QTableWidget::currentCellChanged() を使ったダイナミックなテーブル操作

QTableWidget::currentCellChanged() の解説

QTableWidget::currentCellChanged() は、Qt の QTableWidget クラスが提供するシグナル（signal）の一つです。このシグナルは、テーブルウィジェット内の現在選択されているセルが変更されたときに発火されます。

シグナルの引数

このシグナルは、次の2つの引数を持っています：

1. QModelIndex current
   • 現在選択されたセルのインデックスを表す QModelIndex オブジェクトです。このインデックスを使用して、セルの内容や位置情報を取得できます。
2. QModelIndex previous
   • 以前選択されていたセルのインデックスを表す QModelIndex オブジェクトです。この引数は、前のセルの情報が必要な場合に利用できます。

シグナルの使用方法

このシグナルを利用するには、通常、QObject::connect() 関数を使用して、シグナルを発する QTableWidget オブジェクトと、シグナルを受け取るスロット（slot）関数を接続します。スロット関数は、シグナルが発火されたときに自動的に呼び出され、引数として現在のセルと以前のセルのインデックスを受け取ります。

例

#include <QTableWidget>
#include <QDebug>

void onCurrentCellChanged(const QModelIndex &current, const QModelIndex &previous) {
    qDebug() << "Current cell: " << current.row() << ", " << current.column();
    qDebug() << "Previous cell: " << previous.row() << ", " << previous.column();

    // ここで、新しいセルに対して何か処理を行うことができます。
    // 例えば、セルの値を取得して表示したり、他のウィジェットを更新したりできます。
}

// ...

QTableWidget *tableWidget = new QTableWidget;
connect(tableWidget, &QTableWidget::currentCellChanged, this, &onCurrentCellChanged);

この例では、QTableWidget の currentCellChanged() シグナルが onCurrentCellChanged() スロット関数に接続されています。ユーザーがテーブル内のセルをクリックして選択すると、スロット関数が呼び出され、新しいセルと以前のセルのインデックスが表示されます。

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QTableWidget::currentCellChanged() の一般的なエラーとトラブルシューティング

QTableWidget::currentCellChanged() シグナルの利用において、いくつかの一般的なエラーやトラブルシューティングポイントがあります。

シグナルとスロットの接続ミス

• 解決策
  
  • QObject::connect() 関数を使用して、シグナルとスロットを正しく接続していることを確認してください。
  • シグナルとスロットの引数の型が一致していることを確認してください。
  • スロット関数が適切なアクセス修飾子（public, protected, private）を持っていることを確認してください。
• 問題
  シグナルとスロットの接続が正しく行われていない場合、シグナルが発火してもスロット関数が呼び出されません。

QModelIndex の誤った使用方法

• 問題
  QModelIndex オブジェクトを誤って使用すると、セルの情報が正しく取得できないことがあります。

スロット関数内の無限ループ

• 解決策
  
  • スロット関数内で、セル選択の変更を一時的にブロックするようなメカニズムを導入します。
  • QTableWidget::blockSignals() メソッドを使用して、シグナルの発火を一時的に停止し、処理が終わった後に再開します。
• 問題
  スロット関数内で、セル選択の変更が繰り返しトリガーされるような処理を行うと、無限ループが発生する可能性があります。

スロット関数の実行タイミング

• 解決策
  
  • QApplication::processEvents() 関数を使用して、イベントループを処理し、スロット関数がすぐに実行されるようにします。
  • Qt のイベントループの仕組みを理解し、適切なタイミングで処理を行うようにします。
• 問題
  スロット関数が呼び出されるタイミングによっては、期待した動作にならないことがあります。

• 解決策
  
  • QTableWidget のサイズやレイアウトを適切に設定します。
  • QTableWidget のアイテムのサイズや配置を調整します。
• 問題
  QTableWidget のレイアウトが正しく設定されていない場合、セル選択の検出に影響が出る可能性があります。

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QTableWidget::currentCellChanged() の具体的なコード例

セル選択時のテキスト表示

#include <QTableWidget>
#include <QDebug>

void onCurrentCellChanged(const QModelIndex &current, const QModelIndex &previous) {
    QTableWidgetItem *item = tableWidget->item(current.row(), current.column());
    if (item) {
        QString text = item->text();
        qDebug() << "Selected cell text: " << text;
    }
}

このコードでは、セルが選択されると、そのセルのテキストがデバッグ出力されます。

セル選択時の背景色変更

void onCurrentCellChanged(const QModelIndex &current, const QModelIndex &previous) {
    QTableWidgetItem *item = tableWidget->item(current.row(), current.column());
    if (item) {
        item->setBackgroundColor(Qt::yellow);
    }

    if (previous.isValid()) {
        QTableWidgetItem *prevItem = tableWidget->item(previous.row(), previous.column());
        if (prevItem) {
            prevItem->setBackgroundColor(Qt::white);
        }
    }
}

このコードでは、選択されたセルの背景色が黄色に、以前選択されていたセルの背景色が白に設定されます。

セル選択時のデータ更新

void onCurrentCellChanged(const QModelIndex &current, const QModelIndex &previous) {
    int row = current.row();
    int col = current.column();

    // ここで、選択されたセルに対応するデータを更新する処理を行います。
    // 例えば、データベースからデータを取得したり、他のウィジェットを更新したりします。
    // ...
}

このコードでは、選択されたセルの行番号と列番号を取得し、それに基づいてデータ更新の処理を行います。

セル選択時のカスタム処理

void onCurrentCellChanged(const QModelIndex &current, const QModelIndex &previous) {
    // ここで、カスタムの処理を行います。
    // 例えば、ダイアログを表示したり、特定の関数を実行したりします。

    if (current.row() == 2 && current.column() == 1) {
        // 特定のセルが選択された場合の処理
        showDialog();
    }
}

このコードでは、特定のセルの選択時にカスタムの処理を実行します。

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QTableWidget::currentCellChanged() の代替方法

QTableWidget::currentCellChanged() シグナルは、セル選択状態の変化を検知する一般的な方法ですが、特定の状況や要件に応じて、他のアプローチも考慮することができます。

QTableWidget::itemClicked() シグナル

• 欠点
  ダブルクリックやキーボード操作によるセル選択は検知できない。
• 利点
  クリック操作に特化しているため、より直接的な処理が可能。
• 特徴
  セルがクリックされたときに発火します。

connect(tableWidget, &QTableWidget::itemClicked, this, &onItemClicked);

void onItemClicked(QTableWidgetItem *item) {
    // クリックされたセルの処理
}

QTableWidget::cellClicked() シグナル

• 欠点
  itemClicked() シグナルと同様、ダブルクリックやキーボード操作によるセル選択は検知できない。
• 利点
  itemClicked() シグナルと同様に、クリック操作に特化。
• 特徴
  セルがクリックされたときに発火します。

connect(tableWidget, &QTableWidget::cellClicked, this, &onCellClicked);

void onCellClicked(int row, int column) {
    // クリックされたセルの行と列の処理
}

QTableWidget::cellDoubleClicked() シグナル

• 欠点
  シングルクリックやキーボード操作によるセル選択は検知できない。
• 利点
  ダブルクリック操作に特化しているため、特定の操作をトリガーするのに便利。
• 特徴
  セルがダブルクリックされたときに発火します。

connect(tableWidget, &QTableWidget::cellDoubleClicked, this, &onCellDoubleClicked);

void onCellDoubleClicked(int row, int column) {
    // ダブルクリックされたセルの行と列の処理
}

• 欠点
  実装がやや複雑になる。
• 利点
  キーボード操作によるセル選択を正確に検知できる。
• 特徴
  キーボードイベントをフィルタリングして、特定のキー操作によるセル選択を検知します。

void keyPressEvent(QKeyEvent *event) {
    if (event->key() == Qt::Key_Up || event->key() == Qt::Key_Down ||
        event->key() == Qt::Key_Left || event->key() == Qt::Key_Right) {
        //    キーボード操作によるセル選択の処理
    }
}