void QFont::removeSubstitutions()

2025-06-06

Qtプログラミングにおけるvoid QFont::removeSubstitutions()は、指定されたフォントファミリー名に登録されているすべての代替フォント(substitute fonts)を削除する静的関数です。

詳細な説明

  • 効果の適用
    フォントの代替設定を変更した場合、その変更を既存のQFontオブジェクトに反映させるためには、既存のQFontオブジェクトを破棄して再作成する必要があります。これは、QFontオブジェクトが作成時にフォント情報をキャッシュするためです。

  • 静的関数(Static Function)
    removeSubstitutions()は静的関数であるため、QFontクラスのインスタンスを作成せずに直接呼び出すことができます。例えば、QFont::removeSubstitutions("MyCustomFont");のように使用します。

  • removeSubstitutions(const QString &familyName)
    この関数は、引数として渡されたfamilyNameに関連付けられているすべての代替フォントの登録を解除します。つまり、そのフォントファミリーが利用できない場合に、以前に設定されていた代替フォントが使われなくなります。これにより、Qtのフォントマッチングアルゴリズムは、代替設定なしでフォントを探すことになります。

  • insertSubstitution() / insertSubstitutions()
    代替フォントを設定するには、QFont::insertSubstitution()(単一の代替)またはQFont::insertSubstitutions()(複数の代替)といった静的関数を使用します。これらの関数は、特定のフォントファミリーに対して、別のフォントファミリーを代替として登録します。

  • フォントの代替(Font Substitution)
    Qtでは、システムに存在しないフォントファミリーを指定した場合に備えて、代替フォントを設定する仕組みがあります。例えば、「MyCustomFont」というフォントを使いたいが、ユーザーのシステムにはインストールされていない場合、「Arial」や「Meiryo」といった代替フォントを設定しておくことができます。これにより、指定したフォントが利用できない場合でも、ユーザーに適切なフォントでテキストが表示されるようになります。

使用例のイメージ

#include <QFont>
#include <QApplication> // QApplication::setFont() などでアプリケーション全体のフォント設定を変更する場合

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    // "MyCustomFont" が利用できない場合に "Arial" を代替として設定
    QFont::insertSubstitution("MyCustomFont", "Arial");
    qDebug() << "MyCustomFont の代替フォント:" << QFont::substitutes("MyCustomFont"); // 出力例: ("Arial")

    // "MyCustomFont" にさらに "Meiryo" も代替として追加
    QStringList additionalSubstitutes;
    additionalSubstitutes << "Meiryo";
    QFont::insertSubstitutions("MyCustomFont", additionalSubstitutes);
    qDebug() << "MyCustomFont の代替フォント (追加後):" << QFont::substitutes("MyCustomFont"); // 出力例: ("Arial", "Meiryo")

    // ここで "MyCustomFont" を使用する QFont オブジェクトを作成した場合、
    // "MyCustomFont" がなければ "Arial" または "Meiryo" が使われる。

    // "MyCustomFont" のすべての代替フォントを削除
    QFont::removeSubstitutions("MyCustomFont");
    qDebug() << "MyCustomFont の代替フォント (削除後):" << QFont::substitutes("MyCustomFont"); // 出力例: ()

    // これ以降、"MyCustomFont" を指定しても代替は適用されず、
    // システムのフォントマッチングアルゴリズムが標準的な方法で最適なフォントを探す。

    // ... (アプリケーションの残りのコード)

    return app.exec();
}


以下に、よくある問題とその解決策を説明します。

void QFont::removeSubstitutions() の一般的な問題とトラブルシューティング

代替フォントが削除されない、または削除後も効果が残る

問題
removeSubstitutions() を呼び出したのに、以前設定した代替フォントがまだ適用されているように見える。

原因

  • 非推奨の API の使用
    古い Qt のバージョンや、非推奨のフォント設定方法を使用している場合、removeSubstitutions() が正しく動作しないことがあります(非常に稀ですが)。
  • 別の場所での再設定
    アプリケーションの別の場所で、同じフォントファミリーに対して再度 insertSubstitution()insertSubstitutions() が呼び出されている可能性があります。
  • フォントキャッシュ
    QFont オブジェクトは、そのフォント情報を内部的にキャッシュしています。removeSubstitutions() を呼び出した後も、既存の QFont オブジェクトが古い代替フォントの情報を持っている場合があります。

トラブルシューティング

  • Qt のバージョンを確認
    非常に古い Qt のバージョンを使用している場合は、最新のドキュメントを参照し、互換性の問題がないか確認してください。

  • コード全体の検索
    コードベース全体で insertSubstitution()insertSubstitutions() がどこで呼び出されているかを確認し、removeSubstitutions() の呼び出し後に再度代替が設定されていないかをチェックします。

  • アプリケーション全体のフォント設定の確認
    QApplication::setFont() などでアプリケーション全体のフォントが設定されている場合、その設定も考慮に入れる必要があります。特に、スタイルシートなどでフォントが指定されている場合は、そちらが優先されることがあります。

  • QFont オブジェクトの再作成
    removeSubstitutions() を呼び出した後、既存の QFont オブジェクトを破棄し、新しい QFont オブジェクトを作成し直してください。 これが最も重要なポイントです。

    // 悪い例: removeSubstitutions() を呼んでも既存のフォントオブジェクトは更新されない
    QFont myFont("MyCustomFont");
    // QFont::insertSubstitution("MyCustomFont", "Arial"); // 代替を設定したと仮定
    // ...
    QFont::removeSubstitutions("MyCustomFont");
    // myFont は古い代替情報を持っている可能性がある
    
    // 良い例: 代替を削除したらフォントオブジェクトを再作成する
    QFont myFont("MyCustomFont");
    // QFont::insertSubstitution("MyCustomFont", "Arial");
    // ...
    QFont::removeSubstitutions("MyCustomFont");
    myFont = QFont("MyCustomFont"); // 新しいフォントオブジェクトを再作成
    // または、ウィジェットのフォントを再設定する場合
    // widget->setFont(QFont("MyCustomFont"));
    

そもそも代替フォントが設定されていない

問題
removeSubstitutions() を呼び出しても特に変化がない。

原因
そもそも、removeSubstitutions() を呼び出す対象のフォントファミリーに対して、代替フォントが一度も設定されていない可能性があります。

トラブルシューティング

  • QFont::substitutes() で確認
    removeSubstitutions() を呼び出す前に、QFont::substitutes("YourFontFamilyName") を呼び出して、現在の代替フォントのリストを確認してください。リストが空であれば、削除すべき代替フォントが存在しないということです。

    qDebug() << "代替設定 (削除前):" << QFont::substitutes("MyCustomFont");
    QFont::removeSubstitutions("MyCustomFont");
    qDebug() << "代替設定 (削除後):" << QFont::substitutes("MyCustomFont");
    

フォントファミリー名が間違っている

問題
removeSubstitutions() に渡すフォントファミリー名が間違っているため、意図した代替フォントが削除されない。

原因

  • フォントの実際の表示名と、プログラム内部で使用する名前が異なる場合。
  • 大文字・小文字の違い(ただし、Qt のフォント名は通常、大文字・小文字を区別しませんが、念のため確認する価値はあります)。
  • スペルミス。

トラブルシューティング

  • 正確なフォントファミリー名の確認
    • insertSubstitution() で登録した名前と完全に一致するか確認します。
    • システムにインストールされているフォント名を確認できるツール(例: Windows のフォントビューア、macOS の Font Book)で、正確なフォント名を確認します。
    • QFontDatabase::families() を使用して、Qt が認識しているフォントファミリーのリストを取得し、その中に目的のフォント名が含まれているか確認します。

フォントマッチングの優先順位の誤解

問題
removeSubstitutions() で代替フォントを削除したのに、テキストの表示が変わらない、または別の予期せぬフォントが使われる。

原因

  • プラットフォーム固有のフォント設定
    OSレベルのフォント設定が、Qt のフォント選択に影響を与えることがあります。
  • スタイルシートの優先
    ウィジェットに設定されたスタイルシート(CSS)が、QFont オブジェクトによるフォント設定よりも優先されることがあります。
  • フォールバックフォント
    代替フォントが削除された場合、Qt はシステムにインストールされているフォントの中から、指定されたフォント(またはそのジェネリックファミリー)に最も近いものを選択しようとします。これは「フォールバック」メカニズムであり、代替フォントとは異なります。

トラブルシューティング

  • シンプルなテストケース
    問題を切り分けるために、最小限のコードでフォント設定と removeSubstitutions() をテストするシンプルなアプリケーションを作成します。
  • スタイルシートの確認
    対象のウィジェットに適用されているスタイルシートで、フォントが明示的に指定されていないか確認します。もし指定されている場合は、スタイルシートのフォント設定を調整するか、スタイルシートを削除して QFont オブジェクトの設定が適用されるようにします。
  • デバッグ出力
    QFontInfoQFontMetrics を使用して、実際に描画されているフォントの情報を取得し、どのフォントが使われているのかを詳細に確認します。

QFont::removeSubstitutions() を使用する際の最も一般的な落とし穴は、フォントキャッシュです。removeSubstitutions() を呼び出した後は、影響を受けるすべての QFont オブジェクトを再作成するか、対象のウィジェットのフォントを再設定することが不可欠です。また、QFont::substitutes() を使用して、代替フォントの設定が意図通りに行われているかを確認することも、デバッグの強力なツールとなります。 Qt の void QFont::removeSubstitutions() は、フォントの代替設定を削除する便利な関数ですが、使用方法やQtの内部動作を理解していないと、意図しない結果になったり、効果が得られないように見えたりすることがあります。ここでは、よくあるエラーとそのトラブルシューティングについて説明します。

removeSubstitutions() を呼び出してもフォントの表示が変わらない

原因
QFont::removeSubstitutions() は、あくまでフォントファミリーに対する代替設定の登録を解除するだけであり、すでに作成されている QFont オブジェクトや、それを使用しているウィジェットのフォントに直接影響を与えるわけではありませんQFont オブジェクトは、作成時にフォント情報をキャッシュします。そのため、代替設定を削除しても、既存のオブジェクトはそのキャッシュされた情報を使用し続けます。

トラブルシューティング
removeSubstitutions() を呼び出した後、代替設定の変更を反映させたい場合は、関連する QFont オブジェクトを再作成するか、既存の QFont オブジェクトをリセットし、それをウィジェットに再設定する必要があります。


// 既存のQFontオブジェクト
QFont myFont("MyCustomFont");
myLabel->setFont(myFont);

// 代替フォントを設定
QFont::insertSubstitution("MyCustomFont", "Arial");

// この時点ではmyLabelのフォントはMyCustomFontが使えればMyCustomFont、なければArial

// 代替フォントを削除
QFont::removeSubstitutions("MyCustomFont");

// !!! ここで注意: myLabelのフォントはまだArialの代替情報を使っている可能性がある

// 解決策1: 新しいQFontオブジェクトを作成して再設定
QFont newFont("MyCustomFont"); // 新しいオブジェクトは代替設定が削除された状態でフォントを解決する
myLabel->setFont(newFont);

// 解決策2: 既存のQFontオブジェクトのファミリーを再設定するなどして更新
// (これは既存のオブジェクトのキャッシュを強制的に更新する効果がある)
myFont.setFamily("MyCustomFont"); 
myLabel->setFont(myFont); 

// または、より確実に、ウィジェットのフォントを再設定する
// myLabel->setFont(myLabel->font()); // これでもキャッシュが更新される場合がある

存在しないフォントファミリーに対して removeSubstitutions() を呼び出している

原因
removeSubstitutions() は、存在しないフォントファミリー名を指定してもエラーにはなりません。しかし、もともと代替設定が登録されていないため、何の効果もありません。

トラブルシューティング
removeSubstitutions() を呼び出す前に、本当にそのフォントファミリーに代替設定がされているかを確認する必要があるかもしれません。QFont::substitutes(const QString &familyName) を使用して、現在の代替フォントリストを確認できます。


// "NonExistentFont" に代替が設定されているか確認
if (!QFont::substitutes("NonExistentFont").isEmpty()) {
    QFont::removeSubstitutions("NonExistentFont");
} else {
    qDebug() << "NonExistentFont には代替フォントが設定されていません。";
}

別のフォントマッチングメカニズムが優先されている

原因
Qtのフォントマッチングは複雑で、QFont::removeSubstitutions() 以外にも、次のような要因がフォント選択に影響を与えることがあります。

  • スタイルシート (Qt Style Sheets)
    スタイルシートでフォントが設定されている場合、setFont() などのコードからの設定よりも優先されることがあります。スタイルシートは非常に強力であり、しばしばフォントに関する問題の原因となります。
  • QApplication::setFont()
    アプリケーション全体のデフォルトフォントが設定されている場合、個々のウィジェットのフォント設定や代替設定に影響を与える可能性があります。
  • QFont::setStyleHint() / QFont::setStyleStrategy()
    これらの設定は、特定のフォントが存在しない場合に、Qtがどのようなスタイル(例: SansSerif, Serif, Monospaceなど)のフォントを探すべきかをヒントとして与えます。これが代替フォントとは別のフォント選択に影響を与えることがあります。
  • システムにインストールされている実際のフォント
    removeSubstitutions() は、代替フォントの登録を解除するだけで、システムにそのフォントファミリーがインストールされている場合は、それが直接使用されます。

トラブルシューティング

  • スタイルシートの影響を確認する
    アプリケーションでスタイルシートを使用している場合は、一時的にスタイルシートを無効にして、フォントの表示が改善されるか確認します。スタイルシートでフォントを設定している場合は、コードからの setFont() は無視されることがあります。
  • デバッグ出力を使用する
    QFont::substitutes()QFontInfo を使って、実際に使用されているフォントの情報を確認します。
    QFont actualFont = myLabel->font();
    QFontInfo fontInfo(actualFont);
    qDebug() << "使用されているフォントファミリー:" << fontInfo.family();
    qDebug() << "実際のマッチ:" << fontInfo.exactMatch();
    qDebug() << "MyCustomFont の現在の代替:" << QFont::substitutes("MyCustomFont");
    
  • フォントマッチングの優先順位を理解する
    Qtのフォント選択は、直接のフォント名、代替設定、スタイルヒント、システムのフォントマッチングなど、複数の層で行われます。問題が発生した場合は、これらの層を順に確認し、何がフォント選択に影響しているかを特定します。

アプリケーションの起動時より前に代替設定を削除している

原因
QFont::removeSubstitutions() は静的関数であり、Qtのフォントシステムが初期化されている必要があります。通常は QApplication または QGuiApplication のインスタンスが作成された後に呼び出すのが安全です。

トラブルシューティング
QApplication または QGuiApplication のコンストラクタが呼び出された後に removeSubstitutions() を呼び出すようにします。



QFont::removeSubstitutions() は静的関数であり、特定のフォントファミリーに設定された代替フォントを削除するために使用されます。この関数の主なポイントは、既存の QFont オブジェクトに直接影響しないため、変更を反映させるには追加の処理が必要になることです。

例1: 基本的な使用法と変更の反映

この例では、代替フォントを設定し、それを削除した後に、新しい QFont オブジェクトを作成することで変更が反映されることを示します。

#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QFont>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QDebug> // デバッグ出力用

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QWidget *window = new QWidget;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(window);

    // ------------------------------------------------------------------
    // ステップ1: フォントの代替設定
    // "MyCustomFont" という架空のフォントがシステムにない場合に、
    // "Arial" を代替として使用するように設定します。
    // (実際のフォント名に置き換えても構いません)
    QFont::insertSubstitution("MyCustomFont", "Arial");
    qDebug() << "初期設定: MyCustomFont の代替 ->" << QFont::substitutes("MyCustomFont");

    // "MyCustomFont" を設定したラベルを作成
    QLabel *label1 = new QLabel("これは MyCustomFont を使ったテキストです (代替あり)");
    QFont font1("MyCustomFont");
    label1->setFont(font1);
    layout->addWidget(label1);

    // ------------------------------------------------------------------
    // ステップ2: 代替設定の削除
    // "MyCustomFont" に登録されている代替フォントを削除します。
    QFont::removeSubstitutions("MyCustomFont");
    qDebug() << "代替削除後: MyCustomFont の代替 ->" << QFont::substitutes("MyCustomFont");

    // ------------------------------------------------------------------
    // ステップ3: 既存のQFontオブジェクトは影響を受けないことを示す
    // label1 のフォントはまだ Arial が使われている可能性があります。
    // (システムに MyCustomFont がない場合)
    QLabel *label2 = new QLabel("これは削除後に元のQFontオブジェクトを使ったテキストです");
    // label1 と同じフォントオブジェクトを使い回す
    label2->setFont(font1);
    layout->addWidget(label2);

    // ------------------------------------------------------------------
    // ステップ4: 代替設定の削除を反映させるには、新しいQFontオブジェクトを作成する必要がある
    QLabel *label3 = new QLabel("これは削除後に新しいQFontオブジェクトを使ったテキストです");
    // 新しい QFont オブジェクトを作成することで、Qtは最新の代替設定でフォントを解決します。
    // MyCustomFont がシステムにない場合、このラベルはArialではなく、
    // システムのデフォルトまたは類似のフォント(例: ゴシック系)にフォールバックします。
    QFont font3("MyCustomFont");
    label3->setFont(font3);
    layout->addWidget(label3);
    
    // 現在のフォント情報を表示してみる
    qDebug() << "label1 (既存オブジェクト) の実際のフォントファミリー:" << QFontInfo(label1->font()).family();
    qDebug() << "label2 (既存オブジェクト) の実際のフォントファミリー:" << QFontInfo(label2->font()).family();
    qDebug() << "label3 (新規オブジェクト) の実際のフォントファミリー:" << QFontInfo(label3->font()).family();


    window->setWindowTitle("QFont::removeSubstitutions の例");
    window->show();

    return app.exec();
}

この例の出力と解説

  • label3removeSubstitutions() の後に新しく作成された font3 オブジェクトを使用しています。そのため、MyCustomFont が利用できない場合、Arial への代替は適用されず、Qtはシステムにインストールされている他のフォント(例: 汎用的なゴシック体など)にフォールバックします。
  • 重要
    label1label2 は同じ font1 オブジェクトを使用しています。removeSubstitutions() が呼び出された後も、これらのラベルは MyCustomFont が利用できない場合に Arial を表示し続ける可能性が高いです。これは、font1 オブジェクトが最初に作成されたときにフォント情報をキャッシュしたためです。
  • qDebug() の出力を見ると、QFont::substitutes("MyCustomFont") が最初は ("Arial") を返し、removeSubstitutions() 呼び出し後は () (空リスト) を返すことがわかります。これは代替設定が正しく削除されたことを示します。

この例では、ボタンクリックでフォントの代替設定を変更し、既存のウィジェットのフォントを更新する方法を示します。

#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QPushButton>
#include <QFont>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QDebug>

class FontExampleWidget : public QWidget {
    Q_OBJECT // シグナル/スロットを使用するために必要

public:
    FontExampleWidget(QWidget *parent = nullptr) : QWidget(parent) {
        QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(this);

        infoLabel = new QLabel("現在の代替設定: ");
        layout->addWidget(infoLabel);

        mainLabel = new QLabel("このテキストのフォントを変更します。");
        // 初期フォントとして MyCustomFont を設定
        QFont initialFont("MyCustomFont");
        mainLabel->setFont(initialFont);
        layout->addWidget(mainLabel);

        QPushButton *setSubstituteButton = new QPushButton("代替を設定 (Arial)");
        connect(setSubstituteButton, &QPushButton::clicked, this, &FontExampleWidget::setArialSubstitution);
        layout->addWidget(setSubstituteButton);

        QPushButton *removeSubstituteButton = new QPushButton("代替を削除");
        connect(removeSubstituteButton, &QPushButton::clicked, this, &FontExampleWidget::removeSubstitution);
        layout->addWidget(removeSubstituteButton);

        updateInfoLabel(); // 初期情報を表示
    }

private slots:
    void setArialSubstitution() {
        // "MyCustomFont" に "Arial" を代替として設定
        QFont::insertSubstitution("MyCustomFont", "Arial");
        qDebug() << "代替を設定しました: Arial";
        updateMainLabelFont();
        updateInfoLabel();
    }

    void removeSubstitution() {
        // "MyCustomFont" の代替をすべて削除
        QFont::removeSubstitutions("MyCustomFont");
        qDebug() << "代替を削除しました";
        updateMainLabelFont();
        updateInfoLabel();
    }

    void updateMainLabelFont() {
        // !!! ここが重要: 代替設定の変更を反映させるため、
        // 既存のラベルのフォントを強制的に再設定します。
        // これにより、ラベルのフォントが再解決されます。
        // もしくは、新しい QFont オブジェクトを作成して設定することもできます。
        
        // 方法1: 既存のQFontオブジェクトのファミリーを再設定(キャッシュ更新を促す)
        QFont currentFont = mainLabel->font();
        currentFont.setFamily("MyCustomFont"); // フォントファミリーを再設定することで更新
        mainLabel->setFont(currentFont);
        
        // 方法2: 新しいQFontオブジェクトを作成して設定
        // QFont newFont("MyCustomFont");
        // mainLabel->setFont(newFont);
        
        qDebug() << "mainLabel の実際のフォントファミリー:" << QFontInfo(mainLabel->font()).family();
    }

    void updateInfoLabel() {
        QStringList substitutes = QFont::substitutes("MyCustomFont");
        if (substitutes.isEmpty()) {
            infoLabel->setText("現在の代替設定: なし");
        } else {
            infoLabel->setText("現在の代替設定: " + substitutes.join(", "));
        }
    }

private:
    QLabel *mainLabel;
    QLabel *infoLabel;
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);
    FontExampleWidget window;
    window.setWindowTitle("動的なフォント代替変更");
    window.show();
    return app.exec();
}

#include "main.moc" // moc ファイルのインクルード(Qt Creatorを使用している場合は自動生成されます)

この例の動作と解説

  1. 初期状態
    mainLabelMyCustomFont を使用しようとします。代替は設定されていないため、システムが提供する汎用的なフォント(例: ゴシック体)にフォールバックするでしょう。
  2. "代替を設定 (Arial)" ボタンをクリック
    • QFont::insertSubstitution("MyCustomFont", "Arial") が呼び出され、MyCustomFont の代替として Arial が登録されます。
    • updateMainLabelFont() が呼び出され、mainLabel のフォントが再設定されます。これにより、MyCustomFont が利用できない場合、Arial が表示されるようになります。
  3. "代替を削除" ボタンをクリック
    • QFont::removeSubstitutions("MyCustomFont") が呼び出され、MyCustomFont の代替設定が削除されます。
    • updateMainLabelFont() が再び呼び出され、mainLabel のフォントが再設定されます。今度は Arial への代替がなくなるため、MyCustomFont が利用できない場合、元のシステムが提供する汎用的なフォントにフォールバックします。

この例の肝は、updateMainLabelFont() スロット内の mainLabel->setFont(currentFont); (または新しい QFont オブジェクトの作成) です。これにより、QFont::removeSubstitutions() で変更されたグローバルな代替設定が、既存のウィジェットの表示に反映されます。



QFont::removeSubstitutions()は、特定のフォントファミリーに設定されたグローバルな代替フォントの登録を解除するための静的関数です。これに代わる方法を考える場合、どのような目的で代替フォントを「削除」したいのかによってアプローチが変わってきます。

グローバルな代替設定を「削除」する以外の方法

もし、QFont::removeSubstitutions()を使わずに、特定のフォントファミリーに対する代替の振る舞いを制御したいのであれば、以下の方法が考えられます。

特定のフォントファミリーに代替を設定しない

最も直接的な方法は、そもそもQFont::insertSubstitution()QFont::insertSubstitutions()を使って代替フォントを設定しないことです。これにより、Qtは代替フォントのルールを適用せず、標準のフォント解決メカニズム(システムフォント、スタイルヒントなど)に任せます。

利点
シンプルで意図が明確。 欠点: すでに設定されている代替を後から無効にすることはできません。

代替として「空のリスト」や「存在しないフォント」を設定し直す(実質的な無効化)

これは直接的な「削除」ではありませんが、代替として機能しない値を設定することで、実質的に代替を無効化することができます。

利点
removeSubstitutions()と同様に、動的に代替の振る舞いを変更できる。 欠点: removeSubstitutions()に比べて意図がやや不明瞭。また、Qtが「存在しないフォント」をどう扱うかはQtのバージョンやプラットフォームに依存する可能性がある。

// 例: 代替フォントとして空のリストを設定して実質的に無効化
QStringList emptyList;
QFont::insertSubstitutions("MyCustomFont", emptyList);

// または、絶対に存在しないようなフォント名を設定する
// QFont::insertSubstitution("MyCustomFont", "ThisFontShouldNotExistOnAnySystemXYZ123");

多くの場合、QFont::removeSubstitutions() を使ってグローバルな代替設定を操作したいのは、特定のテキストやウィジェットのフォントが意図したとおりに表示されないためです。その場合、グローバルな設定を変更するのではなく、個々の QFont オブジェクトやウィジェットのフォント設定をより細かく制御する代替手段が考えられます。

フォントファミリーを明示的に指定する

最も基本的な方法は、QFont オブジェクトを構築する際に、意図するフォントファミリーを直接指定することです。もしそのフォントがシステムに存在しない場合、Qtは内部のフォント解決メカニズムに従って代替フォントを探します(ここでQFont::insertSubstitution()で設定された代替が考慮されますが、設定されていなければ通常のフォールバックが行われます)。

// 意図するフォントが利用可能であれば、これだけで十分
QFont font("Arial");
myLabel->setFont(font);

// 複数のフォントを指定して、優先順位を付ける
// システムが最初のフォントを見つけられない場合、次のフォントを探す
QFont font2("MyCustomFont, Arial, Meiryo, sans-serif"); 
myLabel->setFont(font2);

QFont::setStyleHint() / QFont::setStyleStrategy() を使用する

これらの関数は、特定のフォントが見つからなかった場合に、Qtがフォントをどのように「推測」または「マッチング」するかを制御するためのヒントを与えます。これはQFont::removeSubstitutions()とは異なるレイヤーの制御です。

  • QFont::setStyleStrategy(QFont::PreferMatch) など
    フォントのマッチング戦略を制御します。例えば、PreferMatchは指定されたファミリーに最も近いフォントを見つけようとしますが、NoFontMergingは複数のフォントを組み合わせてグリフを表示するのを防ぎます。
  • QFont::setStyleHint(QFont::SansSerif) など
    ゴシック体、明朝体、等幅フォントなどの一般的なカテゴリを指定し、そのカテゴリで最適なフォントを探すようにQtに指示します。

これらの方法は、代替フォントの有無にかかわらず、Qtのフォント解決の振る舞いを調整するのに役立ちます。

QFont font("MyCustomFont");
font.setStyleHint(QFont::SansSerif); // MyCustomFont がない場合に、SansSerif系のフォントを探す
myLabel->setFont(font);

QFont font2("MyCustomFont");
font2.setStyleStrategy(QFont::NoFontMerging); // 特定のフォントマージ挙動を防ぐ
myLabel->setFont(font2);

フォールバックメカニズムを手動で実装する

QFont::removeSubstitutions() を使わずに、より柔軟なフォールバックロジックを自分で実装することも可能です。

  • 複数の QFont オブジェクトを用意し、条件によって切り替える
    最初から複数のフォント設定(優先フォント、代替フォントA、代替フォントBなど)を QFont オブジェクトとして用意しておき、実行時にシステムのフォント環境やユーザー設定に基づいて適切なものを選択して適用します。

  • QFontInfo を使ってフォントの利用可能性を確認する
    QFontInfo クラスを使って、特定のフォントがシステムに存在し、意図したとおりに表示されるかを確認できます。

    QFont requestedFont("MyCustomFont");
    QFontInfo fontInfo(requestedFont);
    
    if (fontInfo.exactMatch()) {
        // MyCustomFont が正確に利用可能
        myLabel->setFont(requestedFont);
    } else {
        // MyCustomFont が利用できないか、正確にマッチしない場合
        // 代替フォントを手動で設定
        QFont fallbackFont("Arial");
        myLabel->setFont(fallbackFont);
        qDebug() << "MyCustomFont が利用できないため、Arial を使用します。";
    }
    

スタイルシート (QSS) でフォントを制御する

Qtスタイルシートは、ウィジェットの見た目をCSSライクな構文で制御する強力なメカニズムです。フォント設定もスタイルシートで行うことができ、その場合、C++コードで設定した setFont() よりも優先されることがあります。

スタイルシートでは、複数のフォント名をカンマ区切りで指定することで、自動的にフォールバック順序を設定できます。

// スタイルシートでフォントを設定
myLabel->setStyleSheet("font-family: 'MyCustomFont', Arial, 'Meiryo UI', sans-serif;");

// この場合、MyCustomFont が見つからなければ Arial、それがなければ Meiryo UI、
// それもなければ sans-serif カテゴリのフォントが自動的に選択されます。
// これは QFont::insertSubstitution() とは異なるフォールバックメカニズムです。

QFont::removeSubstitutions() は、Qtアプリケーション全体または特定のセッションで、あるフォントファミリーに対するグローバルな代替設定をリセットしたい場合に非常に有効です。

しかし、もしあなたの目的が:

  • より複雑なフォールバックロジックが必要であれば、QFontInfo を使った手動チェックや、複数の QFont オブジェクトの管理を検討することになります。
  • 代替フォントを完全に無効にしたいのであれば、そもそも insertSubstitution() を使わないか、代替として無効な値を設定し直すことも検討できます。
  • 単に特定のウィジェットのフォントを制御したいだけであれば、QFont コンストラクタでの複数フォント指定、setStyleHint()、またはスタイルシートがより適切かもしれません。