QTableViewで特定の行を隠したい?isRowHidden() の基本から応用まで徹底解説

2025-05-27

機能

この関数は、指定された行番号 (row) が現在ビュー上で非表示になっている場合に true を、表示されている場合に false を返します。

引数

  • int row: 確認したい行のインデックス(0から始まる整数)。

戻り値

  • bool: 指定された行が非表示の場合は true、表示されている場合は false

どのような場合に非表示になるか

行が非表示になる主なケースとしては、以下のものがあります。

  • hideRow() 関数の明示的な呼び出し
    QTableView オブジェクトの hideRow(int row) 関数を明示的に呼び出すことで、特定の行をプログラムから非表示にすることができます。
  • QSortFilterProxyModel の使用
    QSortFilterProxyModel を使用してフィルタリングを行っている場合、フィルタ条件に合致しない行は非表示になります。
  • setModel() によるモデルの設定
    モデルにデータが存在しない場合、対応する行は表示されません。

使用例

例えば、QTableView のオブジェクト tableView があり、3行目が非表示になっているかどうかを確認したい場合は、以下のように記述します。

if (tableView->isRowHidden(3)) {
    qDebug() << "3行目は非表示です。";
} else {
    qDebug() << "3行目は表示されています。";
}
  • showRow(int row) 関数を使うと、hideRow() で非表示にした行を再び表示できます。
  • この関数は、ビューに表示されている現在の状態を反映します。モデルのデータ自体が削除されたわけではありません。
  • 行のインデックスは 0 から始まることに注意してください。


一般的なエラーとトラブルシューティング

    • エラー
      isRowHidden() に渡す行インデックスが、実際の行数を超えている、または負の値である。
    • 原因
      行のインデックスは 0 から始まるため、最大のインデックスは (行数 - 1) です。動的に行が追加・削除される場合に、インデックスの管理が不適切だとこのエラーが発生しやすいです。
    • トラブルシューティング
      • QAbstractItemModel::rowCount() を使用して現在の行数を取得し、指定するインデックスが有効な範囲内であることを確認してください。
      • 行の追加・削除処理を行う際に、関連するインデックスの更新を適切に行っているか見直してください。
  1. 非表示設定のタイミング

    • エラー
      行を非表示にする hideRow() を呼び出す前に isRowHidden() を呼び出しても、当然 false が返ってくる。
    • 原因
      非表示にする処理がまだ実行されていないためです。
    • トラブルシューティング
      • hideRow() が意図したタイミングで確実に呼び出されているか確認してください。
      • 非表示の状態を確認する前に、必要な非表示処理が完了していることを保証してください。
  2. QSortFilterProxyModel の影響

    • エラー
      QSortFilterProxyModel を使用している場合、元のモデルの行インデックスとビューの行インデックスが異なるため、isRowHidden() に元のモデルのインデックスを渡しても期待通りの結果が得られない。
    • 原因
      QSortFilterProxyModel は、元のモデルのデータをソートやフィルタリングしてビューに表示するため、行の順序や表示・非表示の状態が元のモデルと一致しないことがあります。
    • トラブルシューティング
      • QSortFilterProxyModel を使用している場合は、ビューのインデックス (QModelIndex) を取得し、それを proxyModel->mapToSource() で元のモデルのインデックスに変換してから isRowHidden() を使用することはできません。QSortFilterProxyModel 自体は行の非表示状態を管理しており、フィルタリングによって非表示になっているかどうかを確認する必要があります。
      • フィルタリングの状態を確認したい場合は、QSortFilterProxyModelfilterAcceptsRow() などの関数を利用して、特定の行がフィルタ条件に合致するかどうかを間接的に判断する必要があります。isRowHidden() は、hideRow() 関数によって明示的に非表示にされた行の状態を主に示します。
  3. ビューの選択状態との混同

    • エラー
      行が選択されていないことを非表示と誤解する。
    • 原因
      行が選択されているかどうかと、行が非表示になっているかどうかは別の概念です。
    • トラブルシューティング
      • 行の選択状態を確認したい場合は、QItemSelectionModel 関連の関数(例: isSelected()) を使用してください。
  4. カスタムデリゲートの影響

    • 注意点
      カスタムデリゲートが描画処理を大きく変更している場合でも、isRowHidden() の基本的な動作には影響を与えません。isRowHidden() はあくまで行が非表示に設定されているかどうかを返します。

トラブルシューティングの一般的なアプローチ

  • ドキュメントの再確認
    QTableView および関連クラスのドキュメントを再度確認し、関数の正確な動作や注意点を確認します。
  • 関連するシグナルとスロットの確認
    行の表示・非表示に関連するシグナル(例: モデルの rowsRemoved(), rowsInserted()) が正しく処理されているか確認します。
  • ステップ実行
    デバッガを使用してコードをステップ実行し、isRowHidden() が呼び出される時点でのオブジェクトの状態を確認します。
  • デバッグ出力の活用
    qDebug() を使用して、isRowHidden() の呼び出し前後の関連する変数の値(行インデックス、期待される非表示状態など)を出力し、処理の流れを確認します。


例1: 特定の行を非表示にし、その状態を確認する

この例では、QTableView に初期データを設定し、その後特定の行を非表示にし、isRowHidden() を使ってその状態を確認します。

#include <QApplication>
#include <QTableView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    // モデルの作成とデータの追加
    QStandardItemModel model(5, 2); // 5行2列のモデル
    for (int row = 0; row < 5; ++row) {
        for (int col = 0; col < 2; ++col) {
            model.setItem(row, col, new QStandardItem(QString("Item %1,%2").arg(row).arg(col)));
        }
    }

    // テーブルビューの作成とモデルの設定
    QTableView tableView;
    tableView.setModel(&model);
    tableView.show();

    // 2行目を非表示にする
    tableView.hideRow(2);
    qDebug() << "2行目は非表示ですか?" << tableView.isRowHidden(2); // 出力: true

    // 0行目は非表示ではないことを確認
    qDebug() << "0行目は非表示ですか?" << tableView.isRowHidden(0); // 出力: false

    return a.exec();
}

この例では、まず 5 行 2 列のシンプルなモデルを作成し、QTableView に設定しています。その後、hideRow(2) を呼び出して 3 行目(インデックスは 2)を非表示にしています。isRowHidden(2) を呼び出すと true が返り、非表示になっていない 1 行目(インデックスは 0)に対して isRowHidden(0) を呼び出すと false が返ることを確認できます。

例2: ボタンクリックで行の表示/非表示を切り替える

この例では、ボタンをクリックすることで QTableView の特定の行の表示/非表示を切り替える機能を実現します。

#include <QApplication>
#include <QTableView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QPushButton>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QDebug>

class MainWindow : public QWidget
{
public:
    MainWindow(QWidget *parent = nullptr) : QWidget(parent)
    {
        // モデルの作成とデータの追加
        model_ = new QStandardItemModel(5, 2, this);
        for (int row = 0; row < 5; ++row) {
            for (int col = 0; col < 2; ++col) {
                model_->setItem(row, col, new QStandardItem(QString("Item %1,%2").arg(row).arg(col)));
            }
        }

        // テーブルビューの作成とモデルの設定
        tableView_ = new QTableView(this);
        tableView_->setModel(model_);

        // ボタンの作成
        toggleButton_ = new QPushButton("2行目を非表示/表示", this);
        connect(toggleButton_, &QPushButton::clicked, this, &MainWindow::toggleRowVisibility);

        // レイアウトの設定
        QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(this);
        layout->addWidget(tableView_);
        layout->addWidget(toggleButton_);
        setLayout(layout);
    }

private slots:
    void toggleRowVisibility()
    {
        int rowToToggle = 2;
        if (tableView_->isRowHidden(rowToToggle)) {
            tableView_->showRow(rowToToggle);
            qDebug() << "2行目を表示しました。";
        } else {
            tableView_->hideRow(rowToToggle);
            qDebug() << "2行目を非表示にしました。";
        }
    }

private:
    QStandardItemModel *model_;
    QTableView *tableView_;
    QPushButton *toggleButton_;
};

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);
    MainWindow w;
    w.show();
    return a.exec();
}

この例では、ボタンをクリックすると toggleRowVisibility() スロットが呼び出されます。このスロット内では、isRowHidden(2) を使って 3 行目が現在非表示かどうかを確認し、その結果に応じて showRow(2) または hideRow(2) を呼び出して表示状態を切り替えています。

例3: QSortFilterProxyModel との連携 (間接的な確認)

QSortFilterProxyModel を使用している場合、isRowHidden()hideRow() で明示的に非表示にした行の状態を主に示します。フィルタリングによって非表示になった行の状態を直接 isRowHidden() で確認することはできません。代わりに、フィルタリングの状態に基づいて間接的に判断する必要があります。

#include <QApplication>
#include <QTableView>
#include <QStandardItemModel>
#include <QSortFilterProxyModel>
#include <QLineEdit>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QDebug>

class MainWindow : public QWidget
{
public:
    MainWindow(QWidget *parent = nullptr) : QWidget(parent)
    {
        // 元のモデルの作成とデータの追加
        sourceModel_ = new QStandardItemModel(5, 1, this);
        sourceModel_->setItem(0, 0, new QStandardItem("Apple"));
        sourceModel_->setItem(1, 0, new QStandardItem("Banana"));
        sourceModel_->setItem(2, 0, new QStandardItem("Orange"));
        sourceModel_->setItem(3, 0, new QStandardItem("Grape"));
        sourceModel_->setItem(4, 0, new QStandardItem("Apple Pie"));

        // ソートとフィルタリングのプロキシモデル
        proxyModel_ = new QSortFilterProxyModel(this);
        proxyModel_->setSourceModel(sourceModel_);
        proxyModel_->setFilterCaseSensitivity(Qt::CaseInsensitive);

        // テーブルビューの作成とプロキシモデルの設定
        tableView_ = new QTableView(this);
        tableView_->setModel(proxyModel_);

        // フィルタリング用のLineEdit
        filterLineEdit_ = new QLineEdit(this);
        connect(filterLineEdit_, &QLineEdit::textChanged, proxyModel_, &QSortFilterProxyModel::setFilterFixedString);

        // レイアウトの設定
        QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(this);
        layout->addWidget(tableView_);
        layout->addWidget(filterLineEdit_);
        setLayout(layout);
    }

private:
    QStandardItemModel *sourceModel_;
    QSortFilterProxyModel *proxyModel_;
    QTableView *tableView_;
    QLineEdit *filterLineEdit_;
};

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);
    MainWindow w;
    w.show();
    return a.exec();
}

この例では、QSortFilterProxyModel を使用して、LineEdit に入力された文字列で元のモデルをフィルタリングしています。isRowHidden() を直接プロキシモデルの行に対して呼び出しても、フィルタリングの状態は反映されません。フィルタリングされた結果、ビューに表示されなくなった行は、isRowHidden()false を返す可能性があります(hideRow() で明示的に非表示にしていない場合)。

QSortFilterProxyModel でフィルタリングされた行の状態を判断するには、プロキシモデルの filterAcceptsRow() 関数や、ビューに表示されている行のインデックスと元のモデルのインデックスを mapToSource() および mapFromSource() で相互に変換しながら状態を判断する必要があります。



代替メソッドと手法

特定の行が「表示されているか」を代替的に確認する方法

isRowHidden() の代替として、特定の行がビューに実際に表示されているかどうかを間接的に確認する方法としては、以下のようなものが考えられます。

  • ビューの状態
    ビューのスクロール位置や表示領域を考慮して、特定の行のインデックスに対応するアイテムが現在ビューのポート内に表示されているかどうかを計算する(複雑になる可能性があります)。
  • カスタムモデルの場合
    モデルの内部状態を管理し、rowCount()index() の実装に基づいて、その行がビューに提供されるかどうかを判断します。
  • QSortFilterProxyModel の場合
    フィルタリング条件に基づいて、その行のデータがフィルタリングを通過するかどうかを filterAcceptsRow() で確認します。