234.56 (または1.234,56)

    return 0;
}

QLocale::toString()

QLocale クラスは、特定の言語と地域（ロケール）に基づいて数値を文字列に変換します。これは、国際化されたアプリケーションで数値表記を制御する際に非常に重要です。

• QString toString(double i, char f = 'g', int prec = 6) const
  • f と prec は QString::number() と同じ意味を持ちます。

例

#include <QLocale>
#include <QString>
#include <QDebug>

int main() {
    double value = 123456.789;

    // デフォルトロケール (通常はシステムのロケール)
    QString s1 = QLocale().toString(value, 'f', 2);
    qDebug() << "Default Locale (f, 2):" << s1; // 例: 123456.79 (US) or 123456,79 (Germany)

    // 日本のロケールで固定小数点表記
    QLocale japaneseLocale(QLocale::Japanese);
    QString s2 = japaneseLocale.toString(value, 'f', 2);
    qDebug() << "Japanese Locale (f, 2):" << s2; // 123456.79

    // ドイツのロケールで固定小数点表記 (カンマが小数点)
    QLocale germanLocale(QLocale::German, QLocale::Germany);
    QString s3 = germanLocale.toString(value, 'f', 2);
    qDebug() << "German Locale (f, 2):" << s3; // 123456,79

    // Cロケール (小数点記号は常にピリオド)
    QString s4 = QLocale::c().toString(value, 'f', 2);
    qDebug() << "C Locale (f, 2):" << s4; // 123456.79

    return 0;
}

利点
ロケールに合わせた正確な数値フォーマットを提供します。特に、ユーザーインターフェースや、地域によって数値表記が異なるデータファイルなどに適しています。 欠点: グローバルなロケール設定を変更しない限り、各 QLocale オブジェクトを作成する必要があります。

C++標準ライブラリのストリーム (std::stringstream)

Qtのクラスに限定せず、C++標準ライブラリの iostream を使用することもできます。std::stringstream はメモリ内の文字列に書き込むためのストリームです。

• std::fixed, std::scientific, std::setprecision などのマニピュレータを使用します。

例

#include <iostream>
#include <sstream> // std::stringstream を使用するため
#include <iomanip> // std::fixed, std::setprecision を使用するため
#include <string> // std::string を使用するため

int main() {
    double value = 12345.6789;

    // デフォルト (g形式に近い)
    std::stringstream ss1;
    ss1 << value;
    qDebug() << "std::stringstream (Default):" << QString::fromStdString(ss1.str()); // 12345.68 (環境による)

    // fixed (固定小数点表記) と精度
    std::stringstream ss2;
    ss2 << std::fixed << std::setprecision(2) << value;
    qDebug() << "std::stringstream (Fixed, Prec 2):" << QString::fromStdString(ss2.str()); // 12345.68

    // scientific (科学的表記) と精度
    std::stringstream ss3;
    ss3 << std::scientific << std::setprecision(3) << value;
    qDebug() << "std::stringstream (Scientific, Prec 3):" << QString::fromStdString(ss3.str()); // 1.235e+04

    // 複数の値をまとめて
    double pi = 3.14159;
    double e = 2.71828;
    std::stringstream ss4;
    ss4 << "Pi: " << std::fixed << std::setprecision(3) << pi << ", E: " << e;
    qDebug() << "std::stringstream (Multiple):" << QString::fromStdString(ss4.str()); // Pi: 3.142, E: 2.718280

    return 0;
}

利点
C++標準であるため、Qtに依存しないコードを書くことができます。強力なフォーマット制御が可能です。 欠点: QString との変換が必要になる場合があります（QString::fromStdString() や QString::toStdString()）。ロケール制御は std::locale と std::imbue を使用しますが、Qtの QLocale ほど統合されていません。

C++標準ライブラリの std::format (C++20以降)

C++20 で導入された std::format は、Python の f-string や C# の複合フォーマットに似た、型安全で高性能な文字列フォーマット機能です。これにより、非常に柔軟な浮動小数点数フォーマットが可能です。

例 (C++20 以降のコンパイラが必要)

#include <string>
#include <format> // C++20 の <format> ヘッダ
#include <QDebug> // Qt アプリケーションでの出力用

int main() {
    double value = 12345.6789;

    // デフォルトフォーマット (g形式に近い)
    std::string s1 = std::format("Default: {}", value);
    qDebug() << "std::format (Default):" << QString::fromStdString(s1);

    // 固定小数点表記 (小数点以下2桁)
    std::string s2 = std::format("Fixed (Prec 2): {:.2f}", value);
    qDebug() << "std::format (Fixed, Prec 2):" << QString::fromStdString(s2);

    // 科学的表記 (小数点以下3桁)
    std::string s3 = std::format("Scientific (Prec 3): {:.3e}", value);
    qDebug() << "std::format (Scientific, Prec 3):" << QString::fromStdString(s3);

    // 最小幅とパディング
    std::string s4 = std::format("Padded: {:010.2f}", 12.3); // 全体10桁、小数点以下2桁、0で埋める
    qDebug() << "std::format (Padded):" << QString::fromStdString(s4);

    // ロケール依存のフォーマット (Lオプション)
    // std::locale の設定に依存
    std::string s5 = std::format(std::locale("ja_JP.UTF-8"), "Locale (JP): {:L}", value);
    qDebug() << "std::format (Locale JP):" << QString::fromStdString(s5);

    return 0;
}

利点

• C++標準であるため、将来性が高い。
• パフォーマンスが高い。
• 非常に柔軟なフォーマットオプション。
• 型安全で、フォーマットエラーがコンパイル時に検出される。

欠点
C++20以降のコンパイラと標準ライブラリのサポートが必要です。Qtの QString との変換が必要な場合があります。

Cスタイルの sprintf (または snprintf)

伝統的な C スタイルの関数 sprintf や、より安全な snprintf も使用できます。これらは強力なフォーマット制御を提供しますが、バッファオーバーフローのリスクがあるため、snprintf を推奨します。

例

#include <cstdio> // sprintf, snprintf を使用するため
#include <vector> // 動的配列を使用するため
#include <QString>
#include <QDebug>

int main() {
    double value = 12345.6789;
    char buffer[100]; // 固定サイズのバッファ

    // %f (FixedNotation) と精度
    snprintf(buffer, sizeof(buffer), "Value (f, 2): %.2f", value);
    qDebug() << "snprintf (f, 2):" << QString(buffer); // Value (f, 2): 12345.68

    // %e (ScientificNotation) と精度
    snprintf(buffer, sizeof(buffer), "Value (e, 3): %.3e", value);
    qDebug() << "snprintf (e, 3):" << QString(buffer); // Value (e, 3): 1.235e+04

    // %g (SmartNotation) と精度
    snprintf(buffer, sizeof(buffer), "Value (g, 5): %.5g", value);
    qDebug() << "snprintf (g, 5):" << QString(buffer); // Value (g, 5): 12346

    // 動的バッファを使用する例
    std::vector<char> dynamicBuffer(50);
    int requiredSize = snprintf(dynamicBuffer.data(), dynamicBuffer.size(), "Dynamic: %.4f", 987.654321);
    if (requiredSize >= dynamicBuffer.size()) {
        // バッファが足りなかった場合、リサイズして再試行することも可能
        // (ここでは省略)
        qDebug() << "Warning: Buffer too small for snprintf.";
    }
    qDebug() << "snprintf (Dynamic):" << QString(dynamicBuffer.data()); // Dynamic: 987.6543

    return 0;
}

利点
非常に柔軟で、低レベルな制御が可能です。パフォーマンスが重要な場合に選択肢となります。 欠点: 型安全ではなく、バッファオーバーフローのリスクがあります（snprintf で軽減されます）。ロケール設定の制御が複雑になることがあります。

• パフォーマンスが最優先で、低レベルな制御が必要な場合
  snprintf が選択肢になりますが、慎重な使用が必要です。
• C++標準のみに依存したい、または最新のC++機能を使いたい
  std::stringstream または std::format (C++20以降) を検討します。
• ロケールに強く依存するフォーマット
  QLocale::toString() を使用します。
• フォーマット文字列内に複数の数値を埋め込む
  QString::arg() が最もQtらしい方法で、可読性も高いです。
• 簡単な単一の数値変換
  QString::number() が最も簡潔で良いでしょう。