Qt GUIプログラミング: リッチテキストで背景色を自由自在に操る - QTextFormat::brushProperty()徹底解説

QTextFormat::brushProperty() は、Qt GUIライブラリにおける重要な機能の一つであり、リッチテキスト処理においてテキストの背景色やパターンを設定するために使用されます。この関数は、QTextFormat オブジェクトから QBrush オブジェクトを取得し、テキストの装飾に用いられるブラシ情報にアクセスすることができます。

詳細解説

QTextFormatクラス
QTextFormat クラスは、テキストの書式設定情報を格納するために使用されます。フォント、色、配置などの様々な属性を保持し、リッチテキストドキュメント内のテキストブロックを装飾するために用いられます。
brushProperty()関数
brushProperty() 関数は、QTextFormat オブジェクトから QBrush オブジェクトを取得します。QBrush オブジェクトは、テキストの背景色やパターンを定義するために使用されます。この関数は、以下の引数を受け取ります。
- propertyId: 取得したいブラシ情報のプロパティID。QTextFormat::Property 列挙型で定義されています。
この関数は、QBrush オブジェクトを返します。ブラシ情報が存在しない場合は、Qt::NoBrush が返されます。
ブラシ情報の利用
取得した QBrush オブジェクトは、テキストの背景色やパターンを設定するために使用することができます。例えば、以下のように QPainter クラスを使用してテキストを描画することができます。
```
QPainter painter(widget);
painter.setBrush(textFormat.brushProperty(QTextFormat::BackgroundProperty));
painter.drawRect(textRect);
```
このコードは、textFormat オブジェクトから取得したブラシを使用して、textRect 領域を塗りつぶします。

例

以下のコードは、QTextFormat::brushProperty() 関数を使用して、テキストの背景色を赤色に設定する例です。

QTextFormat textFormat;
textFormat.setBackground(QColor(Qt::red));

QTextDocument document;
document.setPlainText("Hello, World!");

QTextCursor cursor(&document);
cursor.insertText("Hello, World!", textFormat);

このコードは、textFormat オブジェクトを作成し、背景色を赤色に設定します。その後、QTextDocument オブジェクトにテキストを挿入し、textFormat オブジェクトで設定した書式を適用します。

リッチテキスト処理の詳細については、Qt GUIドキュメントを参照してください。
ブラシ情報は、QTextFormat::setBackground() 関数を使用して設定することもできます。
QTextFormat::brushProperty() 関数は、テキストの背景色だけでなく、パターンやテクスチャ情報も取得することができます。

テキストの背景色を設定する

QTextFormat textFormat;
textFormat.setBackground(QColor(Qt::red));

QTextDocument document;
document.setPlainText("Hello, World!");

QTextCursor cursor(&document);
cursor.insertText("Hello, World!", textFormat);

テキストにパターンを設定する

QTextFormat textFormat;
QBrush brush(Qt::red);
brush.setStyle(Qt::Dense5CrossPattern);
textFormat.setBackground(brush);

QTextDocument document;
document.setPlainText("Hello, World!");

QTextCursor cursor(&document);
cursor.insertText("Hello, World!", textFormat);

このコードは、QTextFormat::brushProperty() 関数を使用して、テキストに市松模様のパターンを設定する例です。

テクスチャ画像を設定する

QTextFormat textFormat;
QBrush brush;
brush.setTextureImage(QImage("texture.png"));
textFormat.setBackground(brush);

QTextDocument document;
document.setPlainText("Hello, World!");

QTextCursor cursor(&document);
cursor.insertText("Hello, World!", textFormat);

このコードは、QTextFormat::brushProperty() 関数を使用して、テキストにテクスチャ画像を設定する例です。

QTextFormat textFormat;
textFormat.setBackground(QColor(Qt::red));

QTextDocument document;
document.setPlainText("Hello, World!");

QTextCursor cursor(&document);
cursor.insertText("Hello, World!", textFormat);

QBrush brush = textFormat.brushProperty(QTextFormat::BackgroundProperty);

QTextCharFormat::brushProperty()

QTextCharFormat::brushProperty() 関数は、QTextFormat::brushProperty() 関数とほぼ同じ機能を提供しますが、個々の文字に適用されるブラシ情報にアクセスすることができます。これは、段落全体ではなく、特定の文字列のみを装飾したい場合に役立ちます。

利点

より精度の高い装飾が可能
個々の文字にブラシ情報を設定できる

欠点

QTextFormat::brushProperty() 関数よりも複雑

例

QTextCharFormat charFormat;
charFormat.setBackground(QColor(Qt::red));

QTextDocument document;
document.setPlainText("Hello, World!");

QTextCursor cursor(&document);
cursor.movePosition(QTextCursor::StartOfWord, QTextCursor::WordUnderCursor);
cursor.movePosition(QTextCursor::EndOfWord, QTextCursor::WordUnderCursor);
cursor.setCurrentCharFormat(charFormat);

このコードは、"World" という単語の背景色を赤色に設定する例です。

QPainter::setBrush()

QPainter クラスを使用して、テキストを描画する際にブラシを設定することもできます。この方法は、より柔軟な装飾が可能ですが、QTextFormat オブジェクトを使用するよりも低レベルな操作となります。

利点

QTextFormat オブジェクトを使用するよりも高速
非常に柔軟な装飾が可能

欠点

リッチテキスト処理の機能の一部が利用できない
QTextFormat オブジェクトを使用するよりも複雑

例

QPainter painter(widget);
painter.setPen(QColor(Qt::black));
painter.setFont(QFont("Arial", 12));

QTextDocument document;
document.setPlainText("Hello, World!");

QTextCursor cursor(&document);
cursor.movePosition(QTextCursor::StartOfWord, QTextCursor::WordUnderCursor);
cursor.movePosition(QTextCursor::EndOfWord, QTextCursor::WordUnderCursor);

QRect rect = cursor.selectionRect();
painter.setBrush(QColor(Qt::red));
painter.drawRect(rect);

このコードは、"World" という単語を赤い矩形の中に描画する例です。

カスタム装飾ロジック

独自の装飾ロジックを実装することもできます。これは、非常に複雑な装飾が必要な場合や、Qt GUIライブラリで提供されていない機能を使用したい場合に役立ちます。

利点

Qt GUIライブラリで提供されていない機能を使用できる
非常に複雑な装飾が可能

欠点

バグが発生しやすい
非常に複雑で時間のかかる作業になる

例

class MyCustomDecorator : public QTextDocumentDecorator
{
public:
    void decorate(QTextDocument *document, const QTextDocument::Range &range, QPainter *painter) override
    {
        for (QTextCursor cursor(document); cursor.isValid() && cursor.position() <= range.end(); cursor.movePosition(QTextCursor::NextCharacter)) {
            if (cursor.charFormat().property(QTextFormat::FontProperty).inherits<QFont>()) {
                QFont font = cursor.charFormat().property(QTextFormat::FontProperty).value<QFont>();
                if (font.family() == "Arial") {
                    painter.setBrush(QColor(Qt::red));
                    painter.drawText(cursor.selectionRect(), cursor.selectedText());
                }
            }
        }
    }
};

このコードは、"Arial" フォントで書かれたすべての文字を赤色で描画するカスタム装飾ロジックの例です。