Qtプログラミング：QPlainTextEditのイベント処理を極める！シグナルとスロット、プロパティ監視、イベントフィルタ

changeEvent()の役割

• イベントの伝播
  基本クラスのchangeEvent()を呼び出すことで、デフォルトの処理を実行し、イベントを親ウィジェットに伝播させることができます。
• カスタム処理の実装
  この関数をオーバーライドすることで、特定の状態変化に応じてカスタムの処理を実装できます。例えば、フォントが変わったときに特定の処理を実行したり、スタイルシートの変更に応じて表示を更新したりできます。
• 状態変化の検知
  ウィジェットの状態変化を検知し、適切な処理を行うためのイベントハンドラです。

changeEvent()が呼び出される主なケース

• 可視/不可視状態の変更
  setVisible()などでウィジェットが表示または非表示になった場合。
• 有効/無効状態の変更
  setEnabled()などでウィジェットが有効または無効になった場合。
• 属性の変更
  setAttribute()などでウィジェットの属性が変更された場合。
• ジオメトリの変更
  setGeometry()などでウィジェットのサイズや位置が変更された場合。
• スタイルシートの変更
  setStyleSheet()などでスタイルシートが変更された場合。
• フォントの変更
  setFont()などでフォントが変更された場合。

changeEvent()の実装例

#include <QPlainTextEdit>
#include <QEvent>
#include <QDebug>

class MyPlainTextEdit : public QPlainTextEdit {
protected:
    void changeEvent(QEvent *event) override {
        if (event->type() == QEvent::FontChange) {
            qDebug() << "フォントが変更されました。";
            // フォント変更時のカスタム処理を記述
        } else if (event->type() == QEvent::StyleChange) {
            qDebug() << "スタイルシートが変更されました。";
            // スタイルシート変更時のカスタム処理を記述
        }

        // 基本クラスのchangeEventを呼び出す
        QPlainTextEdit::changeEvent(event);
    }
};

この例では、MyPlainTextEditクラスでchangeEvent()をオーバーライドし、フォントまたはスタイルシートが変更された場合にデバッグメッセージを出力しています。

• QEvent::type()を使用して、イベントの種類を判別し、適切な処理を行うようにしてください。
• オーバーライドしたchangeEvent()内で、基本クラスのQPlainTextEdit::changeEvent(event)を必ず呼び出すようにしてください。これにより、デフォルトの処理が実行され、イベントが適切に伝播されます。
• changeEvent()は仮想関数なので、サブクラスでオーバーライドする必要があります。

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一般的なエラーとトラブルシューティング

1. • 原因
     
     • changeEvent()をオーバーライドしていない。
     • イベントの種類を正しくチェックしていない。
     • イベントが発生するような状態変化が実際には起こっていない。
   • トラブルシューティング
     
     • changeEvent()を正しくオーバーライドしているか確認します。
     • QEvent::type()を使用して、期待されるイベントの種類を正しくチェックしているか確認します。
     • 実際に状態変化（フォント、スタイルシート、ジオメトリなど）が起こっているか確認します。
     • qDebug()などを使い、changeEvent()が呼ばれているか、呼び出された際にどのイベントタイプが渡されているかを確認する。

2. changeEvent()内で無限ループが発生する
   

   • 原因
     
     • changeEvent()内で、自身をトリガーするような状態変化を発生させている。例えば、フォント変更イベント内でsetFont()を呼び出すなど。
   • トラブルシューティング
     
     • changeEvent()内で状態変化を発生させる処理を慎重に確認し、無限ループの原因となる箇所を特定します。
     • 状態変化を発生させる必要がある場合は、条件分岐を追加して、特定の条件下でのみ実行するようにします。
     • タイマーや、フラグ変数を使用し、状態変化の連続的な発生を抑制する。

3. イベントの種類を誤って判定する
   

   • 原因
     
     • QEvent::type()で異なるイベントの種類を比較している。
     • イベントの種類が複数ある場合に、特定のイベントのみを処理しようとしている。
   • トラブルシューティング
     
     • QEvent::type()の値をQEvent::FontChange、QEvent::StyleChangeなどの正しいイベントタイプと比較しているか確認します。
     • 必要なイベントの種類をすべて処理するように条件分岐を追加します。
     • Qtのドキュメントを参照し、正しいイベントタイプを確認する。

4. changeEvent()内で不正な処理を実行する
   

   • 原因
     
     • changeEvent()内で、ウィジェットの状態を破壊するような処理を実行している。
     • スレッド処理など、安全でない処理を実行している。
   • トラブルシューティング
     
     • changeEvent()内で実行する処理を最小限に抑え、安全な処理のみを実行するようにします。
     • 時間のかかる処理やスレッド処理は、changeEvent()内ではなく、他の場所で実行するようにします。
     • qDebug()などで、変数の状態などを確認し、不正な処理の原因を探る。

5. 基本クラスのchangeEvent()を呼び出さない
   

   • 原因
     
     • オーバーライドしたchangeEvent()内で、QPlainTextEdit::changeEvent(event)を呼び出していない。
   • トラブルシューティング
     
     • オーバーライドしたchangeEvent()内で、必ずQPlainTextEdit::changeEvent(event)を呼び出すようにします。これにより、デフォルトの処理が実行され、イベントが適切に伝播されます。

6. 期待する状態変化が起こらない
   

   • 原因
     
     • コード上のロジックのミス。
     • Qtのバグ。
   • トラブルシューティング
     
     • コードを再度確認し、ロジックを修正する。
     • Qtのバージョンを最新のものにする。
     • Qtのドキュメントやフォーラムで情報を検索する。

デバッグのヒント

• Qt Creatorのデバッガを使用して、メモリリークや不正なメモリアクセスを検出します。
• ブレークポイントを設定して、changeEvent()の実行をステップ実行し、変数の値を監視します。
• qDebug()を使用して、changeEvent()が呼び出されたかどうか、イベントの種類、ウィジェットの状態などを出力し、デバッグします。

---

#include <QPlainTextEdit>
#include <QEvent>
#include <QDebug>
#include <QFont>
#include <QApplication>

class MyPlainTextEdit : public QPlainTextEdit {
protected:
    void changeEvent(QEvent *event) override {
        if (event->type() == QEvent::FontChange) {
            qDebug() << "フォントが変更されました。";
            qDebug() << "新しいフォント:" << font(); // 変更後のフォント情報を表示
        }
        QPlainTextEdit::changeEvent(event); // 基本クラスの処理を呼び出す
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    MyPlainTextEdit textEdit;
    textEdit.setPlainText("ここにテキストを入力してください。");
    textEdit.show();

    QFont newFont("Arial", 14);
    textEdit.setFont(newFont); // フォントを変更

    return app.exec();
}

説明

• setFont()を使用してフォントを変更し、changeEvent()をトリガーします。
• main()関数で、MyPlainTextEditのインスタンスを作成し、テキストを設定し、表示します。
• フォントが変更された場合、デバッグメッセージを出力し、新しいフォント情報を表示します。
• changeEvent()をオーバーライドし、QEvent::FontChangeイベントを検出します。
• MyPlainTextEditクラスはQPlainTextEditを継承しています。

#include <QPlainTextEdit>
#include <QEvent>
#include <QDebug>
#include <QApplication>

class MyPlainTextEdit : public QPlainTextEdit {
protected:
    void changeEvent(QEvent *event) override {
        if (event->type() == QEvent::StyleChange) {
            qDebug() << "スタイルシートが変更されました。";
            // スタイルシート変更に応じて背景色を変更
            if (styleSheet().contains("background-color: red;")) {
                setStyleSheet("background-color: blue;");
            } else {
                setStyleSheet("background-color: red;");
            }
        }
        QPlainTextEdit::changeEvent(event);
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    MyPlainTextEdit textEdit;
    textEdit.setPlainText("ここにテキストを入力してください。");
    textEdit.show();

    textEdit.setStyleSheet("background-color: red;"); // 初期スタイルシートを設定

    // changeEventの呼び出しをトリガーするためにスタイルシートを再度設定。
    textEdit.setStyleSheet("background-color: red;");

    return app.exec();
}

説明

• styleSheet().contains()で現在のスタイルシートをチェックし、条件に応じて背景色を変更します。
• setStyleSheet()を使用して初期スタイルシートを設定し、その後同じスタイルシートを再度設定することでchangeEventを発生させています。
• main()関数で、MyPlainTextEditのインスタンスを作成し、テキストを設定し、表示します。
• スタイルシートが変更された場合、デバッグメッセージを出力し、背景色を赤と青で交互に変更します。
• changeEvent()をオーバーライドし、QEvent::StyleChangeイベントを検出します。
• MyPlainTextEditクラスはQPlainTextEditを継承しています。

#include <QPlainTextEdit>
#include <QEvent>
#include <QDebug>
#include <QApplication>

class MyPlainTextEdit : public QPlainTextEdit {
protected:
    void changeEvent(QEvent *event) override {
        if (event->type() == QEvent::GeometryChange) {
            qDebug() << "ジオメトリが変更されました。";
            qDebug() << "新しいサイズ:" << size(); // 変更後のサイズを表示
        }
        QPlainTextEdit::changeEvent(event);
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    MyPlainTextEdit textEdit;
    textEdit.setPlainText("ここにテキストを入力してください。");
    textEdit.show();

    textEdit.resize(400, 300); // サイズを変更

    return app.exec();
}

• resize()を使用してサイズを変更し、changeEvent()をトリガーします。
• main()関数で、MyPlainTextEditのインスタンスを作成し、テキストを設定し、表示します。
• ジオメトリが変更された場合、デバッグメッセージを出力し、新しいサイズを表示します。
• changeEvent()をオーバーライドし、QEvent::GeometryChangeイベントを検出します。
• MyPlainTextEditクラスはQPlainTextEditを継承しています。

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シグナルとスロット

• 例
  
  • テキストが変更されたときに処理を行うには、textChanged()シグナルを使用します。
  • カーソル位置が変更されたときに処理を行うには、cursorPositionChanged()シグナルを使用します。
  • コード例：
• 利点
  
  • イベントの種類ごとに専用のシグナルが提供されるため、changeEvent()のようにイベントタイプを判別する必要がありません。
  • シグナルとスロット機構はQtの標準的なイベント処理方法であり、コードの可読性と保守性が向上します。
• QPlainTextEditは、テキスト変更、カーソル位置変更、選択範囲変更など、さまざまなシグナルを提供します。これらのシグナルをスロットに接続することで、特定のイベントに応じた処理を実装できます。

#include <QPlainTextEdit>
#include <QDebug>
#include <QApplication>

class MyPlainTextEdit : public QPlainTextEdit {
public:
    MyPlainTextEdit() {
        connect(this, &QPlainTextEdit::textChanged, this, &MyPlainTextEdit::onTextChanged);
    }

private slots:
    void onTextChanged() {
        qDebug() << "テキストが変更されました。";
        // テキスト変更時の処理を記述
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    MyPlainTextEdit textEdit;
    textEdit.setPlainText("ここにテキストを入力してください。");
    textEdit.show();

    return app.exec();
}

プロパティ監視 (Property Watcher)

• コード例：
• この方法を使う場合、プロパティの変更を検知する為には、QObject::setProperty()を利用してプロパティの値を変更する必要があります。
• 例
  
  • フォントの変更を監視するには、fontプロパティの変更を監視します。
  • スタイルシートの変更を監視するには、styleSheetプロパティの変更を監視します。
• 利点
  
  • 特定のプロパティ（フォント、スタイルシートなど）の変化を監視できます。
  • changeEvent()よりも詳細な制御が可能です。
• QObject::installEventFilter()や、より直接的にプロパティのnotifyシグナルを利用する事でプロパティの変化を監視できます。

#include <QPlainTextEdit>
#include <QDebug>
#include <QApplication>
#include <QMetaProperty>

class MyPlainTextEdit : public QPlainTextEdit {
public:
    MyPlainTextEdit() {
        // フォントプロパティの変更を監視
        const QMetaObject *metaObject = this->metaObject();
        int fontIndex = metaObject->indexOfProperty("font");
        QMetaProperty fontProperty = metaObject->property(fontIndex);
        connect(this, fontProperty.notifySignal(), this, &MyPlainTextEdit::onFontChanged);

        // スタイルシートプロパティの変更を監視
        int styleSheetIndex = metaObject->indexOfProperty("styleSheet");
        QMetaProperty styleSheetProperty = metaObject->property(styleSheetIndex);
        connect(this, styleSheetProperty.notifySignal(), this, &MyPlainTextEdit::onStyleSheetChanged);
    }

private slots:
    void onFontChanged() {
        qDebug() << "フォントが変更されました。";
    }

    void onStyleSheetChanged() {
        qDebug() << "スタイルシートが変更されました。";
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    MyPlainTextEdit textEdit;
    textEdit.setPlainText("ここにテキストを入力してください。");
    textEdit.show();

    QFont newFont("Arial", 14);
    textEdit.setFont(newFont); // setFont()はsetProperty()を内部で呼ぶので、notifyシグナルが発信される。
    textEdit.setStyleSheet("background-color: red;");

    return app.exec();
}

イベントフィルタ (Event Filter)

• イベントフィルターは全てのイベントを捕捉する為、不要なイベントまで捕捉してしまう為、パフォーマンスを考慮する必要がある。
• 欠点
  
  • すべてのイベントを監視するため、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。
  • コードが複雑になる可能性があります。
• 利点
  
  • すべてのイベントを監視できるため、changeEvent()よりも広範囲なイベント処理が可能です。
  • 特定のイベントをフィルタリングし、処理をカスタマイズできます。
• QObject::installEventFilter()を使用して、ウィジェットにイベントフィルタをインストールし、すべてのイベントを監視します。

• changeEvent()は、これらの代替方法で対応できない場合にのみ使用します。
• すべてのイベントを監視し、広範囲なイベント処理を行う場合は、イベントフィルタを使用します。
• 特定のプロパティ（フォント、スタイルシートなど）の変更を監視する場合は、プロパティ監視を使用します。
• 特定のイベント（テキスト変更、カーソル位置変更など）に応じた処理を行う場合は、シグナルとスロットを使用します。