QPlainTextEditのフォーカス問題を解決：デバッグテクニック集

2025-04-26

focusNextPrevChild()は、QWidgetクラスから継承された仮想関数であり、必要に応じてサブクラスでオーバーライドすることができます。
Shift+Tabキーが押された場合、フォーカスは前のウィジェットに移動します。
Tabキーが押された場合、フォーカスはウィジェットのタブ順序に従って次のウィジェットに移動します。
このメソッドは、QPlainTextEdit内でTabキーまたはShift+Tabキーが押された際に自動的に呼び出されます。

動作の詳細

タブ順序
Qtのウィジェットは、タブ順序と呼ばれる順番で管理されています。この順序は、ウィジェットが作成された順序や、QWidget::setTabOrder()メソッドを使用して明示的に設定できます。
フォーカス移動
- Tabキーが押されると、focusNextPrevChild(true)が呼び出されます。これは、フォーカスを次のウィジェットに移動するように指示します。
- Shift+Tabキーが押されると、focusNextPrevChild(false)が呼び出されます。これは、フォーカスを前のウィジェットに移動するように指示します。
ウィジェットの検索
focusNextPrevChild()は、現在のウィジェットの親ウィジェット内で、タブ順序に従って次のまたは前のフォーカス可能なウィジェットを検索します。
フォーカスの設定
適切なウィジェットが見つかると、そのウィジェットにフォーカスが設定されます。
オーバーライド
QPlainTextEditを継承したカスタムウィジェットを作成する場合、focusNextPrevChild()をオーバーライドして、独自のフォーカス移動のロジックを実装できます。例えば、特定のウィジェットにのみフォーカスを移動するようにしたり、フォーカス移動時に特定のアクションを実行したりできます。

使用例

QPlainTextEditウィジェットを含むフォームを作成し、TabキーまたはShift+Tabキーを押すと、フォーカスがフォーム内の他のウィジェットに移動します。これは、QPlainTextEditがデフォルトでfocusNextPrevChild()を実装しているためです。

オーバーライド (override)
親クラスの関数をサブクラスで再定義すること。
仮想関数 (virtual function)
サブクラスでオーバーライドできる関数。
タブ順序 (tab order)
ウィジェット間のフォーカス移動の順序。
フォーカス (focus)
入力や操作を受け付ける状態。

一般的なエラーとトラブルシューティング

- 原因
  - タブ順序が正しく設定されていない。
  - フォーカスを受け付けないウィジェット（QWidget::setFocusPolicy()がQt::NoFocusなど）がタブ順序に含まれている。
  - 親ウィジェットのレイアウトが複雑で、フォーカス移動の経路が曖昧になっている。
  - focusNextPrevChild()をオーバーライドした際に、誤ったロジックを実装している。
- トラブルシューティング
  - QWidget::setTabOrder()を使用してタブ順序を明示的に設定する。
  - QWidget::focusPolicy()を確認し、フォーカスを受け付けるように設定する。
  - レイアウトを単純化して、フォーカス移動の経路を明確にする。
  - オーバーライドしたfocusNextPrevChild()のコードをデバッグし、ロジックを確認する。
  - Qt Designerを使用している場合は、タブ順序がGUI上で正しく設定されているか確認してください。
TabキーやShift+Tabキーが効かない
- 原因
  - QPlainTextEditがフォーカスを持っていない。
  - イベントフィルタがTabキーやShift+Tabキーのイベントを横取りしている。
  - キーボードショートカットの設定が競合している。
- トラブルシューティング
  - QPlainTextEdit::setFocus()を使用して、明示的にフォーカスを設定する。
  - イベントフィルタのコードを確認し、TabキーやShift+Tabキーのイベントが適切に処理されているか確認する。
  - キーボードショートカットの設定を確認し、競合する設定を削除または変更する。
  - QPlainTextEditのreadOnlyプロパティがtrueになっていないか確認してください。
カスタムウィジェットでfocusNextPrevChild()をオーバーライドした際の問題
- 原因
  - 親クラスのfocusNextPrevChild()を適切に呼び出していない。
  - フォーカス移動のロジックが無限ループに陥っている。
  - フォーカス移動の際に、不要な副作用が発生している。
- トラブルシューティング
  - 必要に応じて、親クラスのQPlainTextEdit::focusNextPrevChild(next)を呼び出すようにする。
  - フォーカス移動のロジックを慎重に確認し、無限ループが発生しないようにする。
  - フォーカス移動の際に、状態を変更するコードを最小限に抑える。
  - デバッグツールを使用して、変数の中身や、関数の呼び出し順序を追跡する。
ウィジェットが非表示または無効になっている場合
- 原因
  - 非表示、または無効に設定されているウィジェットにはフォーカスが渡されません。
- トラブルシューティング
  - ウィジェットの可視性(visible)と有効性(enabled)を確認する。
  - 必要に応じて、ウィジェットを可視状態、有効状態にする。

デバッグのヒント

Qtのデバッガを使用して、ウィジェットのプロパティやイベントを監視する。
ブレークポイントを設定して、focusNextPrevChild()のコードをステップ実行する。
qDebug()を使用して、フォーカス移動の過程でどのウィジェットにフォーカスが設定されているかを確認する。

デバッグ (debug)
プログラムの誤りを修正する作業。
キーボードショートカット (keyboard shortcut)
キーボード操作で特定の機能を実行する仕組み。
イベントフィルタ (event filter)
ウィジェットに送信されるイベントを監視・処理する仕組み。
フォーカス (focus)
入力や操作を受け付ける状態。
タブ順序 (tab order)
ウィジェット間のフォーカス移動の順番。

例1: 基本的なタブ順序の制御

この例では、QPlainTextEditとQLineEditをフォームに配置し、setTabOrder()を使用してタブ順序を明示的に設定します。

#include <QApplication>
#include <QWidget>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QLineEdit>
#include <QVBoxLayout>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  QWidget window;
  QVBoxLayout layout(&window);

  QPlainTextEdit *plainTextEdit = new QPlainTextEdit();
  QLineEdit *lineEdit = new QLineEdit();

  layout.addWidget(plainTextEdit);
  layout.addWidget(lineEdit);

  // タブ順序を明示的に設定
  QWidget::setTabOrder(plainTextEdit, lineEdit);
  QWidget::setTabOrder(lineEdit, plainTextEdit); //循環させるために追加

  window.show();
  return app.exec();
}

説明

このコードを実行すると、plainTextEditとlineEditの間でTabキーを使ってフォーカスが移動します。
QWidget::setTabOrder(lineEdit, plainTextEdit): lineEditからplainTextEditへ、Tabキーでフォーカスが移動するように設定します。これにより循環するようにフォーカスが移動します。
QWidget::setTabOrder(plainTextEdit, lineEdit): plainTextEditからlineEditへ、Tabキーでフォーカスが移動するように設定します。

例2: focusNextPrevChild()のオーバーライド

この例では、QPlainTextEditを継承したカスタムウィジェットを作成し、focusNextPrevChild()をオーバーライドして、特定のウィジェットにのみフォーカスを移動するようにします。

#include <QApplication>
#include <QWidget>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QLineEdit>
#include <QVBoxLayout>

class MyPlainTextEdit : public QPlainTextEdit {
public:
  MyPlainTextEdit(QWidget *parent = nullptr) : QPlainTextEdit(parent) {}

protected:
  bool focusNextPrevChild(bool next) override {
    // 特定のウィジェットへのフォーカス移動のみ許可
    QWidget *nextWidget = parentWidget()->findChild<QLineEdit *>();
    if (nextWidget) {
      nextWidget->setFocus();
      return true;
    }
    return QPlainTextEdit::focusNextPrevChild(next); // ほかのウィジェットへの移動は標準の動作
  }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  QWidget window;
  QVBoxLayout layout(&window);

  MyPlainTextEdit *myPlainTextEdit = new MyPlainTextEdit();
  QLineEdit *lineEdit = new QLineEdit();
  QLineEdit *lineEdit2 = new QLineEdit();

  layout.addWidget(myPlainTextEdit);
  layout.addWidget(lineEdit);
  layout->addWidget(lineEdit2);

  window.show();
  return app.exec();
}

説明

このコードを実行すると、MyPlainTextEditからTabキーを押すと、常に最初のQLineEditウィジェットにフォーカスが移動します。
QLineEditウィジェットが見つからなかった場合、QPlainTextEdit::focusNextPrevChild(next)を呼び出して、デフォルトのフォーカス移動の動作を続行します。
QLineEditウィジェットが見つかった場合、setFocus()を使用してフォーカスを移動し、trueを返します。
findChild<QLineEdit *>()を使用して、親ウィジェット内のQLineEditウィジェットを検索します。
MyPlainTextEditクラスはQPlainTextEditを継承し、focusNextPrevChild()をオーバーライドします。

例3: イベントフィルタの使用

この例では、イベントフィルタを使用して、Tabキーのイベントを監視し、特定の処理を実行します。

#include <QApplication>
#include <QWidget>
#include <QPlainTextEdit>
#include <QKeyEvent>
#include <QVBoxLayout>
#include <QDebug>

class MyPlainTextEdit : public QPlainTextEdit {
public:
  MyPlainTextEdit(QWidget *parent = nullptr) : QPlainTextEdit(parent) {}

protected:
  bool eventFilter(QObject *watched, QEvent *event) override {
    if (event->type() == QEvent::KeyPress) {
      QKeyEvent *keyEvent = static_cast<QKeyEvent *>(event);
      if (keyEvent->key() == Qt::Key_Tab) {
        qDebug() << "Tabキーが押されました。";
        return true; // イベントを処理済みとして扱う
      }
    }
    return QPlainTextEdit::eventFilter(watched, event);
  }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  QWidget window;
  QVBoxLayout layout(&window);

  MyPlainTextEdit *myPlainTextEdit = new MyPlainTextEdit();
  layout->addWidget(myPlainTextEdit);

  myPlainTextEdit->installEventFilter(myPlainTextEdit);

  window.show();
  return app.exec();
}

このコードを実行すると、MyPlainTextEdit内でTabキーを押すと、コンソールにメッセージが出力されます。
Tabキーが押された場合、qDebug()でメッセージを出力し、trueを返してイベントを処理済みとして扱います。
eventFilter()をオーバーライドして、キープレスイベントを監視します。
installEventFilter(myPlainTextEdit)を使用して、MyPlainTextEditにイベントフィルタをインストールします。

代替手法とその説明

- focusNextPrevChild()は内部でこれらの関数を呼び出しています。直接これらの関数を使用することで、より細かい制御が可能です。
- これらの関数は、現在のウィジェットの直接の子ウィジェットにのみフォーカスを移動します。
- 複雑なレイアウトや、特定のウィジェットグループ内でのみフォーカスを移動させたい場合に便利です。
```
// 例: 次の子ウィジェットにフォーカスを移動
plainTextEdit->parentWidget()->focusNextChild();

// 例: 前の子ウィジェットにフォーカスを移動
plainTextEdit->parentWidget()->focusPreviousChild();
```
QKeyEvent イベントハンドラの使用
- QPlainTextEditのkeyPressEvent()をオーバーライドすることで、キーイベントを直接処理できます。
- TabキーやShift+Tabキーのイベントを検出し、QWidget::focusNextChild()やQWidget::focusPreviousChild()を呼び出して、カスタムのフォーカス移動ロジックを実装できます。
- 特定の条件に基づいてフォーカスを移動させたい場合や、フォーカス移動時に特定のアクションを実行したい場合に有効です。
```
void MyPlainTextEdit::keyPressEvent(QKeyEvent *event) {
  if (event->key() == Qt::Key_Tab) {
    if (event->modifiers() & Qt::ShiftModifier) {
      parentWidget()->focusPreviousChild();
    } else {
      parentWidget()->focusNextChild();
    }
    event->accept(); // イベントを処理済みとして扱う
    return;
  }
  QPlainTextEdit::keyPressEvent(event);
}
```
QFocusEvent イベントハンドラの使用
- QPlainTextEditのfocusInEvent()やfocusOutEvent()をオーバーライドすることで、フォーカスが移動したタイミングで特定のアクションを実行できます。
- 例えば、フォーカスが移動した際に、特定のウィジェットの状態を変更したり、特定の情報を表示したりできます。
```
void MyPlainTextEdit::focusInEvent(QFocusEvent *event) {
  // フォーカスが移動した際の処理
  qDebug() << "MyPlainTextEditにフォーカスが移動しました。";
  QPlainTextEdit::focusInEvent(event);
}
```
QAction と QShortcut の使用
- QActionとQShortcutを使用して、特定のキーボードショートカットにフォーカス移動の機能を割り当てることができます。
- これにより、TabキーやShift+Tabキー以外のキーボードショートカットを使用してフォーカスを移動させることができます。
- 特定のキーボードショートカットに、複雑なフォーカス移動のロジックを割り当てたい場合に便利です。
```
QAction *nextFocusAction = new QAction("次のウィジェットにフォーカス", this);
nextFocusAction->setShortcut(Qt::CTRL + Qt::Key_Tab);
connect(nextFocusAction, &QAction::triggered, [this]() {
  parentWidget()->focusNextChild();
});
addAction(nextFocusAction);
```
カスタムのフォーカスマネージャの実装
- より複雑なフォーカス移動のロジックが必要な場合は、カスタムのフォーカスマネージャを実装できます。
- これにより、特定の条件に基づいてフォーカスを移動させたり、フォーカス移動の履歴を管理したりできます。
- 大規模なアプリケーションや、特殊なフォーカス移動の要件がある場合に有効です。

これらの代替手法の使い分け

複雑なフォーカス移動ロジック
カスタムのフォーカスマネージャ
カスタムキーボードショートカット
QAction と QShortcut
フォーカス移動時のアクション
QFocusEvent イベントハンドラ
特定の条件に基づくフォーカス移動
QKeyEvent イベントハンドラ
単純なフォーカス移動
QWidget::focusNextChild() と QWidget::focusPreviousChild()