QtのQFont::fixedPitch()徹底解説：等幅フォント制御の基礎
QtプログラミングにおけるQFont::fixedPitch()は、フォントが固定ピッチ（等幅）フォントであるかどうかを示す情報を取得するための関数です。
固定ピッチフォントとは？
固定ピッチフォント（または等幅フォント）とは、フォントに含まれる全ての文字が同じ幅を持つフォントのことです。例えば、「i」と「W」のように幅が異なる文字でも、固定ピッチフォントでは同じスペースを占めます。
QFont::fixedPitch() の役割
QFont::fixedPitch() は、QFont オブジェクトに「固定ピッチ」が設定されているかどうかを返します。この関数は、setFixedPitch(bool enable) 関数でフォントに固定ピッチを設定した場合に true を返します。逆に、固定ピッチが設定されていない場合は false を返します。
重要な注意点：QFont と QFontInfo の違い
ここで重要なのは、QFont::fixedPitch() が返すのは、**あなたが QFont オブジェクトに対して設定した「要求」**であるという点です。実際にシステムが使用するフォントが固定ピッチであるかどうかを保証するものではありません。
実際にシステムがテキストの描画に使用するフォントの情報を取得するには、QFontInfo クラスを使用する必要があります。QFontInfo::fixedPitch() は、実際に使用されるフォントが固定ピッチである場合に true を返します。
なぜこの違いが重要なのか？
Qtは、あなたがQFontオブジェクトに設定した属性（フォントファミリー、ポイントサイズ、太さ、イタリック、そして固定ピッチなど）に基づいて、利用可能なシステムフォントの中から最適なものを選択しようとします。
例えば、あなたが font.setFixedPitch(true) と設定しても、システムに適切な固定ピッチフォントがない場合、Qtは最も近い代替フォント（プロポーショナルフォントなど）を選択する可能性があります。この場合、QFont::fixedPitch() は true を返しますが、QFontInfo(font).fixedPitch() は false を返すかもしれません。
QFontInfo::fixedPitch(): 実際にシステムが使用するフォントが固定ピッチであるかどうかを示す「結果」を返します。QFont::fixedPitch():QFontオブジェクトに固定ピッチが設定されているかどうかを示す「要求」を返します。
一般的なエラーと問題
-
- 説明
これが最もよくある誤解です。QFont::setFixedPitch(true)は、あくまで「固定ピッチフォントを使いたい」というあなたの意図をQtに伝えるものです。システムに適切な固定ピッチフォントがインストールされていない場合や、Qtのフォントマッチングアルゴリズムが他の要因（フォントファミリー、スタイルヒントなど）を優先した場合、プロポーショナルフォント（可変幅フォント）が代わりに選ばれてしまうことがあります。 - トラブルシューティング
- QFontInfo::fixedPitch() で確認する
実際に使用されているフォントが固定ピッチであるかどうかをQFontInfo(yourFont).fixedPitch()で確認してください。これがfalseを返す場合、あなたの要求が満たされていないことを意味します。 - フォントファミリーを明示的に指定する
"Courier New", "Consolas", "DejaVu Sans Mono", "Monospace" など、OSに一般的にインストールされている固定ピッチフォントのファミリー名を明示的に指定してみてください。 - QFont::TypeWriter スタイルヒントを使用する
font.setStyleHint(QFont::TypeWriter)を設定することで、Qtのフォントマッチングアルゴリズムに固定ピッチフォントを優先させるように促すことができます。 - システムフォントデータベースを確認する
QFontDatabaseクラスを使用して、システムにどのような固定ピッチフォントがインストールされているかを確認できます。 - フォールバックフォントの考慮
指定したフォントが見つからない場合に備えて、いくつかの代替の固定ピッチフォントファミリーを指定することを検討してください。
- QFontInfo::fixedPitch() で確認する
- 説明
-
「異なるOSや環境で表示が異なる」
- 説明
フォントの可用性はOSやシステムの設定に大きく依存します。Windows、macOS、Linux (ディストリビューションによっても異なる) では、デフォルトで利用可能なフォントが異なります。あるOSで意図通りに表示されても、別のOSではそのフォントが存在しないため、代替フォントが使用され、固定ピッチが失われることがあります。 - トラブルシューティング
- クロスプラットフォームで一般的に利用可能なフォントを選ぶ
"Courier New" (Windows), "Menlo" (macOS), "Monospace" (Linuxの一般的なエイリアス) など、複数のOSで広く使われている固定ピッチフォントを優先的に使用します。 - QFontDatabase::standardFont() を利用する
QFontDatabase::fixedFont()を使用すると、システムが推奨する固定ピッチフォントを取得できます。これは特定のフォントファミリー名をハードコードするよりも、より堅牢な方法です。 - フォールバック戦略の実装
QFontのコンストラクタやsetFamily()に複数のフォントファミリー名をカンマ区切りで指定することで、優先順位を付けてフォントを試すことができます（例:QFont("Consolas, Courier New, Monospace")）。
- クロスプラットフォームで一般的に利用可能なフォントを選ぶ
- 説明
-
「特定のウィジェットでのみ等幅フォントが適用されない」
- 説明
親ウィジェットやアプリケーション全体に設定したフォントが、特定のウィジェットで上書きされていない可能性があります。また、Qt Style Sheets (QSS) を使用している場合、QSSの設定がコードでのsetFont()よりも優先されることがあります。 - トラブルシューティング
- ウィジェットのフォントを明示的に設定する
目的のウィジェットに対してsetFont()を呼び出し、固定ピッチフォントを設定していることを確認します。 - Qt Style Sheets の確認
アプリケーションやウィジェットに適用されているQSSがあれば、フォント関連の指定がないか確認してください。QSSでフォントが指定されている場合、コードで設定したフォントは無視されることがあります。 - 継承の確認
ウィジェットのフォントは親から継承されるため、意図しない親のフォント設定が影響している可能性もあります。
- ウィジェットのフォントを明示的に設定する
- 説明
-
「QML/Qt Quick でのフォントの問題」
- 説明
QMLでは、FontLoaderやTextエレメントのfont.familyプロパティを使ってフォントを指定します。QMLでは、固定ピッチかどうかを直接指定するプロパティは存在しません。 - トラブルシューティング
- フォントファミリー名で指定する
QMLのTextエレメントで、font.familyに固定ピッチフォントのファミリー名を直接指定します（例:font.family: "Consolas"）。 - システムにフォントがインストールされているか確認する
QMLを使用する場合でも、フォントがシステムにインストールされているか、またはアプリケーションリソースとして正しくロードされているかを確認する必要があります。
- フォントファミリー名で指定する
- 説明
- Qtのバージョンによる違い
Qtのバージョンによってフォントマッチングアルゴリズムやフォントレンダリングの挙動に微細な違いがある場合があります。特定のバージョンのQtでの既知の問題がないか、Qtのドキュメントやフォーラムで確認することも有効です。 - フォントキャッシュの問題
ごく稀に、開発環境でフォントキャッシュの問題が発生することがあります。OSのフォントキャッシュをクリアしたり、Qt Creatorやアプリケーションを再起動したりすることで解決する場合があります。 - qDebug() を活用する
QFontオブジェクトを設定した後、QFontInfoを作成し、そのfamily()やfixedPitch()の結果をqDebug()で出力して、実際にQtがどのフォントを選んだかを確認します。QFont font; font.setFamily("Consolas"); font.setFixedPitch(true); // 他のフォント設定... myWidget->setFont(font); QFontInfo fontInfo(myWidget->font()); // ウィジェットに適用されたフォントの情報を取得 qDebug() << "Font family applied:" << fontInfo.family(); qDebug() << "Is fixed pitch applied:" << fontInfo.fixedPitch();
C++ での例
C++ では、QFont オブジェクトを作成し、setFixedPitch(true) を呼び出すことで固定ピッチフォントを「要求」します。そして、実際に適用されたフォントが固定ピッチであるかを QFontInfo で確認するのが重要です。
例1：基本的な固定ピッチフォントの設定と確認
#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QFont>
#include <QFontInfo>
#include <QVBoxLayout>
#include <QDebug>
int main(int argc, char *argv[]) {
QApplication a(argc, argv);
QWidget window;
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
QLabel *label1 = new QLabel("Hello World! (Default Font)");
QLabel *label2 = new QLabel("iiiiiiiiiiiiMMMMMMMM (Fixed Pitch Request)");
QLabel *label3 = new QLabel("iiiiiiiiiiiiMMMMMMMM (Fixed Pitch with Family)");
// 1. デフォルトフォント
layout->addWidget(label1);
// 2. fixedPitch() の要求のみ
QFont fontFixedPitchRequest;
fontFixedPitchRequest.setFixedPitch(true); // 固定ピッチを要求
fontFixedPitchRequest.setPointSize(12);
label2->setFont(fontFixedPitchRequest);
// 実際に適用されたフォントの情報を取得・表示
QFontInfo infoFixedPitchRequest(label2->font());
qDebug() << "Label 2 (FixedPitch Request):";
qDebug() << " Family:" << infoFixedPitchRequest.family();
qDebug() << " Fixed Pitch Actual:" << infoFixedPitchRequest.fixedPitch();
layout->addWidget(label2);
// 3. fixedPitch() の要求と特定のファミリーの指定
QFont fontSpecificFixedPitch;
// クロスプラットフォームで利用可能な固定ピッチフォントを優先順位をつけて指定
fontSpecificFixedPitch.setFamily("Consolas, Courier New, Liberation Mono, Monospace");
fontSpecificFixedPitch.setFixedPitch(true); // 固定ピッチを要求
fontSpecificFixedPitch.setPointSize(12);
fontSpecificFixedPitch.setStyleHint(QFont::TypeWriter); // 固定ピッチをさらに強調
label3->setFont(fontSpecificFixedPitch);
// 実際に適用されたフォントの情報を取得・表示
QFontInfo infoSpecificFixedPitch(label3->font());
qDebug() << "Label 3 (Specific Fixed Pitch):";
qDebug() << " Family:" << infoSpecificFixedPitch.family();
qDebug() << " Fixed Pitch Actual:" << infoSpecificFixedPitch.fixedPitch();
layout->addWidget(label3);
window.setWindowTitle("QFont::fixedPitch() Example");
window.show();
return a.exec();
}
解説：
label3:setFixedPitch(true)に加えて、具体的な固定ピッチフォントのファミリー名をいくつか指定しています。これにより、Qtが選択するフォントがより意図に沿ったものになる可能性が高まります。また、setStyleHint(QFont::TypeWriter)を追加することで、Qtのフォントマッチングアルゴリズムに、より積極的に固定ピッチフォントを選ぶよう促します。label2:setFixedPitch(true)だけを設定します。もしシステムに適切な固定ピッチフォントが自動的に選択されれば良いですが、そうでない場合はプロポーショナルフォントが使われる可能性があります。qDebug()でQFontInfo::fixedPitch()の結果を見ると、実際に固定ピッチが適用されたかどうかがわかります。label1: デフォルトのフォントを使用します。プロポーショナルフォントが使われることが多いでしょう。
このコードを実行し、デバッグ出力を確認することで、QFont::fixedPitch() と QFontInfo::fixedPitch() の違いを明確に理解できます。
例2：QFontDatabase を使用した固定ピッチフォントの探索
QFontDatabase クラスは、システムにインストールされているフォントに関する詳細な情報を提供します。これを使って、利用可能な固定ピッチフォントを探索できます。
#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QFont>
#include <QFontInfo>
#include <QFontDatabase> // QFontDatabase を使用
#include <QVBoxLayout>
#include <QDebug>
int main(int argc, char *argv[]) {
QApplication a(argc, argv);
QWidget window;
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
QLabel *fixedFontLabel = new QLabel("Fixed Font from Database:");
layout->addWidget(fixedFontLabel);
// システム推奨の固定ピッチフォントを取得
QFont fixedFont = QFontDatabase::systemFont(QFontDatabase::FixedFont);
fixedFont.setPointSize(12); // サイズを設定
fixedFontLabel->setFont(fixedFont);
QFontInfo fixedFontInfo(fixedFontLabel->font());
qDebug() << "Font from QFontDatabase::FixedFont:";
qDebug() << " Family:" << fixedFontInfo.family();
qDebug() << " Fixed Pitch Actual:" << fixedFontInfo.fixedPitch();
// システムの全フォントを走査し、固定ピッチフォントを見つける
qDebug() << "\nAvailable Fixed Pitch Fonts on System:";
QFontDatabase fontDb;
QStringList fontFamilies = fontDb.families();
for (const QString &family : fontFamilies) {
// 各ファミリーのスタイルをチェック
QStringList styles = fontDb.styles(family);
for (const QString &style : styles) {
if (fontDb.isFixedPitch(family, style)) {
qDebug() << " - " << family << " (" << style << ")";
}
}
}
window.setWindowTitle("QFontDatabase Fixed Pitch Example");
window.show();
return a.exec();
}
解説：
fontDb.families()とfontDb.isFixedPitch(): システムにインストールされているすべてのフォントファミリーを列挙し、それぞれのファミリーとスタイルの組み合わせが固定ピッチであるかどうかをisFixedPitch()で確認しています。これにより、ユーザーの環境でどのような固定ピッチフォントが利用可能かを知ることができます。QFontDatabase::systemFont(QFontDatabase::FixedFont): システムが「固定ピッチフォント」として推奨するフォントを直接取得します。これは、特定のフォント名をハードコードするよりも、より柔軟で堅牢な方法です。
QML では、Text エレメントの font プロパティを使ってフォントを設定します。QMLには直接 fixedPitch のようなプロパティは存在しないため、固定ピッチのフォントファミリーを直接指定するのが一般的です。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15
import QtQuick.Controls 2.15 // Label を使用する場合
Window {
width: 640
height: 480
visible: true
title: "QFont::fixedPitch() in QML Example"
Column {
anchors.centerIn: parent
spacing: 10
Text {
text: "Hello World! (Default Font)"
font.pointSize: 16
}
Text {
text: "iiiiiiiiiiiiMMMMMMMM (Fixed Pitch - Courier New)"
font.family: "Courier New" // 固定ピッチフォントファミリーを直接指定
font.pointSize: 16
// QMLではfixedPitchを直接設定できないため、フォントファミリーで指定
// Qtのフォントマッチングがこの要求に基づいて最適なフォントを選ぶ
}
Text {
text: "iiiiiiiiiiiiMMMMMMMM (Fixed Pitch - Consolas/Monospace)"
// 複数のフォントファミリーをカンマ区切りで指定可能
font.family: "Consolas, Liberation Mono, Monospace"
font.pointSize: 16
}
// C++からのフォント情報アクセス（参考）
// QMLからQFontInfoの情報を直接取得するのは困難なため、通常はC++側で処理します
// 例えば、C++のバックエンドからQMLに固定ピッチフォントのリストを渡す、
// あるいは特定のUIエレメントのフォントが固定ピッチかどうかの情報を提供するなど。
}
}
- 複数のフォントファミリーをカンマ区切りで指定することで、優先順位をつけてフォントを探させることができます。
- QMLでは、
font.familyプロパティに直接固定ピッチフォントのファミリー名（例: "Courier New"）を指定します。
QFontInfo::fixedPitch() による実際の確認
これは代替というよりは補完的なアプローチですが、最も重要です。QFont::setFixedPitch(true) を設定した後に、実際に適用されたフォントが固定ピッチであるかどうかを QFontInfo で確認することが非常に重要です。
QFont desiredFont;
desiredFont.setFamily("Consolas"); // 希望のフォントファミリー
desiredFont.setFixedPitch(true); // 固定ピッチを要求
desiredFont.setPointSize(10);
myWidget->setFont(desiredFont);
QFontInfo appliedFontInfo(myWidget->font()); // 実際にウィジェットに適用されたフォントの情報
if (appliedFontInfo.fixedPitch()) {
qDebug() << "固定ピッチフォントが正常に適用されました: " << appliedFontInfo.family();
} else {
qDebug() << "固定ピッチフォントの適用に失敗しました。現在のフォント: " << appliedFontInfo.family();
// ここで代替フォントを試す、またはユーザーに通知するなどの処理を検討
}
なぜ代替となるか？
QFont::fixedPitch() は設定の「意図」ですが、QFontInfo::fixedPitch() はシステムのフォント解決の結果としての「事実」です。この事実を確認することで、意図が達成されなかった場合の代替手段を講じることができます。
明示的な固定ピッチフォントファミリーの指定
QFont::setFixedPitch(true) だけでフォントを Qt に任せるのではなく、実際に存在する固定ピッチフォントのファミリー名を明示的に指定することで、目的のフォントが適用される可能性を高めます。
QFont font;
// 一般的に利用可能な固定ピッチフォントを優先順位をつけて指定
// 各OSで異なるフォントがインストールされているため、複数の候補を用意すると良い
font.setFamily("Consolas, Courier New, Liberation Mono, DejaVu Sans Mono, Monospace");
font.setPointSize(10);
// setFixedPitch(true) は依然として有効ですが、ファミリー指定がより重要になります。
font.setFixedPitch(true);
font.setStyleHint(QFont::TypeWriter); // タイプライタースタイルヒントで、より強く固定ピッチを推奨
myTextEdit->setFont(font);
なぜ代替となるか？
Qt のフォントマッチングは複雑であり、setFixedPitch(true) だけでは最適な固定ピッチフォントが選ばれないことがあります。具体的なファミリー名を指定することで、Qt が迷うことなく目的のフォントを探しに行きます。
QFontDatabase の活用
QFontDatabase は、システムにインストールされているフォントに関する詳細な情報を提供するクラスです。これを利用して、よりインテリジェントに固定ピッチフォントを選択できます。
- 利用可能な固定ピッチフォントを列挙し、選択する
QFont preferredFixedFont; QFontDatabase fontDb; // 特定の固定ピッチフォントが利用可能かチェックし、あればそれを使う if (fontDb.families().contains("Consolas")) { preferredFixedFont.setFamily("Consolas"); } else if (fontDb.families().contains("Courier New")) { preferredFixedFont.setFamily("Courier New"); } else if (fontDb.families().contains("Liberation Mono")) { preferredFixedFont.setFamily("Liberation Mono"); } else { // どれも見つからない場合は、システム推奨を使うか、最後の手段としてGeneric Monospaceを使う preferredFixedFont = QFontDatabase::systemFont(QFontDatabase::FixedFont); if (!preferredFixedFont.fixedPitch()) { // もしそれでも固定ピッチでなければ preferredFixedFont.setFamily("Monospace"); // 一般的なモノスペースフォント名 } } preferredFixedFont.setPointSize(10); preferredFixedFont.setFixedPitch(true); // 念のため固定ピッチ要求もしておく myTextEdit->setFont(preferredFixedFont); - システム推奨の固定ピッチフォントを取得する
QFont fixedFont = QFontDatabase::systemFont(QFontDatabase::FixedFont); fixedFont.setPointSize(10); myLabel->setFont(fixedFont); // QFontDatabase::FixedFont は、そのOSが推奨する固定ピッチフォントを返します。 // 例えば、Windowsでは"Consolas"、macOSでは"Menlo"など。 // これが最も堅牢な方法の一つです。
なぜ代替となるか？
QFontDatabase を使うことで、ハードコードされたフォント名に依存するだけでなく、実行環境で実際に利用可能なフォントを動的に判断し、最も適切な固定ピッチフォントを選択できます。これにより、クロスプラットフォームでの互換性と堅牢性が向上します。
Qt Style Sheets (QSS) でのフォント指定
QSS を使用してウィジェットのフォントを設定する場合、font-family プロパティを使用します。ここでも、明示的な固定ピッチフォントを指定することが重要です。
/* QLabel のテキストを固定ピッチフォントにする例 */
QLabel {
font-family: "Consolas", "Courier New", "Monospace";
font-size: 12pt;
/* QSS には直接 'fixed-pitch: true;' のようなプロパティはありません */
}
/* QTextEdit のテキストを固定ピッチフォントにする例 */
QTextEdit {
font-family: "Consolas", "Courier New", "Monospace";
font-size: 10pt;
}
なぜ代替となるか？
QSS は UI のスタイリングを CSS ライクに行う強力なツールであり、コードで setFont() を呼び出す代わりにフォントを設定できます。QSS で font-family を明示的に指定することは、QFont::setFixedPitch(true) とは異なる方法でフォント選択を誘導する代替手段となります。
QML では、Text エレメントの font.family プロパティを使います。C++ と同様に、ここでも具体的な固定ピッチフォント名を指定することが重要です。
import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15
Window {
width: 400
height: 200
visible: true
Column {
anchors.centerIn: parent
spacing: 10
Text {
text: "Hello Fixed Pitch Text!"
font.family: "Consolas" // Windows向け
font.pointSize: 16
}
Text {
text: "More Fixed Pitch (Cross-platform)"
// 複数のフォントファミリーをカンマ区切りで指定可能
font.family: "Menlo, Courier New, Liberation Mono, Monospace" // macOS, Windows, Linux向け
font.pointSize: 16
}
}
}
なぜ代替となるか？
QML には fixedPitch を直接設定するプロパティがないため、font.family に固定ピッチフォントを直接指定することが、QML における QFont::fixedPitch() の意図を実現するための主な方法となります。
QFont::fixedPitch() は便利な「ヒント」ですが、単独で使うと意図が伝わらない場合があります。より堅牢に固定ピッチフォントを適用するには、以下の代替・補完的な方法を組み合わせるのが最善です。
- Qt Style Sheets や QML では、
font-familyに直接固定ピッチフォントを指定する。 QFontDatabaseを利用して、システムに適したフォントを動的に選択する。- 明示的な固定ピッチフォントファミリー名を複数指定する。
QFontInfo::fixedPitch()で結果を常に確認する。