C++ で Qt GUI プログラミング:マウスカーソルによるインタラクションを実現する QEnterEvent::QEnterEvent()
QEnterEvent::QEnterEvent()
は、Qt GUI におけるマウスカーソルがウィンドウまたはウィジェットに入った際に発生する「エンターイベント」を表現するクラスです。このコンストラクタは、イベントオブジェクトを生成し、マウスカーソルの位置情報などのイベント情報を設定します。
コンストラクタの引数
screenPos
: マウスカーソルの位置をスクリーン座標系で表すQPointF
型の値windowPos
: マウスカーソルの位置をウィンドウ座標系で表すQPointF
型の値localPos
: マウスカーソルの位置をウィジェット座標系で表すQPointF
型の値
コンストラクタの戻り値
- 生成された
QEnterEvent
オブジェクト
コード例
QEnterEvent event(QPointF(100, 50), QPointF(200, 100), QPointF(300, 150));
このコード例では、マウスカーソルの位置がウィジェット座標系で (100, 50)、ウィンドウ座標系で (200, 100)、スクリーン座標系で (300, 150) である QEnterEvent
オブジェクトが生成されます。
QEnterEvent
オブジェクトは、マウスカーソルがウィンドウまたはウィジェットから離れた際に発生するQLeaveEvent
オブジェクトと対比されます。QEnterEvent
オブジェクトは、QEvent
クラスから継承されています。
#include <QApplication>
#include <QWidget>
class MyWidget : public QWidget {
public:
MyWidget() {
setFixedSize(200, 100);
}
protected:
void enterEvent(QEvent *event) override {
// マウスカーソルがウィジェットに入った際に背景色を青色に変更
if (event->type() == QEvent::Enter) {
setBackgroundColor(Qt::blue);
}
}
void leaveEvent(QEvent *event) override {
// マウスカーソルがウィジェットから離れた際に背景色を白色に戻す
if (event->type() == QEvent::Leave) {
setBackgroundColor(Qt::white);
}
}
};
int main(int argc, char *argv[]) {
QApplication app(argc, argv);
MyWidget widget;
widget.show();
return app.exec();
}
MyWidget
クラスを定義します。このクラスはQWidget
クラスを継承しており、ウィジェットの機能を提供します。enterEvent()
メソッドをオーバーライドします。このメソッドは、マウスカーソルがウィジェットに入った際に呼び出されます。event->type()
がQEvent::Enter
であることを確認します。これは、マウスカーソルがウィジェットに入ったことを示します。setBackgroundColor(Qt::blue)
メソッドを呼び出し、ウィジェットの背景色を青色に変更します。leaveEvent()
メソッドをオーバーライドします。このメソッドは、マウスカーソルがウィジェットから離れた際に呼び出されます。event->type()
がQEvent::Leave
であることを確認します。これは、マウスカーソルがウィジェットから離れたことを示します。setBackgroundColor(Qt::white)
メソッドを呼び出し、ウィジェットの背景色を白色に戻します。main()
関数で、QApplication オブジェクトを作成し、MyWidget オブジェクトを作成して表示します。
- ウィジェットの外観や動作を変更するには、このコードを自由にカスタマイズできます。
QSignalMapper を使用する
- 欠点:
QEnterEvent::QEnterEvent()
ほど柔軟ではありません。- イベント情報にアクセスするには、追加の処理が必要になる場合があります。
- 利点:
- コードの冗長性を削減できます。
- 複数のウィジェットを一括して処理できます。
- 各ウィジェットの
enterEvent()
メソッドを個別にオーバーライドする代わりに、QSignalMapper
オブジェクトを使用してシグナルをマッピングできます。 - 複数のウィジェットで同じ処理を実行したい場合に有効です。
例
QSignalMapper mapper;
mapper.setMapping(widget1, 1);
mapper.setMapping(widget2, 2);
connect(widget1, SIGNAL(enterEvent()), &mapper, SLOT(map()));
connect(widget2, SIGNAL(enterEvent()), &mapper, SLOT(map()));
void MyWidget::map() {
int id = mapper.senderSignalData();
// `id` を使用して、適切な処理を実行できます。
}
スタイルシートを使用する
- 欠点:
- 複雑な処理には適していません。
- イベント情報にアクセスできません。
- 利点:
- コードが簡潔になります。
- 追加のプログラミングが不要です。
:hover
擬似クラスを使用して、マウスカーソルがウィジェットの上にある状態をスタイル設定できます。- シンプルな外観変更を行う場合に有効です。
例
QWidget:hover {
background-color: blue;
}
カスタムイベントを使用する
- 欠点:
- 複雑な実装が必要になります。
- 既存の Qt フレームワークとの互換性が制限される場合があります。
- 利点:
- 完全な制御が可能になります。
- 任意のイベントデータを伝達できます。
- 新しいイベントクラスを作成し、
QEvent::registerType()
関数を使用して登録できます。 - 独自のイベント処理ロジックを実装したい場合に有効です。
class MyEnterEvent : public QEvent {
public:
MyEnterEvent(const QPointF &pos) : pos(pos) {}
QPointF pos;
};
QEvent::Type MyEnterEvent::type() const {
return static_cast<QEvent::Type>(MyEnterEventType);
}
const QEvent::Type MyEnterEventType = QEvent::registerType();
void MyWidget::enterEvent(QEvent *event) override {
if (event->type() == MyEnterEventType) {
// `MyEnterEvent` イベントを処理します。
MyEnterEvent *myEvent = static_cast<MyEnterEvent *>(event);
QPointF pos = myEvent->pos;
// `pos` を使用して、処理を実行します。
}
}