Qt初心者向け:QPlainTextEdit::blockBoundingRect()でテキスト操作をマスター
2025-03-21
QPlainTextEdit::blockBoundingRect()の役割
- マウスイベント処理
- マウスイベントが発生した際に、どのテキストブロック上でイベントが発生したかを判定するために使われます。例えば、特定のブロックをクリックした際に、そのブロックに関連する処理を実行することができます。
- レイアウトと描画
- テキストブロックの位置や大きさを知ることで、カスタム描画やレイアウトの調整を行うことができます。例えば、特定のブロックをハイライトしたり、注釈を付けたり、他のウィジェットとの位置関係を調整したりする際に役立ちます。
- テキストブロックの領域取得
QPlainTextEdit
は、テキストを複数のブロック(段落)に分けて管理します。blockBoundingRect()
は、特定のブロックが画面上でどの位置に、どのくらいの大きさで表示されているかを知るために使われます。
関数の使い方
QPlainTextEdit::blockBoundingRect()
は、QTextBlock
オブジェクトを引数として受け取り、QRectF
オブジェクトを返します。
QTextBlock block = plainTextEdit->document()->findBlockByNumber(blockNumber);
QRectF rect = plainTextEdit->blockBoundingRect(block);
QRectF
オブジェクトは、矩形の左上隅の座標と幅、高さを保持します。plainTextEdit->blockBoundingRect(block)
は、指定されたQTextBlock
の境界矩形をQRectF
として返します。plainTextEdit->document()->findBlockByNumber(blockNumber)
は、指定された番号のQTextBlock
オブジェクトを取得します。blockNumber
は、取得したいテキストブロックの番号です。plainTextEdit
は、QPlainTextEdit
ウィジェットのインスタンスです。
- テキストブロックの領域を元に、図形を重ねて描画する。
- 特定のキーワードが含まれる段落をハイライト表示する。
- テキストブロックの横に、行番号を表示する。
- 特定の段落をマウスでクリックした際に、その段落のテキストをポップアップ表示する。
一般的なエラーとトラブルシューティング
-
- エラー
blockBoundingRect()
に無効なQTextBlock
オブジェクト(例えば、nullptr
や、存在しないブロック)を渡すと、予期しない結果(不正な矩形やクラッシュ)が発生する可能性があります。 - トラブルシューティング
QPlainTextEdit::document()->findBlockByNumber()
やQPlainTextEdit::document()->findBlockByLineNumber()
などの関数を使用して、有効なQTextBlock
オブジェクトを取得していることを確認してください。- 取得した
QTextBlock
オブジェクトが有効かどうかをQTextBlock::isValid()
で確認してください。 QTextBlock
が取得できない場合は、QPlainTextEdit
の内容が空であるか、指定したブロック番号や行番号が範囲外である可能性があります。
- エラー
-
QPlainTextEditのレイアウトが更新されていない
- エラー
QPlainTextEdit
の内容が変更された後、レイアウトが更新される前にblockBoundingRect()
を呼び出すと、古いレイアウト情報に基づく矩形が返されることがあります。 - トラブルシューティング
QPlainTextEdit::update()
またはQPlainTextEdit::viewport()->update()
を呼び出して、レイアウトを強制的に更新してください。- レイアウトの更新が非同期で行われる場合があるため、必要に応じて
QApplication::processEvents()
を呼び出してイベントループを処理し、レイアウトを確実に更新してください。 QPlainTextEdit
の内容を変更する処理とblockBoundingRect()
を呼び出す処理の間に、適切な遅延またはイベント処理を挿入してください。
- エラー
-
スクロールバーの影響
- エラー
QPlainTextEdit
にスクロールバーが表示されている場合、blockBoundingRect()
が返す矩形は、スクロール位置に基づいて調整されます。スクロール位置が変更されると、矩形の座標も変化します。 - トラブルシューティング
- スクロール位置を考慮して、矩形の座標を適切に調整してください。
QPlainTextEdit::verticalScrollBar()->value()
およびQPlainTextEdit::horizontalScrollBar()->value()
を使用して、スクロール位置を取得できます。- 必要に応じて、スクロール位置を固定してから
blockBoundingRect()
を呼び出してください。
- エラー
-
フォントやテキストの変更
- エラー
QPlainTextEdit
のフォントやテキストの内容が変更されると、テキストブロックのサイズが変化し、blockBoundingRect()
が返す矩形も変化します。 - トラブルシューティング
- フォントやテキストの変更後に、
blockBoundingRect()
を再度呼び出して、最新の矩形を取得してください。 - フォントやテキストの変更によってレイアウトがどのように変化するかを考慮して、矩形の座標を適切に調整してください。
- フォントやテキストの変更後に、
- エラー
-
ズームの影響
- エラー
QPlainTextEdit
のズームレベルを変更すると、テキストブロックのサイズが変化し、blockBoundingRect()
が返す矩形も変化します。 - トラブルシューティング
- ズームレベルを考慮して、矩形の座標を適切に調整してください。
QPlainTextEdit
のズームレベルを取得し、それに基づいて矩形を補正してください。
- エラー
-
テキストの折り返し
- エラー
テキストの折り返しが有効になっている場合、テキストブロックの高さが変化する可能性があり、blockBoundingRect()
が返す矩形も変化します。 - トラブルシューティング
- テキストの折り返しを考慮して、矩形の高さを適切に調整してください。
QPlainTextEdit::wordWrapMode()
を使用して、テキストの折り返しモードを確認できます。
- エラー
デバッグのヒント
QPlainTextEdit
の内容を最小限に減らし、問題の原因を特定しやすくしてください。QPainter
を使用して、blockBoundingRect()
が返す矩形を画面に描画し、実際の領域を確認してください。qDebug()
を使用して、blockBoundingRect()
が返す矩形の座標とサイズを出力し、予期しない値がないか確認してください。
#include <QApplication>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QPainter>
#include <QTextBlock>
class MyPlainTextEdit : public QPlainTextEdit {
public:
MyPlainTextEdit(QWidget *parent = nullptr) : QPlainTextEdit(parent) {}
protected:
void paintEvent(QPaintEvent *event) override {
QPlainTextEdit::paintEvent(event);
QPainter painter(viewport());
painter.setPen(Qt::red);
// 2番目のブロックの境界矩形を取得
QTextBlock block = document()->findBlockByNumber(1); //ブロック番号は0から始まる
if (block.isValid()) {
QRectF rect = blockBoundingRect(block);
painter.drawRect(rect.toRect()); //QRectFをQRectに変換して描画
}
}
};
int main(int argc, char *argv[]) {
QApplication app(argc, argv);
MyPlainTextEdit plainTextEdit;
plainTextEdit.setPlainText("最初の段落\n2番目の段落\n3番目の段落");
plainTextEdit.show();
return app.exec();
}
説明
MyPlainTextEdit
クラスは、QPlainTextEdit
を継承し、paintEvent()
をオーバーライドしています。paintEvent()
内で、QPainter
を使用して描画を行います。document()->findBlockByNumber(1)
で2番目のブロック(ブロック番号は0から始まるため、1を指定)を取得します。blockBoundingRect(block)
で取得したブロックの境界矩形をQRectF
として取得します。painter.drawRect(rect.toRect())
で、取得した矩形を赤い線で描画します。main()
関数で、MyPlainTextEdit
のインスタンスを作成し、テキストを設定して表示します。
#include <QApplication>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QMouseEvent>
#include <QTextBlock>
#include <QString>
class MyPlainTextEdit : public QPlainTextEdit {
public:
MyPlainTextEdit(QWidget *parent = nullptr) : QPlainTextEdit(parent) {}
protected:
void mouseMoveEvent(QMouseEvent *event) override {
QPlainTextEdit::mouseMoveEvent(event);
QPoint pos = event->pos();
QTextBlock block = document()->findBlock(document()->findBlock(document()->begin()));
while (block.isValid()) {
QRectF rect = blockBoundingRect(block);
if (rect.contains(pos)) {
QString tooltip = QString("ブロック番号: %1, 矩形: (%2, %3, %4, %5)")
.arg(block.blockNumber())
.arg(rect.x())
.arg(rect.y())
.arg(rect.width())
.arg(rect.height());
setToolTip(tooltip);
return;
}
block = block.next();
}
setToolTip(""); //カーソルがブロック上にない場合はツールチップをクリア
}
};
int main(int argc, char *argv[]) {
QApplication app(argc, argv);
MyPlainTextEdit plainTextEdit;
plainTextEdit.setPlainText("最初の段落\n2番目の段落\n3番目の段落");
plainTextEdit.show();
return app.exec();
}
MyPlainTextEdit
クラスは、QPlainTextEdit
を継承し、mouseMoveEvent()
をオーバーライドしています。mouseMoveEvent()
内で、マウスカーソルの位置(event->pos()
)を取得します。document()->findBlock(document()->begin())
で最初のブロックを取得し、while
ループで各ブロックを順番に処理します。blockBoundingRect(block)
で各ブロックの境界矩形を取得し、rect.contains(pos)
でマウスカーソルが矩形内にあるかどうかを判定します。- カーソルが矩形内にある場合、ブロック番号と矩形の座標、幅、高さをツールチップで表示します。
- カーソルがどのブロック上にもない場合、ツールチップをクリアします。
main()
関数で、MyPlainTextEdit
のインスタンスを作成し、テキストを設定して表示します。
-
QTextLayoutの使用
QTextLayout
は、テキストのレイアウトを詳細に制御するためのクラスです。QTextLayout
を使用すると、テキストの各行や文字の境界矩形を個別に取得できます。- 利点
- より細かいレイアウト情報(行、文字単位)を取得できる。
- 複雑なテキストレイアウト(複数行、書式設定など)に対応できる。
- 欠点
blockBoundingRect()
よりもコードが複雑になる。- パフォーマンスが低下する可能性がある。
- 使用例
- 特定の単語や文字の境界矩形を取得したい場合。
- 複雑なテキストレイアウトをカスタム描画したい場合。
QTextBlock block = plainTextEdit->document()->findBlockByNumber(blockNumber); QString text = block.text(); QTextLayout layout(text); layout.setFont(plainTextEdit->font()); // QPlainTextEditのフォントを設定 layout.setTextWidth(plainTextEdit->viewport()->width()); // テキスト幅を設定 qreal y = plainTextEdit->blockBoundingGeometry(block).translated(plainTextEdit->contentOffset()).top(); //ブロックのY座標 for (int i = 0; i < layout.lineCount(); ++i) { QTextLine line = layout.lineAt(i); QRectF lineRect = line.naturalTextRect(); lineRect.translate(0, y); // lineRectを使用 y += line.height(); }
-
QTextCursorの使用
QTextCursor
は、テキストドキュメント内の位置や選択範囲を操作するためのクラスです。QTextCursor::blockBoundingRect()
を使用すると、カーソル位置にあるブロックの境界矩形を取得できます。- 利点
- カーソル位置に基づいて動的に境界矩形を取得できる。
- テキストの選択範囲や位置を操作する際に便利。
- 欠点
- 特定のブロック番号を指定して境界矩形を取得することはできない。
- カーソル位置を適切に設定する必要がある。
- 使用例
- カーソル位置にあるブロックをハイライト表示したい場合。
- テキストの選択範囲に基づいて処理を行いたい場合。
QTextCursor cursor = plainTextEdit->textCursor(); QRectF rect = cursor.blockBoundingRect();
-
QAbstractTextDocumentLayoutの使用
QAbstractTextDocumentLayout
は、テキストドキュメントのレイアウトを管理するための抽象クラスです。QPlainTextEdit
のドキュメントのレイアウトを取得し、blockBoundingRect()
を使用できます。- 利点
- ドキュメント全体のレイアウト情報を取得できる。
- カスタムレイアウトを実装する場合に便利。
- 欠点
blockBoundingRect()
とほぼ同じ機能であり、直接的な代替方法ではない。- コードが複雑になる可能性がある。
- 使用例
- カスタムテキストドキュメントレイアウトを実装する場合。
- ドキュメント全体のレイアウト情報を分析したい場合。
QAbstractTextDocumentLayout *layout = plainTextEdit->document()->documentLayout(); QRectF rect = layout->blockBoundingRect(block);
-
手動で計算
QPlainTextEdit
のフォント、行間、テキストの内容などから、テキストブロックの境界矩形を手動で計算することも可能です。- 利点
- 完全にカスタムなレイアウトを実装できる。
- パフォーマンスを最適化できる可能性がある。
- 欠点
- コードが非常に複雑になる。
- テキストの書式設定や折り返しなどを考慮する必要がある。
- 使用例
- 非常に特殊なレイアウトが必要な場合。
- パフォーマンスが極めて重要な場合。