QPlainTextEditスクロール徹底ガイド:scrollContentsBy() の代替手段とエラー解決

2025-04-26

機能の詳細

  • 水平方向と垂直方向
    水平方向(x軸)と垂直方向(y軸)の両方のスクロール量を個別に指定できます。
  • 相対的な移動
    引数として与えられた値に基づいて、現在のスクロール位置からの相対的な移動を行います。
  • スクロール
    表示されているテキストの内容を、指定されたピクセル数だけ移動させます。

関数の構文

void QPlainTextEdit::scrollContentsBy(int dx, int dy);
  • dy: 垂直方向のスクロール量(ピクセル単位)。正の値は下方向へのスクロール、負の値は上方向へのスクロールを表します。
  • dx: 水平方向のスクロール量(ピクセル単位)。正の値は右方向へのスクロール、負の値は左方向へのスクロールを表します。

使用例

#include <QApplication>
#include <QPlainTextEdit>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QPlainTextEdit textEdit;
    textEdit.setPlainText("これは長いテキストです。\n"
                         "スクロールのテストを行います。\n"
                         "たくさんの行があります。\n"
                         "さらに行を追加します。\n"
                         "まだまだ行を追加します。\n"
                         "最後に、スクロールを試します。");
    textEdit.show();

    // 垂直方向に10ピクセル下にスクロール
    textEdit.scrollContentsBy(0, 10);

    // 水平方向に5ピクセル右にスクロール
    textEdit.scrollContentsBy(5, 0);

    return app.exec();
}
  1. QPlainTextEdit ウィジェットを作成し、長いテキストを設定します。
  2. scrollContentsBy(0, 10) を呼び出すことで、表示されているテキストの内容を垂直方向に10ピクセル下にスクロールします。
  3. scrollContentsBy(5, 0) を呼び出すことで、表示されているテキストの内容を水平方向に5ピクセル右にスクロールします。
  • QPlainTextEdit内のテキストがとても小さい場合、スクロールが目に見えない可能性もあります。
  • QScrollBar を直接操作してスクロールを行うこともできますが、scrollContentsBy() はより簡潔にスクロール操作を行うための便利な関数です。
  • スクロール範囲がテキストの内容の範囲を超える場合、スクロールは制限されます。
  • この関数は、表示内容のスクロールのみを行い、カーソルの位置や選択範囲は変更しません。


一般的なエラーとトラブルシューティング

    • 原因
      • スクロール量が小さすぎるため、目に見える変化がない。
      • スクロール範囲がテキストの内容の範囲外である。
      • QPlainTextEdit のレイアウトが正しく設定されていない。
    • 対処法
      • スクロール量を大きくして試す。
      • QPlainTextEdit::document()->size() を使用して、テキストの内容のサイズを確認し、スクロール範囲が適切かどうかを確認する。
      • QPlainTextEditの親ウィジェットのレイアウトが正しく設定されているか確認する。特にQScrollAreaを使用している場合は、QPlainTextEditQScrollAreaの内部で正しく配置されているかを確認してください。
      • QPlainTextEditに適切なサイズのテキストが設定されているか確認する。

      • テキストが非常に短い場合、スクロールしても何も起こらないように見えます。テキストを追加して試してください。
  1. スクロールが滑らかでない

    • 原因
      • 頻繁な scrollContentsBy() の呼び出し。
      • ハードウェアアクセラレーションの問題。
    • 対処法
      • スクロール量を調整し、呼び出し頻度を減らす。
      • ハードウェアアクセラレーションを無効にして試す(QApplication::setAttribute(Qt::AA_DisableHighDpiScaling) など)。
      • QPlainTextEditviewport()に対してupdate()を必要以上に呼び出していないか確認する。

      • タイマーを使用して短い間隔で scrollContentsBy() を呼び出すと、スクロールがカクカクする可能性があります。
  2. スクロール後に表示が乱れる

    • 原因
      • 描画の問題。
      • QPlainTextEdit の内容が更新されていない。
    • 対処法
      • QPlainTextEdit::viewport()->update() を呼び出して、表示を強制的に更新する。
      • QPlainTextEdit::update()を呼び出して、ウィジェットの更新を試す。
      • QPlainTextEditdocument()の内容が変更された場合は、QPlainTextEditへの再描画を促す。

      • スクロール後にテキストの一部が重複して表示される場合は、viewport()->update() を試してください。
  3. スクロールバーとの連携の問題

    • 原因
      • scrollContentsBy() を使用してスクロールした場合、スクロールバーの位置が自動的に更新されないことがある。
      • スクロールバーの範囲とQplaintextEditのコンテンツの範囲が一致しない。
    • 対処法
      • QScrollBar::setValue() を使用して、スクロールバーの位置を明示的に設定する。
      • QScrollBar::setRange()を使用して、スクロールバーの範囲を明示的に設定する。
      • QPlainTextEditverticalScrollBar()horizontalScrollBar()value()maximum()qDebug()などで確認し、範囲が正しいか確認する。

      • scrollContentsBy() を呼び出した後、スクロールバーが元の位置に残っている場合は、setValue() を使用してスクロールバーの位置を更新します。
  4. QPlainTextEditがQScrollAreaの中にある場合の注意点

    • QScrollAreaを使用している場合、QPlainTextEditのサイズがQScrollAreaのviewportより大きい必要があります。
    • QScrollAreasetWidgetResizable(true)を設定していると、QPlainTextEditQScrollAreaにフィットするようにリサイズされるため、スクロールが期待通りに動作しないことがあります。
    • QPlainTextEditのサイズを明示的に設定し、setWidgetResizable(false)を設定することを検討してください。

デバッグのヒント

  • Qt のドキュメントやオンラインフォーラムを参照して、同様の問題に対する解決策を探します。
  • ステップ実行を使用して、コードの実行を追跡し、変数の値を監視します。
  • qDebug() を使用して、スクロール量、スクロール位置、テキストの内容のサイズなどを出力し、問題の原因を特定します。


例1: ボタンクリックでテキストをスクロールする

この例では、ボタンをクリックすると QPlainTextEdit のテキストが垂直方向にスクロールします。

#include <QApplication>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QPushButton>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QWidget window;
    QVBoxLayout layout(&window);

    QPlainTextEdit textEdit;
    textEdit.setPlainText("長いテキストです。\n"
                         "スクロールテストを行います。\n"
                         "たくさんの行があります。\n"
                         "さらに行を追加します。\n"
                         "まだまだ行を追加します。\n"
                         "最後に、スクロールを試します。");
    layout.addWidget(&textEdit);

    QPushButton scrollButton("下にスクロール");
    layout.addWidget(&scrollButton);

    QObject::connect(&scrollButton, &QPushButton::clicked, [&]() {
        textEdit.scrollContentsBy(0, 50); // 垂直方向に50ピクセル下にスクロール
    });

    window.show();
    return app.exec();
}

説明

  1. QPlainTextEditQPushButton を作成し、垂直レイアウトに配置します。
  2. QPushButtonclicked シグナルをラムダ関数に接続します。
  3. ラムダ関数内で textEdit.scrollContentsBy(0, 50) を呼び出し、テキストを垂直方向に50ピクセル下にスクロールします。

例2: タイマーを使用して自動的にスクロールする

この例では、タイマーを使用して QPlainTextEdit のテキストを自動的にスクロールします。

#include <QApplication>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QTimer>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QWidget window;
    QVBoxLayout layout(&window);

    QPlainTextEdit textEdit;
    textEdit.setPlainText("長いテキストです。\n"
                         "スクロールテストを行います。\n"
                         "たくさんの行があります。\n"
                         "さらに行を追加します。\n"
                         "まだまだ行を追加します。\n"
                         "最後に、スクロールを試します。");
    layout.addWidget(&textEdit);

    QTimer timer;
    QObject::connect(&timer, &QTimer::timeout, [&]() {
        textEdit.scrollContentsBy(0, 1); // 垂直方向に1ピクセル下にスクロール
    });
    timer.start(50); // 50ミリ秒ごとにタイマーを起動

    window.show();
    return app.exec();
}

説明

  1. QPlainTextEdit を作成し、レイアウトに配置します。
  2. QTimer を作成し、timeout シグナルをラムダ関数に接続します。
  3. ラムダ関数内で textEdit.scrollContentsBy(0, 1) を呼び出し、テキストを垂直方向に1ピクセル下にスクロールします。
  4. timer.start(50) を呼び出し、50ミリ秒ごとにタイマーを起動します。

例3: 水平方向と垂直方向の両方をスクロールする

#include <QApplication>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QPushButton>
#include <QHBoxLayout>
#include <QWidget>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QWidget window;
    QHBoxLayout layout(&window);

    QPlainTextEdit textEdit;
    textEdit.setPlainText("とても長い一行のテキストです。とても長い一行のテキストです。とても長い一行のテキストです。とても長い一行のテキストです。 \n 行2 \n 行3 \n 行4");
    layout.addWidget(&textEdit);

    QPushButton scrollButton("両方向にスクロール");
    layout.addWidget(&scrollButton);

    QObject::connect(&scrollButton, &QPushButton::clicked, [&]() {
        textEdit.scrollContentsBy(10, 20); // 水平方向に10ピクセル、垂直方向に20ピクセルスクロール
    });

    window.show();
    return app.exec();
}
  1. QPlainTextEditQPushButton を作成し、水平レイアウトに配置します。
  2. QPushButtonclicked シグナルをラムダ関数に接続します。
  3. ラムダ関数内で textEdit.scrollContentsBy(10, 20) を呼び出し、テキストを水平方向に10ピクセル、垂直方向に20ピクセルスクロールします。


  1. QScrollBar を直接操作する

    • QPlainTextEdit は内部に QScrollBar を持っており、これらを直接操作することでスクロールを制御できます。
    • QPlainTextEdit::verticalScrollBar() および QPlainTextEdit::horizontalScrollBar() を使用して、それぞれのスクロールバーを取得できます。
    • QScrollBar::setValue() を使用して、スクロールバーの位置を直接設定します。
    • QScrollBar::value() を使用して、現在のスクロールバーの位置を取得します。
    • QScrollBar::maximum() を使用して、スクロールバーの最大値を調べます。
    #include <QApplication>
    #include <QPlainTextEdit>
    #include <QPushButton>
    #include <QVBoxLayout>
    #include <QWidget>
    
    int main(int argc, char *argv[]) {
        QApplication app(argc, argv);
    
        QWidget window;
        QVBoxLayout layout(&window);
    
        QPlainTextEdit textEdit;
        textEdit.setPlainText("長いテキストです。\n"
                             "スクロールテストを行います。\n"
                             "たくさんの行があります。\n"
                             "さらに行を追加します。\n"
                             "まだまだ行を追加します。\n"
                             "最後に、スクロールを試します。");
        layout.addWidget(&textEdit);
    
        QPushButton scrollButton("スクロールバーでスクロール");
        layout.addWidget(&scrollButton);
    
        QObject::connect(&scrollButton, &QPushButton::clicked, [&]() {
            QScrollBar *verticalScrollBar = textEdit.verticalScrollBar();
            verticalScrollBar->setValue(verticalScrollBar->value() + 50); // 垂直方向に50ピクセル相当スクロール
        });
    
        window.show();
        return app.exec();
    }
    
    • 利点
      スクロールバーの範囲や位置を正確に制御できる。
    • 欠点
      ピクセル単位ではなく、スクロールバーの範囲に基づいたスクロールになるため、細かい制御が難しい場合がある。
  2. QTextCursor を使用してテキストの位置を操作する

    • テキストの内容に基づいてスクロール位置を調整したい場合、QTextCursor を使用してテキスト内の特定の位置に移動し、QPlainTextEdit::ensureCursorVisible() を呼び出すことで、その位置が表示されるようにスクロールできます。
    #include <QApplication>
    #include <QPlainTextEdit>
    #include <QPushButton>
    #include <QVBoxLayout>
    #include <QWidget>
    #include <QTextCursor>
    
    int main(int argc, char *argv[]) {
        QApplication app(argc, argv);
    
        QWidget window;
        QVBoxLayout layout(&window);
    
        QPlainTextEdit textEdit;
        textEdit.setPlainText("長いテキストです。\n"
                             "スクロールテストを行います。\n"
                             "たくさんの行があります。\n"
                             "さらに行を追加します。\n"
                             "まだまだ行を追加します。\n"
                             "最後に、スクロールを試します。");
        layout.addWidget(&textEdit);
    
        QPushButton scrollButton("カーソル位置へスクロール");
        layout.addWidget(&scrollButton);
    
        QObject::connect(&scrollButton, &QPushButton::clicked, [&]() {
            QTextCursor cursor = textEdit.textCursor();
            cursor.movePosition(QTextCursor::Down, QTextCursor::MoveAnchor, 5); // 5行下に移動
            textEdit.setTextCursor(cursor);
            textEdit.ensureCursorVisible(); // カーソル位置が表示されるようにスクロール
        });
    
        window.show();
        return app.exec();
    }
    
    • 利点
      テキストの内容に基づいてスクロール位置を調整できる。
    • 欠点
      ピクセル単位の細かいスクロール制御には向かない。
  3. QAbstractScrollArea::verticalScrollBarPolicyやQAbstractScrollArea::horizontalScrollBarPolicyでスクロールバーの表示を制御する

    • スクロール処理ではなく、スクロールバーの表示、非表示を制御するものです。
    • テキストの量によってスクロールバーの表示を制御する場合に使用します。
    #include <QApplication>
    #include <QPlainTextEdit>
    #include <QVBoxLayout>
    #include <QWidget>
    
    int main(int argc, char *argv[]) {
        QApplication app(argc, argv);
    
        QWidget window;
        QVBoxLayout layout(&window);
    
        QPlainTextEdit textEdit;
        textEdit.setPlainText("短いテキスト");
        textEdit.setVerticalScrollBarPolicy(Qt::ScrollBarAlwaysOff); // 常にスクロールバーを非表示
        layout.addWidget(&textEdit);
    
        window.show();
        return app.exec();
    }
    
    • 利点
      スクロールバーの表示を制御できる。
    • 欠点
      スクロール位置を制御するものではない。