QPlainTextEdit ユーザー操作を制御！textInteractionFlags の詳細【Qt 日本語】
このプロパティは、Qt::TextInteractionFlag 型の値を組み合わせて設定します。以下に主なフラグとその意味を説明します。
主な Qt::TextInteractionFlag の種類
-
Qt::TextSelectableByAccessible (0x800)
アクセシビリティ技術によるテキストの選択を許可します。 -
Qt::AnchorUnderline (0x400)
ハイパーリンクに下線を引いて表示します。 -
Qt::MultiLine (0x200)
複数行のテキストの表示と編集を許可します。QPlainTextEditは常に複数行を扱いますので、このフラグは暗黙的に有効です。 -
Qt::RichText (0x100)
リッチテキスト（HTMLのような装飾されたテキスト）の表示と基本的な操作を許可します。QPlainTextEditはプレーンテキスト専用ですが、このフラグは基底クラスであるQAbstractScrollAreaから継承されています。QPlainTextEditでは主にプレーンテキストの操作に関連するフラグが重要になります。 -
Qt::DropEnabled (0x80)
他のウィジェットやアプリケーションからのテキストのドロップを受け付けるようにします。 -
Qt::DragEnabled (0x40)
テキストのドラッグ＆ドロップ操作を有効にします。 -
Qt::TextBrowserInteraction (0x25)
テキストブラウザのようなインタラクションを提供します。これはQt::TextSelectableByMouse | Qt::LinksAccessibleByMouseの組み合わせです。 -
Qt::TextEditorInteraction (0x26)
一般的なテキストエディタのようなインタラクションを提供します。これはQt::TextSelectableByMouse | Qt::TextSelectableByKeyboard | Qt::TextEditableの組み合わせです。 -
Qt::TextEditable (0x20)
テキストの編集を許可します。カーソルの移動、文字の入力、削除などが可能になります。 -
Qt::LinksAccessibleByKeyboard (0x10)
Tabキーなどによるハイパーリンクへのフォーカス移動と、Enterキーなどによるリンクの起動を許可します。 -
Qt::LinksAccessibleByMouse (0x8)
マウスカーソルがハイパーリンク上に移動した際に、リンクであることを示す視覚的なフィードバック（通常はカーソルの形状変化）を与え、クリックによるリンクの起動を許可します。 -
Qt::TextSelectableByKeyboard (0x4)
キーボード操作（Shift + 矢印キーなど）によるテキストの選択を許可します。 -
Qt::TextSelectableByMouse (0x2)
マウス操作によるテキストの選択を許可します。 -
Qt::ReadOnly (0x1)
テキストの編集は禁止しますが、選択やコピーは可能です。読み取り専用のテキスト表示ウィジェットとして使用する場合に設定します。 -
Qt::NoTextInteraction (0x0)
ユーザーによるテキストとのインタラクションを一切禁止します。テキストの選択、編集、カーソルの移動などはできません。表示専用のテキストビューとして使用する場合などに設定します。
設定方法
QPlainTextEdit オブジェクトの setTextInteractionFlags() メソッドを使用して、必要なフラグをビットごとのOR演算子 (|) で組み合わせて設定します。
QPlainTextEdit *plainTextEdit = new QPlainTextEdit;
// 読み取り専用で、マウスによる選択を許可する
plainTextEdit->setTextInteractionFlags(Qt::ReadOnly | Qt::TextSelectableByMouse);
// テキスト編集可能で、ドラッグ＆ドロップを有効にする
plainTextEdit->setTextInteractionFlags(Qt::TextEditable | Qt::DragEnabled | Qt::DropEnabled);
// 一般的なテキストエディタのインタラクションを設定する
plainTextEdit->setTextInteractionFlags(Qt::TextEditorInteraction);
意図しないテキストの編集可能性 (Unintended Text Editability)
- トラブルシューティング
textInteractionFlags()メソッドで現在のフラグを確認し、意図したフラグが設定されているか確認する。- 読み取り専用にしたい場合は、
setTextInteractionFlags(Qt::ReadOnly)のみ、またはQt::ReadOnlyと他の選択関連のフラグ（Qt::TextSelectableByMouseなど）を組み合わせて設定する。 - 誤って
Qt::TextEditableやQt::TextEditorInteractionを設定していないか確認する。
- 原因
Qt::ReadOnlyフラグを設定し忘れているか、誤ってQt::TextEditableフラグを設定している。または、Qt::TextEditorInteractionのように編集可能なフラグを含むプリセットを使用している。 - エラー
読み取り専用にしたいのに、ユーザーがテキストを編集できてしまう。
テキストが選択できない (Unable to Select Text)
- トラブルシューティング
textInteractionFlags()でフラグを確認する。- マウスでの選択を許可したい場合は
Qt::TextSelectableByMouseを、キーボードでの選択を許可したい場合はQt::TextSelectableByKeyboardを設定する。 - 全く選択を許可しない
Qt::NoTextInteractionが設定されていないか確認する。読み取り専用で選択を許可したい場合は、Qt::ReadOnly | Qt::TextSelectableByMouse | Qt::TextSelectableByKeyboardのように組み合わせる。
- 原因
Qt::TextSelectableByMouseやQt::TextSelectableByKeyboardフラグが設定されていない。または、Qt::NoTextInteractionが設定されている。 - エラー
マウスやキーボード操作でテキストを選択できない。
リンクがクリックできない (Unable to Click Links)
- トラブルシューティング
textInteractionFlags()でフラグを確認する。- ハイパーリンクをマウスでクリックして動作させたい場合は、
Qt::LinksAccessibleByMouseフラグを設定する。 - 必要に応じて、キーボード操作でのリンクアクセスを許可する
Qt::LinksAccessibleByKeyboardも設定する。 QPlainTextEditにリッチテキスト形式（HTMLなど）でリンクが設定されているか確認する。プレーンテキストのURLは自動的にリンクとして認識されない場合があります。
- 原因
Qt::LinksAccessibleByMouseフラグが設定されていない。 - エラー
QPlainTextEdit内のハイパーリンクをクリックしても反応しない。
ドラッグ＆ドロップが機能しない (Drag and Drop Not Working)
- トラブルシューティング
- ドラッグ機能を有効にしたい場合は
Qt::DragEnabledを設定する。 - ドロップを受け付けたい場合は
Qt::DropEnabledを設定する。 - 両方の機能を有効にするには
Qt::DragEnabled | Qt::DropEnabledを設定する。 - ドラッグ＆ドロップを開始または受信する側のウィジェットやアプリケーションの設定も確認する。
- ドラッグ機能を有効にしたい場合は
- 原因
ドラッグを有効にするQt::DragEnabledフラグ、またはドロップを受け付けるQt::DropEnabledフラグが設定されていない。 - エラー
テキストをドラッグしても移動やコピーができない、または他の場所からQPlainTextEditにドロップできない。
意図しない右クリックメニュー (Unexpected Context Menu)
- トラブルシューティング
- デフォルトのコンテキストメニューをカスタマイズしたい場合は、
customContextMenuRequestedシグナルを接続し、独自のQMenuを作成して表示する必要があります。 textInteractionFlagsの設定によってテキストが選択可能になっているかなどが、デフォルトメニューの表示内容に影響する可能性があります。必要に応じて選択関連のフラグを見直す。
- デフォルトのコンテキストメニューをカスタマイズしたい場合は、
- 原因
textInteractionFlags自体が直接コンテキストメニューの内容を制御するわけではありませんが、選択状態などによってデフォルトのメニューの内容が変わることがあります。 - エラー
右クリックした際に、意図しないデフォルトのコンテキストメニューが表示される。
複数のフラグの組み合わせミス (Incorrect Combination of Flags)
- トラブルシューティング
- 各フラグの役割を改めて確認し、必要なフラグのみを
|(ビットごとのOR演算子) で組み合わせる。 - プリセット値（
Qt::TextEditorInteraction、Qt::TextBrowserInteractionなど）が目的に合致する場合は、それらを利用することを検討する。
- 各フラグの役割を改めて確認し、必要なフラグのみを
- 原因
フラグの意味を正しく理解していなかったり、論理的な矛盾が生じる組み合わせを設定している。 - エラー
複数のフラグを組み合わせた際に、期待通りの動作にならない。
- Qtドキュメントの参照
各Qt::TextInteractionFlagの詳細な説明や、関連するクラスのドキュメントをよく読む。 - 段階的なテスト
少しずつフラグを追加・変更しながら、動作を確認していく。 - qDebug() の利用
textInteractionFlags()メソッドで現在のフラグの値を取得し、qDebug()で出力して確認する。ビット演算の結果が意図した値になっているかを確認できます。
基本的な使い方
まず、QPlainTextEdit のインスタンスを作成し、setTextInteractionFlags() メソッドを使ってフラグを設定します。
#include <QApplication>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QWidget window;
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
QPlainTextEdit *plainTextEdit = new QPlainTextEdit;
plainTextEdit->setPlainText("これは編集可能なテキストです。\nマウスで選択したり、キーボードで入力したりできます。");
layout->addWidget(plainTextEdit);
QPlainTextEdit *readOnlyTextEdit = new QPlainTextEdit;
readOnlyTextEdit->setPlainText("これは読み取り専用のテキストです。\n編集はできませんが、マウスで選択できます。");
// 読み取り専用で、マウスによる選択を許可
readOnlyTextEdit->setTextInteractionFlags(Qt::ReadOnly | Qt::TextSelectableByMouse);
layout->addWidget(readOnlyTextEdit);
window.setWindowTitle("QPlainTextEdit::textInteractionFlags の例");
window.show();
return a.exec();
}
この例では、2つの QPlainTextEdit を作成しています。
- 2つ目は
setTextInteractionFlags(Qt::ReadOnly | Qt::TextSelectableByMouse)を設定しており、テキストの編集はできませんが、マウスで選択することができます。 - 1つ目はデフォルトの設定で、テキストの編集、マウスやキーボードでの選択が可能です。
様々なフラグの組み合わせ
以下に、いくつかの異なる textInteractionFlags の組み合わせとその効果を示す例を挙げます。
例1: 編集不可で、リンクのみクリック可能
#include <QApplication>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QWidget window;
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
QPlainTextEdit *linkTextEdit = new QPlainTextEdit;
linkTextEdit->setHtml("<a href=\"https://www.qt.io\">Qtのウェブサイト</a>");
// 読み取り専用で、マウスによるリンクのクリックを許可
linkTextEdit->setTextInteractionFlags(Qt::ReadOnly | Qt::LinksAccessibleByMouse);
layout->addWidget(linkTextEdit);
window.setWindowTitle("リンクのみクリック可能な QPlainTextEdit");
window.show();
return a.exec();
}
この例では、setHtml() を使ってハイパーリンクを含むテキストを設定しています。setTextInteractionFlags(Qt::ReadOnly | Qt::LinksAccessibleByMouse) により、テキストの編集や選択はできませんが、マウスでリンクをクリックして開くことができます。
例2: テキスト選択のみ可能 (編集・リンク不可)
#include <QApplication>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QWidget window;
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
QPlainTextEdit *selectableTextEdit = new QPlainTextEdit;
selectableTextEdit->setPlainText("このテキストは選択できますが、編集やリンクのクリックはできません。");
// マウスとキーボードによるテキスト選択のみ許可
selectableTextEdit->setTextInteractionFlags(Qt::TextSelectableByMouse | Qt::TextSelectableByKeyboard);
layout->addWidget(selectableTextEdit);
window.setWindowTitle("テキスト選択のみ可能な QPlainTextEdit");
window.show();
return a.exec();
}
ここでは、Qt::TextSelectableByMouse と Qt::TextSelectableByKeyboard のみを設定しているため、ユーザーはテキストを選択できますが、編集したり、もしリンクが含まれていてもクリックすることはできません。
例3: ドラッグ＆ドロップを有効にする
#include <QApplication>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QWidget window;
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
QPlainTextEdit *dragSourceTextEdit = new QPlainTextEdit;
dragSourceTextEdit->setPlainText("このテキストはドラッグできます。");
// ドラッグを有効にする
dragSourceTextEdit->setTextInteractionFlags(Qt::TextSelectableByMouse | Qt::DragEnabled);
layout->addWidget(dragSourceTextEdit);
QPlainTextEdit *dropTargetTextEdit = new QPlainTextEdit;
dropTargetTextEdit->setPlainText("ここにテキストをドロップできます。");
// ドロップを受け付ける
dropTargetTextEdit->setTextInteractionFlags(Qt::TextEditable | Qt::DropEnabled);
layout->addWidget(dropTargetTextEdit);
window.setWindowTitle("ドラッグ＆ドロップ可能な QPlainTextEdit");
window->show();
return a.exec();
}
この例では、dragSourceTextEdit は Qt::DragEnabled フラグが設定されているため、テキストを選択して他の場所にドラッグできます。dropTargetTextEdit は Qt::DropEnabled フラグが設定されているため、ドラッグされたテキストを受け付けることができます。Qt::TextEditable も設定されているため、ドロップされたテキストは編集可能です。
#include <QApplication>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QWidget window;
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
QPlainTextEdit *noInteractionTextEdit = new QPlainTextEdit;
noInteractionTextEdit->setPlainText("このテキストは操作できません。");
// 全てのインタラクションを無効にする
noInteractionTextEdit->setTextInteractionFlags(Qt::NoTextInteraction);
layout->addWidget(noInteractionTextEdit);
window.setWindowTitle("インタラクション無効な QPlainTextEdit");
window.show();
return a.exec();
}
イベントフィルタリング (Event Filtering)
textInteractionFlags で提供される基本的なインタラクション制御よりも細かい制御を行いたい場合、イベントフィルタリングを利用できます。ウィジェットやアプリケーション全体にイベントフィルタをインストールし、特定のイベント（マウスイベント、キーボードイベントなど）をインターセプトして、そのイベントの伝播を制御することで、インタラクションの挙動をカスタマイズできます。
#include <QApplication>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QKeyEvent>
#include <QMouseEvent>
class CustomPlainTextEdit : public QPlainTextEdit
{
protected:
bool eventFilter(QObject *watched, QEvent *event) override
{
if (watched == this) {
if (event->type() == QEvent::KeyPress) {
QKeyEvent *keyEvent = static_cast<QKeyEvent*>(event);
// 特定のキー入力を無視する例 (Ctrl+S を無効にする)
if ((keyEvent->modifiers() & Qt::ControlModifier) && keyEvent->key() == Qt::Key_S) {
return true; // イベントを処理済みとして伝播させない
}
} else if (event->type() == QEvent::MouseButtonPress) {
QMouseEvent *mouseEvent = static_cast<QMouseEvent*>(event);
// 右クリックを無効にする例
if (mouseEvent->button() == Qt::RightButton) {
return true; // イベントを処理済みとして伝播させない
}
}
}
return QPlainTextEdit::eventFilter(watched, event);
}
public:
CustomPlainTextEdit(QWidget *parent = nullptr) : QPlainTextEdit(parent) {}
};
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
CustomPlainTextEdit editor;
editor.setPlainText("このテキストエリアでは Ctrl+S と右クリックが無効です。");
editor.show();
return a.exec();
}
この例では、CustomPlainTextEdit クラスで eventFilter() をオーバーライドしています。これにより、キープレスイベントとマウスボタンプレスイベントを監視し、特定のキー操作（Ctrl+S）やマウス操作（右クリック）を無効にしています。
利点
- 特定のキーボードショートカットやマウス操作をカスタマイズできる。
textInteractionFlagsよりも細かいレベルでのインタラクション制御が可能。
欠点
- イベントの種類を正確に把握し、適切に処理する必要がある。
- 実装が複雑になる場合がある。
キーイベントハンドラとマウスイベントハンドラ (Key and Mouse Event Handlers)
eventFilter() の代わりに、特定のイベントハンドラ（keyPressEvent(), keyReleaseEvent(), mousePressEvent(), mouseReleaseEvent(), mouseMoveEvent(), mouseDoubleClickEvent(), contextMenuEvent() など）を QPlainTextEdit を継承したカスタムウィジェット内でオーバーライドすることで、インタラクションを制御できます。
#include <QApplication>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QKeyEvent>
#include <QMouseEvent>
#include <QContextMenuEvent>
#include <QMenu>
class CustomPlainTextEdit : public QPlainTextEdit
{
protected:
void keyPressEvent(QKeyEvent *event) override
{
if ((event->modifiers() & Qt::ControlModifier) && event->key() == Qt::Key_Z) {
// Ctrl+Z のアンドゥ処理を独自に実装する、または無視する
qDebug() << "Ctrl+Z が押されましたが、デフォルトの処理は行いません。";
return; // イベントを処理済みとして伝播させない
}
QPlainTextEdit::keyPressEvent(event); // 他のキーイベントはデフォルトの処理に委ねる
}
void mousePressEvent(QMouseEvent *event) override
{
if (event->button() == Qt::MiddleButton) {
// マウスの中ボタンが押されたときのカスタム処理
this->insertPlainText("中ボタンがクリックされました。\n");
return; // イベントを処理済みとして伝播させない
}
QPlainTextEdit::mousePressEvent(event);
}
void contextMenuEvent(QContextMenuEvent *event) override
{
// デフォルトのコンテキストメニューを表示しない
QMenu *menu = new QMenu(this);
QAction *customAction = menu->addAction("カスタムアクション");
// カスタムアクションの処理を接続
connect(customAction, &QAction::triggered, this, [](){
qDebug() << "カスタムアクションが実行されました。";
});
menu->popup(event->globalPos());
event->accept(); // イベントを処理済みとして伝播させない
}
};
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
CustomPlainTextEdit editor;
editor.setPlainText("このテキストエリアでは Ctrl+Z のデフォルト動作が変更され、中クリックでメッセージが表示され、カスタムコンテキストメニューが表示されます。");
editor.show();
return a.exec();
}
この例では、keyPressEvent() で Ctrl+Z のデフォルトの動作を抑制し、mousePressEvent() で中ボタンクリック時のカスタム動作を実装し、contextMenuEvent() でデフォルトのコンテキストメニューを置き換えています。
利点
eventFilter()よりも特定のイベント処理に特化しているため、コードが整理しやすい場合がある。- 特定のイベントに対する直接的な制御が可能。
欠点
- デフォルトの動作を維持したい場合は、明示的に親クラスのハンドラを呼び出す必要がある。
- 制御したいインタラクションの種類ごとに対応するイベントハンドラをオーバーライドする必要がある。
アクションとショートカット (Actions and Shortcuts)
テキストの編集や特定の操作に関連するアクション（コピー、ペースト、カットなど）は、QAction クラスを使って定義し、ウィジェットに追加したり、ショートカットキーを割り当てたりすることができます。textInteractionFlags で編集を無効にした場合でも、独自のアクションを通じて特定の編集操作を提供することができます。
#include <QApplication>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QAction>
#include <QKeySequence>
#include <QMenu>
#include <QMenuBar>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
class MainWindow : public QWidget
{
public:
MainWindow()
{
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(this);
plainTextEdit = new QPlainTextEdit;
plainTextEdit->setPlainText("このテキストは読み取り専用ですが、カスタムアクションでコピーできます。");
plainTextEdit->setTextInteractionFlags(Qt::ReadOnly | Qt::TextSelectableByMouse);
layout->addWidget(plainTextEdit);
copyAction = new QAction("コピー", this);
copyAction->setShortcut(QKeySequence::Copy);
connect(copyAction, &QAction::triggered, plainTextEdit, &QPlainTextEdit::copy);
// メニューバーに追加 (QWidget なので menuBar はありませんが、QMainWindow なら追加できます)
QMenu *editMenu = new QMenu("編集", this);
editMenu->addAction(copyAction);
// コンテキストメニューにも追加
plainTextEdit->setContextMenuPolicy(Qt::CustomContextMenu);
connect(plainTextEdit, &QPlainTextEdit::customContextMenuRequested, this, &MainWindow::showContextMenu);
}
private:
QPlainTextEdit *plainTextEdit;
QAction *copyAction;
private slots:
void showContextMenu(const QPoint &pos)
{
QMenu *contextMenu = new QMenu(this);
contextMenu->addAction(copyAction);
contextMenu->popup(plainTextEdit->mapToGlobal(pos));
}
};
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
MainWindow window;
window.setWindowTitle("カスタムアクションの例");
window.show();
return a.exec();
}
この例では、読み取り専用の QPlainTextEdit に対して、「コピー」アクション (QAction) を作成し、ショートカットキー (Ctrl+C) を割り当てています。また、カスタムコンテキストメニューを表示するように設定し、そのメニューにコピーアクションを追加しています。これにより、textInteractionFlags で編集を禁止している場合でも、コピー機能を提供できます。
利点
- メニューやツールバーとの連携が容易。
- ショートカットキーによる操作が可能になる。
- 標準的なアプリケーションの操作（コピー、ペーストなど）を、
textInteractionFlagsの設定とは独立して提供できる。
- 個々の操作に対してアクションを明示的に作成し、接続する必要がある。