Qt TextInput 入力検証の最適解:inputMaskとJavaScriptの組み合わせ
2025-03-21
基本的な概念
- 入力制限
入力マスクを設定することで、ユーザーは指定されたパターンに従ってのみテキストを入力できます。例えば、電話番号、郵便番号、日付など、特定の形式で入力する必要がある場合に便利です。 - 入力マスク (Input Mask)
入力マスクは、入力可能な文字の種類と位置を定義する文字列です。特定の文字や記号を使って、入力のパターンを記述します。
入力マスクの構文
入力マスクは、以下の文字や記号を使って構成されます。
- ;
セパレータ。入力が完了したときに、セパレータ以降の文字がプレースホルダーとして表示されます。 - \
エスケープ文字 (特殊文字をリテラルとして扱う) - <
後続の文字を小文字に変換 - >
後続の文字を大文字に変換 - B
バイナリ文字 (0, 1) - H
16進数文字 (0-9, A-F, a-f) - #
数字または空白 - X
任意の文字 - N
英数字 (A-Z, a-z, 0-9) - A
英字 (A-Z, a-z) - 9
数字 (0-9)
例
- 電話番号(国際)
+99 999 999 9999;
TextInput { inputMask: "+99 999 999 9999; " }
;
の後に空白をいれることで、プレースホルダーとして空白が表示される。
- 英数字のみ (5文字)
TextInput { inputMask: "NNNNN" }
- 時刻 (HH:MM)
12:30
TextInput { inputMask: "99:99" }
- 日付 (YYYY/MM/DD)
2000/01/01
TextInput { inputMask: "9999/99/99" }
- 郵便番号 (日本)
000-0000
TextInput { inputMask: "999-9999" }
- 電話番号 (日本)
000-0000-0000
TextInput { inputMask: "999-9999-9999" }
使用方法
TextInput
要素のinputMask
プロパティに、上記のような入力マスク文字列を設定します。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
TextInput {
id: phoneNumberInput
anchors.centerIn: parent
inputMask: "999-9999-9999"
placeholderText: "電話番号を入力してください"
}
}
この例では、TextInput
要素に電話番号の入力マスクを設定しています。ユーザーは、999-9999-9999
の形式でしか数字を入力できません。
利点
- ユーザーエクスペリエンスの向上
ユーザーは正しい形式で入力する必要があることを明確に理解できます。 - データの一貫性
データベースやファイルに保存するデータの形式を統一できます。 - 入力エラーの防止
ユーザーが誤った形式で入力するのを防ぎます。
- より複雑な入力検証が必要な場合は、JavaScriptやC++でカスタムの検証処理を実装する必要があります。
- 入力マスクは、あくまでも入力形式の制限であり、データの検証ではありません。例えば、日付の入力マスクを設定しても、実際には存在しない日付(例: 2023/02/30)を入力できてしまう可能性があります。
一般的なエラーとトラブルシューティング
-
- 原因
- 入力マスクの定義が不十分である。
- コピー&ペーストによる入力が入力マスクをバイパスしている。
- トラブルシューティング
- 入力マスクの定義をより厳密にし、許可する文字の種類と位置を明確に指定します。
- コピー&ペーストによる入力を制限する必要がある場合は、
onTextChanged
シグナルを使用して入力内容を検証し、無効な文字を削除します。
- 原因
-
入力マスクのプレースホルダーが正しく表示されない
- 原因
- セパレータ(
;
)の位置が間違っている。 - プレースホルダーテキストが長すぎるか、入力マスクと矛盾している。
- セパレータ(
- トラブルシューティング
- セパレータの位置を確認し、プレースホルダーが表示されるべき位置に正しく配置します。
- プレースホルダーテキストを短くするか、入力マスクと一致するように変更します。
- セパレータの後に空白をいれることでプレースホルダーの見た目を調整できる場合があります。
- 原因
-
入力マスクがパフォーマンスに影響を与える
- 原因
- 非常に複雑な入力マスクを使用している。
- 大量の
TextInput
要素で入力マスクを使用している。
- トラブルシューティング
- 入力マスクを簡略化し、必要最小限の制限のみを適用します。
TextInput
要素の数を減らすか、入力マスクを使用する要素を限定します。- 必要であれば、C++側でより効率的な入力検証を実装することを検討します。
- 原因
-
特定の環境でのみ入力マスクが機能しない
- 原因
- プラットフォーム固有のバグまたは制限。
- Qtのバージョンによる違い。
- トラブルシューティング
- 異なるプラットフォームでテストし、問題が特定の環境でのみ発生するか確認します。
- Qtのバージョンを更新またはダウングレードして、問題が解決するか確認します。
- Qtの公式フォーラムやバグトラッカーで同様の問題が報告されていないか検索します。
- 原因
デバッグのヒント
- ドキュメント参照
Qtの公式ドキュメントでTextInput.inputMask
に関する情報を確認します。 - ステップ実行
デバッガを使用して、コードをステップ実行し、入力マスクの処理を追跡します。 - コンソール出力
console.log()
を使用して、入力されたテキストや入力マスクの値をデバッグ出力します。
重要な注意点
- ユーザーエクスペリエンスを考慮し、入力マスクは必要最小限の制限のみを適用するようにしてください。
inputMask
は、あくまでも入力形式の「補助」であり、完全な検証を行うものではありません。より厳密な検証が必要な場合は、JavaScriptやC++で追加の検証ロジックを実装する必要があります。
例1: 電話番号の入力マスク (日本)
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
TextInput {
id: phoneNumberInput
anchors.centerIn: parent
inputMask: "999-9999-9999"
placeholderText: "電話番号 (例: 03-1234-5678)"
}
}
- 説明
inputMask: "999-9999-9999"
によって、入力は数字とハイフンのみに制限され、指定された形式でのみ入力可能になります。placeholderText
で、ユーザーに入力例を示しています。
例2: 郵便番号の入力マスク (日本)
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
TextInput {
id: postalCodeInput
anchors.centerIn: parent
inputMask: "999-9999"
placeholderText: "郵便番号 (例: 100-0001)"
}
}
- 説明
inputMask: "999-9999"
によって、7桁の数字とハイフンのみの入力に制限されます。
例3: 日付の入力マスク (YYYY/MM/DD)
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
TextInput {
id: dateInput
anchors.centerIn: parent
inputMask: "9999/99/99"
placeholderText: "日付 (例: 2023/10/27)"
}
}
- 説明
inputMask: "9999/99/99"
によって、年/月/日の形式での入力に制限されます。
例4: 英数字のみの入力マスク
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
TextInput {
id: alphanumericInput
anchors.centerIn: parent
inputMask: "NNNNNNNN" // 8文字の英数字
placeholderText: "英数字を入力してください"
}
}
- 説明
inputMask: "NNNNNNNN"
によって、8文字の英数字のみの入力に制限されます。
例5: セパレータとプレースホルダー
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
TextInput {
id: serialNumberInput
anchors.centerIn: parent
inputMask: "AAAA-9999;ABCD-1234"
placeholderText: "シリアル番号"
}
}
- 説明
inputMask: "AAAA-9999;ABCD-1234"
によって、英字4文字、ハイフン、数字4文字の入力に制限されます。;
以降のABCD-1234
がプレースホルダーとして表示されます。
例6: 入力制限とJavaScriptによる検証の組み合わせ
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Controls 2.15
ApplicationWindow {
visible: true
width: 400
height: 200
TextInput {
id: ageInput
anchors.centerIn: parent
inputMask: "999"
placeholderText: "年齢 (0-150)"
onTextChanged: {
if (text > 150) {
text = "150";
}
}
}
}
- 説明
inputMask: "999"
によって、3桁の数字のみの入力に制限されます。onTextChanged
シグナルを使用して、入力された年齢が150を超えないように検証しています。
- ユーザーエクスペリエンスを考慮し、入力マスクは必要最小限の制限のみを適用するようにしてください。
- より複雑な検証が必要な場合は、JavaScriptやC++で追加の検証ロジックを実装する必要があります。
inputMask
は入力形式を制限しますが、データの完全な検証を行うものではありません。
validatorプロパティの使用
TextInput
のvalidator
プロパティを使用すると、入力されたテキストを検証するためのバリデーターオブジェクトを設定できます。
- 例
import QtQuick 2.15 import QtQuick.Controls 2.15 import QtQuick.RegularExpressions 1.0 // QRegExpValidatorを使用する場合 ApplicationWindow { visible: true width: 400 height: 200 TextInput { id: ipAddressInput anchors.centerIn: parent placeholderText: "IPアドレス (例: 192.168.1.1)" validator: RegExpValidator { regExp: /^(?:[0-9]{1,3}\.){3}[0-9]{1,3}$/ } } }
- 説明
QRegExpValidator
を使用して、IPアドレスの形式を正規表現で検証しています。- 正規表現によって、より複雑なパターンを柔軟に検証できます。
- 説明
- QValidatorクラス
QValidator
は、入力されたテキストを検証するための抽象クラスです。QIntValidator
、QDoubleValidator
、QRegExpValidator
などの具体的なバリデータークラスが提供されています。
onTextChangedシグナルとJavaScriptによる検証
TextInput
のonTextChanged
シグナルを使用して、入力されたテキストをJavaScriptで検証し、必要に応じてテキストを修正できます。
- 例
import QtQuick 2.15 import QtQuick.Controls 2.15 ApplicationWindow { visible: true width: 400 height: 200 TextInput { id: numericInput anchors.centerIn: parent placeholderText: "数字のみ入力" onTextChanged: { if (isNaN(text)) { text = text.replace(/[^0-9]/g, ""); // 数字以外の文字を削除 } } } }
- 説明
isNaN()
関数を使用して、入力されたテキストが数字かどうかを検証しています。- 数字以外の文字が入力された場合は、
replace()
関数を使用して削除しています。 onTextChanged
を使用することで、入力中のリアルタイム検証が可能です。
- 説明
C++によるカスタムバリデーター
より複雑な検証ロジックが必要な場合は、C++でカスタムのバリデータークラスを実装し、QMLから使用できます。
- 手順
QValidator
を継承したカスタムクラスをC++で作成します。validate()
メソッドをオーバーライドして、検証ロジックを実装します。- QMLにカスタムクラスを登録し、
validator
プロパティに設定します。
- 利点
- パフォーマンスの高い検証処理を実装できます。
- 複雑なビジネスロジックをカプセル化できます。
入力フォーマット済みテキストの表示と編集
入力されたテキストを内部で保持し、表示する際にフォーマットを適用し、編集時には内部の生テキストを編集する。
- 実装
- JavaScriptやC++で、表示と編集のフォーマット処理を実装します。
- 利点
- 柔軟な表示形式と編集形式を両立できます。
- 内部データの整合性を保ちやすい。
- 例
- 電話番号の入力時、内部では数字のみを保持し、表示時にはハイフンを追加する。
- 編集時には、ハイフンを取り除いた数字のみを表示する。
複数のTextInputを組み合わせる
日付の入力など、複数の要素からなる入力の場合、複数のTextInput
要素を組み合わせて、それぞれに適切な検証を適用する。
- 利点
- 各要素ごとに細かく検証できます。
- ユーザーインターフェースを柔軟に設計できます。
- 例
- 日付の入力の場合、年、月、日のそれぞれを個別の
TextInput
要素で入力し、QIntValidator
などで範囲を検証する。
- 日付の入力の場合、年、月、日のそれぞれを個別の
- 開発効率: JavaScriptによる検証は、迅速な開発に適しています。
- 柔軟性: 柔軟な表示形式や編集形式が必要な場合は、JavaScriptやC++でカスタムのフォーマット処理を実装します。
- パフォーマンス: 大量のデータを検証する場合は、C++によるカスタムバリデーターを検討します。
- 検証の複雑さ: 単純な形式の検証であれば
inputMask
で十分ですが、複雑な検証が必要な場合は他の方法を検討します。